渡辺勝、「ベアトリ姐ちゃん」を歌う

9時前に起きて、メールなど。仕事場には11時過ぎに到着。やりかけで残していった座談会の再校ゲラが出ていた。分量を調整し、細かいところを直して、夕方には入稿データをつくる。コレでぼくが担当する記事は入ったので、ほかの担当者のゲラを読んだり、色校正をまとめたりする。台湾行きのために前倒しで仕事したため、今回は余裕が味わえる(いつもそうしろってか)。


少し気持に余裕ができると、スグどこかに出かけたくなる。そういえば、今月〈横浜日劇〉が閉館すると新聞で読んだなあ、と検索してみると、明日を最後に閉館。真向かいの〈シネマ・ジャック〉〈シネマ・ベティ〉も同じ日に閉館になるようだ。わざわざ横浜まで出かける気にさせるプログラムを組んでいた映画館が全滅とは。たいして通ってないから、ナニも云えないけど、残念だ。


7時頃に出て、高円寺へ。北口の定食屋〈ヤシロ食堂〉で、ハンバーグ定食+豚汁を食べる。ココで掛かっていたラジオで、《黒木瞳のTALK RADIO》という短い番組をやっていたが、コレがすごい。メールをくれたリスナーの悩みを、黒木瞳が電話で聞いてアドバイスするというもの。今日は「妻が妊娠数ヶ月なので、子育ての秘訣を教えて下さい」というメチャクチャ大ざっぱな相談。黒木瞳は「大変ですねえ」「旦那さん優しそう(声で判るんだとか)」と相手をしておいて、後半はずーっと自分ちの子育て自慢をしていた。どうやら、リスナーの悩みを聞くフリをして「黒木瞳的ライフ」を語る番組らしいのだ、これは。いやー、おもしろかった。


そんなこんなで店を出るのが遅れてしまい、おまけに〈十五時の犬〉に寄ったり、途中迷ったりしたので、〈稲生座〉にはちょっと遅れて到着。小さな店。『ぐるり』の五十嵐さんが席を取っておいてくれた。渡辺勝と竹岡隆(ベース)のデュオ。今日の渡辺さんはピアノを弾かず、ずっとギターだけだった。ぼくがライブを聴くようになってから、初めてのケースだ。休みなしに曲をつなげていくスタイルはいつも通りだが、ピアノと違ってギターでは、曲間に微妙なすき間がある。それがちょっと気持ちよかった(ということは、ピアノのときはやや重苦しさを感じてしまうというコトなのか)。ベースとの息もぴったりで、リラックスして聴けた。エノケンが歌っていた「ベアトリ姐ちゃん」(ぼくの好きな曲)なんてやってくれて、ヨカッタなあ。


終って、五十嵐さんと〈コクテイル書房〉(http://www.koenji-cocktail.com/)へ。なんとこの場所に移転してから初めてだ。前の店よりも広くなって、落ち着く。偶然だが、〈興居島屋〉の石丸澄子さんが飲みに来ていた。ちょうど、彼女のシルクスクリーンによる古書展ポスター展「古本屋のグラ◆ヒック展」が開催中だった。初期と現在ではかなり絵柄が変わっている。最近になるにしたがって、どんどん絵柄がシンプルに、力づよくなってくる。「おに吉」にインスパイアされて、「不忍ブックストリートMAP」をつくることや一箱古本市を開催するコトを話す。「おに吉」運営の大変さもちょっと聞かせてもらった。


11時前に出て、〈高円寺文庫センター〉で野中英次魁!!クロマティ高校』(講談社)の最新巻と、福井優子『観覧車物語 110年の歴史をめぐる』(平凡社)を買う。中央線のホームで五十嵐さんとさっきのライブの話などして、反対側に帰る五十嵐さんが電車に乗ったところで、隣に立っていた女性に「あの、さっき稲生座にいらした方ですか?」と声を掛けられる。先日の〈なってるハウス〉の渡辺勝ライブでもぼくを見かけたそうだ。すわ、ナンパか!と喜びそうになったが、違いました。この方は、URCで活躍していて、最近音楽活動を再開した野澤享司さんというフォークシンガーのファンだそうで、渡辺さんのライブに来たのは〈なってるハウス〉に続いて二度目だとか。2回ともヘンな丸いヤツを目にしたので、思わず声を掛けたくなったのだろう。その場では野澤享司という歌い手がイメージできなかったが、あとで中津川フォークジャンボリーの音源などで聴いたコトがあるのに気づく。さっき、高円寺の〈十五時の犬〉で買った、なぎら健壱『日本フォーク私的大全』(ちくま文庫)の索引をひいてみたら、二ヶ所に名前が出てきた。


ウチに帰ると12時。何度も書いてるが、中央線から西日暮里まで帰るのは時間がかかる。日記を書いたり、メールを送ったりで、たちまち1時過ぎた。


【今日の郵便物】
★『出版ニュース』2月中旬号
表紙は、ナンと彷徨舎。最近は毎号、出版社の社屋の入り口を載せているのだが、彷徨舎の場合は、編集部に上がる階段のあたりが載っているのが、この会社らしい(もっとも他に写せるトコロはない)。毎号目次のヨコに、「表紙の言葉」が載っているのだが、コレがいつも意味不明だ。何度も「私」と出てくるから、誰のことかと思えば表紙のデザイナーの独白(しかも表紙写真にはほとんどカンケーないヨタ文)なのだ。なんでアンタが書いてるんだよ! と云いたくなる。数年前、ぼくの自室が表紙になったときも、ぼくの「本心」まで勝手に推察したポエムみたいな文章を書きやがった。なんでこんな駄文を毎号載せつづけているのか、編集部の意図がさっぱり判らない(誰も読んでないからイイのか)。図書館などで見つけたら、どの号でもいいから手に取ってみてください。笑えるから。