ナンダロウアヤシゲな日々

◎この日記は、ライター・編集者の南陀楼綾繁が書いています。
◎新刊『町を歩いて本のなかへ』(原書房)発売中です。
◎著書『一箱古本市の歩きかた』(光文社新書)、『谷根千ちいさなお店散歩』(WAVE出版)、『小説検定』(新潮文庫)、『ほんほん本の旅あるき』(産業編集センター)、『路上派遊書日記』(右文書院)、『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『老舗の流儀 戦後六十年あの本の新聞広告』(とうこう・あい監修、幻冬舎メディアコンサルティング)、編著『チェコのマッチラベル』(ピエ・ブックス)、共著『ミニコミ魂』(晶文社)。
◎ご感想・ご連絡は南陀楼綾繁 まで。
◎「不忍ブックストリートの一箱古本市」は毎年春に開催します。
詳細は不忍ブックストリート公式ホームページもしくは、しのばずくん便りをご覧ください。
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2005-10-31 税務署のち石井輝男

9時起き。10月ももう終わりなんですね。はあ……。で、今月末までのノルマを果たしに、税務署まで自転車を走らせる。いまごろ? とアキレられるかもしれないが、平成15年、16年の確定申告の書類を出すためだ。この数日で経費を計算したのだが、平成15年源泉徴収票(所得を証明するもの)がナゼか出てこなかった。税務署の人に、恐る恐るそのコトを云うと、銀行の通帳が必要だと云われる。とりあえず16年度の申告を済ませ、ウチに帰って以前の通帳を探していたら、それが入っている籠のナカに15年度の源泉徴収票がまとめて入れてあった。あー、助かった。急いで書類をつくり、また税務署に行き、16年度の申告を終える。


しかし、これで肩の荷が下りた、とはいかない。そもそも、いまごろになって二年分まとめて申告したのは、健康保険料の未納が土俵際まで来ていたからだ。この二年間は、ぼくと旬公の額面上の収入(経費を引く前)を合わせると、けっこうな額になり、申告を怠っていたために、その全額に対して保険料が発生していた。その額は、限度額(これ以上は高くならない)の年間53万円。そんなの払えませんよ、じゃあ早く申告してください、というやり取りを経て、今日に至ったのだった。だから、申告が終わったらその写しを持って、区役所に行った。まず、課税課に行き、申告が終わったことを報告。受付しましたという証明を持って、今度は保険課へ。事情を縷々説明し、この申告で保険料がいくらになるかを訊ねる。しかし、しばらく待った結果、返ってきたのは「あまり安くはなりません」という答えだった。窓口のヒトは計算式を示して丁寧に教えてくれたのだが、そもそも会社員が加入している健康保険に比べて、国民健康保険保険料が高いというコトが、改めて判っただけだった。コレで、医者にかかるときは3割負担なんだから、やってられない。ちなみに、区役所の応対は昨今、かなり良くなっていると云われ、ぼくもそう感じるのだが、今日、ちょっとイヤな光景を目撃。ぼくの先に待っていたアジア系女性に対する中年男の職員が、ものすごくぞんざいなのだ。「日本に住まわせてやっている」という態度が露骨だった。アンタは、日本国を背負ったツモリなのか? 一通り終わったので、脱力して、〈三岩〉で定食を食べる。


ウチに帰り、一休みしてから池袋へ。〈ジュンク堂書店〉へ。昨日、堀切さんが絶賛していた勝又浩『作家たちの往還』(鳥影社)をはじめ、大島一彦『小沼丹の藝 その他』(慧文社)、加藤政洋花街 異空間の都市史』(朝日選書)、『spectator』2005年夏号、『映画芸術』413号、と買い込む。冊数は少ないが、高い本が混じっているので、1万円近くになる。1000円買うごとに「オリジナルトランプしおり」というのをくれて、「1ペア揃えば景品進呈」というのをやっている。あとで開けてみたら、1ペア揃ったけど、ナニくれるのかな? 『小沼丹の藝 その他』は、未知谷小沼丹全集の編者の本で、書名どおり全体の3分の1が小沼についての文章。『spectator』はインド特集もおもしろそうだが、赤田祐一さんの横山泰三インタビュー(なんつー組み合わせだ!)が気になって。


新文芸坐〉に行き、石井輝男特集を観る。まず《黄色い風土》(1961)。鶴田浩二週刊誌記者とはミスマッチに思えるかもしれないが、深作欣二監督の《誇り高き挑戦》(1962)でも業界紙記者役をやっている。この時期、インテリで押そうとしていたのか。押丹波哲郎週刊誌デスクなのは、イイカゲンそうなところも含めてはまり役だった。ラスト、自衛隊の射撃演習の場所に連れ込まれるのは、岡本喜八監督の《殺人狂時代》(1967)よりも早い。もう一本は、《実録三億円事件 時効成立》(1975)。この年12月に時効を迎える三億円事件ネタに、勝手犯人像を描いた「実録」をつくってしまうイイカゲンさがいい。それをもっともらしく見せるために、捜査にあたった平塚八兵衛刑事インタビューを冒頭に置いている。岡田裕介(黒ぶち眼鏡を掛けると「青空文庫」の富田倫生さんそっくり!)と小川真由美犯人を、金子信雄ベテラン刑事が追い詰める。鏑木創による11拍子(?)の音楽が、スピード感あってよかった。


休憩時間や帰りの電車で、『映画芸術』の石井輝男追悼特集を読む。山際永三(新東宝石井輝男助監督)、桂千穂、内藤誠の鼎談と、『石井輝男映画魂』(ワイズ出版)の編者・福間健二の追悼文。どちらもナカナカ。『映画芸術』を買うのは初めてなので、パラパラめくっていたら、向井康介(山下敦弘映画脚本を多く書く)と荒井晴彦の対談が目に留まった。最初から最後まで、荒井が年下の向井に説教しているのが不快。編集長ならナニ云ってもいいのか? ただ、荒井の「青春なんだから、泣いたりわめいたりしてくれよ」というイカにも全共闘オヤジな発言に対して、向井がいなすでもなく自然に「でも、いましないんじゃないですかね。少なくとも僕の高校時代はそういうのなかったですね」と答えているのが、オモシロかった。しかし、2本読んだだけだが、この雑誌の談話のまとめ方はヒドイ。ハナシの流れがつくれてないし、意味不明の発言もある。その人の話の調子を生かして談話をある流れに落とし込んでいくのが、編集者仕事だと思うのだが。


晩飯は、ブタのカシラ肉をオリーブオイルで焼いたもの。ウマイ。旬公が借りてきたビデオを観ているヨコで、原稿にアカを入れる。やっと三分の一終わる。〈往来堂書店〉の「不忍ブックストリートの選ぶ50冊」は今日で終了。笈入さんほか往来堂スタッフの皆さん、1ヶ月お疲れ様でした。本を選んだメンバーには、このあと、売上上位の発表というイベントが待っている。ドキドキ。ぼくの選んだのは無難な売れ行きではあったようだが、1位はムリそうだなあ。コレが終わったら、来月には〈書肆アクセス〉で、堀切直人さん、青柳隆雄さん、そしてぼくが選んだ「東京者(もん)」(仮題)というフェアが始まるのだった。アマチュアの分際で、古本を売ったり新刊を売ったり、忙しいことである。

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2005-10-30 ホリキリVS地蔵、120分一本勝負!

朝8時半起き。「Web読書手帖」(http://yotsuya.exblog.jp/)で、ちくま文庫の復刊ラインナップが発表になったコトを知る。種村季弘編『東京百話』全3巻が入っているのがウレシイ。かなり以前に品切れになっており、需要があったはずなのに重版しなかったので、アンソロジーだとなかなか難しいのかな、と勝手に思っていた。しかし、その思い込みが吹き飛ばされた。ワタシは学生時代に買って持ってますけど、もう一セット買うつもりです。今回の復刊アンケートはたんなるお遊びじゃないし、営業的にうまく行けば次につながる可能性もあるのだから、自分が投票した本は買うようにしてほしいと思う。


古本屋のコトを検索していて、おもしろいブログを発見。「旧書店日記」(http://blog.yam.com/lico0716/)というもので、台湾のヒトが日本に来て回った古本屋について、文章と写真でつづっている。もちろん中国語なので意味はワカランが、〈音羽館〉〈コクテイル〉〈FLYING BOOKS〉〈ビブリオ〉〈ロス・パペロテス〉……などのなじみぶかい店名が並ぶ。早稲田青空古本市や、札幌小樽古本屋まで回ってるよ、このヒト。


じつは、一月ほど前に〈古書ほうろう〉の神原さんから、台湾女性が店にやってきて、筆談でいろいろ質問して帰っていったと聞いた。そのとき、ぼくの名前を出したそうなので、ははあ、傅月庵(フ・ユエアン)さんの知り合いだな、と思ったのだった。このブログの「東京古本屋」というカテゴリで、〈古書ほうろう〉の項目を見ると、何度も「南陀楼先生」という表記が出てくるので笑える。ま、「先生」というのは「氏」ぐらいのニュアンスだろうが。今度、『彷書月刊』でこのブログを取材したいが、言葉の壁がなあ。誰か中国語メールを書ける人、いませんか(些少ですがバイト料はお支払いします)。それよりは、このブログにみんなでトラックバックを送れば、向こうで気づいて連絡してくれるかも、と他力本願


このあと、手書き原稿にアカを入れていたら、昼になる。ベーコンとアサリのパスタ(フィトチーニ)をつくり、《噂の東京マガジン》を見ながら食べる。2時半に出て、旬公と神保町へ。〈書肆アクセス〉に旬公を置いて、古本ワゴンを回る。あちこちで買ったのは、涌井昭治『東京新誌』(朝日新聞社)500円、『金子光晴文学的断想』(冬樹社)400円、関根弘『機械的散策』(土曜美術社)300円、紀田順一郎編『書物愛[日本篇]』(晶文社)1000円。あと、演劇出版社ワゴンで、濱本高明『浅草風俗二十帖』を200円で。岩波ブックセンター裏のテーブルで一休みしていたら、隣に座っていた若い男の二人組が「坂口安吾って死んだっけ?」「さあ〜?」という会話を交わしていた。


4時に古書会館。「テクストの祝祭日」2日目。堀切直人さんと鈴木地蔵さんの「私たちの神保町」というトークセッション。開演10分前に着いたのだが、お客さんが少ない。急遽決まった企画なので、告知が行きとどかなかったのか。10分遅れでスタートするが、15人ほどしか集まらず。もっとも、聴衆の多寡を気にするような二人ではないので、お互いの神保町体験から入り、出版界の裏の裏まで知り尽くした地蔵さんの「地べたからみた神保町論」が展開される。ぼくは、先月の「BOOKMANの会」で多少聞いていたのだが、ほかの人にはびっくりするハナシが多かったのでは。心配(期待?)された堀切さんの暴走だが、今日は司会役に徹していて大人しい。もうちょっと暴れてくれてもヨカッタか。終わりごろ、急にぼくが指名され、しどろもどろで話す。そのあと、地蔵さんが暴走モードに入ったあたりで時間切れ、終了。


撤収のあと、〈さくら水産〉で打ち上げ。堀切さん、地蔵さん、青柳さん、旬公とぼく。ココでも地蔵さんの舌鋒は鋭く、あいまいな答えを返すわけにもいかず、たじたじする。10時すぎに解散。ウチに帰ると11時だった。

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2005-10-29 雨の日の青空古本市

8時半起き。朝飯のあと、書類を捜す。10時半に出て、千代田線代々木上原小田急線で鶴川へ。何度か来たことがあるのだが、ナニもなかった駅前に、駅ビルも含めていろんなものができていて驚く。次のバスまで時間があるので、〈啓文堂書店〉を覗く。『ユリイカ』11月号(特集「文科系女子カタログ」)を買う。近代ナリコさん、浅生ハルミンさんが登場。座談会の野中モモさんは、『ミニコミ魂』(晶文社)でお世話になった。あと、高田里恵子平田順子ナゴム本を書いた人)に注目。しかし、男性の書き手を「僕達の好きな文科系女子!」なるアンケートだけに閉じ込めておかず、2、3人に文科系女子論を書かせてほしかったという気がする。


バスに乗って、和光学園へ。門から校庭へのアプローチが長く、なかなかイイ雰囲気の学校だ。校庭では生徒が沖縄音楽コンサートをやったり、出店が出たりしてるが、例によって古本市直行。昇降口近くのロビーでやっていたが、うーん、冊数が少ない、本が新しすぎる。150円のものを3冊買うが、2冊はすでに持っているものだった。またバスに乗り、鶴川まで戻る。踏切を渡ったところに古本屋があったハズ、と行ってみるが、閉まっていた。駅前の定食屋で昼飯食って、電車に乗る。完全にカラブリだったけど、べつに悪い気はしない。


代々木上原表参道と乗り換え、神保町に着いた頃には雲行きが怪しくなっていた。今日から「神田古本まつり」だ。靖国通りに出ている古本屋ワゴン(メイン会場よりコッチのほうが好き)を覗き、〈岩波ブックセンター〉で買い逃していた『映画論叢』第12号を買い、隣の会場で本を見ようとしたら、古本屋さんたちが棚に透明のシートをかける作業をしている。携帯で話していた人が、本部に向かって「天気予報会社から連絡で、あと20分で雨が降るって」と伝えている。そうか、もう降るのかと思いながら、シートの上から本を覗く。すずらん通りに移動し、「神保町ブックフェスティバル」の出版社ワゴンを見る。東方出版のところに、大阪のIさんがいたので挨拶。加藤豊『マッチラベル博物館』、8000円が半額だというので買う。マッチラベルの本だから出たときに買っておこうと思ったのだが、金欠でちょっと手が出なかったのだ。こんな値段で買ってすみません、加藤さん。地方・小のところで、なんだか液体の入ったコップを持ってすでにゴキゲンの畠中さんにも挨拶。あと、ゆまに書房のトコには、ウチの弟もいました。


そうこうしているウチに、パラついていた雨が本格的に降ってくる。会場も一時撤収の伝達が出たので、〈三省堂書店〉に入る。誰もが考えることは同じで、ここの古本市はものすごい人込み。古本は諦めて新刊をと、4階を一回りして下に降りる。一階の奥に、『チャルカの東欧雑貨買いつけ旅日記』(産業編集センター)のフェア台があり、ピエ・ブックスやプチグラの雑貨モノの本と並んで、小著『チェコのマッチラベル』も平積みされている。ぼくも「文科系女子」の仲間入りかしら。そのあと、古書会館へ。地下の古書展は高級感あふれるが、手は出ない。


4時前に2階へ。未来社の小柳暁子さんが企画した「テクストの祝祭日」というイベントで、松本昌次さんの「戦後文学編集者」というトークを見るのだ。いつものトークとは90度向きを変えて、横長に座席を設定していた。客は30人ぐらい。開演前に、小柳さんに松本さんを紹介される。松本さんは未来社で30年間編集をし、その後、影書房を興す。今日は、『図書新聞』の米田綱路氏が聞き手となって、現在刊行中の「戦後文学エッセイ選」の著者たち(花田清輝竹内好富士正晴上野英信井上光晴ら)のことを聞いていく。米田氏は若くて(1969年生)、温厚そうで、優秀なインタビュアーだと聞く人だが、あらかじめ筋書きを綿密につくっておいて、その通りにハナシを進めようとする。コレはインタビューのやり方で、聴衆を集めての談話にはちょっと向かないのではないか。松本さんは「なるべく堅苦しくなく……」と云っているのだが、そういう持っていき方だから、必然的に思想的・抽象的なハナシに偏っていく。むしろ、最後に余談として話した「書肆ユリイカ」の伊達得夫のこととか、質疑応答で触れた花田清輝の人間的エピソードのほうがおもしろかった。松本さんは「編集者なんてたいした仕事じゃないですよ」と繰り返しおっしゃっていた。このコトの意味を考えておこう。聞きにきていたEDI松本八郎さんと藤城雅彦さんと、会館の入り口で別れてウチに帰る。出歩いて疲れたのか、ヨコになって少し眠る。


夕飯は、ブタのカシラ肉とマイタケ、キムチを炒めたもの。かなりウマイ。積んであった『エルマガジン』のバックナンバーパラパラ見て、必要なページを切り抜く。この雑誌の一本一本の記事がつくりこまれていることに、改めて気づく。レイアウト優先でもなく、テキスト優先でもなく、同時進行で誌面がつくり上げられているカンジがいい。同じ版元の『ミーツ・リージョナル』もよくできた雑誌だが、エルマガに比べると、取り上げる対象へののめりこみ方がいまいち浅い(だから、ミーツのほうがよく売れるのだろうが)。昨日の日記を書き、《やりすぎコージー》を観たら、すぐに眠くなった。

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2005-10-28 電車で読む「書誌鳥」の論文

8時半に鳴った目覚ましを止めて、30分先にセットしたツモリが間違えたらしく、眼が覚めると9時半。飛び起きて、急いで仕事場へ。もろもろ連絡のうちに時間が過ぎる。編集仕事は、そのかなりの部分が電話手紙メールでの連絡なのであった。今回の本は、著者が複数いるほか、カメラマン編集協力者、取材先、デザイナーなど連絡すべき先が多い。単行本というよりは、雑誌をつくっている感覚だ。昨日公開した「『ブックカフェものがたり』公式ブログ」(http://kawasusu.exblog.jp/)に、さっそく多くのアクセスがある。このブログを見た方から、ぼくが把握してないブックカフェ情報が数件寄せられている。整理してから順々にアップしますので、よろしくお願いします。


1時半に外出。仕事場を出て数歩歩いたところで、前の道を出てきたヒトに眼が留まる。なんか、矢部登さん(『サンパン』で結城信一や清宮質文について執筆されている)みたいだなあ。スグそこの郵便局に行くらしく、封筒を持っている。矢部さんもどこかの出版社でお勤めだと聞いているので、ひょっとして……と思っているウチに、行ってしまった。〈ふくのや〉で昼飯を喰って、外に出たら、ちょうど郵便局から出てきた矢部さんのそっくりさんとすれ違った。うーん、ご本人だったのでしょうか。ヒトを見分ける眼に自信がないと、こういうとき困る。今度お会いしたら聞いてみるか。


竹橋から東西線に乗る。車中で、昨日から持ち歩いている抜刷読了。「【書庫】*書物のトポス=書物のトピック*」(http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Library/1959/)の「書誌鳥」こと森洋介さんが、「『文藝春秋』附録『文壇ユウモア』解題及び細目――雑文ゴシップの系譜学のために――」(『日本大学大学院国文学専攻論集』第2号)という論文を送ってくださったのだ。論文抜刷を配るなんて風習、まだあったんですね。森さんに最初に会ったとき、『文藝春秋』の別冊附録として1931〜33年に出された『文壇ユウモア』(誌名は『附録 文藝春秋』→『附録 文壇ユウモア』→『附録 文壇ユーモア』)という小雑誌のハナシを聞き、興味深くおもっていた。だから、送られてきたものをすぐに読み始めた。森さんは、印刷媒体でもデジタルメディアでも、正字正かな遣い(促音拗音は小さくする)で表記するというルールを持っているのだが、べつに読みにくいというコトはない。それどころか、論文という形式を踏んでいながら、ちょっとボヤいてみせたり、道化てみせたりする文章の芸と、ひとつひとつが超短いコラムといえなくもない精密かつおもしろい注のおかげで、たのしく読み終えるコトができた。


わたしゃ、近代文学研究者でもなければ評論家でもないので……とあらかじめ逃げをうっておいて、自分の理解した範囲で書くしかないのだが、この論文には、型破りな点がいくつかある。『文壇ユウモア』は、故・保昌正夫氏を除けば、あまり注目されてこなかった。そういう題材を扱うとき、研究者は新発見を誇りがちだ。森洋介も1−3「佚文発掘――有名性の再認」で、『文壇ユウモア』に直木三十五徳田秋声千葉亀雄、川端康成らの全集等への未収録文を挙げる。そして、それぞれの作家研究者がこれらの文章を見落としていることに対し、「足元の草むしり」が足りないと戒める。


ココまでだったら、たんにイヤミな物知り坊主にすぎまい。しかし、森洋介は、「右はいっぱし研究者ぶってその儀式の真似事をしてみたのみ、様になってをるまい」と云ってのける。そして、次のように述べる。


正味の話が、如上の佚文なぞは『文壇ユウモア』全体から見ればごく一部に過ぎない。細目を見て戴ければ一目瞭然。大半を占めるのは、無署名や、匿名や、或いは本名であれ無名に等しい者たちによる、雑文ゴシップ・軽評論その他等々々【エトセトラ】である。従来の雑誌紹介、殊に細目ではなく主要目次に留まるやうな場合には、まづ省略されがちだった項目ども――その意味でも『文壇ユウモア』といふ雑誌雑誌は、附録【おまけ】を本篇【メイン】にしたものだった。折角細目を作ってはみたが、かういふ無名性乃至匿名性(anonimity)に充ち満ちた誌面では、目次といふ題名と執筆者名との羅列に対して、知ってゐる作家の名――著作集が出たり書誌が編まれたりするやうな――を見出すことで読み解くといふ常套手段は、通用しない。

(原文は正字、以下同。【】はルビ)


では、その「常套手段」を排して、森洋介はどういうアプローチを試みたか。ごく大ざっぱにまとめると、(1)有名人作家ジャーナリスト)がこの雑誌で何を書いたか、ではなく、どのように語られたか(ゴシップ化されたか)、(2)その雑文ゴシップの場に、読者がどのように参加したか、(3)この雑誌で、有名性に依存せず「正典化」されない「匿名批評」がいかに活躍したか、を論じていく。そして、『文壇ユウモア』を、「草創期『文藝春秋』の復興であると同時に、再編される文壇意識を反映して変容しつつあった雑文ゴシップの系譜を、新潮社系の『文学時代』や『近代生活』等から半ば時期をずらして受け止めながら、次代の『文芸通信』『月刊文章』等へとバトンタッチする位置にあった」と評価している。


以上のまとめは正確を欠いているだろうし、細かいところに入り込むほどおもしろくなるのがこの論文の特長だと思うので、ぜひとも現物を読んでいただきたい。抜刷がまだ余っているかはぼくの知るところではないが、読みたいという熱意のある人にはナンとかしてくれるでしょう。そのうち、サイトに載るかもしれませんが。とにかく、論文という形式の文章を読んで、久しぶりに知的好奇心を刺激された。心ある(助成金つきのセンセイたちの論文集を機械的に生産しているのではない)国文学関係の版元は、森洋介氏に注目されたし。


吉祥寺で降りて、〈ブックオフ〉を覗く。いつの間にか、二階でも営業していた。そこから井の頭通りを三鷹に向かって歩く。10分ぐらい歩いた頃、右側に〈ブックステーション〉(だったかな?)という店が。閉店セールとあったので、安いかなと思って入ってみたら唖然。よくある文庫が300円、400円で、品切れ(といっても珍しいもんじゃない)が500円、600円と付いている。状態もおせじにもイイといえないモノばかり。わずか5分しかいなかったけど、コレじゃあ、ね。デザイン評論の臼田捷治さん宅にうかがい、5時まで話す。寡黙な臼田さんと2時間も喋ったのは、自己記録だなあ。


今度は三鷹まで歩き、南口へ。〈上々堂〉に行くと、『おに吉 古本案内』第3号が出ていた。恒例・ふるほんの歌は上野茂都さんの「仏文節」。エッセイ穂村弘三浦しをんみやこうせい。南陀楼も「一九九〇年のおに吉自転車ライフ」という短文を書きました。ここでは店の名前を省いたけど、自転車で通った吉祥寺ビデオ屋は〈ジャンボシアター〉。井の頭通りにあったのだが、さっき歩いたときに見たら、やっぱり消えていた。「古書モクロー」の先月の売上と、『おに吉』の原稿料(もらえると思ってなかったので、ウレシイ)をいただいたので、山川方夫『愛のごとく』(新潮社)1200円、を買う。


そのあと、駅のほうに戻って、〈文鳥舎〉(http://www12.plala.or.jp/bunchousha/)へ。まだ店の看板を出そうとしているトコロに入ってしまう。こないだは30分しかいなかったが、この店、気取ってなくて静かで、好きだなー。カウンターに座れば大森さんや佐藤さんとハナシができるし、本を読みたければテーブルを選べばいい。大森さんは編集者でもあるので、こんな本をやりたいというハナシをする。来週は、牧野信一朗読会のファイナルで、古井由吉池内紀対談がある。ぼくは関西にいて行けないけど、岡崎さんやほかの知り合いが聞きに行くそうです。この店は『ブックカフェものがたり』にも登場しますので、よろしく。


ウチに帰り、テレビメル・ギブソン主演《ペイバック》(1998、米)を観る。つまんなきゃ途中でやめようかと思っていたのだが、意外とオモシロイ。リチャード・スターク(=ドナルド・E・ウエストレイク)の「悪党パーカーシリーズ映画化で、乾いた演出と、現代っぽくない街を映すカメラがイイ。ハードボイルドって、原則に忠実すぎるところがときどき笑えるのだが、この映画でもそういう笑いのツボがちゃんと用意されていた(7万ドルへのこだわりとか)。閉店間際の〈古書ほうろう〉に行き、『おに吉』を渡す。旬公が「あっ」と云ってCDコーナーに駆け寄る。ナニかと思えば、ジャケットに牛の人形(ヘンな色でペインティングされたもの)が使われているのだ。こないだ、彼女アメリカで買ってきた人形とソックリ。[CHICAGO 2018…It’s Gonna Change]という二枚組のオムニバスで、ジム・オルークほかシカゴ音響派(っていうの? よくワカランけど)が参加してる。〈サミット〉に寄って食料を買い、ウチに帰る。

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2005-10-27 単純作業の日

午前中は短い原稿を一本書く。昼飯の後、長年放置していたある作業にかかる。よくもまあ、ココまで溜め込んだものだ。夜11時にいちおう終了。疲れた。

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2005-10-26 ブックカフェの本を出します

まず、告知。9月から編集者として働いているG社で、『ブックカフェものがたり 本とコーヒーのある店づくり』という本を、12月上旬に刊行する予定です。本書は、メタローグから刊行予定だったのですが、同社の倒産により、宙に浮いていた企画です。ぼくが8月に「チェコのマッチラベル展」のために、大阪の〈calo bookshop&cafe〉に行ったときに、caloの石川さんにこの本のゲラを見せてもらい、「いい内容なのにもったいない。じゃあ、今度入るG社で出そう」というという具合に、偶然がうまく重なって、刊行が決まったのです。メタローグで予定されていた内容をベースにしながら、デザインレイアウトを一新し、新しいデータも加えています。


この本の宣伝をしなければならないのですが、この日記とは分けておきたいという気持ちもあり、別にブログをひとつつくりました。それが、きょうから公開する「『ブックカフェものがたり』公式ブログ」(http://kawasusu.exblog.jp/)です。この本の内容紹介や刊行予定に加えて、巻末に載せるブックカフェリスト情報収集の場にしたいと考えています。「G社ってドコだろう?」と思われていた方も、そちらで判明しますので、ぜひご覧になってください。この日記南陀楼綾繁としての活動に絞りたいと思っていますので、ココでは今後も「G社」でいきますんで、そこんとこヨロシク。【10月28日追記 今朝、はてなキーワードの「南陀楼綾繁」にG社の実名が記されていたので、そこは削除させてもらいました。編集してくださった方にはすみませんが、G社の人もときどき読んでいるらしいので……。もちろん、ご自分のブログでG社の名前を出していただくのは構いません。『ブックカフェものがたり』に触れていただけるのは、もっと歓迎です。】それと、エキサイトブログにしたのは、とくに理由はありませんが、はてな勝手が違うので、さっそく混乱しています。エキサイトでの書物ブログの諸先輩(退屈男さん、四谷書房さん……)には、いろいろお伺いを立てることになると思いますので、お見捨てなく。では、公開します。


日記に戻る。8時半起きで、今日も出勤日。ドトーのごとき打ち合わせと、メール電話のやり取りのうちに時間が過ぎる。やらねばならないコトが、まだたくさんある。7時過ぎ、神保町蕎麦屋へ。堀切直人さん、右文書院の青柳さん、書肆アクセスの畠中さんと青木さんで、11月中旬からアクセスで開催されるブックフェアの打ち合わせ。今週日曜日(30日)、古書会館のイベント「テクストの祝祭日」の堀切直人鈴木地蔵トークショーで、そのブックフェアのチラシを配布します。このメンバーだと、打ち合わせしてても、すぐにハナシがヨコにずれる。飛び入りゲストセドローくんも呆れ顔。ま、楽しいからイイけど。堀切さん、青柳さんと西日暮里で別れて、帰る。ウチでも複数のゲラが待っていた。

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2005-10-25 櫻井書店の軌跡を見る

8時半起き。夕べは寒かったなあ。布団から出るのがツライ。出勤日。打ち合わせしたり、ゲラチェックをしていると1時半。古書会館に出かけ、2階で「櫻井均と櫻井書店昭和」展を見る。櫻井書店の刊行物、装幀原画、書簡などが展示されている。点数は少ないが、一通り見ると、この版元の出す本の趣味のよさが伝わってくる。田中茂穂『魚の眼』(昭和7、装幀・鈴木朱雀)の本体表紙の魚の絵が気に入った。書簡では、太宰治から櫻井均への手紙が、櫻井書店から出す約束の単行本をよその出版社から出したいという言い訳手紙で、文壇の先輩に云われたのでしょうがないなどと、くどくど事情を書いているのが太宰らしい。櫻井均の単行本『奈落の作者』(文治堂書店)も展示されていたが、ガラスケース越しに目次を見ると、作家についてや東京の回想など、とても興味深い内容。同じ版元の雑誌『蝉』の櫻井追悼号とともに、いつか手に入れて読んでみたい。受付で記帳すると、櫻井書店の単行本の表紙を絵葉書にしたのを1枚くれた。中川一政装幀の田中英光『我が西遊記』を選ぶ。ついでに、8枚セット(500円)も買う。あと、櫻井均の句集も出ていたが、そちらは買わず。観てよかったと思う展示だった。明日までやってるので、まだのヒトはぜひ。


地下の新宿展へ。セドロー牛イチローに挨拶。梅崎春生『狂い凧』(講談社)蔵印・少線引きで400円、森奈津子東京異端者日記』(廣済堂出版)682円、を買う。後者はセクシャルなテーマを書く作家日記本。じつは、古本屋の出てくるホラー『快楽殿』(徳間ノベルス)の作者の日記本かと思って買ったのだが、あっちは「森真沙子」であった。しかし、コレはコレでおもしろそう。


午後は書類をまとめ、夕方から編集会議。やりたいと思っていた本が、来年は何冊か出せそうだ。ウチに帰り、ゲラ直しなどあれこれ。先日のジャズ喫茶の件で、10月24日林哲夫さんの日記http://www.geocities.jp/sumus_co/daily-sumus0510-3.html)にこうある。「ナンダロウアヤシゲな日々(10/22)に永山則夫バイトしていたジャズ喫茶は「ジャズヴィレッジ」なのか「ビレッジ・バンガード」なのかという疑問が出ていたが、も〜、『喫茶店の時代』の索引を引けばバッチリなんですけど(!)、240〜242頁に出ています。後者」。すいません。この本を見れば載っているかもと思ったのですが、例によって出てこなかったのです。2冊所蔵しているハズなのに……。

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2005-10-24 帰ってきた!

午後、退院する旬公を病院まで迎えに行く。数日間なのに、やはり荷物が増える。ウチに着いて、ホッと一息。心配してくださった皆様、ありがとうございます。今日はとりあえず、コレだけ。

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2005-10-23 座業はツライよ

朝9時起き。深夜まで床に座りっぱなしだったので、腰が痛い。今日は机で仕事するコトにしてパソコンに向かう。午前中は「まぼろしチャンネル」(http://www.maboroshi-ch.com/)の原稿。今回は私学の文化祭のハナシ。書き終わってから、来月の関西行きの深夜バスを予約する。仕事の合間をぬって、京都・知恩寺の古本市と〈京都パラダイス〉での林哲夫装幀展、そして、以下のようなイベントも。


古本ソムリエ山本善行の世界 百貨店に大放出せえる」

11月2日(水)〜8日(火)

四条河原町阪急百貨店5階


映画美術関係本を中心に大放出します。今までは、2冊以上持っている本を中心に気軽に放出してきましたが、ガケ書房、阪急百貨店と打ち合わせを重ねるうちに今回はそんな簡単なことでは済まないような雰囲気になってきました。逃げ出したいような今日この頃です。もうどうにでもなれといった気持ちもあって、他人事のようですが、こんなときにいい本が並ぶのではないでしょうか。

山本善行


というコメント山本さんからいただきました。しかし、百貨店で個人で古本市なんてできるモノなのだろうか……。関西では、この機会に私学の文化祭(というか古本市)に行きたいのだが、手持ちのデータでは適当学校がナイのだった。関西の方で、「ウチの近所で11月4、5、6日に、古本市がある文化祭があるぞ」という方は、メールで教えてくださいませ。きっと行きますから。


噂の東京マガジン》を見ながら出雲そばを喰い、再び机に戻る。限界まで遅れた『レモンクラブ』の原稿。今回は、礫川全次『サンカ三角寛 消えた漂泊民をめぐる謎』(平凡社新書)を。コレはねー、かなりの奇書なんですわ。テーマも怪しいですが、この本が新書で出たコトじたいが珍しいと思う。その辺のカンジをうまく伝えられたか、どうか。


自転車で〈ときわ食堂〉へ。チューハイとえのきバター。飲みながら、図書館で借りた、佐々木守ネオンサイン月光仮面 宣弘社・小林利雄の仕事』(筑摩書房)を読む。タイトルどおり、広告代理店として広告ネオンサイン制作をする一方で、宣弘社プロダクションとして『月光仮面』『豹(ジャガー)の眼』『怪傑ハリマオ』などのTV番組制作した人物についての本。かなり興味深い題材だと思うが、ちょっと薄味の本だった。ぼくの興味からいえば、阿久悠上村一夫が宣弘社で働いていたエピソードなんて、もっと深く掘り下げてほしかったのだが(上村の『同棲時代と僕』広論社、にはこの時代のハナシがちょっとだけ出てくる)。


古書ほうろう〉で『谷根千』の最新号を買う。今回は引越し特集。不忍ブックストリートの連中の引越し話が次々と出てくる。おたより欄には、「一箱古本市」で谷根千賞を受賞した〈ふぉっくす舎〉(http://negitet.at.webry.info/)のNEGIさんの投書が載っていた。100円均一コーナーに、平岡正明本がたくさん出ている。ひと昔前には早稲田古本屋で山ほどあったが、見向きもしなかった。しかし、『昭和ジャズ喫茶伝説』を読んで、あの時代の気分に触れたくなり、『地獄24』(芳賀書店)と『永久男根16』(イザラ書房)を買う。後者のまえがきを見ると、両書は「同系の書冊」だとか。しかし、スゴイ書名だなあ。


ウチに帰り、今日のもう一本、『進学レーダー』の原稿を書く。一日に三本書くとすごく働いたようになるのだが、まだまだ山は越えてないのであった。身体にはてきめんに負担がくるけれど。座業はツライね。ビデオで、石井輝男監督『直撃!地獄拳』(1974)を観る。バカバカしさは2作目には負けるけど、こっちもけっこうオモシロイ。シナリオ監督本人だが、穴だらけ。麻薬撲滅が目的のミッションなのに、「マフィアからヤクを奪って金に換えれば大もうけだ」と全員が云ってるのが、おかしい。それじゃ、ヤクの流通に貢献するだけだろうが。そんな一人ツッコミもむなしく響く、夜半の南陀楼宅であった。明日は旬公が退院してくる予定。

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2005-10-22 五反田に行かずに逗子開成に行った

朝8時半起き。ちょっと寝過ごした。急いで西日暮里駅に行き、立ち食いそばを食べて、山手線東京駅へ。車中の読書は、平岡正明昭和ジャズ喫茶伝説』(平凡社)。この数日持ち歩いていたが、読了。おもしろくて、まだまだ読みたいカンジ。このタイトルではジャズ喫茶の回顧みたいだが、平岡正明のコトだから、当然ハナシはあっちにいきコッチにいきと、ジャズアドリブのごとく自由自在。「時代相はガラス窓の外の風景として放っておく」(あとがき)方針が、かえって、時代の刻印をあざやかに浮かび上がらせてくれている。上野谷中ジャズ喫茶も出てきて、「不忍ブックストリート」的にも興味深い。本書では小さなコトはあまり重要ではないし、揚げ足を取るわけではないのだが、ひとつだけ。永山則夫アルバイトしていた店は、〈ジャズヴィレッジ〉ではなく、〈ビレッジ・バンガード〉ではないだろうか(『60年代燃える東京」を歩く』などを参照した限りでは)。この時期の新宿には、「ヴィレッジ」あるいは「ビレッジ」と付くジャズ喫茶が何店かあったようだ(〈ヴィレッジゲイト〉という店もあった)。この辺は、ヘタな資料よりは、新宿に詳しい奥成達さんに訊けば一発だから、昨夜のコンサートのあとで訊こうと思っていたのだが、会えなくて残念。


【追記。さっき奥成さんと電話で話したのだが、〈ジャズヴィレッジ〉は店内でハイミナールを飲む連中がいるなど、ガラの悪い店だったそうだ。中上健次などが溜まっていたとのこと。平岡本の「ギラギラ趣味の演出」の店という記述とかなりイメージが違う。また、ビートたけしがボーイとして働いていたのは〈びざーる〉ではないか、とも。この店には萩原朔美がよく来たらしい。『ifeel』2005年冬号(特集「新宿イコンたち、60‘s」)のアンケートで、萩原はこの店に入り浸っているウチに、ボーイとして働くようになったと書いている。「この時、一緒にボーイをしていた四人(略)、その内の一人は、海外の映画祭で受賞したりしている。芸大教授北野武監督である」。うーん、永山則夫が働いていたのは、〈ジャズヴィレッジ〉なのか〈ビレッジ・バンガード〉なのか、まだワカラナイ。新宿歴史博物館喫茶店展の図録を見たら載っているかもしれないが、例によって出てこない。なので、とりあえずココまで。】


大船で乗り換えて、逗子に着いたのは10時過ぎ。「なぎさ通り」という商店街を通り抜けて、逗子開成学園へ向かう。去年に続いて二回目の文化祭。買ったのは、鈴木信太郎記憶の蜃気楼』、佐多稲子『月の宴』(以上、講談社文芸文庫)、スタインベック『気まぐれバス』などの文庫8冊、『獅子文六全集』(朝日新聞社)4冊、黒川洋『詩集 涙もろい男たち』(青娥書房)。黒川氏は秋山清の詩誌『コスモス』の同人で、『彷書月刊』にも寄稿しているヒト。『獅子文六全集』は全巻あったが、とても持ち帰れないしウチに置けないので、随筆の巻だけにした。『新青年』に書いた読み物から戦後エッセイまで網羅してるので、持っておくと便利。ビニールカバーがベトベトしているので、あとで拭かないと。会計のとき、昨年とおなじ女性先生にお礼を云われる。場所ふさぎな獅子文六を持っていってくださって……というニュアンスだった。


駅まで戻り、コインローカーに買った本を入れる。バスに乗って、森戸神社で降りる。スグ近くに〈魚佐〉がある。魚料理の店で、味も量も値段のリーズナブルなところも最高の店。昨年も逗子開成のあとに寄って、すっかり気に入った。前回は開店後に行ってかなり並んだので、今回は早めに。さすがに早すぎたらしく、一番乗り。少しすると後にヒトが並ぶ。雨が降ってきたので傘を差し、本を読みながら待つ。12時ちょっと前、「お待たせしました」の声がかかる。一人でも合席にせずに、ゆっくり座らせてくれるのが嬉しい。ミックスフライ定食(イワシ、アジ、ホタテ、カキ)とシラスおろしを食べる。ウマイ。ココは量が多いので、あとから入ってきた、おばあさんと熟年夫婦の三人組が、各自定食を頼んだ上に、2品も追加していて、大丈夫かと心配していたら、その後に入ってきた息子が、刺身定食とミックスフライ定食を一人で頼む。おそらくすさまじい量になったハズだが、食べ切れたのだろうか? もっともこの店では、みんな健啖家になるようで、ワリとたくさん注文している。


バスで駅に戻り、横須賀線に乗って品川へ。そこから飯田橋病院へ行く。談話室には、旬公とアメリカ人のHくんが。資料を見ながら食肉のハナシをしていた。Hくんがサンカに興味を持っているというので、最近読んだ礫川全次『サンカ三角寛 消えた漂泊民をめぐる謎』(平凡社新書)を取り出し、サンカのハナシをひとくさり。周囲にいた善良な入院患者が、我々を異物のように眺めていたのは気のせいか。


ウチに帰り、ちょっと休んでから、単行本のゲラを見る。6時間ぐらいかけて、一冊分を見終わる。そろそろ発表してもイイかな。今度、右文書院から、川崎彰彦さんの『ぼくの早稲田時代』という小説が刊行されるのだ。大阪の『海浪』という同人誌岡崎武志さんも何度か寄稿している)に連載されたもので、380ページに達する長篇だ。1950年代早稲田在学中の青春を描いたもので、あっと驚くヒトたちも登場する。装幀は林哲夫さん、挟み込みの栞にも川崎さんと関係の深いお三方が寄稿。この本の編集をぼくがやってるのであった。いまのところ、12月上旬刊行予定。定価などが決まったらまたお知らせします。身体は疲れたが、調子が出てきたので、もう一冊のゲラを見る。こちらについては、近いうち(たぶん数日中)に発表します。3時すぎに区切りをつけ、寝たのは4時だった。


ちょっと追加。最近よく読んでいた「書物蔵」(http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/)が今日(10月23日)で閉鎖される。図書館学図書館関係の資料を蒐集する過程を通して、さまざまな問題提起をしていく硬派なブログで気に入っていたのだが(ただ、「やつし」とはいえ、あの文体はちょっとね)。どんなヒトがやっているか会ってみたくなり、先日の「一部屋古本市」にお誘いしたところ、来てくださった。閉鎖は残念だが、今後もプライベートモードで書かれるようである。ブログ上でも古書展でもどこかでまたお会いできるのを楽しみにしている(って、今週の古書展で会ったりして)。

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2005-10-21 岡崎さんと聴く、奏楽堂の渋谷毅

朝8時半起き。今日も出勤日。昨夜の残りで朝飯を済ませ、出かける。仕事場では苦手な原価計算の材料を揃えたり、ゲラを読んだり。1時半に出て、神保町のそば屋で昼飯。〈書肆アクセス〉で、坪内祐三『極私的東京名所案内』(彷徨舎)を買う。こないだのUBCで買ったというヒトが多かったが、ぼくも行っていたにもかかわらず、気づかずに帰ってしまったのだった。新書サイズで函入り、手にすっぽり収まる大きさ。ブルー東京風景の箱から本体を抜き出すと、黄色ベタカバーが鮮やかに現われる。このような、坪内さんの「小さな本」を待っていたのだ、という気がする。たぶん、この小さな本から発見することは多いだろうという予感がする。


珈琲館〉で、右文書院の青柳さんと打ち合わせ。青柳さん、「さっき、田村書店の外台で買ったんです」と4、5冊を見せる。一目見て、絶句。今和次郎『新版大東京案内』600円、生方敏郎明治大正見聞史』600円。中公やちくま文庫じゃないよ、戦前の初刊本だ。さらに、篠田鉱造『銀座築地物語絵巻』200円、帝大新聞アンソロジー読書散歩』200円。極めつけは、石角春之助『銀座女譚』が200円!(オヨヨ書林は1万円つけている)。一冊だけだったら、「ヨカッタですねえ」と祝福するところだが、この5冊をたった2000円で入手した青柳さんには、嫉妬を覚えた。うらやましい……。


飯田橋の〈パウワウ〉でデザイナーKさんと打ち合わせ。そのあと、病院に旬公をお見舞いに。仕事場に取って返し、1時間でもろもろ片付けてから出る。神田まで歩いて、山手線上野へ。公園口で、岡崎武志さんと『ぐるり』の五十嵐さんと待ち合わせ。3人で、渋谷毅コンサートを見に行くのだ。岡崎さんはこの秋、大学カルチャーセンター古本講座で忙しい。古本道場の道場主だったり、古本教授だったりと、まさに古本界のセレブと云えよう。晩鮭亭さんが今度、岡崎さんとアン・サリーライブに行く、というように、いま、古本界ではその岡崎さんと一緒にライブを見ることがステータスとなっている(もうひとつのステータスは、セドロー牛イチロー主催セドリツアーに招待されること)。そのうち、アクセスの「黒いでっぱり」こと畠中さんも、クレージーケンバンドライブ岡崎さんを招待するであろう。


会場は、上野公園の中にある〈奏楽堂〉(http://www.taitocity.net/taito/sougakudou/)。明治23年建築の「日本最古の木造の洋式音楽ホール」で、ジャズを聴くこの催し、ぼくは3年目だ。会場に入ると、奥成達さんがいらした。第一部は渋谷さんのソロ。休憩を挟んで、坂田さんとのデュオ坂田さん、出てきただけで笑いを取っている。最初はスタンダードを演奏したが、そのあとは、ピアノに乗せて日本書紀藤原定家に節をつけて唄ったり、現代音楽風の曲があったり、鳥取県民謡があったりと、いろんなスタイルの曲を聴かせる。最後は、完全にフリージャズの「ダンス」という曲で終わり。奏楽堂でフリージャズが聴けるとは思わなかった。アンコール渋谷さんが一曲やって終わり。いいコンサートだった。


終わって、五十嵐さんと二人で谷中のほうへ。三崎坂上にある〈町人〉に入る。いまのマスターに代わるずっと前、おばさんがやっていた時期に一度入っただけ。とても変わった店だという印象があった。久しぶりに入ると、そのイメージどおりで、新しいマスターも先代がかぶっていた「ずきん」を受け継いでいた。この店ではライブ落語企画していて、来週30日(日)には福島泰樹の絶叫短歌ライブをやるという。前も食べたことのある「おいらん焼き」(お好み焼きみたいなもの)ほかを食べて、アレコレ話す。お互いにいろいろやりたいことはあるよなあ、五十嵐さん。11時に日暮里駅で別れて、ウチに帰る。

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2005-10-20 オマエはドコに向かうのか?

昨夜は侯孝賢監督珈琲時光》(2004)をビデオで観た。観ているうちにだんだんムカムカしてきた。なんだ、こりゃ。アングル固定・長回しのカメラ東京風景を撮ってりゃ、「小津安二郎生誕百年記念映画」かよ。この中に出てくる店を明日取材するので、ガマンして最後まで観たが、それがなければ途中でヤメていただろう。駅や街の光景などは場所を特定しやすいので、20年後に観たら、それなりに懐かしい時代の記録ではあるんだろうが……。


それと気になるのは、冒頭の主人公一青窈)の行動だ。1)台湾から帰国して、2)翌日、都電荒川線沿線鬼子母神駅か?)のアパートに帰り、3)荒川線大塚(?)でJRに乗り換え、4)水道橋(?)で降りて白山通りの古本屋へ、5)日暮里駅のコインロッカーで荷物を取り、6)高崎へ向かう、というルート。これのドコがおかしいかといえば、「高崎に戻るついでに寄る」というようなコトを、主人公古本屋電話してるからなのだ。鬼子母神から高崎に向かうんだったら、水道橋なんぞに寄らずに、大塚で乗り換えてまっすぐ上野に向かえばイイじゃないか。ぼくが駅を勘違いしているのかもしれないが、このルートは明らかにヘンだ。この映画テーマがあるとしたら、「移動」ということなのだろうから、その辺を「映画だから」とイイカゲンに片付けるわけにはいかないだろう。このシーンについて、納得の行く移動ルートをご存知の方がいらっしゃったら、ご教示を乞う。


上は昨夜の流し見の記憶で書いたので、ちょっとマチガイがあった。ビデオを見返すと、一青窈のセリフは、「高崎に帰るから、その前に寄るわ」というもの。「ついで」ではないのだから、どんなルートをたどろうが、余計なお世話ではあった。しかし、すごく遠回りのルートなのに、通りがかりのようなニュアンスで話しているのが気になるのだ。3)は明らかに大塚で、ココで山手線に乗り換えて、秋葉原で乗り換え、お茶の水で降りているようだ。降りた直後に、道の右側に見えるのは、〈丸善〉の前にある〈三進堂書店〉なのでは? で、次のショットで、いきなり古本屋モデルは〈誠心堂書店〉)の店内につながるのだが、この古本屋白山通りにあることは、近所に喫茶店〈エリカ〉があることで明らかだ。つまり、ずいぶん大胆に描写をカットしているのだ。1カットが長いため、編集の際にやむを得ずカットしたのか、もともとそこまで正確に行動ルートを設定してはいなかったのかは不明だが、後者だとすれば、ちょっと納得がいかない。映画の描写にウソがあることは百も承知だが、この映画存在価値があるとすれば、東京電車や駅、街をきちんと映像に焼き付けたことだろう(だってハナシはつまんないんだもの)。ようするに、最初からウソ満載の映画ならそれでイイのだが(日活アクション映画とかで、「銀座」とテロップが出ているがじつは新宿だったとしても、誰も文句は云わない)、「ナチュラル」とか「ありのままの東京」とかの評価がちらつくこの映画で、それをやっちゃイカンだろうということだ。……どうも長々と書いてしまったが、ようするに気に入らなかったんだね、この映画のことを。


で、朝。早めに起きて、「早稲田古本村通信」の原稿を書く。今日は出勤日。3時に飯田橋に行き、病院に旬公を見舞う。「ネットがつながらない!」というので、接続をやらされる。また仕事場へ戻り、そのあと神保町の某店で取材。水道橋近くの〈旭屋書店〉で、草森紳一『随筆 本が崩れる』(文春新書)と、木村衣有子(文)・セキユリヲ(図案)『サルビア東京案内』(ピエ・ブックス)を買い、総武線秋葉原で乗り換えて、ウチへ。

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2005-10-19 待合室で読む『月の輪書林それから』

朝8時半起き。書留を受け取ったり、風呂に入ったりしてると出かける時間。JR飯田橋まで。1時前に病室へ。旬公は手術の準備にかかっている。1時半、旬公は手術室へ。ぼくは家族待合室へ。先週、いち早くもらったにもかかわらず、まだ読んでなかった、高橋徹月の輪書林それから』(晶文社)を読みはじめる。中途半端に読み流したくなかったので、しばらく積ん読にしておいたのだ。待っている家族のうるさい会話や、子どもの声に悩まされながらも、熱中して読みつぐ。高橋さんのお母さんのガン治療についての記述などは、この場で読むのにふさわしすぎた。


前回の手術のときは、1時間ほど経つと呼ばれて、「迅速病理」の結果を伝えられ、それから切除に入ったのだが、今回は2時間近く経っても呼ばれない。ちょっと心配になるが、あえて本のほうに集中する。そのうち読了。いや、スゴイ本です。高橋さんが記す一人一人、一冊一冊に驚きながら読んだ。ぼくの興味にも重なる部分がかなりあり、参考になったという意味では、前著以上だった。しかし、この本については書評では判りやすく書きにくい、という気がする。ぼくが反応したことのイチイチを具体的に説明しながら、この本を評価するにはかなりの字数と力が要る。『レモンクラブ』で取り上げるツモリだったが、見送ることに。


4時ごろ、M先生に呼ばれ、説明を受ける。予定通り終了したとのこと。今回は「迅速病理」を説明する手間は省いたみたい。前と段取りを変えられると、心臓に悪いよ。ま、無事に終わってヨカッタ。麻酔が切れるまで待つので、カバンに入っていた『本の雑誌』を読む。いつも買っているのに、巻頭から巻末までぜんぶ読んだのは久しぶりだ。コレも読み終わり、待合室のテーブルにあった『恨ミシュラン』を手にとろうかどうか、迷っているウチに、ストレッチャーに乗った旬公が出てきた。まだ意識はもうろう。病室まで戻り、しばらくヨコにいるが、ぐっすり寝ているので帰ることに。〈文鳥書店〉で、毎日ムック神田神保町古書街エリア別完全ガイド』を買う。濱野さん、写真そんなに悪くないじゃん。写真といえば、『ミステリーファンのための古書店ガイド』の野村宏平さんの顔をはじめて見た。それと、今回は全体に読み物が少ない気がする。


ウチに帰り、ビデオシドニー・ポラックザ・インタープリター、米》(2005、米)を観る。まァ、おもしろい。ただラストには拍子抜け。独裁者ってあんなに簡単に反省するモノなの? あと、いまから《珈琲時光》も観なきゃならない。明日の取材の下準備なり。


では、恒例の〈往来堂〉フェアのテコ入れです。自分の選んだ5冊の紹介は終わったので、今度は他のヒトのセレクションを勝手テコ入れします。今日は、いましろたかしの『釣れんボーイ』を。宮地さんの「泣きバイ」の効果で売れ行きは好調なようですが、ぼくもこのマンガ、大好きなので……。この文章も『レモンクラブ』で、2002年10月号に載ったもの。ちなみに、最後に出てくる「チャコさん」というのは、同誌にエロ体験エッセイ四コマを連載していた女性マンガ家で、かなり長く連載していたのだが、塩山編集長は「最近つまらなくなった」と打ち切りを宣言。性同一化障害の告白など、なかなか興味深かったんだけど。いまは、どうされているのでしょうか。


 夜中までずーっと仕事して、誰もいなくなった仕事場をあとにして、タクシーに乗ってウチに帰ると、クレジットカードの請求書とライブのお知らせ(行けるワケがない)が待っていて、奥の部屋では本の山が三つぐらい崩れている……。


 そんな夜に読んだら、確実にやる気を失なってしまうマンガがある。たとえば、つげ義春やつげ忠男、川崎ゆきお、最近だったら古谷実。普段は本棚の奥に閉まってあるのに、アタマが疲れきったピークに、そういうマンガを読むともうダメ。その日は(ひょっとして翌日も)ナンにもできない。だからといって、人生に絶望して死にたくなったりもしない。ダメ人間になっていく自分を楽しめる。


 いましろたかしの『釣れんボーイ』もそんな一冊だ。主人公のヒマシロタケシは売れないマンガ家で(「最近相手にされなくてよ、なめてんじゃねぇよ、タコ編集者どもが…ふざけやがって」)、妻が働いてなんとか生活できているようだ。


 少ない仕事もなかなか上げられず、「締め切りがくる…。なんか描かなきゃ、なんでもいいから16ページ描かなきゃ…」と苦しむ。いったんはヤル気になって、「まんが家はまんが描くのが仕事! よし気合入った!」となるが、次のコマでは「しかしこんな仕事どーしても仕事だと思えねえ。また気合抜けたっ…」と変わる。この書評コラムでさえ、なかなか書けないぼくには他人事とは思えない。ヤル気になった一瞬の気合をどう捕まえるかで、仕事ができるかどうかが決まるのだろう(島本和彦の『吼えろペン』ではこの辺りをいつもウマく表現している)。


 けっきょくナニもやらず、真っ白なママの紙(これがまた、妙にリアルなんだ)を残して、バイクで出かける。目的地は、川。アユの友釣りに命を懸けているのだ。

 貧乏なのに、飛行機で地方の川に行ったり、二十三万八千円の釣り竿を買ったりと、釣りにはカネを掛けている。しかも、久しぶりに連載の依頼が来たのに、五月からはアユ釣りの時期だからと、断ってしまうのだ。まさに釣りバカ


 コレで釣りが上手だったら、まだ救われるのだが、そこまで打ち込んでいても、かなりヘタ。一匹も釣れずに帰る日も多いし、釣り大会に出ても(何度も下見までしておいて)予選敗退。ああ、ダメなヒトだ。


 とにかく、ヒマシロ先生の迷走ぶりはすごくて、突然金髪にしたり、女編集者病院先生にホレてラブレターを描いたり(「いい女」とか「かわいい」とか云ってるけど、絵を見ると「どこが?」という女ばっかりなのが笑える)、ギタードラムを同時に習いはじめたり……。四十歳近いハズなのに、いったいドコに向かってるんだろう、このヒトは?


 初期作品集の『トコトコ節』(イースト・プレス)の自筆年譜によれば、いましろたかし高知県出身で、十九歳のときに「ミュージシャンになると周囲に宣言するも説得され断念、以後麻雀に打ち込む。なんだかわからないが『プロ』に憧れる」。そして就職浪人のあと、「いかなる『プロ』にもなれないことに気がつき帰郷」した。しかしそこでも、仕事は首になり、マンガ家をめざす。そして、各社に持ち込んだ末、ようやくデビュー。売れないマンガ家となった。実生活でも迷走を繰り返してきたのだ。


 デビューから十五年経ったこの時期に、いましろたかしは注目されはじめている。『コミックビーム』に数年間連載された『釣れんボーイ』が八百ページの厚い単行本にまとまり、『ハーツ&マインズ』『ザ・ライトスタッフ』を収録した『初期のいましろたかし』(小学館)も出た。『トコトコ節』も増刷されたし、一年ほど前には狩撫麻礼と組んだ『ハードコア』も復刻されている。


 コレらの動きは、おそらく各社にいるいましろ好きの編集者が共謀して仕掛けたものだろうが、十五年目にしてようやく、いましろのマンガを普通に読む読者が現れてきたということなのかもしれない(だから、復刻版などに載っている、売れてるマンガ家からの「以前からいましろさんのマンガが好きでした」というメッセージはかなり気持ち悪い。ホントかよ。ただの流行り好きなんじゃないの?)


 ぼくは、これまでのいましろの絵柄(体臭ぷんぷんというカンジ)には、正直ちょっと引き気味だったけど、今回の『釣れんボーイ』のようなシンプルな描線はとても好きだ。つげ義春絵コンテそのままのようなマンガを描いたことがあるが、あんなカンジで、力の抜け具合が新しいおもしろさを生み出している。しばらくはこのセンで行ってほしいな。


 しかし、こんなマンガばかり読んでると、マジに仕事したくなくなってくる。いやいや、『レモンクラブ』だけは別っすよ!(こう書いとかないと、いつ打ち切りになることか……。チャコさんの例もあるコトだし……)

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2005-10-18 快適なる病室と早口の先生

朝早く(といっても6時)起きて、『暮しの手帖』に載る「暮しと本と 不忍界隈本棚めぐり」という原稿を書く。不忍ブックストリートのことならいくらでも書くコトがあるのだが、字数が短いので、まとめに手こずる。でも、ナンとか9時半に上がり、送信してから仕事場へ。朝早く(といっても6時)起きて、『暮しの手帖』に載る「暮しと本と 不忍界隈本棚めぐり」という原稿を書く。不忍ブックストリートのことならいくらでも書くコトがあるのだが、字数が短いので、まとめに手こずる。でも、ナンとか9時半に上がり、送信してから仕事場へ。右文書院より新刊、暮尾淳『ぼつぼつぼちら』(1700円)が届いていた。詩、俳句のほか、石垣りん伊藤信吉、岡村昭彦への追悼文を収録。編集堀切直人さん。


4時まで仕事して、飯田橋へ。病院に行き、旬公に会う。今回の病室は、以前よりちょっとだけスペースが広い。コレで仕事できると喜んでた。持ってくるモノをあれこれ頼まれる。しかし、そのあとM先生に聞いた説明では、前回よりは早く退院できるということで、いきなり不要になる。でもまあ、よかった。M先生はかなり早口で、ときどき聞き取れないことがある。ある言葉の書き方を訊いたときに、漢字を書いて「◎◎◎」と云ったので、反射的に「そうですね」と答えたら、「そうですねって、傷つくなあ」と。「字が下手だから読みにくいね」と云ったらしい。早口で卑下しないでください、肯定しちゃうから。


ウチに帰り、ビデオジャッキー・チェン主演《香港国際警察》(2004)を観る。ストーリーはありがちだし、ジャッキーもそうとうお疲れのカンジだが、それでも最後まで見せる。そのあと、仕事の本を読んでいたら、たちまち1時になった。


では、〈往来堂〉フェアのテコ入れ第5弾。最後の本は、『60年代燃える東京」を歩く』です。この本については、タイミングが合わず、書評で取り上げなかったので、新たに書くことにします。


本書は、1960年代に起きた重大事件・できごとを年代順に取り上げていくものだ。その事件とは、安保闘争(1960)、爆弾魔・草加次郎事件(1962)、吉展ちゃん誘拐事件(1963)、東京モノレール開業、東海道新幹線開業、東京オリンピック(以上1964)、ビートルズ来日(1966)、霞ヶ関超高層ビル永山則夫連続射殺事件、新宿騒乱、三億円強奪事件(1968)、東大紛争、アポロ11号月面軟着陸、天井桟敷・状況劇場乱闘事件(1969)。最後のを除いては、教科書にも載るような著名な事件だ。


著者(日高恒太朗、須藤靖貴、山崎マキコが分担して執筆)は、これらの事件の経過をコンパクトにまとめ、新聞雑誌の反応を伝える。また、当時の写真も掲載している。しかし、コレだけの内容であれば、先行している戦後史関係の本で十分であろう。本書のキモは、それぞれの事件に関連している場所を、自分たちの足でたどり直し、地図を作成しているトコロだ。この「コースガイド」があるからこそ、読者は、当時の人々の感覚をイメージするコトができたり、意外な事実を知ったりすることができるのだ。


たとえば、日比谷公園から国会図書館へ向かった安保反対のデモ行進を再現してみると、当時はナカッタ国会図書館の和式庭園にぶつかる。これは、霞ヶ関の官庁街が1960年代に形成されたために起こった変化で、「60年当時と大きく変わったのは、国会議事堂を取り囲む周辺道路三角形から長方形になったことである」と著者は云う。つまり、いま国会議事堂の前に立ったとしても、当時の地図がアタマに描けなければ、事実とは微妙に違うということなのだ。


また、吉展ちゃん殺人事件で、死体南千住の円通寺の敷地に埋められたことは知っていたが、それ以前、犯人と吉展ちゃんが、入谷から三ノ輪まで歩いたというコトははじめて知った。二人が出会った入谷公園は、ひょっとして、ぼくがこないだ見に行ったマンションの隣にあった公園なのでは……。吉展ちゃんは、南千住東京スタジアム(この頃はまだあった)の辺りで「おじさんの家までまだ遠いの。足が痛いよ」と泣いたそうだが、入谷からココまで自転車でも15分近くはかかる。その遠さが犯行を決めたのだ。


そして、連続射殺魔・永山則夫の章では、永山が住んでいた野方駅近くのアパートがいまも残っていることをつきとめる。また、永山は新宿ジャズ喫茶ビレッジ・バンガード〉で深夜勤務のボーイをしていたが、そのとき昼にボーイをしていたのがビートたけし(本書に序文を寄せている)であり、客には高校卒業したばかりの中上健次がいた。


というように、本書では、地図を見ながら、1960年代東京が実感できる。本文のレイアウトや注の入れ方など、編集も見事。「この本ではライターの取材に、企画者である担当編集者が全て同行している」(日高恒太朗「発奮させられた仕事」、『週刊読書人2005年7月29日号)というが、さもありなん。編集の力が発揮された一冊なのである。

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2005-10-17 雨の日もセッセとお出かけ

朝8時半起き。『進学レーダー』の原稿を書く。一冊につき380字という短さなので、書評というより本の紹介でしかないが、ふだんとは違う読者に向けて書くのは(むずかしいけど)けっこう楽しい。昼はうどん


雨が降り続いているが、ビデオを返さなければならないので、渋谷まで出かける。ナニ、けっきょくナンか理由を見つけて、外に出たいだけ。〈TSUTAYA〉で1本返し、3本借りる。半蔵門線神保町へ。〈日本特価書籍〉で、礫川全次『サンカ三角寛 消えた漂泊民をめぐる謎』(平凡社新書)を買う。未知谷から小沼丹『黒と白の猫』が出たコトを知る。「大寺さんもの」だけを一冊にまとめたもの。装幀は全集にならっている(判型は違うが)。買いたいのだが、4000円だし、未知谷全集も欲しいと思っているので、いまはガマン。とりあえず手持ちの小沢書店版『小沼丹作品集』で、『黒と白の猫』の順序で作品を拾って読んでいこうかと思う。


そのあと古書会館に行き、アンダーグラウンド・ブック・カフェを覗く。2階のイソップ挿絵の展示で、店番している濱野奈美子さんに挨拶。今年の毎日ムック神保町ガイド、ついに目次に名前が載ったねえと云うと、「自分の写真がアンマリ(むごい?)だったので、まだ見てないんですよお」と訴えられた。オレに云われても……。そう云われると、見たくなるのが人情。ぜひ買おう(野次馬)。地階の古書展では、桜井哲夫『可能性としての「戦後」』(講談社選書メチエ)500円ほかを買う。この本、花森安治についての章があり、いつか読もうと思っていた。西秋書店の出品。長新太展覧会カタログなど欲しい本が多かったが、ちょっと手が出なかった。


受付で、「櫻井均と櫻井書店昭和」展のチラシをもらう。10月21日(金)〜26日(水)、古書会館2階にて。初日2時からは、『出版の意気地』(西田書店)の著者、櫻井毅氏のミニ講演(なんだ「ミニ」って?)があるとのこと。見に行かなければならない催しが、またひとつ増えた。


ウチに帰り、雑用をいくつか。旬公が明日から入院するので、シャバのうまいメシを喰いに行く。先日ランチを食べた、三崎坂の〈ブラッセリー・フレール〉で、コースにパスタなどをプラスして、ワインもデキャンタで飲んじゃって、すっかり散財。まあ、明日から病院食だからな。お勤めご苦労様です。スグに原稿に取り掛かるツモリが、ビデオで《タワーリング・インフェルノ》(1974、米)を観はじめたら止まらず、最後まで観てしまった。子どものころ、テレビで何度も観たハズだけど、ラストの放水シーンしか覚えていない。テレビではカットされまくっていたけど、オリジナルは160分もある。でも、ゼンゼン飽きさせなかったし、「9・11」を通過したいま見ると、さらに怖さがつのる。あんまり怖いので、これから仮眠して、朝早く起きて原稿を書こう。往来堂のフェアの本の紹介は、ちょっと待ってね。

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2005-10-16 アナキストとジャズ喫茶

オールナイト帰りで昼まで寝て、12時に起きる。《噂の東京チャンネル》で、『震災時帰宅支援マップ 首都圏版』を持って都心から府中まで歩いてみる、というのを北野誠がやっていた。その2時間後、地震があったから驚いた。幸い、大したコトはなかったけど。


5時に小沢信男さん宅へ。お宅の斜め向かいの家で、ナニか展示している。期間限定ギャラリーなのだろうか? 小沢さんに、向井孝アナキストたち 〈無名の人びと〉』(「黒」刊行同人、1500円)をいただく。2003年に83歳で亡くなった向井孝というひとについて、ぼくは彼が「アナキスト詩人」と云われていることぐらいしか知らなかったが、小沢さんが『みすず』6月号で彼のことを「創意工夫し、実現へむけてワクワクと楽しみながら、自己責任で取り組」んだと書いているのを読んで、興味を持った。小沢さんは向井氏の活動を「闘争の芸術化」としている。なるほど、だからアナキストであり、詩人なのか。本書は、向井氏の最晩年仕事をまとめたもの。タイトルが表しているように、幸徳秋水大杉栄などのアナキズム歴史に残る人物の後ろに、限りなく存在した、「すでに歴史の波間に姿を消してしまった無数の、そして生きていた時さえほとんど知られなかった無名の人たち」(はじめに)の足跡をたどっている。巻末に小沢さんが跋「読者として」を寄せている。また『みすず』の最新号もいただいた。京都に行ったハナシなどを聞く。


往来堂書店〉で、平岡正明昭和ジャズ喫茶伝説』(平凡社)を買う。〈ダウンビート〉〈響〉〈ママ〉〈ちぐさ〉などの店のマッチが表紙に使われている(装幀・鈴木成一デザイン室)。マッチ提供者は柴田浩一氏とあり、検索してみると「横濱JAZZプロムナード」実行委員会のチーフプロデューサーだと判った。平岡氏、柴田氏らが出席した「ジャズの街・横浜」という座談会が、〈有隣堂〉の『有鄰』に載っているそうだ(テキストウェブでも読める。http://www.yurindo.co.jp/yurin/back/yurin_443/yurin.html)。掲載誌を手に入れたい。〈NOMAD〉でマッチを納品し、ウチに帰る。


NHKの《新シルクロード》を見ながら晩飯。今日は「カラホト 砂に消えた西夏」。そのあと、「書評のメルマガ」を編集する。「不忍ブックストリートのつくりかた」を書くのに時間がかかって、発行したら12時過ぎていた。そういえば、こないだ東京に来た貴島公さんの滞在記がアップされている(http://homepage1.nifty.com/hebon/fhp/fhp_tky.htm)。な、長い……。このヒトの文章は、情報と考察がほどよくミックスされているのが特徴。


では、〈往来堂〉フェアのテコ入れ第3弾。今日は、『路地裏の民俗学』です。掲載誌は『週刊読書人』の「読書日録」。8月末の号でした。


某月某日

 自転車での散歩の途中、日暮里駅の東口を通った。昨年からこの辺りの再開発がはじまり、古くからある店が次々と消えている。ロータリーから入る路地にあった通称「駄菓子横丁」も、昨年秋に営業を停止し【その後、場所を変えて再開している】、いまは工事現場の無粋な塀に囲まれている。


 松平誠『駄菓子屋横丁の昭和史』(小学館)によれば、日暮里には戦前から菓子屋街があったが、急成長したのは終戦後だという。イモ飴の原料となる千葉産のイモ蜜を運ぶのに、交通の便がいい場所として、錦糸町上野(アメヤ横丁つまり「アメ横」)、そして日暮里が浮上したのだという。最盛期には百二十軒もの駄菓子屋問屋があったという。その後の区画整理で、長屋風の建物に入るコトになったそうだ。ぼくが知っているのは、問屋というよりは、観光に来た家族連れを相手に小売りしている様子である。


 著者によれば、最近になって、駄菓子は、「汚い」「不衛生」というイメージを払拭され、「一種の特殊な味わいをもつレトロなもの」として意識されるようになった。そして、「若者にもてはやされるファンシーグッズと同じもの、使用価値ではなく、差別化によって与えられた記号にすぎな」くなったと述べる。そして、駄菓子という商品の変化を、一足飛びに「昭和」の変化に結びつけ、高度成長期以前の昭和三十年は「貧しくても、目が澄んで輝いていた時代」だったのだ、と断言してしまう。


 しかし、本当にそうなのだろうか? 『路地裏の民俗学』(『歴史民俗学』二十五号、批評社)の一編、道岡義経「駄菓子屋の行方」は、西多摩郡のある町の駄菓子屋がすべてなくなったが、駄菓子屋の機能はコンビニスーパーに受け継がれていると書いている(もう少し論証が必要だろうが)。


「失われたもの」をむやみと持ち上げるのではなく、カタチを変えながら「受け継がれたもの」を考察していく、ノスタルジーの確認にとどまらない「昭和三十年代論」が、いま求められているのではないだろうか。


 コレだけだとちょっと短いので付け足すと、この特集には、「釜石橋上市場興亡秘話」「ダムの先は先に『都会』になった」「姿を消した木造船」など、近代的な民俗と現代的な風俗の関係を明らかにしようとした、優れた記事が多い。また、巻頭の芹沢俊介インタビュー昭和30年代を解読する」も、必読。以前から考えている、「人はなぜ、直接体験していない過去に、『懐かしい』という感情を抱くのか」という問題に、ヒントを与えてくれた。などと、難しいハナシは抜きにして、エピソードと写真だけでも興味深いです。オススメ

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2005-10-15 映画漬けのオールナイト

昨夜は、ビデオでジョン・フランケンハイマー監督《影なき狙撃者》(1962、米)を観たのだった。冒頭の数分で、これ最近どこかで見たハナシに似てるなと思った。そして、兵士の洗脳のシーンで気づいた。ジョナサン・デミの《クライシス・オブ・アメリカ》(2004、米)じゃないか。アレがリメイクだとは知らなかった。もっとも、《クライシス〜》はDVDで観たのだが、ハードが調子悪く画像が乱れて、ストーリーを追うのに精一杯だった。両方見てみると、オリジナルのほうが圧倒的にブキミ。共産主義という明確な「敵」が設定できていた時代じゃないと、成立しにくい映画だったんじゃないか。


朝8時半起き。旬公が図書館に行くというので、ついでにゴミを出しに一緒に下まで降りる。3階まで戻ってきたら、ナンとドアに鍵が掛かっている! 手ぶらでジャージで出たのに、鍵なんか持ってるわけはない。旬公を追いかけようとしたが、テキは自転車だし……。一瞬のウチにいろんな思念が交錯したが、ベランダに回って、そこのドアを空けたら鍵が開いていた。ゴミを出すときに、一度開けたのがそのままになっていたのだ。ああ、よかった。もし、締め出されて旬公とも連絡がつかなかったら、半日棒に振るトコロであった。あとで、旬公を蹴っとばしておいたぜ(軽くですよ)。


午前中は『彷書月刊』のゲラを直す。「エエジャナイカ」(http://d.hatena.ne.jp/akaheru/)について、9月アタマに書いたのだが、一号休刊でそのママになっていた。その後、音沙汰がなくどうしたかと心配していたら、昨日到着した。11月号は予定通りに出そうなので、まずはヨカッタ。akaheruさん、お待たせしました。ほかにも、ゲラ直しや編集上の連絡など多数。原稿を書くところまではいかず。夕方になんとか一段落。6時ごろ、〈古書ほうろう〉に行き、そのあと〈サミット〉で買い物。雨に降られて帰ってくる。晩飯は、例の肉を入れて、おでんをつくる。ダシが染みていてうまい。


まだ雨が降っているが、9時半に出かける。今夜は、「東京国際ファンタスティック映画祭」(http://tokyofanta.com/2005/)の「映画秘宝10周年記念企画 追悼!石井輝男」というオールナイト上映会があるのだった。チケットを取ったときから、なぜかずっと会場は渋谷だと思いこんでいたが、出かける前に確認したら、新宿の〈ミラノ座〉だった。あぶない、あぶない。10時すぎに着くと、ロビーはすごい人だかり。ぼくの席は前から4列目だった。かなり大きな館だったが、半分ぐらいはヒトが入っていたのでは?


10時半に開始。まず、「ファンタ」の総合プロデューサーということで、いとうせいこうが出てきたが、挨拶がどうも冴えなかった。そのあと、今夜のスポンサーだということで、KONAMIゲームソフトのデモ画面を見せられる(機材トラブルで一度中断して、もう一度最初から)が、どうでもいい。そのあと、町山智浩柳下毅一郎、ギンティ小林ら『映画秘宝』の連中が出てきて、映画祭らしくなる。編集長は体調不良で休みで、代わりに編集部員【大矢副編集長】が司会する。いきなり押し付けられたのは同情するが、喋りが上滑りしていて、しかもうるさい。編集部じゃないのに、柳下氏が「この映画の公開は……」などと抑えておくべき情報をフォローしてた。【「腰痛日記岡山津高台(旧・読書日記川崎追分町)」(http://d.hatena.ne.jp/kokada_jnet/20051019)によれば、毎回、司会は大矢さんがしているのだそうです。初めてだったので勘違いしました。10月19日訂正】


スケジュールを見たときに、10時半開始で映画4本やって終了が6時50分なんてチンタラしすぎなんじゃないの? と思ったが、始まって納得。合間に、彼らとゲスト杉作J太郎ほか)のトーク、新作の予告編(《ホテル・ルワンダ》もやった)上映などが、たっぷりあるのだった。いかにも『映画秘宝』のイベントらしくて楽しめたし、眠気覚ましにもなった。おかげで、38歳でもオールナイトをなんとか乗り切れた(椅子がよかったこともあるな)。


上映した映画は、石井輝男作品の《直撃地獄拳 大逆転》(1974)と《やさぐれ姐御伝 総括リンチ》(1973)、中島貞夫監督《狂った野獣》(1976)、石井聰亙監督《狂い咲きサンダーロード》(1980)の4本。《直撃地獄拳》はアクションからエロ・グロ・スカトロまですべての要素がてんこ盛りのステキバカバカしい映画、《やさぐれ姐御伝》は明治時代の貧民窟のセットが戦後闇市みたいでよかった。《狂った野獣》は2回目だが、大スクリーンで見ると迫力ある。《狂い咲き〜》は石井聰亙自身がPAを持ち込み操作して上映した、「爆音版」。いや、すごい音だった。最後に挨拶があって、終了。無駄な要素がまったくなく、小ネタを詰め込んだいいイベントだった。来年もやるなら、また来たい。7時半に家に帰り着き、布団を敷いてすぐ眠る。


では、〈往来堂〉フェアのテコ入れ第3弾。今日は、《やさぐれ姐御伝 総括リンチ》の闇市的セットにちなんで、藤木TDCブラボー川上東京裏路地〈懐〉食紀行』です。云ってみれば、この本は「食」本の世界の石井輝男みたいなもんです(藤木氏は『映画秘宝』のレギュラーだし)。以下は『レモンクラブ2003年2月号より。文中のスムースフェアは、池袋リブロで行なわれました。あのときも冊子をつくったんだよなあ。


 三カ月ほど前に、ある書店でぼくが属している書物同人誌sumus」が企画するフェアを行なった。メンバーがいくつかのジャンルから文庫新書を選び、店に置いてもらうという試み。一カ月間の期間中、よく売れた本を挙げてみると、嵐山光三郎『文人悪食』(新潮文庫)、太田和彦『完本・居酒屋大全』(小学館文庫)、内田百間御馳走帖』(中公文庫)、久住昌之・谷口ジロ−『孤独のグルメ』(扶桑社文庫)という具合に、食についての本がよく売れた。


 私見では、映画古本建築など「●●をめぐる本」が売れる時期というのは、その本体はあんまりイイ状況じゃあなかったりする。消えていきそうだったり、危機感が高まっているときにこそ、「めぐる本」は盛り上がるのだ。食に関しても、みんながグルメになったからこんな本を読むとは云えないだろう。むしろ現実の食生活がマズシイから、食をめぐる本にヨダレを流すのかもしれない。


 今回紹介する藤木TDCブラボー川上東京裏路地〈懐〉食紀行 まぼろし闇市をゆく』なども、タイトルだけでは、消えていく居酒屋や大衆食堂を懐かしむ本に見えるかもしれない。たしかに本書では、二人の著者が終戦直後、焼け跡の街に出現した非合法マーケット闇市」の名残りを訪ねたり、日に日にキレイになりつつある競馬場競輪場に残る売店を探したりするワケで、目次も「新宿 ションベン横町『きくや』の鯨カツ」「五反田 池上線大崎広小路ガード下『一平』のウインナーキャベツ炒め」などと居酒屋ガイド本のパロディっぽくなっている。つまり、「B級グルメ」や「レトロ」ブームの延長線上で読まれる本ではあるのだ。


 だけどこの本には、従来の食をめぐる本にはない大きな特徴がある。それは、食べることによって歴史をいまに蘇らせてやろう、という野望みたいなもの。いまある居酒屋本は漠然とした「懐かしさ」を共有するだけで、その懐かしさがどこから生まれてきたかを考えてみることはない。逆に蕎麦カレーなどの料理歴史本は、起源を追うことしか頭になく、最後の方にとってつけたように「現在ではインスタント食品として……」と書くだけだ。しかし、この本では終戦直後といまが一直線につながっている。


 たとえば、渋谷宇田川町や百軒店でマーケット利権をめぐってヤクザがしのぎを削った南側に大和田町があり、そこにはまだ一部の飲食店が残っている。その中の居酒屋細雪」で喰う腸詰めは、中国大陸からの引揚者が始めた頃の味が五十年間も続いている。     

 たとえば、町屋。終戦後闇市で賑わったという尾竹橋通り、ナゼか「土地建物」という看板建築が残る建物で深夜営業している「阿波屋」で、「刺身の余ったのとか牛肉とか、だいたいなんでも入れちゃうんだよ」という闇市ゴッタ煮風の「カレーシチュー」を喰う。


 たんなる思いこみだろう、と云うなかれ。二人の著者は四十代前半なので、もちろん闇市を知っているハズはないのだが、二十年前からあやしい通りの居酒屋風俗店で過ごしてきたという体験の強みがある。その徘徊の間に、「なんでこんな辺鄙なところに飲屋街があるのか」などという疑問を抱いてきた。ことに藤木TDCが、飲み屋のおばさんの会話やある本の一節から表面上の歴史書からは消え失せた戦後史の裏面を引きずり出してくる手腕はスゴイ。とくに、いまは無き雑誌ダークサイドJAPAN』に載ったときにも驚嘆した「新宿・彦左小路 あらかじめ終わりが約束された飲屋街」は必読。なくなる前に、ココだけは見ておきたいと思った。


 かといって時代考証に傾きすぎて、読者がついてけないというコトはまるでない。戦後史のおさらいは短いリードにまとめておいて、本文は二人と編集者の絶妙な掛け合い対話で進行させる。取材というより、「メートル」が上がっちゃってる状態での実況中継が楽しい。「『兵隊やくざ』に出てくる青柳憲兵軍曹に扮した成田三樹夫似のご店主様」なんて、見てみたいねェ。


 登場する店も料理も、行ってみたいし喰ってみたい。でも、わざわざソコをめざして行くようなモンでもない。「絶句するほど美味いメニューってないんですけど、それでもたびたび来ちゃうもんな。安いし」というセリフに、これらの店の良さが凝縮されていると思う。


 あとがきに、「最近はレトロブームやら七〇年代ブームで〈昭和の時代〉がやたらと見直されたりもてはやされたりしている。だがそれが平成ファクターを通したアンティーク的なニセモノなのがよく分かる。そこにはヨゴレもダササも何もない」とある。そういう「営業レトロ」に食傷したら、ぜひこの本を読んでほしい。


 なお、本書は『別冊GON!』(それ以前は『おとこGON! パワーズ』という妙な誌名)での連載をまとめたもの。猥雑とふてぶてしさとおたくといい加減さ(と読みにくい字の小ささ)に満ちた雑誌からこんな本が生まれたコトを、編集者は誇ってもイイと思う。単行本のデザインも『GON!』テイストに溢れていてステキです。

2005-10-14 浅草で浪曲を

朝9時起き。書評原稿を送る。今日は出勤日。シャカリキになって、入稿するテキストを整理する。昼も弁当を買ってきて済ませる。4時半に仕事場を出て、市ヶ谷へ。〈ルノアール〉でデザイナーKさんと会い、今日の分を渡す。週明けにあと半分を渡すことに。


総武線浅草橋都営浅草線に乗り換えて浅草に6時半着。途中でちょっと方向を見失い迷いながら〈木馬亭〉に到着。今日は浪曲を聴くのだ。前にも来たコトがあるが、3000円の入場料で、完全に満席になるのはスゴイ。玉川美穂子の新作「浪曲シンデレラ」ではじまり、玉川福太郎の「青龍刀権次」、国本武春の「紺屋高尾」、トリが福太郎の「青龍刀権次」続き。「青龍刀権次」は幕末から明治にかけてのケチな博打打ちが主人公。侍から官員に身を変えた男に何度もだまされて監獄に入る。まるで、山田風太郎明治伝奇物みたいなストーリーで、楽しめた。「爆裂お玉」がカッコよく登場したところで、「ちょうど時間となりました〜」と終わる。続きを聴いてみたい。出口で、誘ってくださった間村俊一さんと、たまみほさんに挨拶して、バスに乗って帰ってくる。


と、折りよくバスが出てきたトコロで、〈往来堂〉フェアのテコ入れ第2弾と行きましょう。もうお判りですね。田中小実昌バスにのって』であります。以下は『レモンクラブ1999年10月号に載ったもの。いまよりも文章がヘタだなあ。冒頭に『サイゾー』のことが出てますが、最初の2年間ぐらいはけっこうオモシロかった。いまは買ってません。杉作J太郎の『ヤボテンとマシュマロ』は、大幅に構成を変え、『男の花道』として来月ちくま文庫から出る予定。


最近創刊した『サイゾー』という雑誌インフォバーン発行・電波実験社発売)がコンピュータ文化寄りのゴシップメディア批評誌といったところで結構オモシロイ。その雑誌で連載が始まったのが、杉作J太郎の「ヤボテンとマシュマロ」。最近出た同名の単行本(メディアワークス)と同じスタイルマンガだが、第二回目で自転車のことを描いている。ナンでも杉作さんは都内のたいていのトコロなら自転車で行っているそうな。僕も自転車本屋映画館に行ったりするのが好きなんですが、杉作さんも云ってるように、東京の道は坂が多いのがツライ。それと都会では自転車で走るとき、車道の端っこか歩道のどちらかを選ぶしかない。両方ともアブナイしスイスイ行けないのが難点。


自転車と並んで好きな乗物はバスだ。時間はかかるけど、都内では二〇〇円出せばドコでも行けるし、初めての道をバスでゆっくり行くのは楽しい。前置きが長くなったが、今回取りあげるのは、そんなバス好きにはたまらない本。田中小実昌は、作家翻訳家映画評論家だ。しかし、彼ほど肩書きが似合わないヒトも珍しい。ナンでもやるし、ナニをやっても才能がある人なのに(いや、そういう人だからこそ)、翻訳家らしいとか作家らしい態度をとったことがない。ただ、何となく生きているような感じだ。存在自体が独特であるヒト。同じタイプの人物としては、殿山泰司ぐらいしか思いつかない(トーゼンのように、この二人は親友であった)。


コミさんは、いつも同じように毎日を送っている。「東京では、月曜日から金曜日までは、毎日、映画の試写を二本ずつ見る。これも、そういう習慣になっているだけで、自分が映画評論家などとおもったことはない。そして、土曜、日曜はバスにのっている。これも、自分でバス研究家と考えたことはない。東京はいくら広くても、バス路線はかぎられている。だから、しかたなしに、おもしろくなくても、おなじバスにのってる始末だ」


そして、夜は酒場に行って、ぶっ倒れるまで飲むのだ。七十四歳だからこんなに悠々自適なんだと、早合点するなかれ。コミさんは、すでに五十代の頃から、こんな毎日をつづけているのだ。いったいいつ仕事して家庭生活を営んでるのか、フシギでしょうがない。かといって火宅の人というワケでもなく、娘も二人いる。コミさんは年に数回、海外に長期滞在するが、そこでも同じような生活を繰り返す。友人のウチに居候し、昼はバスに乗って時間をつぶし、映画を観て、夜は酒を飲む。「昼は映画夜はお酒ほかにすることがあるの」というタイトルエッセイがあるほど。べつに名所に行くこともなく、新しい体験もそれほど喜ばず、ただ、たんにそこに滞在している。


ある旅行ライターは、ベルリンバスの中でコミさんに逢ったそうだ。たぶん、そのときコミさんはただ、たんにバスに乗っていたのだろうなと思うと、なんか楽しい。バスに乗るという行為は、コミさんにとって、それ自体がワクワクすることであり、どこに行くかはさほど重要ではないようだ。ナニしろ、路線バスを乗り継いでどこまで行けるかやってみようと、数日間乗り続けたことさえあった。もっとも、途中でめんどくさくなって、東京に帰ってしまうのもコミさんらしい。


この本のカバー写真のコミさんは、バスに乗る快感に酔いしれているように見える。この人相がよほど怖かったのか、サンフランシスコバスのさみしい終点についたとき、はしって逃げる運転手がいたそうだ。年をとってからは、糖尿病で毎日インシュリン注射を打っている。老人パスももらえるようになった(使ってないけど)。でも、相変わらずコミさんはフラフラと生きている。文章もいい加減に見えるほど自由闊達で、一冊の中で同じエピソードが何回も出てくる。ところが、落語と同じで、一つのエピソードがちょっとずつ違った文章で語られるのが、じつに気持ちイイんだよなァ。もちろん、好き勝手やっているように見えて、「ぼくがいちばん気をつかうのは、文字を統一しないこと、つまり、文章の場所によって、平仮名漢字のふたとおりをつかうってことだ」と云うあたりが、やはりモノカキのプロなのではあるが。


生きたいように生き、書きたいように書く。そんなオジイがこの世の中にいるって思えば、ちょっとは気が楽になるってもの。


明日はまた別の本をご紹介します。

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2005-10-13 銀座から高円寺へ

まだちょっと調子悪し。布団の中で、書評の本を読む。珍しく、この数日で3本・計6冊分の書評を書かなければならない。一度読んでいる本も、原稿の取っ掛かりをつかむために再読する場合がある。こういうときの読書は、どうしても無心にはなりにくい。


12時すぎに出て、東京駅へ。フィルムセンターに行き、成瀬巳喜男監督舞姫》(1951)を観る。はじめて観る作品のツモリで来たが、途中、鎌倉の自宅でバレエを教えているシーンで、「あ、コレは一度観たコトがある」と気づいた。魅力的な脇役が出てこないせいか、どうも、イマイチな感じであった。〈スイス〉でカツカレーを食べる。ココは昼休みナシなのでいい。まだ時間があるので、コーヒーを取って、本の続きを読む。


4時、暮しの手帖社へ。不忍ブックストリートの記事の打ち合わせ。写真ベタ焼きを見ながら、レイアウトを考えていく。編集ライターが組んで、丁寧に仕事ができる雑誌に久しぶりに会えた、という気がする。ここんとこ、タイトルからリード小見出しまで書いてください、という仕事が多かったからなあ。そりゃ、仕事ですから云われればやりますけど、雑誌カラーや記事の性格を決めるのが編集者仕事なのに、リードまで丸投げして自主性が維持できるのか、と思う。2時間ほどで終了。帰りに、こないだ話題になっていた、会社の近くにある、銭湯の跡地を見る。銭湯の建物は完全に壊されているのに、ナゼか壁面の絵だけがそのまま残っている。しかも、フツーに富士山を描いたペンキ絵ではなく、アールヌーボー風というか、山名文夫ふうの絵なのだった。


7時に高円寺へ。松井貴子さんと荻原魚雷さんに会う。北口の〈カフェアパートメント〉で、店長のSさんに挨拶。そこでしばらく話したあと、魚雷さんに連れられて、以前〈コクテイル〉があった小路の〈あかちゃん〉という店へ。カウンターだけの小さなバーだ。ぼくが渡した『サンパン』を松井さんが見ていたら、マスターが「それ、何の雑誌?」と訊いてくる。それから、一気呵成に、母の代から作家が出入りしてきたこと、『赤ちゃん』という店内雑誌を出していたこと(2号残っていて見せてもらったが、新田潤や久世光彦が寄稿していた)、1960年代新宿のことなどを喋りまくった。固有名詞バンバン出てくる。一人一人についてゆっくり聞きたいのだが、ハナシがあちこちに飛ぶので、口が挟めず。魚雷さんも「この店では将棋と山のハナシしかしなかったのに」と驚いていた。マスターの気炎に圧倒されたようで、店を出てから駅で解散。


往来堂書店〉の「不忍ブックストリートの選ぶ50冊」フェア、そろそろ折り返し地点です。最初好調だった、ぼくのセレクション5冊も出足が鈍っているようなので、この辺でちょっとテコ入れします(『釣れんボーイ』が売れないことをボヤいていたほうろうの宮地さんが、日記でそのことを書いたら、4冊も売れたそうな)。というワケで、今日は『消えた赤線放浪記』を。この本については、『レモンクラブ2005年9月号で書いているので全文引用します。長いですけど、読んでみてください。そして、往来堂で買っていただければ幸いです。


木村聡が『赤線跡を歩く』(自由国民社、現在ちくま文庫)を出したのは、一九九八年。当時は廃墟廃線など、日本の忘れ去られた風景を記録する写真集が次々と出た時期だった。昭和二十一年から売春禁止法が施工された昭和三十三年まで、全国各地に存在した「赤線」の街の風景建築物を撮影した同書も、その流れのナカで生まれたと云えるだろう。


「はじめに」には、「◎無遠慮にカメラを向けたり、二、三人で出かけて写真のお宅の前で立ち話をしたり、指さしたりすることは絶対に避けてください。◎どうか一人でひっそりと出かけて、何かを感じて下さい。◎さっと通り過ぎて、嵐のように立ち去って下さい」という「お願い」があるが、本書を片手に物見遊山的に出かけた写真小僧が、赤線跡でトラブルを引き起こすことがあったに違いない。赤線跡のガイドブックを出すコトで、ひっそり残っていた街に無用な注目が集まってしまったのは、自ら招いた結果とはいえ、忸怩たるモノがあったのではないか。


新刊の『消えた赤線放浪記 その色町の今は……』は、戦前の遊廓、戦後赤線から、ソープランドファッションヘルスと現在まで続く性風俗の「現場」を、写真とともにつづったルポである。「わけても興味深いのは、各地の遊廓跡や赤線跡で見られる、その後継ともいえる風俗の数々だろうか。遊廓や赤線そのままの形式の場合もあれば、飲食店のかたちをとったもの、女性ホテルに同伴できるスナックというように、さまざまな形態で色町の名残りを留めていることがある。そういった場所が『裏風俗』と呼ばれるようになって、若い世代の関心を集めているとも聞く」 つまり、本書では消えていくものではなく、いまでも生きている性の現場として、赤線跡を歩きなおしているのである。だから、本書では著者は、じっさいに店に上がって、女の子とコトをいたし、内部を観察する。

 

たとえば、大阪飛田新地はどうか。ぼくも行ったコトがあるが、長屋のような建物の玄関の屏風の前に、白塗りした女性が座っていて、やり手のおばさんがおいでおいでをしている。自分で上がる勇気はもちろんナイが、あの屏風の裏はどうなっているのだろう? と思っていた。


「二階は思ったよりも奥行きがあり、広い廊下の両側に部屋の引き戸が並んでいる。引き戸の上にはそれぞれ凝ったつくりの飾り屋根が設けられていた。通された部屋は六畳ほどの広さで、入口の屋根のわりには変哲のない、黄土色をした砂壁の和室である。ガラスの座卓と座布団があるほか、ぬいぐるみや造花、郷土玩具などが並べられた棚があった」


ただ、著者は女の子について書くコトはあっても、行為そのものについて語るコトはない。せっかくココまで書いたのだから、もっとハダカになってほしいと思うのは、マジメな著者に酷だろうか。


むしろ、著者が本領を発揮するのは、その色町の成立事情を述べた箇所である。昭和初期の『全国遊廓案内』(故・田中小実昌の書斎にも、この本が備えてあった)や、赤線時代の『全国女性街ガイド』などの先行文献を丹念に読み、図書館では地方自治体の市史、タウン誌を調査する。色町の「今」が、どのような歴史、どのような変遷を経てできあがったのかを調べるのが楽しくて仕方ないらしい。


香川県高松のところでは、「貧しい農家が多かった讃岐地方では、娘たちがすすんで家を出て二号さん、つまりお妾さんになる習慣があった。(略)当時は、讃岐地方イコール二号さんの本場、ということが定説のようになっていたらしく、高松あたりでは『二号さんブーム』なるものまで起きていたらしい」そうだ。ホントかよ。


また、死語になったコトバも説明されている。戦後小説に、ときどき「パンマ」というのが出てくる。ナンだろうと思っていたが、本書で「パンパンとアンマの合成語」だと知った。ちなみに、手元にある、田中小実昌監修『客商売の隠語符牒』(新風出版社)を調べたら、「『せんば』(温泉地)の女アンマで、実際には売春をおこなう。ただ『あんま』という場合も、『パンマ』をさす場合がおおい。パンパン・アンマの略」とあった。なるほど。


本書の写真は、もちろんスバラシイ。赤線時代の建物だけでなく、まだ時代の新しいソープランド看板や、隣の民家、警察の注意書きなど、写真の隅々まで食い入るように眺めてしまった。中山銀士の装幀は、その写真の良さを最大限に引き出していると思う。


ところで、つい数日前、奈良大和郡山に行った。本書には、この土地にはふたつの遊廓跡が残っているとあったが、用事が長引き、訪れることができず残念。著者が望むように、「さっと通り過ぎて、嵐のように立ち去」るツモリだったんだけど。


以上です。文中に田中小実昌が出てきたのを憶えておいていただいて、明日のテコ入れに続きます。

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2005-10-12 季節の変わり目は風邪っぴき

朝から調子悪い。昼がまだ暖かく、夜が寒いこの時期になると、かならず風邪を引く。出勤日なるも、連絡して午前中は寝させてもらい、午後に出る。ゲラ直しなど、あれこれ。6時過ぎに出て、右文書院で青柳さんと打ち合わせ。飲みに誘われるも、気勢あがらず、帰ってくる。『レモンクラブ』が届いているが、ぼくの書評に誤記あり。「そして、われわれYMOが影響を受けたのは」は、「そして、われわれがYMOに影響を受けたのは」のマチガイ。この雑誌ではゲラなどというシャレたものは送られてこないので、原稿の段階で間違うとそのまんま踏襲されてしまうのだった。今日は早めに寝よう。

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2005-10-11 「住まい」のハナシはオモシロイ

8時半起き。今日は出勤日。昼飯と郵便局のためにちょっと外出した以外は、マジメにゲラを読む。合間に「早稲田古本村通信」を読む。前田和彦+北村和之「チンキタ本バカ道中記」は、ちょっと調子が出てきたかな。ココで〈ちんき堂〉の戸川昌士さんがブログをはじめていたことを知り、探してみると、はてなの「ちんき堂にっき」(http://d.hatena.ne.jp/chinkido/)だった。コレによると、11月末ごろ新刊『やられた!猟盤日記』が東京キララ社から発行予定とのこと。この版元の名前は、『新宿DIG DUG物語 中平穂積読本』を買ったときに知った。ジャズものが多いのかな。あと、浅生ハルミンさんの日記で、引越しの話にシビレる。呼びかけが「浅生様!」であるとか、「勤務先の欄には“フリー”じゃなくて“個人事業主”と書いてください」と注意されるとか、今年の夏、不動産屋回りをしていたぼくには、やたら身に染みるエピソード多数。それにしても、長嶋千聡ダンボールハウス』(ポプラ社)といい、伊藤理佐『やっちまったよ、一戸建て!!』(文春文庫)といい、「住まい」にまつわるハナシは、どうしてこう物悲しく、笑えるのだろうか。


6時半に出て、渋谷へ。センター街入口の〈TSUTAYA〉に入る。3階の洋画レンタルのコーナーを見るが、本数が多すぎて、ナニから見ればいいのか判らなくなる。事前にメモが必要だ。1本だけ借りる。〈パルコブックセンター〉を覗いてから、〈ロゴスギャラリー〉へ。古書日月堂プレゼンツ「印刷解体 vol.2」を見る。あとから旬公もやってくる。自分の名前の活字を拾って購入していくヒト、多数。入口近くで、築地活版製造所や江川活版製造所の活字見本帳(花形や記号など)をバラして売っていて、何枚かほしかったが、ちょっとガマン。出ようかと思ったら、日月堂佐藤真砂さんがいらして、3人で立ち話。


そのあと、〈龍の髭〉で牛肉入りそばを食べて、山手線でウチに帰る。電車の中で、光原百合『十八の夏』(双葉社)を読了図書館で借りたもの。この作者は『遠い約束』(創元推理文庫)ともう一冊ぐらい読んでいる。『十八の夏』は中篇4つが入っていて、どれも普通のヒトが主人公であり、自分の中の「常識」によって事件を解決する。宮部みゆきの初期作品に似てないこともない。文章に無駄がなく、読んでいて気持ちよかった。帰ってから、「書評のメルマガ」を編集し、発行する。

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2005-10-10 弟は持ち家、兄は風来坊

kawasusu2005-10-10

8時半起き。本日も雨。ゲラのチェックをやる。元原稿辞書を参照できるように、テーブルでやっていたら、1時間もたたないウチにてきめんに腰が痛くなる。昼はラーメン。3時前に一区切りをつけ、風呂に入ってから、池袋へ。


先週から、池袋西口公園古本祭りをやっているのだが、チラシには「雨天休止」とかいてある。連絡先の〈八勝堂書店〉に電話すると、「いまの時点ではやっています」と。それで出かけたのだが、着いてみると、棚にシートがかぶされているじゃないか。やっぱり中止したのか。しかし、よく見ると、奥のほうでは透明なシートのナカで営業している店もある。自主性に任せたのだろうか。通常営業の場合の3分の1以下しか見られないのだが、この雨のナカ、古本を見ている客はさすがに少なくて、ゆっくり見て回れるのはイイ。30分以上回ったが、収穫は佐野繁次郎装幀の今東光青春自画像』(サンケイノベルス)525円、のみ。


中途半端に時間が余ったので、一駅だが有楽町線東池袋へ。〈上々堂〉の小森さんに教えてもらった、〈Media Massage〉(http://www17.ocn.ne.jp/~mediamsg/)を探す。高速道路の高架の裏にあった。外の傘立てに傘を入れて、ドアを開けると、スグに売り場だ。狭いとは聞いていたが、1フロアは3メートル四方(?)ぐらいのスペースしかない。1階は絵本とレジ、2階は単行本、3階は美術書、雑誌1985年に『宝島』が出したカルチャー・スポットのガイドブック(名前忘れた)が900円とか、『季刊写真時代21』が2100円とか、ちょっと珍しいモノが多いが、ちょっと手の出ない値段だった。ワカッてらっしゃるぅ。店主は1980年代にかなり造詣が深い方だ、と見た。結局、別冊太陽の『探偵・怪奇のモダニズム 竹中英太郎・松野一夫』(平凡社)1600円、を買う。レジには『モダンジュース』や『酒とつまみ』も置いてあった。


歩いて池袋まで戻り、西武池袋線の改札で旬公と待ち合わせ。大泉学園駅で降りて、弟の家へ。これまで借家だったのだが、近くに中古住宅を購入し、そのリフォーム大工の父が手伝うということで、母と一緒に上京しているのだ。その家も見せてもらう。ぼくはいつまで経っても社会性がナイけれど、弟が堅実な人生を歩んでくれているので、いろいろ助かる。母親はとにかく、「アンタがナニやっているかを近所に説明できないので困る」の繰り返しで、最近出雲市にできたI書店で、たぶん来年、南陀楼がセレクトした本のフェアをやることになりそうだと云っても、「本名じゃないと意味ないがね(出雲弁)」と一蹴。キビシイお人です。旬公は、小学4年生の甥へのプレゼントに、ほし よりこ『きょうの猫村さん』第1巻(マガジンハウス)を選び、意外とウケたのに満足している(「2巻はまだなのー?」と訊かれた)。ゴメンね、こんなおじちゃんとおばちゃんで。9時に出て、池袋で乗り換えて、帰ってきたら10時。ちょっと疲れた。写真は、『きょうの猫村さん』を読む甥です。

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2005-10-09 売上は好調?

kawasusu2005-10-09

朝8時半起き。今日は古本買取があるので、売る本を奥から出す。しかし、今年だけでも3、4回売っていて、「不要な本」から「持っていても読まない本」レベルまでは、完全に処分し終わり、すでに「いつか読むツモリの本」まで処分しはじめている。そのため、どうしても処分できる冊数は少なくなる。


1時に、セドロー牛イチローコンビが来宅。とりあえず出しておいた数十冊を、セドローくんが仕分けることになり、牛イチローの運転で谷中アパートへ。「一部屋古本市」の残りの本を縛り、それ以外に段ボール箱5箱を車に積み込む。ウチに帰り、ベランダの倉庫に段ボール箱を移す。室内では二人がせっせと本を仕分け、縛っていく。しばらくして査定が終わり、4万2千円いただく。冊数は100冊以内だったと思うが、最近の本が多いせいで、意外といい金額だった。今月は〈NOMAD〉の展覧会、〈古書ほうろう〉と〈上々堂〉での「古書モクロー」、「一部屋古本市」、そして今日の買取と、古本販売での収入が多かった。「これを繰り返したら生活できるかな」と云うと、すかさず牛イチローに「そのうち利益はいくらなんですか?」と訊かれる。そりゃ、そうだ。買うときには、この数倍の支出があったんだから……。


二人を送り出したあと、自転車日暮里駅へ。改札で大阪からやってきた貴島公さんと待ち合わせ、近くの甘味処へ。今日、明日とライブを見るそうだ。お土産に、大阪カフェ〈チャルカ〉が出した『チャルカの東欧雑貨買いつけ旅日記』(産業編集センター)と、ふちがみとふなとの初期のテープからのCDを頂戴する。谷中アパートに泊まってもらうことになっているので、鍵を渡し、近くまで送って別れる。そのあと、旬公と大円寺の菊まつりへ。雨上がりで菊が綺麗に見える。谷根千工房の出店で、菊の花を入れた酒を飲む。そのあと、〈往来堂書店〉で伊藤理佐『やっちまったよ、一戸建て!!』第2巻(文春文庫)を買う。「不忍ブックストリートが選んだ50冊」は、すでに一度完売して再入荷した本もあり、まだ動きの見えない本もある。〈古書ほうろう〉の宮地さんが選んだ3冊はまだ売れてないそうで、山崎さんが「彼のいる前ではブックフェアの売上のハナシはできないんです」と云っていた。そこまでヘコまんでも。とくに、いましろたかし『釣れんボーイ』が売れないのが悲しいらしく、サイトhttp://www.yanesen.net/diary/horo/)で大プッシュしている。この本はぼくも大好きなので、売れてほしい。え? 南陀楼が選んだ本の売上ですか? まァ、5点とも1〜2冊ずつは売れているようですね。『バスにのって』と『東京裏路地〈懐〉食紀行』は、ぼくとしては「鉄板」のセレクションのつもり。


アマゾンから、[高田渡「ごあいさつ」]トリビュートと、久世番子『暴れん坊本屋さん』第1巻(新書館)が届く。後者は、いくつかのブログで紹介されていて興味を持ったマンガ。新刊書店(たぶん大手チェーンの支店)の店員として働く著者のエッセイマンガ。抱腹絶倒ってほどオモシロイわけじゃないけど、書店業界でしか使われない言葉や慣習がフツーに出てくるのは珍しい。「売れる本と売りたい本は別物」として、ボーイズラブ担当の女店員が、自分の趣味王子様好き)よりも売れ線(マッチョ鬼畜系)を優先したら、客から「店員の趣味なんじゃない?」と云われて傷つく、というのがイカニモありがちで、笑った。


晩飯は昨日のカレーの残り。NHKアーカイブスで、山田太一脚本男たちの旅路》を観る。今回は1977年放映の「シルバーシート」で、志村喬笠智衆加藤嘉、殿山泰司藤原釜足という超豪華な老け役たちが登場。志村喬が死んで、残りの4人が都電荒川線車両ジャックする。クライマックスは、鶴田浩二が乗り込んでのいつもの説教。しかし、さすが老人。云うだけ云わせといて、「結局は理屈だ」「20年経てば判る」で切り返す。最後に判りやすいオチをつけないところがよかった。

2005-10-08 ノンプロの古本市がおもしろい

kawasusu2005-10-08

ちょっと寝坊して9時過ぎに起きる。雨は上がったが、まだ天気は悪い。「出かけるのめんどくさいなあ」と旬公に云うと、「じゃ、止めれば」とのお答え。それでも行くのだ、文化祭へ。新宿中央線に乗り換えて、国分寺へ。北口から大学通りを5分ほど歩き、道を渡ったところに、早稲田実業学校がある。受付はあるが、さほど派手な感じではない。共学のせいか、開成に比べると女子高生ハンターの姿は少ない。


図書館の2階にあがると、「古本市やってますよ」と呼び込みが。靴をスリッパに履き替えて、入場。スデに客が群がっている。5つぐらいの長テーブルに、単行本と文庫を分けて置いている。値段は文庫30円、単行本が50円と100円。一通り回る。最近の本が多く、そこそこイイ本があるのだが、開成のように意外な掘り出し物は少ない。ちょっとゼイタクか。図書委員会の機関誌「パピルス」によれば、毎年文化祭までに学内と家庭に、古本の供出を呼びかけているのだそうだ。唐澤平吉『花森安治編集室』(晶文社)、矢代静一『含羞の人 私の太宰治』(河出書房新社)、本多秋五『物語戦後文学史』(新潮社)、黒井千次『時間』(講談社文芸文庫)、仁木悦子『石段の家 自選傑作集』(ケイブンシャ文庫)、石光真清『城下の人』ほかの四部作(中公文庫)、五味川純平『虚構の大義 関東軍私記』(文春文庫)、蓮実重彦文学批判序説』(河出文庫)など15冊。これだけ買って560円。いちばんの収穫は、10円の箱から見つけた、扇谷正造草柳大蔵・小谷正一『おもろい人やなあ 奇才、怪物逸話人物論』(講談社)。エンピツの線引きがあるので、この値段なのだが、目次には大宅壮一高田保池島信平、岩堀喜之助(平凡出版創業者)、花森安治らの名前が。これらの人物の逸話を鼎談形式で語るもの。人名索引がついている。この古本市(というか文化祭)は、明日もやっているそうなので、お近くの方はどうぞ。ほかの展示を見ることもなく、外に出る。


大学通りに戻り、行きがけに目に入っていた、名曲喫茶〈でんえん〉へ。開店時間の12時すぎに行ったのだが、まだ入り口が閉まっていて、上品な老婦人が開けてくれる。店内は奥行きがあり、スピーカーの近くのテーブルに落ち着く。とにかく古い店。この店は、たしか永島慎二が若いときに通った店だという記憶があったが、たまたまテーブルに置かれていた朝日新聞の記事(「中央線の詩」という連続企画)のスクラップを読むと、その通りだった。この店は蔵を改造したのだという。30分ほどクラシックを聴きながら、コーヒーを飲む。また来よう。


店を出ると、小雨が降っている。駅周辺の古本屋を覗くのはヤメにして、中央線中野へ。商店街のアーケードブロードウェイのほうへ歩いていると、前にマンガを読みながら歩いている小学生が。覗き込むと、押切蓮介の『でろでろ』だ。思わず、笑いをこらえる。やあキミ、いいセンスしてるよね、と肩を叩きたくなった。〈明屋書店〉で、雑誌Invitation』(ぴあ)をようやく見つける。ふだん縁のない雑誌なので、書店に行っても探すのを怠ってしまっていた。読書コーナーで、岡崎武志さんが『チェコのマッチラベル』を紹介してくれたのだのだが、見つけたのは無常にもスデに次の号だった。版元にバックナンバーを注文するか……。〈タコシェ〉で、今日からはじまった「ちょうちょぼっこ出張古本市沼田元氣放出 駄本+がらくたバザール」を見る。思ったよりも冊数が少ない。沼田さんの棚から1985年自費出版した『芸術珍道中』という小冊子(500円)、ちょうちょぼっこの棚から、横尾忠則装幀の瀬戸内晴美田村俊子』(角川文庫)350円を買う。ちょうちょぼっこは、自分の店でも昨日から「ラララえほん」(http://www.nk.rim.or.jp/~apricot/lalala/)という絵本のイベントを開始した。同時に大阪東京の二ヵ所でイベントやるなんて、働き者だなあ。


今日はもう一ヶ所、池袋西口公園古本まつりに行くハズだったが、まだ小雨が降っているので、パスする。「不忍ブックストリートの一箱古本市」のあたりから、古書会館の古書展デパート古本市のように、プロの古本屋古本市よりも、文化祭ちょうちょぼっこのように、ノンプロの古本市のほうがおもしろい、という気がしている。ほしい本が見つかるかどうかよりも、「祭り」としてのワクワク感があるのだ。そういう機会があると、やたら張り切って出かけるのだが、従来型の古本市には(いま、本を減らす算段ばかりしているせいもあって)「行っておこうかな」という義務感めいた動機で出かけるコトが多い。やっぱり、ぼくは熱心な古本好きとは云いがたいのかもしれない。この辺のことは、いずれきちんと書きたいと思っている。


ウチに帰り、寝転んで本を読んだり、ちょっと仕事しているうちにたちまち夜になる。晩飯はカレーの残り。ビデオで、M・ナイト・シャマラン監督サイン》(2002・米)を観る。このヒトはホント、「あおる」のがウマイよなあ。ほかの数作を見た経験上、「ゼッタイ伏線になってない、たんなる意味ありげなシーン」だと判るトコロも多いのだが、けっこう見入ってしまう。あまりにもアレな◎◎◎をはじめ、よくもまあこれだけ堂々とやるよなあと、呆れるのを通りこして感心してしまう。小説漫画では描けない、映画独自の「見世物」であることはたしか。シャマランの新作ができたら、今度は映画館で観たい。

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2005-10-07 中央線各駅停車の日

朝8時半起き。朝はぶっかけうどん。11時前に阿佐ヶ谷駅で、岡崎武志さんと待ち合わせ。岡崎さんは南口のほうから登場。「ちょっと早く来てブックオフに寄ろうとしたんだけど、時間なかったんや」。中杉通りから住宅街のほうへ入り、青柳いづみこさんのご自宅へ。来年出すことになっている本について相談する。緊張したけど、岡崎さんが一緒にいてくれたので、なんとか話せる。終わって中華料理屋で食事。数年ぶりに麻婆豆腐を食べる。古本屋に寄っていく、という岡崎さんと別れ、駅のほうへ。


思ったより早く終わったので、少し時間が余った。そこで荻窪の〈ささま書店〉へ。外の均一台、今日は単行本に目を引くものが多い。森田靖郎『上海モダン伝説』(JICC出版局)、『轟夕起夫の映画あばれ火祭り』(河出書房新社)、阿部昭『人生の一日』(中央公論社)、松永延造『夢を喰ふ人』(桃源社、函欠)。『夢を喰ふ人』は見返しに「辻淳」という署名があり、誰だコレはと思ったのだが、松永延造の年譜の編者だった。解説は草野心平。店内に入って一回り。海野弘ダイエット歴史 みえないコルセット』(新書館)800円、『ペテルブルク浮上 ロシア都市文学』(新曜社)500円、小鷹信光『メンズ・マガジン入門 男性雑誌の愉しみ方』(ハヤカワ・ライブラリ)500円を見つける。


川崎長太郎『もぐら随筆』(エポナ出版)のえらく状態のイイ本が2500円で出ている。いろんな作家についての回想も入っているので、買っておく。しかし、店を出た直後から、どうもこの本、すでに持っているような気がしてきた。買う前に気づけよ。さっき調べてみたらやっぱりあった。こないだの『木佐木日記』と同じパターンをやっちまった……。というワケで、今回もダブリ本を1500円+送料でお譲りします。ご希望の方はメールください。


今日は打ち合わせのために最初から荷物が多かったが、ささまでさらに荷物が増える。次に西荻に行き、某校でH先生と打ち合わせ。そのあと、〈音羽館〉に寄り、山崎浩一ひとりマガジン『早熟のカリキュラム』(朝日出版社)400円を買う。「週刊本」の一冊。この本は刊行当時、出たことを知らなかった。ところで、いまはじめて気づいたのだが、「週刊本」の装幀(といっても、カバー・帯ナシで、表紙も文字組みだけのシンプルなもの)は鈴木成一だったのだ。


それから三鷹へ。駅からつながっているコラルというビルの中にある〈三鷹市美術ギャラリー〉へ。「谷岡ヤスジ ニッポンの〈アサー!〉と丸い地平線」展を見る。昨年、〈川崎市民ミュージアム〉の谷岡ヤスジ展も見ているが、今回はデビュー作から晩年まで広い範囲で作品を選んでいるので、オモシロかった。ただ、展覧会マンガを見る、という行為じたいは、集中しにくいのであまり好きではないが。最後の部屋で、ヤスジマンガの一コマをでっかい帆布プリントして、部屋中に吊るしていたが、いかにも「マンガアートにしました」的な発想である。いちばん熱心に見たのは、谷岡ヤスジがまだ出版社へのマンガの持込みをしていた時期に、原稿の裏に書いた編集者からの批評などのメモ編集者が「まゆをしかめた感じの悪い男」だけど、話しているうちに「なかなかあじのある人物」だと判ったとか、のちのヤスジマンガの特徴になっているフキダシを「見苦しい、きたない」と切り捨てている編集者がいるなど、的確に詳しく書いてある。当の編集者がいま見たら、ショックを受けるかもしれない。図録(1500円)とハガキセット)800円を買う。


10分ほど歩いて、〈上々堂〉へ。石丸さんとアルバイトの小森さんがいた。値付けの済んでない本があったので、1時間ほど作業して、本棚に追加。8月の売上と、富士吉田アートフェスティバル古本市の売上を受け取る。カネが入ると気が大きくなって、藤枝静男『凶徒津田三蔵』(講談社文庫)800円、『季刊ブック・レビュー』創刊号(1981年8月)800円、『螺旋』第3号(東考社)700円などを買う。『螺旋』は桜井文庫桜井昌一が発行人となって、同人誌『跋折羅』のメンバーを中心に出していた雑誌権藤晋佐藤まさあきの文章の連載もあり、『貸本マンガ史研究』への前哨戦的な性格もあったのかもしれない。勝川克志さんのイラストも入っている。


駅方向に戻り、〈文鳥舎〉(http://www12.plala.or.jp/bunchousha/)。昼はブックカフェ、夜はバーという店で、トーク、落語などさまざまなイベントをやっている。前から来ようと思っていたが、休みの時間帯に前を通るコトが多く、入る機会がなかった。今度出す本にも関係しているので、カウンターのお二人に挨拶。8時からライブがあるというコトで忙しかったが、Oさんと話をした。ここで新刊販売している金子昌夫『牧野信一小田原』(夢工房)1200円を購入。金子氏は山川方夫論なども書いているが、先月亡くなった。また、牧野信一の従兄弟の画家・牧野邦夫をめぐるシンポジウムの記録の冊子をいただいた。8時前に出る。


一駅ごとにイロイロ回ったので、疲れた。そういえば、岡崎さんの日記に、三鷹に〈ブックオフ〉が開店とあったが、寄ろうと思っていたのに、すっかり忘れて帰ってしまった。連雀通りにあり、かつてはユニクロ店舗だったとあるが、そもそもユニクロがあったのさえ知らない。いかに、ボーッといて街を歩いているかが、よく判るね。9時にウチに帰り、カレーをつくる。例の豚の頭肉を投入。トーゼン、うまいのだ。

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2005-10-06 D坂シネマがおもしろい

8時起き。40分に出て、日暮里まで歩く。あいにくの雨。朝倉彫塑館前で、『暮しの手帖』のMさんとHさんと待ち合わせ。2日に続いて、今日も「不忍ブックストリートの本棚拝見」取材なのであった。彫塑館を出ると、雨が止んでいた。昼までに三カ所回る。食事は、三崎坂の〈ブラッセリー・フレール〉。以前からちょっと入ってみたかった。雰囲気もいいし、ランチ(若鶏のトマトソース煮)も美味しい。ま、昼ご飯にしちゃ、ちょっとゼータクだけど(おごってもらいました)。


1時半からは、さらに一ヶ所、そして〈NOMAD〉を最後に取材終了。今日から藍かすみさんという方の詩の展示があるのだが、『会話集』という小さな詩集(650円)がイイ。造本はAtelier 空中線。思わず買ってしまった。取材後、お二人を谷中アパートに案内し、旬公の手づくり本や花森安治の装幀本を見せる。先日の「一部屋古本市」の残りの本を、何冊か買ってくれた。日暮里駅近くで別れて、ウチに帰る。自分も被写体になって写真を撮られつつ、取材もするというのは、けっこう疲れるので、帰ってからグターッとヨコになった。


1時間ほどしてから目覚ましで起きて、自転車谷根千工房へ。今日はココで「D坂シネマ」という映画上映会が行なわれるのだ。客は15人ほどで、〈古書ほうろう〉の山崎・神原コンビも来ている。あとから森まゆみさんも。この映画会は、日比谷図書館などから借りてきたドキュメンタリーフィルムを中心に上映するもの。今回のテーマは「産業と谷根千を探る」。毎日違うプログラムで、今日は《ムカシが来た 横浜市長屋門公園古民家復元の記録》、《木曾今昔》、《木を植えた男》、《東京タワーはわが息子》の4本。《木曾今昔》は1937年に撮影された木材産業華やかな頃の映像と、約40年後の1976年の映像がミックスされていて、興味深い。《木を植えた男》はフレデリック・パックのアニメーションで、名作であることは知っていたが、観るのははじめて。ナレーション(三國連太郎の声)は説教くさいが、自在に変化するアニメーションは、たしかにすごい。


もう一本、《東京タワーはわが息子》はタイトルからして、《俺の故郷は大西部(ウエスタン)》あたりを想起してしまうモダンとマヌケが入り混じったものだが、内容も笑えた。東京タワーを設計した内藤多仲博士を紹介するドキュメンタリーテレビ朝日の前身のNET番組)だが、一高時代の友人という爺さんが出てきて本人を差し置いて喋りまくったり、評論家小汀利得が「内藤氏とは喧嘩している」と尺貫法国語問題についての意見の違いを追及しだしたりする(建築、関係ないじゃん)。この当時は、喋りの台本がないらしく、女アナウンサー立ち位置を決めたり(「こちらにお座りになってください」)、やり取りにずいぶん間があったりと、牧歌的な風情がただよっていて、とてもよかった。100円の入場料は安い。「D坂シネマ」は10日(月・祝)には、場所を変えて、汐見会館で無声映画の上映会をやるそうだ(こちらは入場料1000円)。ぜひ行ってみて下さい(http://www.yanesen.net/topics/topic/1869/)。


ウチに帰り、昨日旬公が品川で買ってきた豚の頭の肉のスープに、うどんを入れて食べる。あー、うまい。この肉はまだ大量にあるので、カレーや鍋をつくってみたい。

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2005-10-05 タイミングがいいわねェ

朝8時半起き。今日は出勤日。朝から一日中、雨だ。いま準備している本のことで、原稿をチェックしたり、メールしたり。やるコトがたくさんあって、時間がもったいない。昼は近所の〈ふくのや〉(だったっけ?)という洋食屋へ。メンチカツライスというのを頼んだが、料理ライスが出てきたあとも味噌汁が出てくる気配がない。ほかのヒトはみんな味噌汁があるのに忘れたのかなあ、声をかけようかなあと、小心者なので逡巡していたら、次に入ってきた人が「チキンカツライス、味噌汁ね」と注文するので、やっとワカッタ。この店は味噌汁だけ単品注文のシステムなのだった。料理ライス味噌汁がそれぞれ別注文という店はよくあるが、料理ライスだけがセットという店はちょっと珍しい。ちなみに、メンチカツライス(690円)はけっこう美味しかったです。次来るときは味噌汁(50円)も頼もう。


4時に市ヶ谷へ。6月末まで、ココに通っていたのだが、8月にシャープサービスセンターに来ただけで、あとはまったく来ていない。外堀通りマクドナルドルノアールの間の坂を上る。以前は仕事のピークのときなど、この坂を上がるとプレッシャーで吐き気がした(いや、じっさいに何度も吐いたコトがある)ものだが、この場所と無関係になったいまでは、すっかり気楽である。現金なものだ。元の「本とコンピュータ編集室に寄り、数人に挨拶。そのあと、デザイナーのKさんと打ち合わせ。


仕事場に戻り、いろいろ片付けて、営業のHさんと出かける。歩いて晶文社まで行き、営業部の部屋で高橋千代さんに会って、書籍営業についてイロイロ教えてもらう。たいへん勉強になった。千代さんは、「南陀楼さん、いいところに来たわねえ」と、一冊の本を渡してくれる。高橋徹『月の輪書林それから』(2200円)だ。おお、ついに出たか! 南伸坊さんの装幀は、前作『古本屋 月の輪書林』のカンジを踏襲しながら、よりディープな本であることを明確にしたデザインだ。内容については、読み終わるまでは書くまい。とりあえず、前半は李奉昌、後半は三田平凡寺についての日記である。12日に取次搬入とのこと。


9時前に秋葉原の〈赤津加〉へ。この店、何年ぶりだろう。電気街のど真ん中に、明治東京みたいな居酒屋が現役でいることは不思議。しかも、値段も安い。千代さん下戸だが、少しアルコールが入ると、とたんにクレイジーケンバンドのハナシに没入しはじめる。海外旅行に行く前に、ライブチケット発売日が旅行中に当たることを知り、海外でつながる携帯を入手、ギリシャロードス島で、チケットを取るために夜中に東京にひたすら電話を掛けつづけたという。しかも、携帯を借りるとき、「リダイヤル機能があるかを確認した」というのが、このハナシの肝だ。たまたまHさんもかなりのCKBファンであり、さっそく11月のライブに誘われていた。別れて、ウチに帰ると11時。


大阪の〈アトリエ箱庭〉の幸田和子さんが、箱庭が発行する『dioramarquis(ジオラマキス)』という雑誌の創刊号を送ってくださる。じつは、昨日〈書肆アクセス〉に届いているのを見て、幸田さんに電話したら、「あ、南陀楼さん、ちょうど今日発送するトコロだったんですう」と。表紙の文字使いと配置を見れば、デザイナー羽良多平吉さんだとすぐ判る。本文のレイアウトも羽良多さん。28ページの小冊子だが、誌面の隅々まで行き届いたデザインだ。執筆は、華雪、空中線書局、小野原教子、戸田勝久、野崎泉(フリーペーパー『gris-gris』)、田中栞森元暢之ほかの諸氏。版画家山下陽子さんの手になるカードが同封されている。700円。書肆アクセスでも扱うらしいです。

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2005-10-04 本が飛び出す機械がほしい

昨夜、泡坂妻夫『亜愛一郎の狼狽』(創元推理文庫)を読了大学生のときに読んでから、何度目だろう。ココでこう来る、と判っているのに、楽しめてしまう。再読で気づいたこと。「掘出された童話」の週刊誌編集部が出てくる場面で、編集長が机の上にあるボタンを押すと、「黄色いランプが付き、しばらくすると機械から『週刊人間』の一六五号がぴょんと飛び出した」とある。さらに、ある人間の個人情報プリントアウトして機械から出てくる。おお、こりゃ、インターネットだ(初出は1977年)。まあ、デジタルではなく紙ベースのところがご愛嬌。でも、ぼくはパソコンよりもこっちの機械のほうがほしいなあ。


創元推理文庫版には、権田萬治「泡坂妻夫雑誌幻影城』」という解説が収録されている。1975年から79年まで出された推理小説雑誌幻影城』の編集長である島崎博が、台湾に生まれた中国人であることは知っていたが、以下のコトは知らなかった。


島崎博というペンネームの由来は、傅金泉という本名だと、日本の人は、どこまでが姓なのかわからないのと「傅」という字がなく、「傳」とよく間違えられるので、大学四年の時に結婚した夫人の島崎という姓に、傅の代わりにわかりやすい博を名前にしたペンネームを使うことにしたのだそうである。


「傅」と「傳」といえば、台湾の知人・傅月庵(フ・ユエアン)さんの表記が、後者ではなく前者だと、先日、岡島昭浩さんから教えていただいたのだった(http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20050831)。漢字表記の難しさが、島崎博のペンネームをつくったというのはオモシロイ。なお、権田氏によれば、島崎氏は『幻影城』がつぶれたあと台湾に戻り消息を絶った。その後、1987年に連絡が取れたが、再び音信不通になってしまったのだという。しかし、昨年になって、推理マニアの力でもう一度島崎氏の消息がわかり、再度権田氏と電話で話したという。この件については、「探偵小説専門誌『幻影城』と日本探偵作家たち」というサイトで報告されている(http://members.at.infoseek.co.jp/tanteisakka/sima.html)。


さて、今日のこと。8時半に起きて、出勤。進行中の企画2本について、書類を書いたり、メールを打ったりで時間が過ぎていく。昼飯は錦町の餃子屋。〈書肆アクセス〉に寄った後、〈三省堂書店〉で、『争議あり 脚本家荒井晴彦映画論集』(青土社)646ページ、3800円!、『comic新現実』第6号(あすなひろし特集)、『ミーツ・リージョナル』11月号(本と書店特集)を買う。また、仕事場に戻って、7時過ぎまで仕事。ウチに帰り、サバを焼いたので晩飯。9時から、ダウンタウン罰ゲーム特番を観る。ダウンタウン番組はこの数年まったく見ていないが、コレだけは見てしまう。酔っ払った山田花子が最高でした。


10月に入ったので、手元にあるチラシなどの情報を元に、今月行っておきたいライブ映画、イベントをメモしておく。どうせ、このうち幾つも行けないと思うのだが、備忘録(このコトバ、子どものときに「ボウビロク」と間違えて覚えてしまったので、いまでもそう打ち間違えてしまう)代わりに書いておこう。


開催中〜10月23日(日)

谷岡ヤスジ展 ニッポンの〈アサー!〉と丸い地平線」

三鷹市美術ギャラリー

http://www.mitaka.jpn.org/gallery/


開催中〜10月17日(月)

日月堂プレゼンツ「印刷解体

ロゴスギャラリー

http://www2.odn.ne.jp/nichigetu-do/


10月6日(木)

D坂シネマ 産業と谷根千を探る

千駄木・D坂シネマ館(谷根千工房内の臨時映画室)

http://www.yanesen.net/


10月8日(土)〜30日(日)

ちょうちょぼっこ出張古本市沼田元氣放出 駄本+がらくたバザール」

タコシェ

http://www.tacoche.com/


10月8日(土)〜

エイリアンVSヴァネッサ・パラディ

タイトルインパクトだけはすごい。たぶん観ないだろう…。

池袋・シネマサンシャインほか


10月9日(日)〜11月5日(土)

「日々是好日・監督春原(すのはら)政久」

→《大当たり百発百中》ほか小沢昭一主演作品が数本。河村黎吉主演《三等重役》も。

ラピュタ阿佐ヶ谷

http://www.laputa-jp.com/


10月14日(金)

浪曲玉川福太郎の浪曲英雄列伝第四回」

木馬亭

http://www.geocities.jp/tamamiho55/

↑「ほとばしる浪花節 玉川美穂子のページ」


10月15日(土)

東京国際ファンタスティック映画祭映画秘宝10周年記念企画「追悼!石井

男」オールナイト

→《直撃地獄拳 大逆転》《やさぐれ姐御伝 総括リンチ》など4本。体力持つかしら。

http://tokyofanta.com/2005/


10月21日(金)

渋谷毅コンサート「旧奏楽堂に来ませんか」 ゲスト坂田明

上野・奏楽堂

http://blog.carco.jp/


10月23日(日)〜12月17日(土)

芦川いづみスペシャルモーニングショー

→《硝子のジョニー 野獣のように見えて》(11月27日12月3日)は絶対観たい!

ラピュタ阿佐ヶ谷

http://www.laputa-jp.com/


10月22日(土)〜11月3日(木・祝)

江利チエミ主演《サザエさんシリーズ上映

川崎市民ミュージアム

http://home.catv.ne.jp/hh/kcm/


10月23日(日)

渋谷毅ライブソロ

なってるハウス

http://members.jcom.home.ne.jp/knuttelhouse/


10月24日(月)

渡辺勝ライブソロ

なってるハウス

http://members.jcom.home.ne.jp/knuttelhouse/


10月25日(火)

高橋悠治渋谷毅北園克衛エリック・サティ

新宿ピットイン

http://guis.exblog.jp/


10月27日(木)〜29日(土)

「ROOTS&NEXT 1945-2005 マガジンハウス懐かしの雑誌即売会

マガジンハウス本社 ワールドマガジンギャラリー

http://www.flying-books.com/magazinehouse.htm


10月29日(土)、30日(日)

イベント「テクストの祝祭日」

29日16:00〜18:00 トーク「戦後文学編集者 松本昌次さん(影書房)に聞く」

30日16:00〜18:00 堀切直人×鈴木地蔵トークセッション「私たちの神保町

東京古書会館2階情報スペース

問い合わせ:未來社編集部内 小柳暁子

koyanagi@miraisha.co.jp


10月29日(土)

渋谷毅・エッセンシャルエリント

産業商工会館ホール阿佐ヶ谷ジャズストリート

http://www.asagayajazzst.com/


10月29日(土)〜11月11日(金)

「追悼・石井輝男特集」

新東宝時代の作品をまとめて観たい

新文芸座

http://www.shin-bungeiza.com/


10月30日(日)

紀田順一郎講演会幻想書林に分け入って」

徳島県北島町立創世ホール

http://www.town.kitajima.lg.jp/hole/index.html

↑ぜひとも徳島まで飛んでいきたかったのだが、諸般の事情で行けそうにない。

小西さん、すいません……。


……書き写してたら、気持ち悪くなってきた。こんなにたくさん、ゼッタイ行けるワケない。三分の一以下だな、きっと。このほか、私立高校文化祭(もちろん古本市目当て)、フィルムセンター成瀬巳喜男特集、古書展などもあり、家庭の事情もあり、もちろん編集仕事原稿の締め切りもある。ぶじに乗り切れるかしら、今月。

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2005-10-03 セド母になごむ

朝8時半起き。朝飯のあと、昨夜途中まで観ていた《ナイトメア・ビフォア・クリスマス》(1993、米)を最後まで。ティム・バートン原案・製作、ヘンリー・セリック監督。いやあ、オモシロかった。ブキミでコミカルキャラクターたち。ただ、ビデオに同時収録されている《フランケンウィニー》という短篇は、イマイチアメリカ人死生観はよくワカランなあ。午前中は家で細かい仕事をいくつか。取材のことや、単行本の企画についてメール電話でやり取り。昼はぶっかけうどん


2時過ぎに出て、〈古書ほうろう〉へ。委託で置いてもらっていた本・グッズ(古本を除く)の精算。4万円ちょっと戴く。昨年夏の「モクローくん大感謝祭」より後の約一年間の売上だと思う。目の前のバス停からバスに乗り、早稲田へ。初日に続き、穴八幡青空古本市を見る。今日はさすがにヒトが少なくて、ゆっくり見られる。階段下で、安藤鶴夫『巷談本牧亭』(旺文社文庫)100円、本会場で、森山啓『谷間の女たち』(新潮社)350円、中谷孝雄『招魂の賦』(講談社)350円、『風紋25年』(私家版)420円、田辺茂一『穀つぶし余話』(言叢社)500円、秋山清『壺中の歌 わたしの群書群像』(仮面社)500円、小針美男『東京文学画帖』(創林社)。『招魂の賦』は講談社文芸文庫版を図書館で借りて読んだが、単行本には文庫に入ってない短篇がある。『風紋25年』は先日アクセスで『風紋30年』を買っているけど内容は違う。『壺中の歌』には、「日記について 『木佐木日記』を読む」という文章がある。コレは拾い物。


セドローくんに声をかけると、お茶に誘われる。アキヒロくんと3人で〈シャノアール〉へ。2人はキウイジュース。「コレを飲まないと青空という気がしない」とヘンなこと云っている。しかも今日2杯目だとか。この二人が揃うと、賑やかな笑い声の二重奏になるので、こちらもテンションが高くないと置いていかれる。で、こないだの「サンパン」の会合についてとか、あれこれと。セドローくんに話すのを忘れたが、あの会合のときに、「サンパン」に古書目録を載せたり、探求書欄を設けてたりして収入を図ってはという意見もあったのだった。だけど、「各自が本をまとめてEDIに送って」とか云ってて、じゃあ誰が目録つくって校正するんですかとツッコンでしまった。あと、アキヒロくんが「今回は目録にいい本出したのに、南陀楼さんからの注文なかったですね」と云うので、「最近あまり目録で買わないようにしてるんだよ。だって、買うよりも売ることばっかり考えてるんだから」と「一部屋古本市」などのコトを話すと、「ナニやってんですか!」と笑われてしまう。セドローくんは「入口の殴り書きの貼り紙が怪しかったですよね。オレなら帰りますよ」と。「旅猫雑貨店 路地裏縁側日記」(http://tabineko.seesaa.net/article/7110743.html)に写真が載ってたとのこと。金子さん、すいません、まだ見てませんでした……。


会場に戻る二人と別れて、古本屋街の方へ。青空古本祭の会場でもらったサービス券を提示すると、会期中は1割引になる。〈メープルブックス〉で、河盛好蔵文学空談』(文芸春秋新社)300円、〈飯島書店〉で、虫明亜呂無『野を駈ける光』(ちくま文庫)350円、〈古書現世〉で、佐多稲子『夏の栞 中野重治をおくる』(新潮文庫)150円、〈さとし書房〉で、『長谷川伸全集第11巻 股旅の跡』(朝日新聞社)1000円。以上、すべて1割引。現世ではセドローくんのお母さんが店番されている。コロコロとよく笑う明るいヒトだ。顔を見ると、なんとなくいつもなごむ。友達からもらったというお菓子をいただく。さとし書房では、お孫さんらしき女の子が紙を切って蝶々をつくる工作に、店主がつき合わされている。帳場に本を出すと、店主が袋に入れたあと、女の子セロテープを止めさせている。「これでも役に立つんですよ」とニコニコ。こういうの、イイよねえ。


早稲田古本村通信」の取材で、これから上野公園行きのバスに乗るツモリだったが、携帯に旬公から留守電が。「鍵も携帯もウチに置いてきてしまって、入れません。〈ルノアール〉で待ってます」だと。しかたないので、高田馬場まで歩き、山手線で帰ってくる。〈ルノアール〉に寄って、旬公にコーヒーをおごらせてから帰宅。晩飯はサンマの焼いたの。食べ終わってから、自転車で〈往来堂書店〉に行き、フェアの様子を観察。〈NOMAD〉と〈古書ほうろう〉に納品書や精算書を置いてくる。


札幌の〈さっぽろ萌黄書店〉(http://www.d2.dion.ne.jp/~moegi/)の坂口さんが、『札幌人』秋号(札幌グラフコミュニケーションズ)を送ってくださる。特集は「さっぽろ古書店散歩」。札幌古書店10店へのインタビュー札幌出身の唐沢俊一さんの談話、『山口瞳通信』の中野朗さん、小樽文学館の玉川薫さんらのエッセイ古書店地図、古書用語など。ページ数は少ないが、コンパクトにまとまったいい特集で、今後札幌に行く機会があれば必携だろう。坂口さんや、〈古書須雅屋〉(http://d.hatena.ne.jp/nekomatagi/)の須賀さんのご尊顔をはじめて見る。この雑誌レイアウトはいまいちで、マチガイがあったのか目次ページを貼り込みで訂正している。取材からレイアウトまで一人でやっているようだから仕方ないだろう。だけど、これまでに博物館市電公園銭湯自転車などを特集している。〈書肆アクセス〉にも置いてほしい。

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2005-10-02 不忍ブックストリートの本棚拝見

8時半起き。朝イチで旬公に髪の毛を切ってもらう。午前中は昨日の日記を書いたり、本を読んでいるうちに過ぎる。2時、日暮里駅で『暮しの手帖編集のYさんとカメラマンのHさんと待ち合わせ。うら若き女性二人を引き連れて、今日は「不忍ブックストリート」の取材なのであった。テーマは「本棚」で、本が置いてある店や場所を回るコトにしている。昨日から「芸工展」がはじまっているので、その関連のイベントをやっている場所も多い。


歩いたコースは11月に出る雑誌を読んでいただくとして、昨日初めて行った場所について触れておく。初音小路の〈麻音酒場〉という若い男性がやっている飲み屋の2階で、〈カフェ山猫〉が期間限定10月10日まで)で営業中。ふだんは下の飲み屋の座敷として使われている部屋で、常連のお客さんがプロデュースして、知人のイラストレーターによる宮沢賢治展をやっているのだ。おもしろい空間だった。この建物は3階まであるというので、いずれ覗いてみたい。


もうひとつは、個人のお宅。デザイナー遠藤勁(つよし)さんの部屋で、自分が装幀・レイアウトされた本を並べている。平凡社で月刊誌「アニマ」編集部に在籍されていたそうで、荒俣宏の『世界大博物図鑑』など記憶に残る本が並んでいる。写真や絵などを使った装幀が多いようだ。遠藤さんに挨拶すると、「南陀楼さんですね」と云われる。ご夫婦でこの日記をご覧になっているとか。この部屋は奥さんが借りて、日常からの隠れ家として使っているそうで、「内澤さんが借りているアパートと同じ意味です」とおっしゃる。そのうち、外からアコーディオンの音が聞こえてくる。芸工展のスポットを回って演奏しているヒトに頼んだとかで、すぐ外の公園のベンチに座って演奏していた。いいカンジだ。


往来堂書店〉では、「不忍ブックストリートが選ぶ50冊」が昨日から開催中。笈入さんの日記http://d.hatena.ne.jp/oiri/)によれば、初日にぼくが選んだ本が2冊売れたようでホッとする。ただし、先に完売したのは、ほかのヒトが選んだ、D・ウォレスの『ビッグフィッシュ』(河出書房新社)と川端康成浅草紅団』(講談社文芸文庫)。なんか、くやしい。後者は同行のYさんが買っていた。〈オヨヨ書林〉で山崎さんと話してたら、「こういうの、どうですか?」と本を見せられる。コレがくせものなんだよなあ。いつもビックリするような本を薦められるので、ほとんどその場で買ってしまう。今日は、小堀杏奴『随筆集 朽葉色のショール』(春秋社)で、この本自体知らなかったのだが、目玉は見返しの献呈署名。宛先が「花森安治様」となっているのだ。『暮しの手帖』と回るコトを知っていて、用意していたらしい。憎い心づかい。3000円だが、購入。あとで調べたら、この本、『朽葉色のショオル』として1982年旺文社文庫から出ていた。


……などなど、2時から7時半までに、8カ所を回り、ハナシを聞いて写真を撮った。「不忍ブックストリートMAP」や一箱古本市のおかげで、この辺りにお住まいの方や店をやっている方とずいぶん知り合いになった。そのために、今日の取材もかなりスムースに進んだと思う。しかし、まだ5ヵ所ほど残っているので、木曜日にもう一度回るコトになっている。


ご飯食べて解散しようというコトになり、久しぶりにペルシャトルコ料理の〈ZAKURO〉へ。旬公もあとから合流。最近繁盛していて、地下のほかに2階でも営業している。また、別の場所に水パイプの店と、ジュースの店も出している。店主のアリさんは超働き者。それはイイのだが、地下はほぼ満員。ようやく席をつくってもらうが、アリさんが客にギャグを飛ばしたり、民族衣装を着せて写真を撮ったりするので、落ち着いてハナシができない。相変わらず料理はウマイのだけど、5時間歩き回った末にコレだと疲れるなあ。10時前に解散して帰る。

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2005-10-01 BOOKMANたちと一日中

昨夜、《タモリ倶楽部》の前にテレビをつけ、5分間の情報番組あしたまにあーな》を見ていたら、今日が最終回とのこと。短い時間でいくつもの情報を、濱田マリのナレーションとともにテンポよく見せる番組なので、けっこう好きだったのだが。どうでもいいコメンテーターをいっぱい出してつくられるスカスカ情報番組などよりも、よっぽど存在価値のある番組のハズなのだが、7年間続いたということで、よしとすべきか。


8時半起き。テキパキと準備して、道灌山下バス停へ。早稲田行きのバスに乗る。「早稲田青空古本祭」の初日である。10時10分前に穴八幡宮到着。初日が土曜日で好天気というコトもあり、かなりヒトが集まっていそうだ。階段下の文庫コーナーはスデに開いていて、20人ぐらいが群がっている。先にコチラを見る。小峰元ソロンの鬼っ子たち』(文春文庫)、泡坂妻夫『亜愛一郎の狼狽』(創元推理文庫)、山口瞳『わが町』(角川文庫)、川端康成浅草紅団』(春陽堂日本小説文庫昭和7)、『紙魚』7号(鳥取市図書館の西尾肇氏が発行する文庫雑誌)など7、8冊を一冊100〜200円で見つける。『浅草紅団』の奥付を見ると、印刷所・日東印刷、印刷者・木呂子斗鬼次とある。なんて読むのか、この名前は? 帳場で〈三楽書房〉のアキヒロくんに会計してもらう。アタマの剃り跡が青々としてるね。


本会場がオープンしたので、階段を上がる。やー、すごいヒトだ。「初日派」ではないぼくは、こういう混雑は苦手。人込みで見れない棚があったらパスするコトにして、とにかく一回りする。清藤碌郎『文壇資料 津軽文士群』(講談社)500円、里見トン『鶴亀』(生活社、昭和20)300円、鏑木清方『清方随筆選集』(双雅房、昭和19)400円、福岡隆『活字にならなかった話 速記五十年』(筑摩書房)400円、瀬川昌久ジャズで踊って 舶来音楽芸能史』(サイマル出版会)600円、波潟剛『越境のアヴァンギャルド』(NTT出版)2400円などを見つける。あと、花森安治装幀の田宮虎彦『落城』(東京文庫昭和26)400円と、花森安治戸板康二、芝木好子らが執筆した『東京だより』(朝日新聞社編、東京大学出版会)420円も。『東京だより』なんて本があることはゼンゼン知らなかったが、あとでBOOKMANの会のときに、「戸板康二ダイジェスト」(http://www.ne.jp/asahi/toita/yasuji/)の藤田加奈子さんに「この本、知ってる?」と訊いたら、当然持っていた。それと、出版ニュース社から出た上笙一郎『児童文化書々游々』1575円を見つけて、あとがきを見ると「一冊にまとめる仕事を負ってくださった出版ニュース社の鈴木康之さん」とあった。この鈴木康之さんが『市井作家列伝』の鈴木地蔵さんなのである。今日のBOOKMANの会で話していただくコトに関連するので、買っておく。会場では、セドロー牛イチローや、森洋介さんと会った。


会期中にもう一度来るコトにして、早稲田駅近くの早稲田中学高校へと急ぐ。今日からココで文化祭があるのだ。入口付近では、パンフを配りながらあわよくば女の子を案内しようと待つ生徒たちと、それをクールな目で選別する女子高生ハンターたちの闘いがはじまっていた。とりあえずナカに入ってプログラムを見るが、古本市をやっている気配はナシ。じゃあ、用はないと1分で退去。東西線大手町丸の内線に乗り換えて銀座へ。並木通りの〈三州屋〉に入る。時間があるのでビールを一本。枝豆をつまみに飲み、そのあと銀ムツ煮を食べる。イイ気分になって外に出ると、まだ昼日中なので感覚が狂う。


12時半に〈フィルムセンター〉の成瀬巳喜男特集へ。1時からの映画がそろそろ開場だが、並んでいるヒトは50人ほどであんがい少ないと思って、最後尾につく。すると前のほうから、エレベーターで上げている。おかしいな、いつもなら階段なのに、と思ったら、後続の我々は階段の途中まで誘導され、ヨコに設置されている椅子に座らされる。そこで初めてわかったのだが、今日の映画は1時ではなく2時開始で、このヒトたちは1時間半も前から並んでいるのだ! 荷物さえ置いておけば、開場時間まで外に出ていてもいいようなので、近くの〈INAXブックギャラリー〉へ。しばらく前に改装したのだが、前を通るのがいつも休みの日で、やっと入れた。以前に比べると、スペースは狭くなったが、建築民俗芸術江戸東京などのジャンルの品揃えのよさは相変わらずで、ホッとした。小泉和子ほか『占領軍住宅の記録』下巻(住まいの図書館出版局)、長嶋千聡ダンボールハウス』(ポプラ社)、渡辺裕之『汽車住宅物語 乗り物に住むということ』(INAX ALBUM)を買う。まだ時間があるので、上のギャラリーも覗くが、興が乗る展示ではなかった。


またフィルムセンターに戻ると、今度は100人ぐらい並んでいる。もとの場所に戻り、開場を待つ。客は中年・老年の男性が多いのだが、彼らはちょっとしたコトで喧嘩をする。今日も「うるさい!」などと怒鳴る声が。若者はキレやすいなんて云うけど、むしろオヤジやジイさんのほうが短気だよ。開場後、たちまち席は埋まり、全員を座らせるために警備員が右往左往。時間ちょうどに来たら、入場できなかったのではないか。映画は《あらくれ》(1957)。観るのは二回目だ。徳田秋声原作で、高峰秀子が現状に安住せずつねに動き続ける女を演ずる。相手の男も森雅之上原謙加東大介仲代達矢と変わり、舞台東京千葉温泉地、また東京とめまぐるしく変わっていく(根津らしき場所も出てくる)。くどくど愚痴ったり落ち込んだりする男に対して、「そんなこと云ってもしょうがないでしょ」と突き放すトコロが誰かに似てるなあと思ったら、旬公だった。ウチも、情けない男と気丈な女という組み合わせなのである。


観終わって、まだ時間が余ったので、東京駅方面へ歩く。古本が重い。〈八重洲ブックセンター〉で、仕事の参考になる本を探す。そのあと、八重洲地下街の〈八重洲古書館〉へ。ココは意外な本が安く手に入る。『和田芳恵全集』のバラ(1、2巻)が各2800円であったが、荷物を考えて今日はヤメておく(ちょっと惜しかった)。倉本四郎『本の宇宙あるいはリリパットの遊泳』(平凡社)500円、を買う。丸の内線への通路を歩いていると、あまりに長いので疲れてきた。改札口にたどり着いたトコロで、女性に声をかけられる。おお、水声社の賀内麻由子さんじゃないの。水声社は今度、『水声通信』という月刊誌(PR誌にあらず)を出すそうな。15分ほど立ち話して別れる。


茗荷谷に着き、改札近くのパン屋でコーヒーを飲んで時間つぶし。10分前に改札に戻ると、鈴木地蔵さんと右文書院の青柳さんが待っていた。しばらくすると、今日の幹事であるアクセスの畠中さんがカートを引っ張って登場。「一箱古本市」で蛇行してすべてを破壊すると恐れられた、伝説カートである。会場のほうへ歩き、喫茶店に入って、打ち合わせというか雑談。そのあと〈寿和苑〉へ。BOOKMANの会メンバーのほか、「戸板康二ダイジェスト」「日用帳」(http://d.hatena.ne.jp/foujita/)の藤田加奈子さん、「晩鮭亭日常」(http://d.hatena.ne.jp/vanjacketei/)の晩鮭亭主人さん、未来社の小柳さんらも。鈴木地蔵さんのお話は、『市井作家列伝』成立前史とでも呼ぶべき内容で、高校のときから神保町を回りつくしていたこと、出版ニュース社に入って当時の新刊書をホトンド全部見たこと、飯能の仲間たちと雑誌『文游』をつくったことなどを丁寧に話してくださった。みんな興味深そうに聞いていた。最後に『市井作家列伝』の川崎長太郎の章に出てきた、川崎ファンの手製の川崎作品集(巻頭に雑誌に載った川崎グラフ記事を置き、次に川崎長太郎論を、そして短篇を並べるというふうに、雑誌特集的な構成になっていた)を見せていただいた。


いつもの〈さくら水産〉に移って、二次会。小柳さんから彼女企画した「テクストの祝祭日」というイベントのチラシをもらう。神保町ブックフェスティバルにあわせて、古書会館で催しを行なうもの。シアターピースによる演劇坂口安吾のと横光利一の)や、松本昌次氏の「戦後文学編集者」(10月29日、4時から)そして、堀切直人さんと鈴木地蔵さんの「私たちの神保町」(10月30日、4時から)というプログラム。どれもオモシロそうだ。飯能にお帰りになる鈴木さんほかの方々が出たあとで、荻原魚雷藤田晋也、濱田研吾といった連中とワリとマジメな話をする。終電間際に解散。ウチに帰ったのは12時半。大荷物を抱えて移動し、本好きの人たちと会いまくった一日だった。

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