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ノボ村長の「思い出アルバム」

2012-12-08

第26話 知恵ある友

f:id:kawasimanobuo:20121011112618j:image:medium:right知恵ある友

 私の同級生はどういうわけか、小中学校の成績順に亡くなっていくようだ。。。
 
 三人までそうだった。

 ナオヤ君もその一人だった。

 今から16年前、若いのに高校の指導主事に任じられていたナオヤ君は、自宅で夕食後あっというまに亡くなった。

 42歳という若さだった。過労が引き金となった腎不全が死因らしい。

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 高校教師をしているもう一人の親友は、とても憤っていた。

 「指導主事仲間が殺したんだ!」と。

 聞けば、「人柄がよく、真面目で親切なナオヤ君にヤバイ仕事をみな押しつけ、激務を続けさせたからだ」と言っていた。

 職場の内情もナオヤ君のこともよく知っている彼が激昂したのは、やはり本当に近い理由があってのことだったろう。

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 ナオヤ君がご両親の故郷山形県置賜から宮城県小牛田町(旧)に引越してきたのは小学校二年生の時だった。

 あの日、ナオヤ君は先生に私の席の隣に座るようにと言われた。

 それから彼が中学校三年生で仙台に引っ越しするまで、ずっと仲良しの同級生だった。

 中学校ではテニス部でペアを組み、私が前衛、彼が後衛だった。

 私は、練習や学校であれこれおもしろくないことがあると、活発だけど性格がおだやかな彼に八つ当たりをすることもあった。

 そんな彼でも我慢できないときだってある。

 とつぜん、とんでもなく強いボールを打ち返して寄こすことがあった。

 それで私はハッと気づかせられたものだ。

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 高校は違ったが、仲間と一緒に何度も仙台のはずれにある彼の家に泊めてもらった。

 夜中に皆で近所の小山に登り、星空や遠い仙台の市街地のレースのような明かりを眺めたりしたものだ。

 高校の時彼はフェンシング部に入り国体選手となった。

 巨大になった太ももをみんなでよく茶化したことを思い出す。

 そういえば、「ゾウリムシ」というあだ名を付けたのも私だったが、生物学専攻の彼は大人になってもそのあだ名を気に入っていた。

 社会に出てからも、ナオヤ君やご家族の方々との親しい交流は続いた。

 お母さんはとても聡明な方で、高校一年生のときには私と彼のお母さんと二人で、仙台で「カラマーゾフの兄弟」の映画を観たことも思い出す。

 お母さんもロシア文学が好きだったのだ。

 「大草原の小さな家」のローラのお母さんのような雰囲気の方だった。

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 彼との最後の思い出がよみがえる。

 小学校の同級生で厄年の歳祝いをすることになった。

 私が発起人で、前年に主だった同級生を集めて一席設けた。

 すべてのクラスから集めた同級生たちは、卒業以来はじめて会う奴も多かった。

 典型的な文科系であった私だが、その年に今経営しているコンピューター関係の会社を興したばかりだった。

 久しぶりで会う口の悪い同級生たちは口を揃えてこう言った。

 「え〜〜!カワがコンピューター?ソフトウェア?、ウソでしょう!」

 さらに「カワがやってるんじゃ、こわくて使えないっちゃ!」

 (なんと失礼な。。。それほど文科系だったということだが。。。)

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 そのとき、ナオヤ君が言った。

 「みんな違うよ。俺はカワがこの仕事するのは一番向いていると思う」

 みんなは、ナオヤ君をいぶかしげに見つめた。

 ナオヤ君は続けた。

 「カワはコンピュータのことやソフトのことを全然知らなくてもいいんだ」

 「どうしてか?カワはコンピューターに何をさせればいいかを誰よりも知ってるからさ」

 みんな、何も言わなかった。

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 ナオヤ君のこの言葉はとても心に響いた。

 その後、たった一人でほとんど飛び入り営業で開始したこの仕事、私は名刺にこのような文言を印刷した。

 『パソコンを仕事に活かすお手伝いをする会社です』と。

 あれからもう二十年、文言は変えたが、今でもこの言葉の魂を会社の精神にし続けている。

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 しみじみ思う。

 ナオヤ君は小学校のときから私にとって最高の『知恵ある友』だったと。

 布団の中で目をつむっていると時々思い出す。

 彼の微笑んだ顔。とても頭が良かった彼が、理科系的なことを私にかみ砕いてやさしく教えてくれる姿。。。

 一緒に遊んだこと、一緒に本を読んだこと、一緒に運動したこと。。。

 正直、私は死んでも寂しくないと思う。

 天界で彼と会えるからだ。

 そしてきっとこう言うだろう。

 「や〜、ナオヤ君久しぶり!またあれこれ話しできるな!」

 彼は、あの、いつもの微笑みをうかべて「待ってたよ」と言ってくれるにちがいない。。。