ナンダロウアヤシゲな日々

◎この日記は、ライター・編集者の南陀楼綾繁が書いています。
◎新刊『町を歩いて本のなかへ』(原書房)発売中です。
◎著書『一箱古本市の歩きかた』(光文社新書)、『谷根千ちいさなお店散歩』(WAVE出版)、『小説検定』(新潮文庫)、『ほんほん本の旅あるき』(産業編集センター)、『路上派遊書日記』(右文書院)、『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『老舗の流儀 戦後六十年あの本の新聞広告』(とうこう・あい監修、幻冬舎メディアコンサルティング)、編著『チェコのマッチラベル』(ピエ・ブックス)、共著『ミニコミ魂』(晶文社)。
◎ご感想・ご連絡は南陀楼綾繁 まで。
◎「不忍ブックストリートの一箱古本市」は毎年春に開催します。
詳細は不忍ブックストリート公式ホームページもしくは、しのばずくん便りをご覧ください。
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2005-06-30 さようなら、「本とコンピュータ」編集室

朝、〈ならまち文庫〉の宇多滋樹さんからの電話で眼が覚める。森まゆみさんらに会うために、上京してきた。谷中アパートに泊めることになっていたので、鍵の受け渡しを段取りする。そのあと、また眠ってしまい、11時過ぎに起きる。旬公がつくった昼飯を食い、仕事場へ。昨日の日記で、「荻原魚雷くんが出てる」と岡崎さんが書いていた、「朝日新聞」29日朝刊を見る。古山高麗雄のことで、しかも「書評のメルマガ」(紙名は出てないが)で連載したコトにも触れてある。魚雷さんに古山高麗雄の作品をひとつずつ書いてもらったら、と思いついたのは、不肖ワタシメです。えっへん。なお、魚雷さんはいま発売中の『TONE(トーン)』(ユニバーサルコンボ)でも、「歩兵と将校戦争――古山高麗雄吉田満」という文章を書いている(目次では「古山高麗男」と誤植)。


もうだいたい片付けは終わったので、某誌の原稿を書く。ちょっと手こずり、何度も書き直す。けっきょく完成しないまま、5時になる。手荷物を片付け、皆さんに挨拶して、編集室をあとにする。今日で「本とコンピュータ」編集室は、解散する。この場所は、大日本印刷が後続のプロジェクトのために借りておくらしいが、ぼくがこの部屋に来ることは、もうないかもしれない。1997年3月に、ぼくたちがこの部屋に来たとき、中央にテーブルがひとつあるだけで、電話も床に置かれていた。それから、備品も人も増え、さまざまな出来事があった。季刊雑誌が32冊、別冊・叢書・オンデマンド出版が数十冊、オンラインのコンテンツなどが、この場所で生れた。しかし、終わってみると、あまりにもあっけない気がする。


都営新宿線新宿三丁目へ。久しぶりに〈ジュンク堂書店新宿店を。さっき書いていた原稿のために、本を探す。二冊探して二冊とも見つかった。さすがです。この店がオープンしたとき、「閉店時間が早いのが不満」と書いたのだが、6月から9時まで営業となっていた。これもエライ。資料本のほか、『en-taxi』第10号、島本和彦逆境ナイン』第5、6巻(小学館)、鈴木みそ『銭』第3巻(エンターブレイン)を買う。『en-taxi』には、洲之内徹小説『棗の木の下』が別冊附録として挟み込まれている。匿名コラムでは、鈴木地蔵『市井作家列伝』(右文書院)が激賞されていた。


中央線高円寺ガード下古本屋を覗き、7時に〈円盤〉へ。今日は、ふちがみとふなとライブ。すでに10人以上入っていて、その後も続々と。30人ぐらいになったか。椅子に座ると、足も動かせず、ビール瓶を下に置くのさえ一苦労。ぼくのいちばん好きな歌(「坂をのぼる」)からはじまり、オリジナルをたくさんやり、間に「小さな喫茶店」「エノケンのダイナ」などを挟む。2ステージで約20曲。上野茂都さんがライブでやったのを先に聴いていた「古本屋のうた」も、初めてオリジナルで聴けた。今日のふちがみとふなとは、ノーマイク・ノーアンプだが、渕上純子は大声でも小声でも、聴く者を惹きこむ。ベースは超絶だが、コーラスは情けない声の船戸博史もイイ。アンコールでやった「百万円拾ったら」とかいうコミックソングが、アナーキーでよかった。ライブ会場で先行発売の[ヒーのワルツ]を買う。工場からのプレスは上がってなくて、ふたりが手作業で封入したやつだとか。


9時半に終わって、電車を乗り継いでウチに帰る。ピエ・ブックスから『チェコのマッチラベル』(2200円)の見本が届く。製本された状態で見ると、けっこう厚くて、持ち重りがする。たっぷりと図版の入った本なので、書店に並んだらぜひ手にとって見てください。晩飯のあと、昼間の原稿の続き。1400字という短いものなんだけど、なかなか線が決まらず、何度もいじくっているウチに、いちばん最初の構成に落ち着いた。よくあるコトだ。

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2005-06-29 明日でお別れ

雨が降ったセイか、今日はややしのぎやすい。12時ごろに仕事場へ。あと一日で、ココともお別れなので、残っていた用事を順々に片付けていく。6時になんとかカタをつける。明日、最後まで使っていた文房具やファイルを入れた段ボール箱を発送すれば、すべては終り。どうやら月末までに間に合った。やればできるものだ。その代わり、今度は、受け入れ先であるぼくの部屋の整理が待っている。はたして腰がもつかしら。


ウチに帰り、自転車谷中コミュニティセンター図書館へ。ぶらぶらしてから帰る。旬公が借りてきたビデオ映画を観るが、恐ろしくつまらなくて、わずか20分でリタイア。気づいたら、旬公もぐっすり眠っていた。タイトル記す気にもならん。

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2005-06-28 神保町で塩山さんと

午前中は神保町へ。超ひさびさである。〈ブックブラザー源喜堂書店〉の地下が、アンティークショップかなにかになっていたり、靖国通りの横断歩道の手前の店(チケット屋だったっけ?)が立ち食いそば屋に変わっていたりと、しばらく足を運ばなかったら、けっこう変化があった。


書肆アクセス〉で、紀田順一郎『書林探訪 古書から読む現代』(松籟社)、『肥田せんせいのなにわ学』(INAX出版)、『映画論叢』第11号、『大阪人』7月号、『仙臺文化』創刊号を買う。『肥田せんせい〜』は、関西大学教授近世文学)で古書通として知られる肥田晧三のコレクションの展覧会の図録。『仙臺文化』には、マッチラベルに見る仙台の街という記事に惹かれて。沖縄帰りの畠中さんに、泡盛をいただく。沖縄では、ボーダーインクの15周年記念の会に出席したそうで、記念目録『あんなしかんなし15年』をもらった。


畠中さんと話していたら、レジのところで、Tシャツ・短パンの親父がニヤニヤしている。塩山芳明さんだ。昨日は仕事場で徹夜だったとのこと。近くの〈珈琲館〉で雑談。「あんた、本コをヤメて身軽になったんじゃない?」と。そうありたいんですが。あと、いろんなブログ日記の月旦(というか、こきおろし)。セドロー日記は「もうちょっと読みたいトコロで終わるのがイイ」とのことです。専修大学前の中華料理屋で、冷し中華をご馳走になり、別れる。


仕事場に行き、挨拶状を発送する住所のラベル出し。最小限にとどめたツモリだが、数百通になってしまった。ホントは6月中に発送したかったが、ほかに雑用が多くムリだった。7月に入ってから、ゆっくり発送するか。7時から神楽坂で、「本コ」編集・デザインスタッフ飲み会。一期で辞めたヒトとも久々に会う。飲み放題の店だったが、2時間ジャストで追い出され、落ち着かなかった。〈モー吉〉の二階で二次会。解散して、ウチに帰ったのは12時。部屋の中があまりにも暑いので、うんざりする。

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2005-06-27 8年間のメールは1.5ギガ

朝刊を見て、長新太さんの死去を知る。77歳。絵本作家としてよりも、今江祥智をはじめとする児童文学挿絵や、ナンセンスマンガに親しんでいた。「本とコンピュータ」では、第一期の第13〜16号まで、表紙と中のカットをお願いしている。また、銀座gggで行なった「本コ」の展覧会のポスターも描いていただいた。最初、平野甲賀さんと一緒に、渋谷のお宅に伺って、お目にかかった。絵のタッチと同じく、ひょうひょうとした応対だった。毎号届くイラストを見ては、そのとんでもない発想にいつも爆笑していた。その頃から、ご病気をされているとは聞いていたが、ここしばらくの精力的な活動を見て、安心していた。本当に残念です。


11時に仕事場へ。今日も暑い。ぼくの仕事場は、市ヶ谷の左内坂という急角度の坂を上がりきったトコロにある。遠回りして行っても、別の坂を上がらねばならないコトに変わりはない。なので、夏には地獄の暑さ、冬には転倒の恐怖と戦わねばならぬのだ。あと4日だけ通えば、この坂の上り下りから解放されるのは、ウレシイ。編集部の解散が暑さの最中でなくて、よかったなあ。


今日は、メールソフトのデータを移行する。システム担当のB氏に頼み、仕事場のMACに入っている8年間のメールを、自宅で使っているノートパソコンWIN)に移す。なんとメールだけで1.5ギガもあったので、ノートハードディスクを整理して空き領域をつくったり、新しいメーラーTHUNDERBIRDというやつ)をダウンロードしたりで、スムースには進まない。けっきょく7時までかかる。


転送されるデータを見ていると、なんだか気持ち悪くなり、ウチに帰って、ヨコになる。夕食は、〈デリー〉のカレー。シーフードミックスを入れたら、辛いけどウマかった。何もする気力が起きず、溜まっていた『映画秘宝』を数号読む。いつも中身が濃いので、買ってもすぐに読み切れないのだ。何号か前の鈴木則文特集がよく、まとめて観たくなった。

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2005-06-26 西荻で、はじめてのお店へ

今日も暑いし、蒸すなあ。布団乾燥機をかけて、旬公と出かける。日暮里の初音小路入口にある〈一力〉で、ラーメンギョーザ。ごくフツーの飽きないラーメンだ。小沢信男さんのお宅に寄り、アメリカ土産(ターキーのジャーキー)を渡す。千代田線新御茶ノ水へ。ホームで前を歩いている、見事な体格の白人の男が、一緒に連れていた小さな娘をひょいと抱き上げた。大と小の対比がおもしろくて、しばらく眺めてしまった。日本人の親子だと、あそこまでの差にはなりにくい。


中央線荻窪乗換え、西荻窪で降りる。南口に新しくできた〈にわとり文庫〉へ。この辺りは、中古レコード屋や古着屋、〈又右衛門〉というジャズバーなどがあって、西荻に澄んでいた頃、ワリとよく来たものだ。もうちょっと行くと、貸本屋もあった。〈にわとり文庫〉は、開業案内のハガキや知り合いのハナシから、「オンナコドモ」テイストの店なのかと思っていた。実際、入口のところはそういうカンジがあるが、奥に入ると、文学史歴史の本も置いてあった。狭いけど、よく本が揃っているなという印象。


こないだの「月曜倶楽部」の目録に出ていた、『月刊小説エンペラー』創刊号(1977年10月)を出してもらう。モノクログラビアの「仕事場拝見」は都筑道夫小説も)、田中小実昌「板敷川の湯宿」、阿佐田哲也エッセイ。こないだ読んで笑った、『芥川賞直木賞のとり方』の著者、百々由紀男も「食べ歩紀行」という記事を書いている(つまんないんだ、コレが)。女優・沖山秀子の小説なんてのも載っている。いかにも売れそうもなかった雑誌だ。ここまでショボイと、古書展などでメッタに見つからないだろうからと、買っておく。3150円。


北口に出て、〈三月の羊〉へ。ここのセリザワさんが、「不忍ブックストリートMAP」を置きたいとメールをくださり、郵送したコトがある。セリザワさんは、「ほんだな」という書評対決(二人がそれぞれ気に入った本を書評する)サイトhttp://www.geocities.jp/hondananandana/)もやっている。道路からちょっと奥まったところにある、パンと喫茶の店。パンも菓子も手づくり。羊のカタチをしたパンもあった。入口のところには、村山知義らの絵本を販売するコーナーもある。小さくて、なかなか落ち着く店。喫茶スペースは女の子で埋まっている。奥のテーブル(ちょっと隠れスペースみたいでイイ)に座り、コーヒーと羊プリンタルトを。どれも美味しかった。また来よう。


音羽館〉に行くと、奥園さんが「どこかで見た本あるんじゃないですか?」と云う。それもそのハズ、今月はじめに、セドロー牛イチローコンビに処分を依頼した本は、市場に出品され、そのうちの数口を音羽館落札してくれたのだった(あとで控えを見たら、6本口ぐらい)。一時的に、自分の本棚がコッチに移動してきたかのような、妙な気分。堀切直人『目覚まし草』(沖積舎)1200円を買う。店の外で、広瀬さんと立ち話。彼らが計画中のイベントについて。


電車に乗って、ウチに帰る。乾燥されてふかふかになった布団で、しばしまどろむ。笙野頼子『徹底抗戦!文士の森 実録純文学闘争十四年史』(河出書房新社)を読了。400ページ以上あるのだが、面白くて面白くて一気に、とは残念ながらいかなかった。前著『ドン・キホーテの「論争」』から、笙野の「論争」がドコに向かっていたのかが主な興味だったのだが、肝心の大塚英志批判が、どの文章でもほぼ同じことの繰り返し(さまざまな文体、構成で執拗に書き続ける執念には驚嘆するものの)なので、途中で飽きてしまった。ただし、43ページの図版はスゴイぞ。冒頭に「ちょっと根本敬先生の人間観察みたいになっちゃった」とあるのが、うなずける。


冷蔵庫の残りで適当に晩飯。旬公がアメリカで買ってきた、オーストリッチ(ダチョウ)のジャーキーを食べる。わりと柔らかく、食べやすい。そのあと、片づけやらなにやらで、たちまち1時過ぎる。先日、「BOOKMANの会」の藤田晋也さんから、彼が〈駒書林〉という名前で出版した、杉浦幸雄漫画エッセイ『おいしいネ』(B5判、168ページ、2800円)が送られてきた。昨年93歳で亡くなった漫画家杉浦幸雄が、晩年に『四季の味』に連載した、食についての漫画漫文。レストラン、料亭、居酒屋、家庭の味などについて。このヒトのヒトコマ漫画が好きかと問われれば、うーんと唸るしかないが。附録として、加藤芳郎小島功夏目房之介らによる追悼文を再録した小冊子が付いている。ぼくよりずっと若いのに、昭和30年に生きてるような青年・藤田くんらしい、落ち着いて行き届いた本づくりである。まあ、あまりにも古めかしい感じなので、新刊としてはちょっとソンしてるかなと思うのだが(古本屋に並べばちょうどイイ?)。

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2005-06-25 打ち合わせと二週間ぶりの新刊書店

11時に目覚め、洗濯などしていると、12時になる。旬公は睡眠薬と時差で爆睡中。今日の打ち合わせで、古本屋さんが書いた本を数十冊使うコトになっている。この数日、本の整理をしながら、見つけたら脇にどけてきたが、3冊だけ見つからなかった。すでに売ったのか、実家に送ったのか。3冊だけというのは、ぼくにしては上出来だと云えよう。整理期間の効用か。


そのうちの一冊である、中山信如『古本屋「シネブック」漫歩』(ワイズ出版)を求めて、先週も行った〈稲垣書店〉へ。ご本人の本だから当然だとはいえ、ちゃんとあった。サイン本、割引で購入。もう一冊、『にっぽんの喜劇えいがPART2 森崎東篇』(映画書房)2500円。先日買った『前田陽一篇』と同じシリーズだ。山根貞男によるロングインタビューや、関係者のエッセイなど。表紙イラストはご本人の手になるもの。


ウチに戻り、持っていく本を選び、3時に西日暮里駅へ。『G』のSさんと会う。〈花歩〉に行ったら閉まっていたので、〈ルノアール〉へ。持ってきた本を見せながら、どういう風に取り上げるかを相談。原稿を書く前に、ビジュアルの材料まで細かく決めていかなければならないので、タイヘン。たっぷり2時間話して疲れ、いったんウチに戻る。スグに出て、〈千駄木倶楽部〉へ。日経流通新聞のAさんに、「不忍ブックストリート」の取材を受ける。一箱古本市開催から2カ月近く経っているのに、まだ取材してくれる新聞があるのは、ありがたい。


取材を終わり、〈往来堂書店〉へ。6月12日銀座以来、秋葉原駅ホームの書店に寄ったのを除けば、ほぼ二週間というもの、新刊書店に足を踏み入れなかった。気になる新刊はあったのだが、寄ればかならず何冊か買ってしまうだろうから、とにかく書店の周囲に近寄らないようにしたのだった(だから、神保町もしばらく歩いてない)。で、久しぶりに書店に入ったのだが、見る本、見る本が新鮮でイイねえ。笙野頼子『徹底抗戦!文士の森 実録純文学闘争十四年史』(河出書房新社)、柳原良平『良平のわが人生』(DANVO)、『フリースタイル』創刊号、『WiLL』8月号を買う。あと数冊、買いたい本はあったが、グッとガマン。〈NOMAD〉に入り、『フリースタイル』創刊号を眺める。表紙デザイン平野甲賀さん、イラスト松本大洋。中は、対談あり、エッセイあり、コラムあり、マンガありで、コレまでの5年間、単行本を出すことで培ってきた、「フリースタイルらしさ」とでも云うべきものが、雑誌に反映されていると思う。


NOMAD〉の山田夫妻に、『チェコのマッチラベル』の校正を見せる。二人とも、とても気に入ってくれた。このマッチラベルの現物を展示する展覧会が、大阪の〈calo bookshop and cafe〉で、8月16日(火)〜9月3日(土)に開催されるコトが、つい数日前に決まったのだが、東京ではこの〈NOMAD〉で開催することになった(時期は未定)。大阪東京とも、マッチラベルを見せるのにふさわしいスペースが決まって、ウレシイ。あとから旬公が来たので、これも10日ぶりぐらいの〈古書ほうろう〉に寄る。ココでも変化が目に付いた。マンガコーナーを絞り、文庫の並べ方もかなり変えていた。

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2005-06-24 目玉がとろける

昨夜もムシムシしてたなあ。4時ごろに寝たのだが、蚊にさされたらしく、かゆくて7時には眼が覚めてしまう。洗濯したり、フロに入ったりして、時間をつぶす。10時過ぎに牛イチロー先生から「到着しました」と電話。道灌山通りで車に乗り込む。今日は、こないだの本の引取りなのだが、イチローくんの好意で、まず仕事場に置いてある荷物をこの車で持ってくるコトになっている。


市ヶ谷仕事場に着いて、入口に積んであった段ボール箱10個と、カラーボックスなどを積み込む。コレで仕事場には私物がホトンドなくなった。西日暮里に戻り、この荷物を上にあげる。ベランダの倉庫に入れる箱と、部屋に持ち込む箱を分ける。その合間に、イチローくんは売る本を運び出す。持ち込む荷物と持ち出す本、両方ともかなりの量だったと思うが、30分ほどでカタがつく。ダンボール箱を持ち上げたり下ろしたりで、腰が痛くなってきた。近くの焼肉屋で昼飯を食べ、立石に戻るイチローくんと別れる。ありがとう、牛センセ。


この5日間、目の前にずっとあった本の山が消え、ホッとする。もし見てしまうと、「売るのはやめよう」などと思うんじゃないかと、なるべく眼をそちらに向けないように生活していたので。イチローくんとセドローくんは、「引き取りに行ったら、本が抜かれててヒモがゆるんでるんじゃないの」と云いあっていたそうだが、意志の力で耐えました。空いたスペースに足を投げ出し、ゴロゴロする。一休みしたあと、日暮里図書館に延滞していた本を返しに行く。


4時過ぎに、旬公から「いま、成田の到着ロビーに出た」と電話がある。心配しはじめると妄想が止まらないヘキがあるので、旬公が飛行機に乗ってる間はいつも不安なのだ。今回はアメリカ国内も含め6回も乗るというので、飛行機が着陸に失敗したり空中爆発する映画を思い浮かべてタイヘンだったのだ。6時近く、旬公が大荷物で帰ってくる。飛行機の中で睡眠薬を飲んだとかで、ふらふらしてるし少しラリっていた。スグにヨコになって眠りはじめたので、つられてぼくも眠る。気がつけば9時半。アメリカ料理は何から何までマズかったというので、〈千尋〉でうまい晩飯を。


12時前には旬公は寝てしまう。ぼくも《タモリ倶楽部》を観たあと、眠る。暑くて、途中何度か眼を覚ましたが、起きたのは朝11時だった。久しぶりによく眠って、目玉がとろけた。

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2005-06-23 兄弟、腰が痛い!

kawasusu2005-06-23

仕事場で、パソコンのデータを整理してたら、こんな写真を発見したので、アップします。今年1月の「BOOKMANの会」でのエンテツさんとセドローくん。発表者の塩山芳明さんが持参した、エロ漫画原稿をぐふぐふ喜びながら、眺めています。


今日も仕事場で諸々の整理。本や資料の箱詰めはほぼ終わり、入口のトコロに積み上げる。ホントはこの際に手紙写真を整理しておきたかったのだが、やっぱり詰め込むだけで精一杯。ウチに持ってきてから、少しずつ片付けるしかないな。昼飯のあと、今度はパソコンのデータを整理。デスクトップサーバー上にあるデータを、新しいフォルダに移す。それからシステム担当O氏に頼んで、買ってきた外付けハードディスクに移してもらう。途中、いくつかのトラブルがあるが、解決して(もらって)、7時前に一通りの移行が終わる。


秋葉原駅のホームの〈ブックガーデン〉で、『映画秘宝』8月号と、野中英次『魁!!クロマティ高校』第13巻(講談社)を買う。土地柄を反映して、この本屋にはオタク系の新刊が充実。そのあとウチに帰り、今度はこっちの整理を。明日は資源ゴミの日なので、雑誌新聞などを縛っていく。そのあと、倉庫の中にあるダンボール5箱分の古書目録を縛る。一年分保存しておいたら、ナニかに使えるかなと思って取っておいたのだが、スゴイ量だから捨てるしかない。倉庫の空いたスペースには、明日、仕事からの荷物が入るコトになっている。


片付けをしながら、《クリムゾン・リバー2》を観る。コトバに詰まるほどのつまらなさ。ストーリーも演出も演技も、何もかも陳腐。それに較べたら(較べるのもヘンだが)、次に観た《たまもの》(2004、いまおかしんじ監督)は十倍オモシロかった。まったく喋らない女の子林由美香が演じる。もともとピンク映画として公開され、原題は「熟女・発情 タマしゃぶり」だった。「熟女」はカワイソすぎるぞ。林由美香ボーリング場で働いているので、「タマしゃぶり」あるいは「たまもの」なのだ。後者のタイトルが、神蔵美子の同題の写真集インスパイアされたのかどうかが、気になるところ。そのあと、増村保造監督巨人玩具》(1958)を観る。全体の描写がヒステリー過ぎるかな。


1時ぐらいまでかかって、縛り終え、外に出す。この10日間、ずっと本や荷物を動かしていたから、かなり腰に来ている。明日は、牛イチロー先生にご出陣願い、仕事場の荷物を引き取ってウチに持って帰り、代わりに、売る本を持っていってもらう。そして、午後には旬公がアメリカから帰ってくるのであった。

2005-06-22 クロネコヤマトで「顔」なのです

夕べも寝苦しく、DVDやっぱり猫が好き2005年版を観ていた。相変わらずオモシロいけど、アドリブっぽい部分が多いかなと思ったら、脚本三谷幸喜じゃなくて別のヒトだった。へえー。今朝も朝から、本の整理。だんだん床が見えてきたので、掃除機をかける。コレだけ大規模に掃除したのは、ひょっとして引っ越して以来か?


実家に送る段ボール箱4つができたので、ヤマト運輸に連絡。最近「ドライバーズ・ダイレクト」と宣伝しているので、ウェブで調べて、地域の担当ドライバー電話してみた。「あの西日暮里のカワカミス……」と云いかけたところで、相手は「ああ、カワカミさんですね。うかがいます」と。2日に1回ぐらいは配達があるし、集荷もヒンパンに頼んでいるので、すっかり覚えられてしまったようだ。それにしても、この地域にほかに「カワカミ」はいないんだろうか。そのあと、自宅に電話して荷物を送ることを告げると、「またかね」と云われるが、なんとか受け入れていただく。もとの実家(ぼくの生家)は、昨日、完全に取り壊しが終ったそうだ。この目で見てないので、まだ実感が湧きにくい。


片づけを一段落させて、『レモンクラブ』の原稿を書く。今回は、高田里惠子『グロテスクな教養』(ちくま文庫)。戦前から1980年代にいたる教養をめぐる言説の紹介が豊富。こないだ旧制高校から発展した私立学校を取材したコトもあり、旧制高校をめぐるハナシがとくにオモシロイ。しかし、ココから著者自身の見方をまとめようと思うと手こずる。まあ、はじめに教養については「何を述べても、どう語っても、すっきりしない」と宣言しちゃってるんだけど。あと、セドローくんも日記で書いてたが、あちこちに皮肉な表現があるんだけど、どれも大人しいんだよなあ。マジメな大学先生が、新書向けにがんばってクダけてみました、という感じだ。……というような感想原稿に盛り込めず。書評というより、エピソードの紹介中心で終ってしまった。


6時すぎに出て、新宿へ。〈TSUTAYA〉でビデオを返却し、〈さくらや〉でコピー用紙を買う。田端まで戻り、〈がらんす〉へ。キノコオムレツと、ハンバーグシチュー。量もしっかりあって、美味しい。DVDで井口奈己監督犬猫》(2004)を観る。中原昌也が『続・エーガ界で捧ぐ』で最も(唯一?)激賞していた作品だが、観てよかった。榎本加奈子藤田陽子が、幼なじみなのに仲の悪い関係を演じる。「一シーン一シーンが自然に演じられている」というのは、近頃の日本映画をほめるときの決まり文句なのだが、多くの場合、演技も演出も(ついでに予算も)チマチマしていることも言い訳だったりする。しかし、この映画の「自然」さは、そういったものとはかなり違う気がする。うまく云えないが。DVDに入っているメイキングを観ると、監督の意図がおぼろげに伝わってくる。鈴木惣一朗音楽もグッド(とくに、犬を飼っている家を探して歩くときにかかる曲)。かなりイイですよ、オススメ


ここ数日、DVDプレーヤーの調子が最悪。買ったDVDは普通に見られるのに、レンタルだと途中から画面にノイズが入り、最後には止まってしまうのだ。今日観た《犬猫》も同じ状態になり、何度やっても復旧しない。しかたなく、途中からパソコンDVDで観る。眼が疲れるし、やっぱりある程度の大きさの画面で見たいよなあ。

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2005-06-21 カウンター嫌い

すっきりしない目覚め。暑いし、窓開けたら蚊が入ってくるしで、今年初めてエアコンを付けた。午前中、仕事場へ。まだまだ整理が終らない。合い間をぬって、遅れていた『進学レーダー』の原稿を書く。


6時過ぎに出て、有楽町線有楽町へ。地下から〈ビックカメラ〉に入り、外付けハードディスクを買う。確認すべき仕様メモしてきたが、それでも、欲しいのにたどり着くのに時間がかかった。いつも書くコトだけど、コンピュータ周りの機器を買うときに、ワクワクしたことは一度もナイなあ。


日暮里で降りて、〈千尋〉に行く。一人で入るのは珍しいので、「奥さんはどうしたんですか?」と訊かれる。生ビール、ホタテとアスパラ炒め。この店、魚はウマイし、酒も焼酎も充実しているし、ご飯ものもあるし、客をほっといてくれるしと、云うことのナイのだが、カウンターに座るのは苦手だ。ココに座っている常連っぽいヒトたちの会話を聴かされるのが、なんか苦痛なのである。今日も夫婦と女性が、「うまいもの」談義をしていた。三ノ輪南千住の飲み屋では、カウンターに座っても、隣の会話が気になったコトがないのだが。鮭とタラコお茶漬けを食べて、とっとと出る。


ビデオ屋に寄ると、《戦国自衛隊》(1979)のDVDがあった。新作をやるというので、なんとなく観たくなっていたのだが、いままで貸し出し中だったのだ。借りてかえって、さっそく観る。冒頭のシーンから、タイムスリップの途中にタイトルが入るという、SF映画史上例を見ない演出。そのあとも、異常事態なのに、ワリとみんなあっさりタイムスリップという説明を受け入れる。自衛隊千葉真一戦国武将夏八木勲がフンドシ姿で語り合うシーンは、ステキすぎる。さらに、「歴史に介入して天下を取ってしまえば、タイムスリップが起こって元の時代に戻れる」という超ゴーインな展開(原作も同様だが、もうちょっと理屈付けがあったような……)。百姓娘と自衛隊員のあいびきという、《七人の侍》以降の伝統を汲んだ(?)シーンもある。武田信玄と戦う場面では、正々堂々の一対一の勝負なのに、無情にもピストルでケリをつける。すべてがツッコミどころ満載で、でも、オモシロイ。2時間以上あったけど、一気に観た。角川映画は当時は「子どもだまし」というとらえ方をされていたが、いまから見ると、いかにバカバカしいストーリーでも、カネとスタッフが投入されているというだけで、ちゃんと「映画」になっているのだ。


昨日のことだが、西村義孝さんから、『マイクック』という雑誌1968年9月号が届いた。この号に、池田文痴菴が「明治百年・洋菓子のあゆみ」という文章を書いているのだ。コレが知らなかった、感謝! ほかに、ミリオン出版のYさんから、木村聡『消えた赤線放浪記』(本体1700円)を送られる。表紙と口絵に引き込まれる。装幀は中山銀士。今日は平凡社から『原弘 デザインの世紀』(本体2800円)が届く。原弘がほうぼうに書いた文章を年代順に並べた、新編集の論集。なんと、作品集以外には本書がはじめての著作なのだという。原だけではなく、同時代の多くのデザインの図版が豊富に引用されている。コレは手元に置いて、活用したい。


今日の「ウラゲツ・ブログ」(http://urag.exblog.jp/)で、図書館流通センターTRCサイトの「ブックポータル」(http://www.trc.co.jp/trc-japa/)が8月半ばで終了するコトに触れている。ぼくも2ヵ月ぐらい前にこの知らせを読んで、ショックを受けていた。毎日6時ごろに更新される「今日の新刊」を、だいたい欠かさず見て、地味な版元の新刊の発売を知っていたからだ。この「今日の新刊」は、オンライン書店bk1」に引き継がれるらしいが、ウラゲツさんがおっしゃるとおり、いまのところ、同サイトの新刊情報はとても使えない。「ウラゲツ・ブログ」では、ほかにも「ブックポータル」中止にともなう問題点を指摘している。

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2005-06-20 「宅買い」ふたたび

昨夜も蒸し暑く、眠れずに、ビデオハワード・ホークス監督バーバリー・コースト》(1935、米)、プレストン・スタージェス監督サリヴァンの旅》(1942、米)を観る。《サリヴァンの旅》は、金持ちが気まぐれで貧困の世界を見聞するというよくあるハナシを、前半で明るく、後半でディープに見せる。当然、後半がオモシロイ。


10時過ぎに起きて、本の整理。だんだん隠された領域が見えてきた。この先、ナニかに使えそうもない貼込帖や洋雑誌などは、思い切って処分する。午後までやったら、疲れてしまい、しばらく眠る。締め切りの原稿があったのだが、とても手がつけられなかった。あと、アテネ・フランセ中平康映画も観たかったが、断念。その後も、チョコチョコと片づけて、最終的に550冊ぐらいにはなったか。


7時半に、セドローくんと牛イチローくんが登場。イチローくんは、美術館の図録や映画歴史ムックに熱狂。さっそく仕分けにかかっていた。ぼくがいると邪魔なので、奥でもう少し整理をする。そしたら、また数十冊処分したい本が出てきた。2時間ほどで、仕分けを終え、縛った山が積み上がった。ぼくが漫然と積み上げたときよりも、スペースが有効に使われている。さすがはプロだ。今日はこのままにしておいて、金曜日に取りにきてもらうことに。


今日は前回売った分の支払いがある。15万近くの売上で、ふたりの手数料と事務処理料を差し引き、さらに、今日行けなかった新宿展で注文していた本の代金を支払って、9万4000円ほどが手元に残った。新宿展で買ったのは、花森安治装丁川奈美智子『こんな日こんなとき』(現代社、1958)と、横田順彌日本SFこてん古典』全3巻(集英社文庫)。前者はけっこう珍しい。後者は、1巻は単行本で、2、3巻は文庫本というヘンな持ちかたをしていた。


3人で西日暮里駅近くのスペイン料理屋〈アルハムブラ〉へ。ココはステージがあって、フラメンコショーをやってたり、妙に薄暗かったりする。今日は音楽もヘンで、スペイン料理なのに、ケミカル・ブラザーズとかがかかっていた。ただ料理はうまく、サングリアを飲みながら、タコのカルパッチョやパエリヤを食べる。


11時にお開きになり、ウチに帰る。眠いのだけど、なかなか眠れない。仕方がないので、けもの道で発見された、『芥川賞直木賞のとり方』という本を読む。著者は百々(どど)由紀男という人で、ベレー帽をかぶった写真がアヤシイ。版元も出版館ブック・クラブという聞いたことのないところ。内容もすごい。冒頭にマンガがあるのだが、受賞したら、都内の億ションに住んで、美人秘書をはべらせ、大ベストセラーになって、銀座クラブで飲み、三流出版社との付き合いは切って捨てる、という、まさに世間が思うところのステレオタイプそのまんま。本文ではコレをひっくり返してくれるのかな、と思ったが、ほぼこのママを文章で書いているだけなので呆れる。だいたい、作家と思えないほど、文章がヒドいぞ。


受賞作品は単行本となり、全国津々浦々、読者が買い求め、図書館に並び、次々と執筆、講演、テレビ出演の依頼が舞い込み、まさに

〈富と名誉を掌中に! 〉

収めることになる。(略)その他有形無形のメリットがあり、駄作を書いても、

〈芥川(直木)賞受賞作家−−〉

というレッテルは生涯消えることはない。


池波正太郎を真似たのか、意味のない改行をした上に、〈 〉でくくり、ビックリマークで強調(そのあと意味なく1字アケ)。つながってない文章も多い。明らかな事実誤認もある。文中に出てくるのも、いくつかを除くと、戦前のハナシばかりで、現代性がない。芥川賞は「主人公が作者の分身で、ささやかな“私”の日常生活を語っていてもいい」とは、イツのハナシだ、そりゃ。しかも、芥川賞直木賞を受賞してない作家作家に非ず、と云いながら、本人は履歴で堂々と「作家」を名乗ってるのはギャグのつもりか。


そもそも、芥川賞にしろ直木賞にしろ、公募制じゃないので、素人に「とり方」が云々できるものじゃないだろう。だから、この本でも結局、新人文学賞の対策(それも「文字は綺麗に書け」程度の)でしかない。最後に、もっとも笑えた部分を。


厚手の大学ノートを、文具店で買い込み、表紙に

〈創作ノート・1〉

としておくと、大作家気分になれるから不思議だ。将来自分が芥川・直木賞を取り有名人となって、さらに芸術院選賞から文化勲章の栄誉に輝くとする。そのとき自分の作品を早稲田慶応文学部学生が、卒論テーマとするかも知れない。となると近代文学館に寄贈されたこの「創作ノート」は、貴重な文献として文学史家に評価されるかも知れぬ……

なんて想像するのは楽しいものである。実際は引っ越すとき子供や孫が、チリ紙交換に出してしまうかも知れないが、作家を志す以上、これくらい気分を雄大にしたい。


「雄大」というよりは、ただの誇大妄想だと思うが、「実際は」と書いてしまう現実感が、泣かせる。こんな本読んで、ホントに作家を志すヒトがいたとしたら(メッタにいないと思うけど)、罪深いと思う。3時過ぎてから、ようやく眠くなった。

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2005-06-19 500冊をご用意

この数日、ずっと本の整理をしている。売る本は、ふだん寝起きする部屋に積んである。旬公の留守で、わずかにできたスペースを、本の山が占領しているのだ。あまり高く積むと、布団を出したり電話を取ったりするのにジャマなので、単行本なら25冊、文庫本なら40冊ぐらいが限度である。だからさほど高くはないのだが、その山が20ぐらいあるのだから、ヨコで寝ると圧迫感があり、あまり安眠できない。


今日も早めに眼が覚めて、本の整理を。あっちを下ろしたり、こっちを引き出したりしていると、窓を全開にしても汗が噴き出す。昼飯のときと、買い物に出たとき以外は、本を動かしていた。売る本は、そうだな、文庫美術館のカタログなどを合わせて500冊ぐらいになったろうか。


奥のほうから、買ったまま忘れていたり、必要なときに出てこなかった本や雑誌が、続々と出てくる。現在ライターとして活躍している、木村衣有子さんのミニコミ『marie madeleine』1、3、4号(2号は見つからず)、近藤正高さんの『ZAMDA』創刊号とか、ゲイミニコミ『KICK OUT』、いまはサイズが変わっているはずの『貧乏人新聞』(法制の貧乏くささを守る会)10号とか。大阪で出ていたマンガ同人誌『あっぷる・こあ』創刊号(1972年)も見つかる。ココに、先日のJR脱線事故で亡くなった雑賀陽平さんが「白い人」「笑耗」という二本のマンガを寄稿している。


ほかにも、かなりの量のミニコミがあったが、半分ぐらいは捨てるコトにした。実家にもミニコミだけで数箱分あるし、古本としても値がつくものではない。よっぽど貴重なものは、一冊ずつ「古書モクロー」で売るとして、あとはエイヤッと資源ゴミの箱に入れる。コレらの中にも50年ぐらい経ったら、貴重な資料になるモノはきっとあるのだろうが……。大量の古本や紙モノをのちの世に継承するためには、十分な空きスペースがあり、その中で何世代か「死蔵」されるぐらいの余裕があるコトが必要だ。しかし、いまのぼくにはそれらを持ちきれなくなってしまった。残念なことである。


今日は実家にも4箱、宅急便で送った。その中には、二年間ぐらいかけて集めた古山高麗雄の単行本が二十数冊入っている。数冊を除いてはだいたい集まったので、これからゆっくり読もうと思っていたのだが、スペース捻出のため泣く泣く送った。古山の本で手元に残したのは、数冊の随筆集のみである。


先月は休載してしまったメルマガ早稲田古本村通信」の原稿を書いて、送る。そのあと、晩飯(豚コマとコンニャク炒め)をつくって食べながら、テレビ映画《グラスハウス》(2001、米)を観る。まあ、そこそこ。そのあとも、隠された(というか前に本やモノが置かれていて隠されてしまった)棚の探索を続ける。

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2005-06-18 往生際のダンス

昨夜はビデオをもう一本、クリント・イーストウッドハートブレイク・リッジ 勝利の戦場》(1987)を観た。古参の鬼軍曹がやる気のない海兵隊の連中を仕込むという、イーストウッドお得意の「若僧しごき」ストーリー。とてもオモシロかったけど、ラストの戦闘シーンはなくてもヨカッタのでは。


今日も朝9時から本の整理を開始。ようやく仕事部屋の床が見えてきた。引っ越して以来、この床の全体が見えたのは、わずかな間だけだった。何度片付けても、いつの間にか本が堆積してしまう。この繰り返しだ。床にも置けなくなった本は縛って、ベランダの倉庫に放り込んでいた。今日はコレも引っ張り出して、売る本と残す本を選別する。いったん売るほうに分けても、目次を眺めて興味を惹かれると、残すほうに回してしまう。あっちに置いたり、こっちに運んだりと、一冊の本を持ち歩いている。往生際が悪いなァ。


12時に自転車で〈ときわ食堂〉に行き、小ビールカレーライス本駒込図書館で、高田里惠子文学部をめぐる病い』(松籟社)を借りてくる。この本は出たときに買っていたのだが、読むに至らず、そのままドコかに消えてしまった。新刊の『グロテスクな教養』の書評を書くために、やっぱり読んでおきたくなり、借りた次第。片付けしながら、マイケル・ケイン主演《国際諜報局》(1964)を観る。つ、つまらん。


3時半に出て、千駄木へ。駅の出口で松井貴子さんと待ち合わせ。今日は「サンパン」で連載している小沢信男さんの聞き書きの収録なのだ。松井さんにはいつもテープ起こしをお願いしている。今日は、『現代芸術』(記録芸術の会)と『うえの』(上野のれん会)について。一見、まったく関連のなさそうな二つの雑誌だが、意外なつながりがあったのだ。ビールを飲みながら3時間聞き、終わったあとも、泡盛を飲んで、8時ごろ辞去する。泡盛が回ったか、ウチに帰ってから寝てしまった。オレゴンに滞在中の旬公からメールが。


モクローくんの写真は好評でした。というのも、「うちの夫は太ったプレイリードッグに似ている」と言ってたため。一番似ているのはカワウソだとも。ここにはたくさんプレイリードッグがいるんだよ。

THATS MY HUSBAND!! といったらめちゃめちゃ受けました。なぜか。モクローくんの絵も受けました。

そしてここのお父さんがまたすごい太ってるのよ。超かわいい。ばしばし写真とりました。

レストランもデブばかりで、MY FATMAN COLLECTIONといって こっそり写真を撮ろうとしたらまた受けて、いろいろ協力してくれました


ナニをやってるんだか……。すっかり映画熱がぶり返し、クリント・イーストウッド監督ピンクキャデラック》(1989)。一度観たハズだが、まるっきり憶えていない。冒頭にトレーラー・ハウスが出てくる。長いのだが、ハナシに盛り上がりがなく、観ていて疲れた。さて寝るか。明日も一日、本の整理です。

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2005-06-17 奥成達のハナシを聴け!

11時に仕事場へ。葉山の渡邊裕之さん(http://d.hatena.ne.jp/hi-ro/)が聞き手になって、奥成達さんと本について喋るというネットラジオ「nusic books」を聴く。第一回のテーマ日記本。奥成さんの友人の吉田仁『葉山日記』(かまくら春秋社)についてのハナシがメイン。この日記には葉山逗子鎌倉の飲み屋やバー、有名無名の人名が多く出てくるが、それらを奥成さんが解説してくれる。これを聴くと、葉山に住むのも楽しそうだと思うけど、ヒト付き合いが濃密になりそうでちょっと躊躇する。


奥成さんは、他に殿山泰司『JAMJAM日記』(ちくま文庫)、小林信彦1960年代日記』(ちくま文庫内堀弘石神井書林日録』(晶文社)を好きな日記本として挙げていた。もっとも、「取るのがめんどくさいので」という理由で、本棚の高いところにある本は除いている。奥成さんの自宅で収録しているので、そういうナマな雰囲気も楽しめる。他にも、1999年から2000年にまたがる2カ月の日記を、有名無名にかかわらず数百人に書いてもらいそれを本にするというアイデアマガジンハウスに提案したが蹴られたとか、主宰する詩誌『gui(ギ)』は「guitar」の「tar」を取って付けたとか、山下洋輔の文章はどれも日記的だとか、初耳&なるほどのハナシがたくさんある。奥成さんと渡邊さんは「若いヒトのあいだで、コレクターマニアの生態の描かれた日記本を楽しむ読者が増えている」と話していたが、奥成さん自身も、1960年代から多くの才能ある変わり者とつき合ってきた。彼らと直接出会っているという経験と、それを裏付ける記憶力を、両方持っている(この辺のコトは、ぼくが準備している書き下ろし本に、インタビューを元にまとめるツモリだ)。


仕事しながら聴こうと思っていたのだが、つい聴き入ってしまって、1時間仕事にならなかった。途中で、関島岳郎らのユニット「OKIDOKI」(一昨日〈円盤〉にCDがあったが、カネが足りなくて買えなかった)の演奏がジングルみたいに挟まるのもイイ。本好きならきっと共感することが多い番組だと思うので、一聴をオススメします(聴きたい方は上の渡邊さんのブログからどうぞ)。


昼飯のあと、印刷会社から届いた『チェコのマッチラベル』の表紙や帯の色校を見る。ちょっと地味な気もするが、ナカに150ページもカラーが入っているから、かえってイイかも。もうすぐチラシもできるそうなので、置いてくださる書店があればご連絡ください。お送りします。


いままで使っていたメールを変更するので、そのやりかたをシステム担当のOくんに相談する。その設定は30分ほどで終わったのだが、そのあと、パソコンに溜まったデータを自分用に保管するやりかたを訊いたら、えらい時間を食ってしまった。もともと外付けのハードディスクを買うつもりでいたら、もう一人のシステム担当BくんにiPODをススメられた。コレで決まりと思って、Oくんに伝えたら、なんと「VAIOiPODは相性がワルイんですよ」と云われる。あとUSBは2.0じゃないと転送スピードが遅くて使い物にならないとか。あとで調べたら、ぼくのマシン2002年発売でUSB2.0ではなかった。あとDVD-Rに焼くという案も出たが、これもうまくないというコトに。


説明を聞いているウチに、だんだんイライラしてきて、その辺のモノを蹴り飛ばしたくなる。いつものことなのだが、パソコンに関して何か設定を変えたり、新しい機器をつなごうとするたびに、かならず障壁がある。「ハードAとハードBが対応しています」と書いてあったとしても、それは、ハードAについて条件Cが満たされているか、ハードBについて条件D が満たされていること(しばしばその両方)が前提なのだ。そんなの「対応してる」って云えるのか。Oくんに悪気はなく、なぜできないのかを懇切丁寧に説明してくれるのだが、なぜだか目がウレシそうに見えるのは気のせいか。けっきょく、最初に戻って、外付けハードディスクを買うコトになった。今後、自宅に仕事することになるので、そのうちプリンタも買わなきゃならんのだが、そのときには同じような騒ぎになるのだろうか。あー、もう。書かなければならない原稿があったのだが、まったく取り掛かれず。


ウチに帰って、今度はこっちのマシンメール設定を変更する。全然アクセスできないので焦ったが、いろいろやってるウチになぜかつながる。こうやってできる・できないの理由を理解しないままだから、次に同じ事態に遭遇しても対応できないのだ、というコトはよく判ってるんだけどねえ。そういうワケ、メールアドレスを新しいのに変えました(ヘッダを参照)。いままでのアドレスでも8月末までは受け取れるようです。ヨロシク。


ムダに疲れた気がして、ビデオで《ロスト・イン・ラ・マンチャ》(2001、米=英)を観る。こういう気分にピッタリというべきか、よりダークにさせるというべきか。なにしろコレは、「完成されなかった映画の記録」なのだから。テリー・ギリアム監督が、ドン・キホーテ映画化をもくろみ、ようやく撮影に入るが、資金不足、大雨、プロデューサーの横槍、主役の急病などで中断される。コッポラのドキュメンタリーハート・オブ・ダークネス》は完成して大ヒットしたからよかったが、ギリアムの映画はそのままオクラ入りになった。なんともやりきれない、胃が痛くなるような(そこがオモシロイ)映画だった。余談だが、撮影現場で、ギリアム監督がなぜか佐渡の「鼓童」のTシャツ(しかも二種類も)を着てたのが、笑えた。そのあと、もう一本、《D.O.A 死へのカウントダウン》というのを観るが、まったくノレなかった。晩飯のうどんをつくりながら観たセイだろうか。


そうだ、昨日、書き落としたことひとつ。新宿西口を歩いていたら、地下広場で古本市をやっていた。神奈川組合主催らしい。時間がないので10分だけ見たが、〈古書自然林〉の出品で、『にっぽんの喜劇映画PART1 前田陽一篇』(映画書房)という本が眼にとまった。前田陽一映画についての評論、本人のエッセイ前田映画へのメッセージ田中小実昌も)、《にっぽんパラダイス》のシナリオなどで構成されている。こんな本、知らなかった。しかも、オビは小林信彦で、前田陽一サイン入りとくれば、2000円なら安い。手持ちが少なかったが、小銭まで動員して買った。そして、いま気づいたのだが、表紙のイラストデザイン橋本治の手になるものであった! ちょっとウレシイ買い物だった。

2005-06-16 雨の日は〈なってるハウス〉へ

午前中、「書評のメルマガ」を編集して発行する。荻原魚雷さんの「全著快読 古山高麗雄を読む」は今回で完結。一冊にまとめたいので、版元募集中です。BGMは、昨日〈円盤〉で買ったラブジョイ[かけがえのないひととき]。このバンドBIKKEふちがみとふなとの渕上純子のデュオJBがヨカッタので、買ってみたが、かなりイイ。JBでやった「at home」も入っている。コレは愛聴盤になるかもなァ。そのあと、宅急便で届いたビジュアル本の1色ページの初校を見る。メルマガで告知したので、コチラにも転載。皆さん、よろしく。とてもキレイな本になりました。


ピエ・ブックスから、南陀楼綾繁編著『チェコマッチラベル』という本が出ます。社会主義体制下の1950〜60年代に、チェコスロヴァキアで製造されたマッチラベル800点弱を、すべてカラーで収録しています。プラハコレクターの所有していたマッチラベル・コレクションを、南陀楼が譲り受けたものがベースになっています。どのラベルも、シンプルな色使いながら、豊富なアイデアにあふれた魅力的なデザインです。

また、当時発行されたマッチラベル蒐集のための情報誌や小冊子から、興味深い記事を抜粋して翻訳したり、チェコ最大のマッチ会社SOLOがあり、「マッチの街」として知られるスシツェの年表を掲載したりと、1色ページも充実しています。

日本初ばかりか世界でも初の、チェコマッチラベルの全貌を明らかにした本です。ぜひ手にとってみてください。書店さんも置いてね!

A5サイズ、192ページ(モノクロ48ページ)

本体2200円【「書評のメルマガ」では1900円でしたが、マチガイでした。すいません。道理で安いと思ったんだよなー。でもコレでも安いです。】

2005年7月中旬発売

http://www.piebooks.com/


1時ごろに出て、雨の中を新宿へB社の編集部で打ち合わせ。人物ルポのハナシはペンディングとなり、別のテーマを書くコトに。うーん、ままならんなあ。東口に出て、〈TSUTAYA〉でビデオを何本か借りる。この分までは半額セールだった。〈ビックカメラ〉で、データ保存用のiPODを見てみるが、買うには至らず。山手線西日暮里に帰る。


長いワリにいまいち実りの少ない打ち合わせだったせいか、ウチに帰ってからドッと疲れが出る。〈なってるハウス〉にライブを見に行くツモリだったが、「雨降ってるし、今日はイイや!」とヨコになる。そこに、エンテツさんから電話で、「奥さんが留守なら、一緒に飲まない?」とのお誘い。そりゃイイですねえと、こちらから〈なってるハウス〉でどうですか? と提案した。1時間ほどで雑用を片付け、バスに乗って西浅草三丁目で降り、5分ほど歩いて、〈なってるハウス〉へ。客は最初2人、あとで5人ぐらいに。


今日は、渋谷毅のソロだと思っていたが、ゲストに平田王子さんというボーカルギター女性が出た。2セットあり、どちらも渋谷さんのソロで数曲、そのあと平田さんと二人でボサノバをという構成。リズミカルギターポルトガル語(?)のボーカルに、ポロンポロンというピアノの音が絡む。ほわーんと心地良くなり、何度も眠りに誘われた。休憩を挟んだので、終ったら11時になっていた。鶯谷まで歩き、西日暮里でエンテツさんと別れる。


ウチに帰り、ロバート・アルドリッチ監督《合衆国最後の日》(1977、米)を観る。2時間20分もあるが、うまくつくってあるので長さは感じない。でも、最後はかなり拍子抜け。さて、寝るか。

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2005-06-15 メルマガやら映画やらライブやら

朝からウチで、「本のメルマガ」連載「全点報告 この店で買った本」の最終回を書く。今回は買った本のリストはなしで、これまでの連載のまとめ。ぜんぶのプリントアウトは300枚近くもあり、一通り見返すだけでも2時間ぐらいかかった。もう配信されたので、本の冊数、金額の部分だけ、転載する。


 計算機片手に、買った本(月刊以上の雑誌コミックを含む)の冊数を計算してみた。

2000年(4月以降)は、589冊。

2001年は、720冊。

2002年は、663冊。

2003年は、585冊。

2004年は、585冊(ナゼか前年と同じ冊数だ)。

2005年(4月まで)は、164冊。

その合計は、3306冊となった。毎月の平均は54冊だった。

 まあ、やっぱり尋常な買い方じゃナイね。いちばん多かったのは、2000年12月で98冊も買っている。

 金額の合計も出そうと思ったけど、ものすごく時間がかかるのと、足していると「このカネを貯金していれば……」と暗くなること必定なので、数回分の合計を平均してみた。すると、7万円だった。

 念のため云っておくと、このナカには、資料として購入(経費で落ちる)した本も含まれる。だいたい月に3、4冊、1万円ぐらいはそうだろう。だから、身銭で買ったのは毎月50冊、6万円というアタリか。


原稿には書かなかったけど、コレだけたくさん買った本の半分以上は、すでに手元にない。その行方は、読んですぐ売ったもの、読まずに処分したもの、実家に送ったものに分かれるが、いずれもウチを通過してどこかに流れていった。むなしい気もするが、一瞬でも手元にとどめたことの満足感もある。


昼飯は焼きそばビデオサミュエル・フラーホワイト・ドッグ 魔犬》(1981、米)を見る。こりゃ、傑作。差別主義者に黒人を襲うよう育てられた犬(「ホワイト・ドッグ」と呼ばれる)が主人公なのだが、こいつがヒトを襲うときの様子はただごとじゃない。迫真でありながら、人を傷つけない「演技」として仕込むためには、いったいどんな過程を経るのか。それを考えると、ホワイト・ドッグを必死で再教育しようとする黒人トレーナーが、この映画のつくられかたにダブって見える。ラストの救いのなさもいい。


7時前に出て、高円寺へ。電車のナカで、高田里惠子『グロテスクな教養』(ちくま新書)を読み進む。この本に出てくる原口統三『二十歳のエチュード』が、ちょうど同じ頃に、ちくま文庫で出ているので、この際読んでおこうと、〈高円寺文庫センター〉で買う。この本の初版は、1947年前田出版社から出ている。編集者は、のちに書肆ユリイカを興す伊達得夫である。


〈円盤〉に行く。今日は桂牧さんのワンマンライブ。ドアを開けると、桂さんとオーナーの田口さんしかいなかった。これじゃ、演るほうも見るほうもワンマンだ。そのあと、『ぐるり』の五十嵐さんがやってくる。一緒にHさんも。元気でやっているそうで、なにより。ライブは10曲ぐらいだったか。いつもの曲もイイけど、キンクスの「ウォータールー・サンセット」とブライアン・ウィルソンの「ウィンド・チャイム(風鈴)」を日本語の歌詞でカバーしたのがヨカッタ。リクエストでは昔つくった曲も披露。アルバム[牧]では植物的な世界を描いたダウナーな感じだったが、今日やったみたいにアッパーな、ロックな曲もどんどんやってほしい。


終ってから、4人で南口の〈大将〉へ。高田渡さんのハナシやmixiのコトなど、あれこれ。こないだ〈コクテイル書房〉で荻原魚雷さんが、ぼくの『ぐるり』の連載を褒めてくれていたという。五十嵐さん一人がいうなら信用できない(編集者は持ち上げるのが仕事ですから)が、その場に同席していたというHさんも証言していたので、ホントだろう。音楽について書くのは初めてで、どう読まれているか気になっていたので、魚雷さんの言は素直にウレシイし、はげみになる。


もっと飲んでいたかったが、12時に出て、ウチに帰る。アメリカに行った旬公から連絡がなく、心配していたが、日記http://d.hatena.ne.jp/halohalo7676/)を見ると、無事にホームステイ先に着いたようだ。よかった。なんか日本語入力できないらしいので、どなたか助けてあげてください(他力本願)。漫画屋から『コミックMate』8月号が届く。次号から隔月刊になるそうだ。塩山さんの「嫌われ者の記」で、セドローくんのコトが。「楽しい兄ちゃん。近く単行本が何冊も出ると。ひょっとして、南陀楼綾繁より売れっコに?(両名はホモ的友情で結ばれてるが、ケンカ別れする際は、古本をめぐる、ほんの数百円単位のセコネタで頼む)」と。もうすでに、あっちの方が売れっコですヨ。「ホモ的友情」って体型が似てるだけで、ソコまで云うか!


そのあと、ホモ映画……ではなく、1970年代末から80年代にかけてのポルノ映画産業を舞台に、巨根の少年が活躍するポール・トーマス・アンダーソン監督《ブギーナイツ》(1997、米)を観る。オモシロイとは聞いていたが、キャストも映像も最高にいい。馬鹿馬鹿しくて、やがて哀しくなりにけり、という気分がたっぷり。DVDで観ていたのだが、途中で映像が乱れ始める。安いハードを買ったセイか、レンタルだとときどきこうなるのだ。こんなにオモシロいのに途中でやめられるかと、パソコンに外付けのDVDをつないで、モニターで最後まで観る。いずれもう一度観よう。

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2005-06-14 いつでも本の整理だけを

旬公は朝8時半に出て、アメリカでの取材のために、成田空港に向かった。よって、今日から10日間は一人暮らしだ。といっても、のんびり羽を伸ばしているヒマはない。この間に、ウチの本を減らして、そこでできたスペースに、仕事場の荷物を持ってくるトコロまでやってしまわないと。


今朝の読売新聞の27面(生活情報欄)で、不忍ブックストリートの「一箱古本市」のことが出ている。「発見 本のある生活」というシリーズの1回目。当日だけでなく、終ってからも取材してくれたので、きちんとした記事にまとまっている。〈オヨヨ書林〉前での写真も載っている。それから、今日届いた『日本古書通信』でも、林哲夫さんの「憎さもにくしなつかしさ」という文章で、一箱古本市を例にとって、「ブログの力」が古本好きの付き合い方を変えたと書かれている(退屈男さんも登場!)。


仕事場に行き、データの整理。欧文組版の〈嘉瑞工房〉の高岡さんがいらっしゃる。印刷学会出版部から出た『井上嘉瑞と活版印刷』を頂戴する。「著述編」と「作品編」が一冊ずつ刊行されたのだが、高岡さんはこの二冊を納める函を自分でつくってしまったのだ。中央の紙を引き出すと、本が一緒に出てくる仕掛け。


編集部のTくんと昼飯に出る。彼の提案で、神楽坂方面に歩き、新潮社の手前にある〈kiitos cafe〉という店へ。ココは「書斎カフェ」という触れ込みで、本棚の本を読むことも、借りることができるのだ。いま置かれている本にはあまり魅力を感じなかったが。チャーシュー丼という名の「カフェめし」を食べつつ、お互いの今後の身の振り方を話す。Tくんもフリーでやっていくツモリだという。彼は大学サークル一年後輩だが、知り合いではほとんど唯一、ぼくと近い仕事をしてきている。仕事場に戻り、今度は本や書類の整理。新聞雑誌の記事は、この機会にスクラップブックに貼りたいが、やりだすと時間がかかるだろうなァ。


6時ごろ出て、ウチヘ。近くの店に、頼んでおいた名刺(河上名義を200枚、河上と南陀楼の併記を300枚)を取りに行く。今度は、ウチの本の整理をはじめる。こっちも、ミニコミフリーペーパー、チラシの類いが多いんだよねえ。一部は「古書モクロー」に回すけど、かなり捨てるコトになるだろう。今日の映画は、ビリー・ワイルダーの《深夜の告白》(1944、米)。ワイルダーの映画は、だいたい観ているツモリだが、これは初めてだった。

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2005-06-13 デジタルはめんどくさい

朝9時半に出て、新宿へ。開店直後の〈TSUTAYA〉で、今日も半額料金で3本借りる。仕事場に行き、整理をあれこれ。8年間パソコンに溜め込んだデータを、自宅のマシンで使えるようどう移すかをこないだから調べていた。ぼくは外付けハードディスクを買って、そこに移してしまうという方法を考えていたが、システム担当バスケに聞くと、「iPOD買って移せばいいよ。20ギガ入るよ」との返事が。なるほど、考えもしなかったが、iPODハードディスクとしても使えるのだね。


もうひとつ大きな問題は、やり取りしたメールだ。MacからWinへ違うメーラーを介して、データを転送するのは、けっこう難しいのだと云う。その対応策を教えてもらったが、時間かかりそう。紙のデータ(本とかコピーとか)は物理的に場所をとって困るけど、現物を見れば、要不要の判断はとりあえずできる。でも、デジタルのデータは、ファイルがそこにあっても、別の環境で使えるかどうかを、つねに考えておかねばならず、めんどくさい。デジタル化しておけば永久に残る、なんて、嘘っぱちなのだ。


その合間に、K社の新書の構成案を書く。コレで何度目になるだろうか。やっとイケそうな感じにはなった。でも、書きはじめてみたら全部ひっくり返る可能性もあるなあ。その他、連絡のメールファクスを。4時半に出て、総武線秋葉原へ。京浜東北線に乗り換えて、大森で降りる。西友に入り、〈リブロ〉に寄る。通路をムダに広く取っているようで、見た目がスカスカ。品揃えにも特徴がなかった。高田里惠子『グロテスクな教養』(ちくま新書)を買う。


その上にある〈キネカ大森〉へ。ココで、ジョニー・トー監督の《PTU》(2003、香港)を観るのだ。先月〈ユーロスペース〉で観るツモリだったが、間に合わなかった。アジア映画に力を入れているこの映画館で、一日一回だけやると知り、やってきたのだ。シネコン形式で、《PTU》をかける館は、わずか40席。客は5人以下だった。映画は……うーん。ヒマつぶしに入った梅田映画館のレイトショーで戦慄を覚えた、《ザ・ミッション非情の掟》(1999)の監督なので、大期待してみたが、思ったほどではなかった。冒頭、ヤクザがナイフで刺されたまま走り出すシーンのハッタリには笑ったが、そのあとは、複数のグループの動きがなかなか交差せず、途中で疲れてしまった。《ザ・ミッション》にも出ている太ってがさつなオヤジ(ラム・シュー)はヨカッタけどね。不完全燃焼な感情を抱いて、京浜東北線西日暮里に帰る。


〈大栄〉でビール飲んで待っていると、旬公が来る。豚のミノ焼き、牛カルビ、コブクロ焼き、豚カルビと、焼いて食べる。ウチに帰ると、ビジュアル本の直しがファクスで。オビに使うフレーズまで(しかもイキナリ)要求される。この本に関しては、じつによく働いてるよなァ、オレは。あと数日で、どうにか作業が終りそうだ。

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2005-06-12 『作家の椅子』が身に沁みる

ここ2週間ほど、図書館で借りたミステリ小説ばかり読んでいた。芦辺拓恩田陸、黒川博行、東野圭吾鯨統一郎有栖川有栖……。鯨(つまらない)と有栖川(どうも肌に合わない)以外は好きな作家だし、おもしろく読んだのだけど、もう少し腹にたまる文章が読みたいと、積んである本を見渡してみる。そして手に取ったのが、野口冨士男の『作家椅子』(作品社)だった。


この本は野口の初めてのエッセイ集で、これまで謦咳に接してきた作家の作品やエピソードを語りつつ、作家としての自己を語るというもの。一編が短いので読みやすい。十返肇和田芳恵高見順らについての文章もイイが、冒頭の「自伝抄『秋風三十年』」が素晴らしい。野口1950年に、敬愛する徳田秋声の年譜と、小説に書かれた事実との違いに気づき、自分で年譜を作り直し、さらに伝記に取り組みはじめた。決して楽ではない生活の中で、資料を集め、関係者に手紙を書き、金沢にも足を運ぶ。やっと書き始められると思ったら、腱鞘炎に罹ってしまう。1964年に書き上げ、『徳田秋聲傳』という書名で筑摩書房から出版される。そこで書ききれなかった題材をまとめて、1978年に『徳田秋聲の文学』としてやはり筑摩から出すことになっていたが、「いよいよ終わりという原稿を渡す日」に、編集者から「筑摩書房倒産しました」と聞かされる。


もう、読んでるだけで胃が痛くなる。自分が小説家であるであることに、人一倍誇りを抱いているのに、小説を書くことを棚上げして、ひとりの作家の生涯を追って、ホントに30年かけてしまうんだもの(秋声にいちおうの区切りをつけたあとは、多くの小説を書くのだが)。「我が家には『秋聲』という同居人がいた」と書いているが、誇張でもなんでもないだろう。この粘り腰は見習わねば。今後、何度でも読み返したい文章である。


昼はパスタボンゴレビアンコ。白ワインがないので赤ワインニンニクだけじゃ寂しいので、シメジを投入。まあまあか。2時に出て、有楽町へ。交通会館の〈三省堂書店〉を覗くが、何から何まで「ほどほど」に徹した店である。エレノア・コッポラ『「地獄の黙示録」撮影全記録(ノーツ)』(小学館文庫)は見つからず、四丁目交差点の〈ブックファースト〉へ。ココで見つかったが、小学館文庫の棚がわずか2段分しかないのに驚く。そういえば、あまり新聞広告も見なくなったし、もう撤退気味なのだろうか? 『本の雑誌』7月号も一緒に買う。高野ひろし「銀の輔本の旅」で、「一箱古本市」について書いてくれている。オヨヨさんは「ワイルド平井堅みたいな格好いいお兄さん。声なんかソックリですよぉ」とのこと。


歩行者天国の通りを歩き、〈木村屋〉でカレーパンを買って、道路脇に座って食べる。そのあと、今日橋のフィルムセンターに入り、開場まで並んでいると、吉田勝栄さんが通りがかった。彼も映画を観にきたという。いまやってるのは映画監督豊田四郎特集。入場してから、『作家椅子』の続きを読む。ココに出てくる豊田三郎という作家は、豊田四郎の兄弟だったような曖昧記憶があり、だから豊田四郎は谷崎・志賀・織田作と小説映画化を多く手がけたのだなと、勝手に納得していた。しかし、ウチに帰ってから、文学事典を調べたら、まったく無関係で、豊田四郎のほうが豊田三郎よりも一歳年長であった。アブナイなあ。


さて、今日観る映画は《男性飼育法》(1959)。三宅艶子の原作。森繁久彌淡島千景の夫婦の性のすれ違いを描くコメディ。とはいえ、冒頭でモリシゲが珍妙な風呂温浴と水浴の二つの浴槽があり、その間をエレベーターみたいなので自動的に移動する)に入っているシーンは笑えたが、あとはほとんど笑えず、途中で眠ってしまった。一瞬、いびきもかいてしまったかもしれない。終ってすぐ会場を出て、銀座線に乗り、御徒町で乗り換えて帰ってくる。


しばらくゴロゴロして、晩飯(惣菜のメンチカツ、ホーレンソウのおしたし、キャベツスープ)を食べながら、ビデオフリッツ・ラング《真人間》(1938)を観る。中原昌也『続・エーガ界に捧ぐ』で出てきたので、借りてきたのだが、うーん。ちょっとツラかった。口直しに、また『作家椅子』を読む。

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2005-06-11 稲垣書店が復活!

午前中、「はてな」の日記テキストを整理する。昨年の6月27日から一昨日までの三百数十日の日記を、単純に計算したら、52万字になった。あまりの分量でファイルが重いらしく、Wordで読み込むのに時間がかかってします。いままで黙っていたが、この日記右文書院から単行本として出るコトが、昨年末にはすでに決まっていた。しかし、その時点で10万字以上あるテキストを、どう再編集したらいいのか判らず、正直、手をつけかねていた。そうこうするウチに、右文書院からは、ぼくの知り合いの本の企画が次々に決まっていき、周回遅れになりつつある。一方で、日が経つということはそれだけ日記記述も増えるというコトであり、気がつけば52万字なのであった。自業自得です。


ビジュアル本の4色ページ前半部分の初校が、宅急便で到着。この部分は編集者デザイナーの手になるものなので、一読者として楽しんでしまう。キレイな本ですよ、コレは。昼は旬公と田端の〈がらんす〉へ。ハヤシライスを食べる。そのあと、印鑑名刺の店に行き、名刺印刷を頼むが、持参したCD-ROMが開かないといわれて、ガックリ。この手の店は、いまはほとんどWindowsマシンだけで仕事している。


自転車で出て、三河島駅のほうへ。〈稲垣書店〉の前を通りすぎたら、いつもは閉まっているシャッターが開いている。慌てて引き返し、店の前にいた奥さんに「やってますか」と訊くと、営業しているという。つい最近、土日の昼間だけ、店を開けるようになったそうだ。昨年、『日本古書通信』に目録が出たり、〈オヨヨ書林〉でご主人の中山信如さん(『古本屋「シネブック」漫歩』『古本屋おやじ』の著者)にお目にかかり、お体がだいぶ復調されたように感じていた。たぶん二年ぶりの店内は、相変わらず映画本と映画雑誌がギッシリ。以前は目に入らなかった、古本に関する本もけっこう数があった。文庫も中公とかちくまとかの、わりとレアな本が安く出ている。いろいろ買い込みたくなるが、グッとガマンして、田中小実昌『ぼくの初体験』(青樹社)、小林信彦対談集『映画につれてって』(キネマ旬報社)の2冊だけ買う。どっちも1000円。奥にご主人がいらっしゃる気配だったけど、今日挨拶せずに店を出る。近くなので、また来よう。


三河島不動産屋を覗く。今年は収入が激減するので、秋までにもっと安いマンションに引っ越そうと思い、ココのところ、不動産屋の貼り紙を見て回っているのだ。賃貸物件を探す嗅覚を持っている旬公(この辺で数人の住まいを見つけてあげている)によれば、やはり谷中西日暮里は高いそうだ。谷根千地域に比較的近くて、安いところといえば、三河島三ノ輪南千住あたりか。幸いその辺りは、最近ぼくがしょっちゅう足を運んでいるので土地鑑がある、という利点もある。


三ノ輪に出て、根岸図書館へ。『新潮』7月号の坪内祐三谷沢永一対談「雑書宇宙探検して」をコピーする。谷沢著『遊星群』(和泉書院)で紹介されている明治大正の雑書をめぐっての対談。ぼくはこの本の大正篇だけ買っているが、数ページ拾い読みしただけだ。この対談を読んだら、きっと本のほうも読みたくなるだろうな。三ノ輪駅前の不動産屋を2軒回り、店に入って、間取り図を何枚かもらってくる。いくつか安い物件があった。〈遠太〉でチューハイ今日カウンターは満員だった。おじさんが亡くなって、おばさんが一人でやるようになってから、定食がメニューから消えたのは残念。帰りに、最近お気に入りの仲町商店街で、今晩のおかずや野菜を買って帰ってくる。ここはナニを買っても単価が安いので、ぼくのナカの主婦的な部分が活動的になる。ウチに帰り、しばらく本を読む。晩飯は、惣菜のブリの照り焼き、コロッケ冷奴キャベツ味噌汁、そしてホーレンソウのおしたし。賑やかな食卓でイイねえ。


ビデオで《ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録》(1991、米)を観る。コッポラの映画地獄の黙示録》のドキュメンタリーで、奥さんが回していた記録フィルムがもとになっている。ヘタすると本編よりもオモシロイぞ、これは。文明の国からやってきたアメリカ人たちが、原始のアジアに入り込むにつれて、正気を失っていくという《地獄の黙示録》の構図が、そのまま撮影の現場に当てはまる。超過する予算、絶え間なく改変されるシナリオ、主役の交代(ハーヴェイ・カイテルだったが、撮影一日目で降ろされ、マーティン・シーンに)、ヤクでトリップしながら演技する役者、ゲリラ掃討と掛け持ちの空軍ヘリコプター台風。すべてが過剰で、狂っている。何度かの中断を経て、やっと最後のシーンにたどり着いたら、カーツ役のマーロン・ブランドは太ってるわ、原作は読んでないわ、というのには笑った。コッポラは何度も行き詰り、自殺を考える。「すべてが民主化されている現代で真の独裁者たりうる職業は、たぶん映画監督だけだろう」と、コッポラは云うが、こんなにツライ思いをするなら、独裁者なんてなりたくはない。


調べてみると、奥さんのエレノア・コッポラが『「地獄の黙示録」撮影全記録(ノーツ)』(小学館文庫)という本を出していた。読んでみよう。大岡昇平の『成城だより』でも、《地獄の黙示録》公開当時にあれこれ書いている(主に原作コンラッド『闇の奥』との比較)。あと、今度は完成されなかった映画ドキュメンタリーとして、テリー・ギリアムの《ロスト・イン・ラ・マンチャ》を観てみたい。

2005-06-10 「公開魂」と赤塚不二夫本

一昨日、昨日あたりに、『季刊・本とコンピュータ』最終号が関係者の手元に届き、書店にも並び始めたらしく、いろんなヒトがブログで触れたり、ぼくにメールしてくれたりしている。いちいち紹介はしませんが、ぜんぶ読んでいます。


午前中に仕事場へ。データの整理をはじめるが、なにしろ8年分も蓄積されているので、ナニを消してナニを残せばいいのか、アタマが痛い。その合間に、ビジュアル本のゲラを確認する。未着だった翻訳も3本届いたので、一気に手を入れてしまう。メールで送ると、30分後にはゲラになってファクスで送られてくる。すげえスピードだなあ。『週刊朝日』のSさんから電話原稿を依頼された。


『出版ニュース』6月中旬号の「書きたいテーマ・出したい本」の編集出版組織体アセテートの中谷礼仁さんが登場。肩書きは「建築史・素人出版運動主宰者」だ。短い字数で、アセテートの方針がはっきり打ち出されている。中谷さんは自分の出す本を「デモ本」と位置づけ、これらの本に目をつけた出版社が「プロの手さばきで永遠に残るような書籍」として出版するコトを歓迎する。その例として、『近世建築論集』(一度品切れになったが、つい先日増刷した)に収録した18、19世紀の建築技術書の原本を「大判」で「克明に復刻」することを提案している。なぜなら、


それを丹念に読み解くことで、彼らがもっていた高度な技術、国際的情報、センスが浮き彫りにされます。そして何よりも彼ら自身の研究成果に対する熱い公開魂が伝わってきて胸を打ちます。本を作るということは、公共的なものだと感じずにはおれません。


「公開魂」というのがイイではないか。そして、中谷氏はこう続ける。


またアセテートでは今後羽ばたくであろう研究者達をなるべく紹介しようとしています。ぜひともホームページを訪れ、あるいはデモ本を購入され、ご検討の一助にしていただければ望外の喜びです。


つまり、中谷さん自身も熱い「公開魂」の持ち主なのであった。そういえば、『本コ』最終号のぼくのルポで紹介した三人の出版者は、みんな「公開魂」を持っているトコロが共通している。今後のぼくは、「公開魂」あるいは「公共」としての「出版」と、ビジネスとしての「出版」の結節点を求めて、いろいろとあがくコトになるだろう。ところで、『出版ニュース』は、ニュースコラムに読みどころの多い雑誌であり、統計などのデータも使える。仕事場で定期購読していたので毎号チェックしていたのだが、今後は常備している図書館を探さねば(もしくは、結構高いけど、頑張って個人で定期購読するか……)。


5時に仕事場を出る。一日中雨が降っているし、蒸し蒸ししている。今日から梅雨に入ったそうだ。新宿三丁目で降りて、〈紀伊國屋書店〉で武居俊樹『赤塚不二夫のことを書いたのだ!!』(文藝春秋)を買う。向かいの〈TSUTAYA〉でビデオを数本借りる。こないだ来たハガキを見せると、旧作は半額で借りれた。


電車の中で、『赤塚不二夫のことを書いたのだ!!』を読みはじめると、オモシロくなり、ウチに帰っても読み続ける。赤塚不二夫の周辺にいたヒトの手記としては、昨年、長谷邦夫の『漫画に愛を叫んだ男たち』(清流出版)があるが、武居は赤塚に似てハチャメチャ、長谷はマジメで理知的と正反対なので、両書を読み比べるとおもしろい。興味深いエピソードを羅列しておく。

★98、114ページ 秋田書店編集者・壁村耐三が出てくる。このヒトが酔っ払って、完成したばかりの手塚治虫原稿を、本人の目の前で破いたというのだ。ひえー。この壁村氏は、吾妻ひでお失踪日記』(イースト・プレス)にも、大酒飲みで性格破綻編集者として出てくる。

★161ページ 長谷本にも書かれているが、『もーれつア太郎』の「ニャロメ」は、タイガー立石(好きなんです)が使っていた表現をいただいたものだ。

★186ページ あだち充と武居の関係や、フジオ・プロのチーフアシスタントだった兄のあだち勉のことは、宇都宮滋一『「ダメ!」と言われてメガヒット』(東邦出版)に詳しいのだが、こないだ処分してしまった。


ハガキで、新しい古本屋オープンの知らせが。自由が丘東京書房にいた方が独立して、6月16日から西荻窪で〈にわとり文庫〉という店を構えるそうだ(西荻窪3−17−5 電話03-3247-3054)。「古書漫画SF探偵少年少女もの、絵本イラスト(略)その他ステキbooks!」を扱うという。古本屋激戦区の西荻だが、ジャンルに特化した店は案外少ないから、おもしろいかも。年内に自家目録も出すそうだ。行ってみるか。


テキトーに晩飯をつくり、食べながら、DVDで《ザ・プロフェッショナル》(2001、米)を観る。20分ほど経って気づいたが、コレ、以前に観ていた。2回でもゼンゼン飽きない。犯罪ものとしてはさほどハデなシーンはないのだが、心理戦だけでじっくり見せてくれる。ジーン・ハックマン、ダニー・デビードらオヤジどもが最高。生意気な若僧(サム・ロックウェル)が何度もイビられると、なんだか爽快だった。

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2005-06-09 ゲラ戻し、打ち合わせ、立ち飲み、そして『薔薇族』

午前中、遅れに遅れている原稿を書く。その最中に、バイク便で某社のビジュアル本のゲラが届く。原稿を書き終わってから、一気にゲラを直し、バイク便で送ろうかとメールで尋ねると、ファクスで送ってくれという答え。A3サイズのゲラを切って、家庭用のファクス機で30枚も送るのはタイヘンなのになあ。やっと送り終わって、自転車で出かける。


〈往来堂書店〉に寄り、カレル・チャペック『こまった人たち チャペック小品集』(平凡社ライブラリー)と、『東京人』(特集「新宿が熱かった頃 1968−1972」)を買う。あと、今柊二さんから「コレが買いですよ!」とススメられていた『月刊プレイボーイ』(http://m-playboy.shueisha.co.jp/home.html)の30周年記念号を見つけた。名物の「プレイボーイ・インタビュー」の名作選、主要なカバーガールのグラビア、時代を代表する映画音楽・本のセレクション、田名網敬一坪内祐三ほかの『プレイボーイ』へのメッセージ。しかも、別冊附録として創刊号のダイジェスト・ミニチュア復刻版が付いているのだ。普段買ってないくせに、節目の号だけ買うというのは、いかにもミーハーだけど、コレは買わずにはいられない。しかも次号も、30周年記念の第二弾として、開高健特集をやるという。


自転車だから風は感じるものの、どうも蒸し暑い御徒町の〈風月堂〉で、C社のNさんと待ち合わせ。2階が満席なので、4階に行ったら、妙に高級なサロンみたいな部屋で、しかもガラ空き。ゆっくりハナシができた。懸案の書きおろし、取材は先に進めているものの、本全体の輪郭ができていない。しかし、Nさんと話しているウチに、どうやらこうつなげばイイかなという線みたいなものが、おぼろげに見えてきた。アドリブによる企画の煮詰め方というのは、メールファクスのやり取りではまずできない。直接会って、雑談から入りながら、その場で話していくのがいちばんイイ(ま、あとでひっくり返るコトもありますが)。しかし、方針は決まったものの、先は遠いなあ。


5時前にNさんと別れ、ちょっと時間があるので、御徒町ガード下立ち飲み屋〈味の笛〉に入る。何年ぶりだろう。ココは、目の前の鮮魚スーパー〈吉池〉が直営する店で、サカナもそこから運ばれてくる。だから、刺身が300円だったり、塩焼きが200円だったりと破格に安いのだ。しかも、4時開店(2階は3時)だよ。当然、今日も憩いを求めておじさんたちが集っていた。チューハイ刺身(ホタテとマグロ)、厚揚げで700円だった。


そこから、昭和通りに出て、東上野へ。『月刊薔薇族』(http://www.barazoku.jp/)編集部のあるメディア・ソフトに行こうとするが、番地をたどっても、それらしき表示はない。アセって、編集部に電話すると、編集部は同じ東上野だが違う場所にあるとのこと。急いで上野方向に戻り、ビルの9階にある『薔薇族』編集部へ。なんで、ココにやってきたかというと、フリーでは食えないのでデブ専として東上野で働くコトになった……のではなくて、この雑誌アドバイザーであるライターの影坂狩人(カルト)さんに取材するためなのであった。彼は〈書肆アクセス〉で、「モクローくん通信」などを見て、ぼくにメールをくれたり、自分で出したミニコミを送ってくれた。狩人さんは、見た目はもの静かで理知的な感じ、でも喋りだすと止まらないヒトだった。ブログ日記「Cultな疼き。〜GMな日々〜」(http://karuto.blog8.fc2.com/)も、細部にわたる日常の記録と、歯に衣着せぬ直言が気に入って、愛読している。その辺のハナシをいろいろお聞きする。途中で旬公も参加した。


編集部を辞去してから、自転車二人乗りで御徒町まで戻り、湯島の裏のほうの韓国料理屋に入る。二階の座敷はぼくたちだけで、あとから帰って来た女の子がテーブルに座って宿題をしているという、のどかな店だった。しかし、味は本格的で、キムチナムル、豚の皮炒め(コラーゲンたっぷり)、そしてミソチゲと、どれもおいしかった。場所柄か、西日暮里の〈大栄〉よりは値段が張るが、満足であった。また二人乗りで、西日暮里まで帰ってくる。


テレビで《サイコ》を観る。ヒッチコックのではなく、ガス・ヴァン・サントリメイクしたほう(1998)。カメラワークや音楽も含め、あえて新しい要素を付け加えずに、オリジナルに忠実にリメイクしている。それはよく判るのだが、新しくつくられた、サイコが主人公である映画として見たときには、なかなかツライものがあった。今朝送った校正を反映したものが30枚もファクスされている。もともと小さな文字で組まれているから、ファクスで読むのはきついんだよな。どうにかチェックして、訂正点をメールで戻すと、12時すぎてしまった。

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2005-06-08 いいコトは一緒にやってくる

朝、旬公を病院に送り出してから、いつもより早めに起きて、本を読んだり、フロに入ったりする。11時に出て、山手線池袋へ。〈リブロ〉か〈ジュンク堂〉で時間をつぶそうかと思ったけど、今月は買う新刊を減らす実験中なので、寝た子を起すこともないだろうと、寄らずにおく。西武池袋線練馬駅へ。昔、降りたことがあるような気がするが、覚えていない。


最近、お出かけ時には携帯している野村宏平『ミステリーファンのための古書店ガイド』(光文社文庫)を見て、まず〈一信堂書店〉の前まで行くが、時間が早いせいか、まだ開いていない。千川通りに戻り、歩いて3分ほどのところにある〈ブックマート桜台店〉へ。野村本にもあるように、新古書店の店構えながら、絶版文庫文芸書まで置いてある。いい本があるが、その分、高めだ。そういえば、古書店に行くのも一週間ぶりぐらいか(〈古書ほうろう〉でさえしばらく顔を出してない)。本を処分している最中だから、自分の中での「本を買う基準」が大きく変わらざるを得ない。一冊一冊手にとっては、「これ、買ったとしても、読まれないままに処分されるのではないか」と悩んでしまう。逆に云えば、この数年は、スペース的にも金銭的にもまあまあ恵まれて、あまり悩まずに本が買えていたのである。よく考えたら、いまのほうがフツーの状態なのであった。


とはいえ、中町信『新人文学賞殺人事件』(徳間文庫)なんかを見つけたら、買わずにはいられない。これは先年話題になった『模倣の殺意』(創元推理文庫)の原型(改稿前のバージョン)である。ほかに、芦辺拓メトロポリスに死の罠を』(双葉文庫)、『歴史街道殺人事件』(徳間文庫)、『地底獣国(ロスト・ワールド)の殺人』(講談社文庫)の三冊を見つけたので、買う。そのあと、ラーメン屋で昼飯を食い、〈ブックオフ〉を覗くが、ナニも買わず。


江古田駅まで戻り、『進学レーダー』のIさん、カメラマンと待ち合わせ。M学園の中・高等学校大学図書館を取材する。資料を見たら、この大学学長が、ある出版社の創立者の子息であるコトが判り、ひとりコーフンする。偶然にも一昨日、松本八郎さんと、そのS書店のことをさんざん話していたトコロなのである。終ってから、〈デニーズ〉でIさんと今後の仕事について話す。江古田の〈ブックオフ〉に入る。ココはいい本を揃えてると思うんだけど、買いたくなる値段じゃないんだよなあ。


携帯に連絡があったので、ウチに帰ってから、某出版社のHさんにお電話する。『季刊・本とコンピュータ』最終号をご覧になり、「こんな雑誌が終るのは惜しいです」と何度も云ってくださる。来週にでもお目にかかることになった。好きな版元なので、なにかやらせてもらえればイイなぁ。また、右文書院の青柳さんからもメールがあり、預けておいた企画が通ったとの返事だった。旬公も、数年連載してきたテーマがやっと本にまとまるコトになり、デザイナーと打ち合わせしてきたというし、今日はなんだかいいコト(ぬか喜びに終るかもしれないことも含めて)が一緒になってやってきたようだ。この1、2カ月、「なんでこんなにメンドいことが続くのか」と思っていたが、いいコトも悪いコトも団子になってやってくるんですね。とりあえず、いい気分で数日過せるというだけで、嬉しい。そのせいか、滅多にないコトだが、サッカー日本×北朝鮮戦を、テレビで最後まで眺めてしまった。

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2005-06-07 『季刊・本とコンピュータ』最終号を手に

11時に仕事場へ。『季刊・本とコンピュータ』第二期第16号、つまり最終号を手にする。先週金曜日にはできていたのだが、仕事場に寄れなかったので。総目次がついているせいで、厚い。特集は「はじまりの本、おわりの本」。これまでだと、最初の段階で特集の性格付けというか方向性をかなり詰めるのだが、今号は最後なので、「はじまりの本、おわりの本」というお題で、いい文章を書いてくださるであろう著者に片っ端から依頼した。一見ラクなやりかたに見えるかもしれないが、出来上がりのビジョンが描けなければこういう無謀なコトはできない。その意味では、コレまでの31号分の蓄積が背後にあったからこそ、自信を持って「自由に書いてください」と依頼できたのかもしれない。ぼくの担当は、小沢信男さん、粉川哲夫さん、西江雅之さん、杉浦康平さん(インタビュー)、井上真琴さん、連載の山崎浩一さん、それと自分の原稿だった。もうそろそろ書店に並んでいると思うので、ぜひ手に取ってみてください。某書店でのバックナンバーフェアの企画も進行中。


「終刊のお知らせ」の紙を挟み、関係者に送る雑誌の発送をやる。三カ月に一回やってたこの作業も今回でおわりなのだ(ときどきサボったこともあるが)。なんだか感慨深い。12時に日本ペンクラブの方と会い、秋に行なうという国際シンポジウムの話を聞く。そのあと、荷物の整理をしながら、某社のゲラを見る。4色ページのレイアウトがいい感じ。


5時ごろに出て、日暮里へ。小沢信男さんのお宅に伺い、季刊を一冊届ける。小沢さんには、1997年の創刊号で、マイクロソフトエンカルタ97』日本語版(!)の書評をお願いして以来、10回以上登場していただいた。どんなテーマでも、「そう? じゃあ、まあやってみましょうか」と引き受けてくださり、こちらの意図などかるく超えた原稿を書いてくれる小沢さんには、いつも感謝していた(今号で書いていただいた小沢さんの「はじまりの漫画、おわりのマンガ」も、短いけどじつにイイ)。お疲れさま、ということで、泡盛乾杯小沢さんといえば、『みすず』の連載、新しい号で向井孝(こんな人でした→ http://www.ne.jp/asahi/anarchy/saluton/saluto_j.htm)について書かれている。小沢さんが描く人物は、誰もが生き生きとしているんだよなあ。それは、きっと小沢さん自身がずっと自由に生きてきたからだろう。こないだ松本八郎さんとも話したけど、「小沢さんというフリーターの大先輩がいるうちは、われわれも安心していられる」のであった。


7時ごろ辞去し、ウチに帰る。泡盛が回ったか、ちょっとヨコになったら10時。旬公のリクエストで、久しぶりにカレーをつくる。できあがったのは11時半だった。食べてから、テレビを見たり、メールをチェックしていると、もう2時前だった。早いねえ。

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2005-06-06 ミニコミガイドとカラ元気

午前中は、某社の本の追い込み。連絡事項多し。12時すぎに出かける。大阪の〈貸本喫茶ちょうちょぼっこ〉(http://www.nk.rim.or.jp/%7Eapricot/chochobocko.html)のイベント『booklet of booklet ボブ』の小冊子が送られてくる。中野の〈タコシェ〉が選んだミニコミテーマ別に紹介し、ミニコミ関係者のコラムを載せるとは聞いていたが、予想以上にスバラシイ出来。40ページもあり、ミニコミの発行者・読者・書店の肉声が聞こえてくる。ミニコミ取り扱い店リストもある。ぼくは2000年に何人かと一緒に『ミニコミ魂』(晶文社)をつくったが、その後の状況をフォローすることができなかった。東京京都ギャラリーミニコミの展示をやったときも、現物を選ぶのが精一杯で、冊子にまとめるコトまでできなかった。しかし、この小冊子は、リストコラムという読みやすい形式で、「ミニコミガイド 2005」という副題にふさわしく、現時点でのミニコミ状況を見渡せるものになっている。これが500円というのは安い。たぶん、タコシェほか数店で入手できるハズ。


この小冊子で、ぼくは1980年代に5号ぐらいまで出た『綺譚』のことを書いた。なお、ほかの人の文章がきちんとしたタイトルになってたのに、ぼくのは雑誌名そのままになっていたこと。ゲラでは自分の部分しか送られてこなかったので、雑誌名で統一するんだと思い込んでたのだ。それだけが、ちょっと残念。あと、今日は『改訂版 モダン古書案内』(マーブルトロン)も送られてくる。増補された地図に、「不忍ブックストリート」が入っていたので。


新宿に出て、〈ブックファースト〉を覗く。なんとまあ、書店に入ったのはほぼ10日ぶりというありえない事態だ。当然、欲しい本がたくさんあった(和田博文『飛行の夢 1783-1945』藤原書店、や花田佳明『植田実の編集現場 建築を伝えるということ』ラトルズ、など)がガマンして、坪内祐三古本的』(毎日新聞社)、中原昌也『続・エーガ界に捧ぐ』(扶桑社)、遠藤淑子『犬ぐらし』(白泉社)の3冊を買う。そのあと、西口のB社に行き、打ち合わせ。ココの雑誌に、懸案の人物ルポを数本載せてもらえるかも。


都営新宿線飯田橋有楽町線江戸川橋に出て、EDIへ。松本八郎御大に久しぶりにお会いする。ハチローくんは相変わらず快調。企画の相談をされたのだが、あっちこっちに脱線し、面白いからこっちもそれに付き合って、たちまち2時間すぎる。金沢で亀鳴屋の勝井さんにお会いした話をしたら、「あそこの本は素晴らしいと思ったけど、私が計算したらどうしても原価より安くはできないんですよ。大丈夫なんですかねえ、あそこは」とおっしゃる。採算度外視で出版を続けているハチローくんに心配させるとは、亀鳴屋はスゴイ。完結したEDI叢書の最後の二冊(『南部修太郎 三篇』と『畔柳二美 三篇』)を頂戴する。そのあと、近くの飲み屋に入り、いろいろと話す。やっぱり、貧乏でも出すべきものを出している出版者に会うと、元気が出るなあ。カラ元気かもしれないけど。

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2005-06-05 なかなかスリムになりません

朝9時から、本の整理を開始。今日は3時にセドロー牛イチローコンビが買い取りにきてくれるのだ。そんなの数日前からやっとけよ、と思われた方は、きっと家に十分なスペースのある幸福な暮らしをされているのでしょう。こちとら、布団を敷く場所以外には、本を積んだり、仕分けをしたりできるスペースは、まったくないのです。よって、病み上がりの旬公を谷中アパートに追い出して、居間のわずかなスペースを確保してから、ようやく作業にかかれるという状態なのだった。


今日の目的は、とにかく量を減らすこと。なんとか数百冊処分して、空間を捻出せねば、他の場所に置いてある本が受け入れられない。そこで手始めに積んである本の山から不要本を抜き出す。しばらく前から、この先やる仕事=私事のテーマにあわせて、所蔵する本のジャンルを絞ろうと思っていた。挙げてみると、【1】書物(新刊・古本)に関するもの、【2】出版史に関するもの、【3】ミニコミに関するもの、【4】コレクター・コレクションに関するもの、【5】文学・文壇史に関するもの、【6】自分の編集の仕事に関わるもの、となる。おお、なんと明解な分類だと喜んで、いざその範囲外の本をどんどん外そうとしたら……。できない。ジャンルを絞ったつもりでも、よく見れば、けっこう広い範囲のままなのだ。たんに好きだというだけで買い集めてきた、古山高麗雄30冊とか、植草甚一60冊とか、尾崎一雄50冊(全集含む)とかも【5】に入るといえば云えるし、これらのジャンルそのものでなくても微妙に関係する本(たとえばデザイン広告の本)もけっこうある。自分の仕事の範囲に合わせた本だけ残す、という方針は、その仕事自体が絞りきれてないのだから、机上の空論なんであった。


午前中、ジャンルで減らすよう努力したが、200冊程度にしかならない。これだと入口の床かが見えるだけだ。まずいと思い、今度は、図書館に所蔵がある本や古本屋ですぐに見つかりそうな本、つまりこの数年に出た本を外す、という方針で、山を漁った。これで100冊ぐらい。そして、古書展などで装幀がいいとか変わったタイトルの本だからという理由で買った本(100〜500円)を外した。佐野繁次郎の装幀など何冊かあったけど、そういう観点で本を買うのは分不相応だと諦めて、売ることにした(別の場所にある花森安治装幀本だけは温存)。これが50冊ぐらいか。シメて350冊。30冊ずつの山が12、13できた。


ココまでやったら、へとへとに疲れてしまう。せめて500冊は減らしたいと思っていたが、もう2時半になったので、諦めるコトに。しかし、未練というか、山の一番上に積まれている本を手にとって、「これはすぐ読めるから読んでから売ろう」とか、「ちょっと目次のエッセイタイトルが気になるから」と、4、5冊を残すほうに回してしまった。犬は飼い主に似てくる、というが、ぼくの蔵書もぼくに似て、なかなかスリムになりません。


3時にセドロー牛イチローコンビが来宅。いつものごとく、あざやかな手際で、ジャンル別に山をつくり、仕分けていく。ぼくはさっきの作業で消耗してしまい、黙ってそれを眺めていた。セドローくんの日記http://d.hatena.ne.jp/sedoro/20050606)にも「ちょっと疲れ気味」と書かれてしまった。愛想がなくてゴメン。イチローくんが、「この本、市場に出しますけど、たぶんかなり〈ささま書店〉の均一に並ぶと思いますよ」と云うので、「だったら、オレ、買いに行くよ!」と答える。まだ病気は治ってないな。


二人を送り出してから、ちょっとヨコになる。旬公が帰って来たので、不忍通りイタリアンの店に食べに行く。テーブルが空いてなくてカウンターに座ったが、かえって気楽でよかった。ワインを飲み、うまいピザを食べたら、ようやく元気になった。

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2005-06-04 気がつけば6月

おお、4日もあいだが空いてしまった。書きたいコトや紹介したい本がいろいろあったのに。この間、ナニをしてたかといえば、仕事場の整理や企画の打ち合わせのほかは、ひたすら原稿を書いていた。某社からビジュアルを中心とした本を出すことになり、そこに入れる文章をまとめていたのだ。チェコ語ができない人間がチェコについて書くという無謀な行為なのだから、いろんな文献に当たっての準備にえらく時間がかかった。また、「sumus」「モクローくん通信」の読者でプラハ留学中の田中大さんには、知りたいことを片っ端から調べてもらった。感謝。この本については近いウチに告知できると思うけど、なかなかイイ本になりそうですよ。ふっふっふ。今朝は早く起きて、その本のあとがきを書き上げる。コレでなんとか山は越えたぜ。


珍しく早く片付いたので、旬公と映画を観にいくコトに。観たいのが上野でやってるので、自転車で出かける。日差しが気持ちいいし、不忍池のあたりに来ると風もさわやか。久しぶりに人間に戻った気分だ。駅前の上野百貨店2階にある〈聚楽台〉へ。上野の顔みたいな存在だが、団体客が多いだろうと敬遠して、一度も入ったコトがない。こないだ、エンテツさんが「ココはいいよ」と云ってた(日記でも書いている。http://homepage2.nifty.com/entetsu/sinbun05/ueno_jyuraku.htm)ので、行く気になったのだ。


ナカに入ると、一目で気に入った。天井が高く、広いホールだ。昔のデパートの大食堂のスタイルが、この時代に残っていたとは。お座敷席にもそそられたが、上野の街や走る電車を正面から見られるテーブル席に座る。ほぼ満席の盛況だ。ここでビール飲んでうだうだしたら、さぞやいい気分になるだろう。しかし、映画の時間が迫っている。エンテツさんお勧めの「西郷丼」は、ウェイトレスに旬公が頼んだ五目ラーメンを食べ終わるころに到着します、とじつに具体的な待ち時間を教えてもらったので、パスして、長崎ちゃんぽんを頼む。ごくフツーの味なんだけど、こういう場所で食べるとなんか美味しいような気がする。また来よう。ちなみに、上野百貨店の前の京成のなかにあった〈じゅらく〉は、改装工事のため5月8日で閉店している。


隣の〈上野セントラル〉に入る。待っている客は20人ぐらい。どんな映画でもラクに座れるのが、上野映画館のいいところ。前の回が終って、ヒトが出てきたが、意外と高年齢層が多い。土地柄か。ナカに入ると、この映画館上野っぽいなあ。スクリーンの左右にはでっかいレリーフがあるし、二階席なんか左右に張り出していて、昔の劇場みたい。


今日観るのは、クリント・イーストウッド監督の《ミリオンダラー・ベイビー》。自分が育てたボクサーに逃げられたボクシングジム経営者イーストウッドと、トレーラハウス育ちのホワイトトラッシュ(貧困層)で、31歳でボクシングに賭けようとするヒラリー・スワンク。その二人を見守るモーガン・フリーマン。ほぼこの三者の関係だけで、出来上がっている映画だ。スワンクが次第に強くなり、リングで快進撃していく前半。そして、それがすべて無に帰す後半。病院のシーンは、こないだ以来の旬公の入院とどうしてもダブってしまった。結末は苦いけど、どうしてもこの終り方じゃなければならなかっただろう。イーストウッドもスワンクもいいが、モーガン・フリーマンがよれよれのオヤジを演じてスバラシイ。あと、メインのストーリーには絡まないが、ジムに通っているちょっとオツムの弱いデンジャーという青年がよかった。2時間以上あったけど、一瞬たりとも退屈することのない映画だった。


自転車で不忍池の脇を通り、根津駅まで。自然食品の〈根津の谷〉の二階にある〈Amber〉へ。なんとなくココ、バーが中心だと思っていたが、コーヒーの種類が多い喫茶店だった。バナナケーキのセット。コーヒーケーキもどっちも好み。久しぶりに出かけたので、〈往来堂書店〉あたりを覗きたかったが、いまにも降りそうな天気なので、ウチへ急ぐ。へ屋に入ったとたんに、大雨が降り出した。勝川克志さんから『のんき新聞』第9号が届く。勝川さんと栗栖直哉さんの二人が、謄写版のコトを書いているのがオモシロイ。勝川さんが通っていた東京デザインカレッジという専門学校の存続を巡っての騒動で、建物の壁に書かれた落書きを栗栖さんが謄写版の本にまとめたところ、それを見た『週刊朝日』の記者に取材されたそうだ。その記者とは川本三郎氏。この縁で、勝川さんの『豆宇宙珍品館』に川本さんが解説を書いたのだという。なるほどねえ。ぼくの「ホンの一枚」、今回はカラッポになった実家の本棚を。


晩飯を食べながら、旬公が借りてきた《ザ・カップ 夢のアンテナ》(1999、ブータンオーストラリア)を観る。ヒマラヤ山麓のチベット仏教の寺院で暮らす、修行僧たちがサッカーワールドカップを観るために、奔走するハナシ。テレビラジオもない寺院で、主人公のまだ子どもの僧が、「昨日はロナウドシュートが失敗した」と一喜一憂したり、ドコから入手したのかサッカー雑誌や選手の写真まで持っているあたり、(ぜんぜん比べ物にならないとはいえ)田舎で情報に飢えていたぼくの子どものときを思い出した。ブータンで製作された映画だが、舞台インドらしい。チベットから亡命してきた僧侶が出てくる。なんとプロデューサーは、《戦場のメリークリスマス》のジェレミー・トーマスだった。


4日ぶりなので、またしても長くなってしまった。やっぱり日記は少しずつでも、毎日書くほうがラクなのだ。

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