一箱古本市in仙台 2日目

朝8時起き。ホテルのテレビで、北朝鮮関係のニュースをボーッと眺める。チェックアウトしてから、ロビーのパソコンでブログに書き込み。9時半に〈火星の庭〉に着くと、健一さんが開店準備をしている。タコスとコーヒーをご馳走になり、駅に向かって歩く。今日は朝からずっと雨だ。


仙台駅の改札を入ったところで、塩竈方面の電車を探す。ちょうど快速が来たので、飛び乗ったのだが、車内アナウンスを聞いたら松島まで止まらないという。しょうがないので車窓からの風景を愉しむ。松島で降り、反対側の電車に乗って塩竈へ。駅前広場になにやらヒトがたくさん集まっている。駅ができてから50年(だったかな?)を記念してのイベントのようだが、大雨なので気の毒。


駅から1分のトコロにある〈ふれあいエス塩竈〉へ。公民館や図書室のある建物だが、ここの一階に長井勝一漫画美術館(http://www.freefactory.net/~nagai/)があるのだ。『ガロ』編集長の長井は、塩竈生まれだったのだ(5歳で荒川区南千住に引越し)。館内には『ガロ』のマンガ家たちの原画や、雑誌の表紙の壁面展示、長井の仕事場の再現などがあった。いちばんオモシロかったのは、マンガ家から長井に出したハガキだった。長井美術館(といっても一部屋だけだが)のナカは閑散としており、ときどきヒトが入って来ても、「これ、何やったヒト?」「編集者だよ、手塚治虫とかを本にする」「ふーん」といった具合(手塚はやってないけどね)で、はなはだ反応が悪い。やっぱり編集者というのはわかりにくい職業なのだろうか。


そこを出てすぐ右にある〈明日香屋〉という古本屋へ。プレハブの倉庫みたいな店だ。本はだいたい半額で、100円コーナーもある。読み捨ての本を2冊買う。駅前を通り過ぎて、大通り沿いにある〈塩釜港〉という回転寿司の店へ。昨日、渡邉慎也さんに教えてもらったのだ。店内は広く、ネタの種類も豊富。寿司もウマイ。だけど、回っている皿の種類が5種類ぐらいあり、120円から500円まで差があるのだが、どの皿もビミョーに似ているので気が気ではない。せいぜい3種類ぐらいにまとめてほしかった。


駅に戻り、上りの電車で仙台へ。地下鉄で昨日の五橋へ。昨日、そこに行ってきたコトを久美子さんに云ったら、「コレ持って行けばよかったのに」と「仙台古本マップ」なるものを渡された。それを見たら、この辺りにもう一軒あるではないか。というワケで、再度の五橋行きとなった。その店〈S(エス)〉はマンションの2階で営業していて、表には看板を出してない。窓には「レコード・古本」というような表示がしてあったが、昨日はまったく気づかずに通り過ぎてしまった。〈S〉は岡崎さんも訪れて、「つげ義春のマンガにしたいような傑作」と書いているが、セレクトにセレクトを重ねてこうなったというような品揃え(合計で100冊以下ではないか)。窓際に置かれたレコードも、相当マニアックなようだ。店主は飄々としていて、「ナニを集めているのか」と訊いてくる。とにかくどんな客かを見定めようという姿勢で、こういう店はめっきり少なくなった。以前は干渉されるのがイヤだったが、近頃は適当にハナシができるようになった。古書組合には属さず、買い取りとセドリで15年以上やってきたという。海野弘監修『ハリウッド・バビロン』1・2(リブロポート)2500円。1はこないだ買ったばかりだが、ダブリは処分するとしても2冊でこの値段は安い。それと三上寛のエッセイ集『津軽野郎』(北の街社)1000円。ちなみに、この北の街社の出版目録を見ていたら、小倉ミキ『父・今純三のこと』という本を出しているのを知る。今和次郎の弟で洋画家だ。いつか出会うコトもあるだろう。


もうそろそろ火星の庭に戻らねば。タクシーに乗る。運転手さんに仙台土産ではナニがいいかを聞く。やはり、かまぼこらしい。「萩の月」か「白松がモナカ」(この「が」が古語っぽくて面白い)がイイとのこと。店に着くと3時。2日目の午後、しかも雨降りとあって、さすがに人は少ない。でも、さっきまで一杯だったとか。2日目だけ出品している箱が2つあり、その1つである「マミちゃんの本棚」の前で地蔵になる。川崎ゆきお猟奇王』のプレイガイドジャーナル版、宝島の増刊『ロッカーズ1983』、『朝日ジャーナル』の読書特集(1987年)など1980年年代育ちの琴線をくすぐるセレクト。しかも安い。以上3点を買うが、ほかにも佐々木マキなどがあった。出品した斉藤さんに訊くと、結婚して家を出たお姉さんの本棚から持ってきたとのこと。「マミちゃんって、30代末でしょう?」と訊くと、だいたい当たっていた。こういう同世代感覚の箱は嬉しいね。もうひとつ、昨日は見るヒマがなかった〈蟲文庫〉の箱に、『ロック・マガジン』のバックナンバーがごそっと出ている。この雑誌は音楽界の『遊』みたいな難解モノで、買っても読むことは少ない気がするが、一冊800円でしかもほとんど売れ残っているので、手が出てしまう。YENレーベルを特集した数号と、別冊のレコードガイド『バイブル』を買う。


健一さんに、「この辺でいい喫茶店ない?」と訊くと、「ちょっと歩くけど」と〈カフェ・モンサンルウ〉という店を教えてくれた。大通りから一本入ったところの奥にある店で、内装はシックで、本も置いてある。なかなか落ち着く店だった。


火星の庭に戻るとまたお客さんが増えている。ラストスパート。5時になり、一箱古本市は終了。お疲れ様でした。すぐに撤収に入り、手で持って帰ったり車に積んだりして、店主たちが去っていく。残った人たちでテーブルを出し、感想を云いあうお茶会を。必死で集計していた健一さんから、結果が手渡される。二日間の合計37万7110円。点数は777点。各店平均で6942円、15点を売った計算になる。この結果は立派だ。売り上げだけでなく、集客数も凄かったし、火星の庭の古本(期間内は10パーセント引き)の売り上げもよかったようだ。まずまず大成功ではないか。売り上げトップはやはり岡崎武志さんで、2万4910円。ぼくの「古本けものみち」は1万2400円。岡崎さんの約半分だ。しかもCDばかり売れて本があまり売れなかった。読みが甘かったか。


「来年もぜひやってね」と前野夫妻にお願いしておく。そのあと、〈仙台メディアテーク〉の前にある〈ピッツェリア・デ・ナプレ〉で食事。「日本一美味しいピザ」と久美子さんが太鼓判を押すだけのコトはあった。チーズ数種類を載せたピザがうまかった。


久美子さんの車に乗り、東北大の近くにある前野家へ。仙台では古いというマンションで、ベランダからは川と山が見える。この見晴らしで、この広さで、この値段はズルイ。あとから健一さんが、実家に預けていたお子さんと一緒に帰ってくる。めぐたん(3歳)は12時近くだというのにとても元気に、部屋を駆け回っていた。リビングの本棚には、健一さんの集めた特撮関係の資料がきちんと並べられている。健一さんは、ほぼ一人で怪獣の制作、脚本、撮影、ナレーション、監督までこなす、特撮映像作家なのだ。自作の特撮ドラマとアニメを収めたビデオテープをいただく。リビングに布団を敷いて、電気を消してすぐ寝入ってしまった。