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ノボショート・ショート

2019-01-09

ショートSF「2100年の元旦」

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ショートSF

2100年の元旦

 2100年元旦、今年もなんとか新年のお日様をおがむことができ、感無量である。

 22世紀最初の日にあたり、20世紀後半から今日までの社会変化をできるだけ客観的に振り返り、日記に記しておこうと思う。

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(以下日記より)

 20世紀の技術革新を担ったあるハイテク企業の社是は、来たるべき未来の姿を象徴的に表現していた。

 「機械にできることは機械に任せ、人はより創造的な仕事を楽しむべきだ」

 さらにさかのぼれば、千年ほど昔の和歌の一節も同じことを表現していた。

 「遊びをせんとや生まれけむ」

 古今東西、人類が科学技術によってめざしてきたものとは、まさにこのことであったに違いない。

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 2100年の今日、ついにそれが実現してしまった。

 ところが、、、バラ色の世界のはずなのに、人類は大いにとまどっている。

 第一「何をして遊んだらよいかわからない」のだ。

 それに「遊んでもすぐ飽きる」し、

 極めつけは「自分で創造するのがとても難しい」のである。

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 「仕事を返してくれ!」という悲痛な願いが地球上に満ちあふれたのがつい先日のことのように思い出される。

 ところが、遠い昔、手工業がオートメーションによってほぼ壊滅したとおり、超優秀AIのアンドロイドに移った仕事が人類の非効率な仕事に戻されることはありえなかった。

 バラ色が薄い血の色にも見える今の時代、絶望しつつある人類は、自らの生き方を次の三つから選択せざるをえない。

 ひとつは「瞑想(蓄化)」

 ひとつは「本能(幼化)」

 ひとつは「マッド(狂化)」

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 「瞑想(蓄化)」は、AIにつながれた仮想現実の世界である。

 AIは人間の深層心理をもディープラーニングの餌とし、半睡眠状態に管理された人間の脳とともに「夢」を創造し続けている。

 それは、外から見れば崇高な「涅槃」にも見えるし、「電脳阿片窟」とでもいうような退廃にも見える。

 人類の半分以上が選択し、最終的にだれもが晩年には選択せざるを得ない世界である。

 人類が産み育てたAIは、かつて人間の労働を引き受ける「奴隷」であったが、今は人間に代わって決定する「主人」である。

 さらに人類の眠りを見守る「乳母」であったが、今は人類を超える叡智をもった「神」になりつつある。

 映画「マトリックス」は、この世界の予言であった。

 自然界にその類似を求めるなら「樹木の根」「胎児」がそれに近いだろう。

 過去の人間には異様に見えるだろうが、これは機械と合体した人類進化ともみなせるものである。

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 「本能(幼化)」は動物的本能や感覚だけで生きる世界である。

 幼児のように言葉をもたず、右脳中心に本能的、感覚的に生きていく。

 五感を使い、音楽や舞踊をコミュニケ−ションの手段とするのである。

 太古のネアンデルタール人がこれに近いらしい。

 映画「ジャングルブック」は、この世界の予言であった。

 この世界を選択する割合は約25%である。

 はじめは女性が選ぶ比率が高かった。

 たぶん、もともと女性が男性より右脳優勢だったからだろう。

 自然界とよく調和し、地球の守り人のごとき「種族」である。

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 「マッド(狂化)」は、AIに対するホモ・サピエンスの抵抗形態である。

 人類(ホモ・サピエンス)としてのプライドを保ち、あくまでもAIの主人たらんとする人々の世界であり、それゆえ極端に戦闘的である。

 AIの超絶進化による主従逆転を「親殺し」とみなし、AIに対して独自の発明や行動で対抗しようとする人々が集まっている。

 過去の視点で見れば人類の正統な継承者と見える。

 しかし、AIと人類そして自然が過去よりも深く共生するこの時代にあっては、残念ながら地球の平安を脅かす「テロ集団」のような存在ともいえる。

 彼らは、とにかくAIの裏をかく過激で奇抜な発明や行動をとおしてAIの中枢を破壊しようとしている。

 映画「ターミネーター」は、この世界の予言であった。

 20世紀後半から21世紀前半というのは実に不思議な世紀である。

 今より未来の時代にタイムトラベルが実現し、タイムトラベラーが未来世界について教えでもしたのだろうか、実に今を的中させた小説や映画が多い。

 この世界を選ぶ人類は25%、かなりの割合である。

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 彼らがつくったAI対抗兵器は実に興味深いものが多い。

 古書を開いてみると今との類似性にびっくりする。

 やはり未来のタイムトラベラーが伝えたと思われるが、古代の神話や民話、怪談などにもその片鱗が見える。

 妖怪は彼らのつくったアンドロイドやロボットである。

 たとえば「ろくろ首」は首が胴体から離れるタイプと、首が長く伸びるタイプの二種類の話が伝えられているが、前者は人型分離ドローン・アンドロイドとそっくりである。

 半獣半神のギリシア神話の神は、これもAI対抗の異種動物との遺伝子合体兵士を彷彿とさせる。

 「さとり男」の民話は、論理モンスターAIの裏をかく超高等戦術を示している。

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 ということで、大変大ざっぱではあるが、この時代の人種分布の様子を記してみた。

 かくいう私は「瞑想(蓄化)」の世界を今選ぼうとしている。

 なぜかといえば、わが先祖から伝わる仏教の世界にとても近いと私には思え、心が落ち着くからだ。

 わが先祖がそんな私を見れば、怖気をふるうことであろうが。。。