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ノボ村長の開拓日誌

2016-11-23

「かないくん」という絵本

 谷川俊太郎:作 松本大洋:絵 「ほぼにちの絵本」:出版の「かないくん」は名作です。心が震えます。

f:id:kawasimanobuo:20161122230820j:image:w380

『詩集ノボノボ』より

「かないくん」という絵本

 一冊の本が一週間前に届いた

 「かないくん」という絵本だ

 こんなにも 心を震わせるとは思わなかった

 谷川俊太郎さんのたった一篇の詩に

 松本大洋さんが2年を費やして描いたという

 見開き24枚の絵は とても静かだ

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 小学校4年生で夭折した「かないくん」

 同級生の少年の目をとおして

 はじめて「死」というものを感覚した

 生徒たちの心象風景が描かれていく

 たった数行に 薄墨の背景を描いただけの頁は

 彼らの心の色のようだ

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 かないくんの物語は

 60数年後のホスピスへと舞台を変える

 あのとき同級生だった少年は

 車いすで点滴につながれて

 かないくんの死と まもなく来るであろう自分の死を

 重ね合わせながら 

 「かないくん」の絵本を創ろうとしている

 どう終わらせるべきか迷いながら

 彼の車いすのわきで 小学生の孫娘が

 心を通わせている

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 作品に交錯する三つめの時間

 スキー場で 孫娘は祖父の死を知った

 ゲレンデを滑り降りる彼女のこころは

 60数年前 かないくんがいなくなった

 あの日の祖父と同じであったにちがいない

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 最後の数行には 驚かされた


 「真っ白なまぶしい世界の中で

 突然私は、「始まった」と思った。」



 死と生が 「いのち」という言葉に

 まじりあったような気がした 

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 この作品に強く惹かれるのには

 もう一つ理由がある

 わが孫は小学校4年生、孫娘は一年生

 彼らが同級生たちと遊ぶ様子や表情は

 絵本の中の小学生そのものなのだ

 視線、足の曲げ具合、肩のそびやかし方・・・

 2年もかけて描いた絵には

 やはり 何度も鑑賞させる熟成がある

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 詩と絵が 強く静かに共振している

 描かれたまなざしに 深さを感じる

 毎晩 ため息とともに

 最後のページを閉じている

 理由のわからない涙が 必ずこみあげる

 その後 朝露のような一滴が

 心に落ちてくる

→「かないくん」(ほぼ日刊イトイ新聞)

→ノボ村長の「詩集ノボノボ」