今年度の素晴らしかった漫画ベスト5

というわけでお誘い頂いたのでギリギリですが、参加させて頂きたいと思います。この企画ですね。

一位 『医龍乃木坂太郎

医龍 19 (ビッグコミックス)

医龍 19 (ビッグコミックス)

今年一番印象に残ったキャラクターと言われれば、何といっても医龍におけるラスボス、医局の長である野口賢雄でしょう。「権力は美しい」というセリフを放った時の澄み切った表情、自らの生命すら顧みない権力への我執、ゲームのルールを変えてしまう妙手に代表される深い人間理解に支えられた政治能力。
普通はこのキャラクターを描くためには国政が舞台になるかなって気はしますね。それぐらいの器を感じさせながら、野口の人間としての部分にも描写を割けるというのが『医龍』という漫画のいいところです。国政モノにすると、ラスボス=国家体制みたいな図式が出来てしまって、そこはある程度スポイルせざるえないところですから。
どこまでも医局という狭い舞台であるが故に、政治ドラマのダイナミックさに欠けるという面も『医龍』全体を俯瞰すると確かにあるんですが、今年連載という区切りで考えるなら、それが良い方向に全て転がっていったという印象を受けました。
一人きりの忘年会のシーンは最高ですね。久しぶりに展開が想定の範囲外でした。何年も漫画読んでると、こういう瞬間が本当に嬉しいんですよね。このシーンだけで一位だよ私の中では。

二位 『Landreaallおがきちか

Landreaall 13 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

Landreaall 13 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

この漫画は別の記事で散々書いてはいるのですが、「アカデミー騎士団」編は傑作だよね。おがきちかはファンタジー漫画の書き手としては今日本で五指に入る才能の持ち主だと思いますが、その中でもこの騎士団編が断トツで一番。
確固としながら遊びを持った世界観、その中を縦横無尽に動き回るキャラクターたち、随所に張りめぐらされた伏線を軽々と回収しながら進んでいく魅力的なストーリー。三拍子そろったハイ・ファンタジー漫画です。

三位 『トリコ』 島袋光年

トリコ 1 (ジャンプコミックス)

トリコ 1 (ジャンプコミックス)

ボクたちのしまぶーが帰ってきた。というほど前作には思い入れはないけど『トリコ』は面白い。これがジャンプの新しい王道ですと言われたら、そうですかと納得せざるえないですよ。
トレジャーハンティングを主題にする漫画って、その宝なり秘境を説得力を持つ画面として表わさなくてはいけないので、かなり作者の技量が必要だと思うのですが、しまぶーは腕持ってるよね。モンスターは分かりやすいし、食べてる飯は美味そうだし、力抜くとこは抜いてるし、設定は色々と広げやすそうだし、少年漫画としてかなり高いレベルでまとまってる作品なんじゃないでしょうか。

四位 『ベルセルク』 三浦建太郎

ベルセルク 33 (ジェッツコミックス)

ベルセルク 33 (ジェッツコミックス)

これも記事にしたので、あまり書くことはないんだけど、グリフィスが自らの野望を今まさに叶えようとしている場面で、そのスケールが凄く大きそうなんですよね。今度連載される分がその壮大さを絵に表していくことになるかと思うので、今の内に追いついとくと、連載で一喜一憂できて楽しいんじゃないかなと。
連載されている面白い漫画を追うというのは、漫画読みの大きな楽しみの一つだと思うので、この漫画はこれから暫く要チャックということで。

五位 『ミスミソウ』 押切蓮介

ミスミソウ 【三角草】 (1) (ぶんか社コミックス)

ミスミソウ 【三角草】 (1) (ぶんか社コミックス)

この作品には妖怪や幽霊の類は全く出てこなくて、いるのはどこまでも歪んだ人間たちだけです。押切蓮介と言えばホラーギャグという印象があったのですが、意外というよりは納得したかな。
こういうキリキリとした空気というのは、緊張と緩和というギャグの本質の一端に触れますし、妖怪というのは人間の戯画という側面がありますから。
美しい一人の少女の転入が、廃校寸前の学校の秩序を乱したことから悲劇の幕は切って落とされます。少女は家族のほとんどを失い、そして始まる少女の復讐の物語は美しくも凄惨で、どこか破滅の匂いを感じさせます。ジェイソンがチェーンソウ持って襲ってくるのとは一味違う、ジャパニーズなホラーを堪能できる作品かと。