地道にちょっとずつ

朝、夢うつつのなかでインターフォンの音が鳴る。旬公が出て、荷物を受け取っている。不機嫌な声で、「なんかデカイものが届いてるよ」と云う。やばい、「フジサワ湘南古本まつり」で注文した本だ。連休中にどうしても藤沢まで行くコトができず、電話して発送に変更してもらったのだ。一冊は徳間書店の社史だが、それ以外はすべて、角川書店の雑誌『バラエティ』のバックナンバー全44冊。全部揃っていて2万円は、まあまあの安さ。現物を見て、この雑誌が、創刊の頃はA4で、途中からB5になり、末期にはまたA4に戻っているコトを知った。ぼくが愛読したのはB5時代らしい。


たちまち目が覚め、旬公の目を盗んで(思い切りバレてるが)、奥に運び込む。昨日の段階でもはや、棚にも床にも置ける場所はなく、机の下、ぼくの足を置く辺りにとりあえず立てかけておく。そういう状態なので、とても全部を広げてみるコトはできない。今日のところは、数冊ずつビニールパックされてるのをひとつかふたつ開けて、何号かざっと見るにとどまる。創刊号は角川映画の宣伝一色。冒頭の五木寛之角川春樹の対談で、角川がこの雑誌について、ものすごーく大風呂敷を広げているのが笑える。まるで世界征服せんというばかりのイキオイだ。あと、1982年の号を見て、連載の一つに、大友克洋の「饅頭こわい」というページがあったのを思い出した。けっこう好きだったんだよな、コレ。せっかく買ったので、この雑誌の創刊から終刊まで目を通してみたい。少しずつ読み進めて、ときどきこの日記で紹介しようかと思っている。


そうこうしてると12時。〈古書ほうろう〉で置きっ放しの荷物、最後の二つを引き取る。自転車にくくりつけて、谷中のアパートへ向う。今日は連休の最後で、めちゃくちゃイイ天気とあって、谷中はものすごい人出。歩道を自転車で抜けるコトができず、脇道に回ったら、そこもヒトが歩いている。「一箱古本市」の日も、これぐらいイイ天気なら万々歳なのだが。


荷物をアパートに置き、根津の〈オヨヨ書林〉へ。外の均一台を見ていたら、小森さん来る。そのあと、高野ひろしさんが、ペンギンを入れたカートとともにやってくる。その直後にオヨヨさんも到着。「一箱古本市」のときに、オヨヨの前で高野さんに写真展をやってもらうので、その打ち合わせ。いろいろ検討して、それならどうにかイケる、というカンジになる。この数日で、一箱古本市の関連企画がほぼ決定したので、ホッとする。


自転車で谷中銀座に行き、昼飯でもと思ったら、どこも満員。〈ヤマネ肉店〉でコロッケとハムカツを買って帰り、食べる。ちょっと休んで、『レモンクラブ』の書評。今回は吾妻ひでおの『失踪日記』(イースト・プレス)。このマンガのとてつもないオモシロさを伝える文章がなかなか書けず、難渋。6時ごろ、ようやく上がる。〈ときわ食堂〉まで行き、チューハイを飲む。ウチに帰ると、ほうろうでのワークショップを終えて帰っていた旬公が、「鍵が開いてたよ」と云う。ちゃんと締めたハズだけどなあ。どこかボケているんだろうか。


夕飯(鶏肉とごぼう炒め)をつくって、ビデオで大島渚監督《青春残酷物語》(1960)を観ながら食べる。うーん、しょっぱいハナシだ。『進学レーダー』の図書館原稿。今回は同時に2本。1本は書き上げたが、もう1本は途中まで。明日仕上げて送るコトに。地道にちょっとずつ書いてはいるが、この連休で終わらせるべき原稿がもう一本、完成まで持っていけなかった(Fさん、もうちょっと待ってください)。ううううう。