大阪の狆、中央線にあらわる

朝、少し原稿書き出すが、あまり進まない。約束の時間が近づいているので、諦めて出かける。渋谷のハチ公前で大阪からやってきた前田和彦くんに会う。「BOOKISH」の編集の手伝いをやっている、関西大学の院生だ。まだ22歳だが、古いことをよく知ってるし、知識欲もすごい。何か新しいことを知るたびに、いちいち本気でカンゲキしてる姿がほほえましい。「動物なぞらえ」の得意な旬公は、「犬で云えば狆(ちん)みたいだね」と云っていた。小さくてかわいいのと落ち着かないところが似てるとか。その狆とハチ公前で待ち合わせしたのは、たんなる偶然で意味はない。


一昨日、昨日と前田くんを泊めたセドローくんも一緒。昨日は高田馬場の飲み屋で、7、8人で飲んだそうだ。エンテツさんと畠中さんが例によって酔っ払っておもしろかったそうだ。その様子を狆が目を輝かせて報告する。きっと関西に戻ってからも、みんなに云うのだろう。こうして、エンテツ・畠中の酔っ払いコンビ(いつの間に……)は、世の伝説となっていくのだ。


まず、ロゴスギャラリーの「印刷解体」へ。狭いスペースに活字棚、印刷見本、紙型、活字、写植文字盤などのブツと、印刷年鑑や一枚モノの広告などが並べられている。初日とあって、すごい人出。何かに使えるかと思って、「古」という木活字と文選箱を買う。佐藤真砂さん、会場にわんさといるうるさがたの客からの問い合わせと注文とたんなる自慢への対応におおわらわ。ご苦労さんです。リブロを覗き、となりのCDのセレクトショップも見る。


次に新宿へ。紀伊國屋書店本店の5階でやっている「じんぶんや」というフェアを覗く。「本のメルマガ」同人のセレクションで「子どもが大きくなったら読ませたい本」というのをやっているが、正直言ってバラバラすぎる印象。設問を出す側もそれに対して本を選ぶ側も、フェアのイメージが共有できてない。ぼくは『ガロ編集長』(長井勝一)、『私の渡世日記』(高峰秀子)、『戦中派不戦日記』(山田風太郎)を選んだが、これもうまく行ったとは云いがたい。しかも、POPを提出するのが遅れて、今日並べられていた。売り場担当のIさんとMさんに、セドローくんと前田くんを紹介する。店に戻るセドローくんと別れて、タワーレコードへ。前田くんも音楽好きなので、1フロアずつわりと時間をかけてまわる。ぼくはSAKANAのニューアルバム[LOCOMOTION]、戸川純バンド[Togawa Fiction]ほかを買う。最上階のタワーブックスでは、鳩山郁子のサイン会をやっていた。


渋谷・新宿ですっかり時間を食ってしまったが、今日の目的は中央線。狆は「荻窪といえば田村信の『できんボーイ』ですね。あれによく名前が出てきます」などと、憧れの中央線への思いを開陳。記述をはしょると、中野で〈タコシェ〉、西荻で〈興居島屋〉と〈音羽館〉(ついでに〈戎〉でちょっと飲む)、荻窪で〈ささま書店〉と〈常田書店〉を回ると、もう7時になってしまった。高円寺の古書会館も連れて行きたかったが、残念。さすがに歳なのか、これだけ回ると足が痛くなってくる。


阿佐ヶ谷に行き、〈よるのひるね〉へ。今日はかなり混んでいる。ここに、前田、ぼく、セドローに、阿佐ヶ谷の友達・松井さん、松井さんの友達の大西さん(原書房)と中井さん、タコシェの中山さん、国書刊行会の樽本さんが集まり、スゴイことに。こんなに来るとは思わなかったので。いろいろハナシが出て、魚雷さんが来たところで場所を変える。〈ラジオ屋〉に落ち着くが、原稿が気になって、これから新木場で徹夜のライブを見るという前田くんと一緒に店を出る。なんか体中がずーんと疲れていて、帰ってすぐ寝てしまった。朝早くおきて原稿やろう。