ファンは春先にやって来る

9時起きのつもりが、寝坊して10時に。昨夜遅くまで倉知淳『過ぎ行く風はみどり色』(東京創元社)を読んでいたためなり。この数日で、この作家の本を読みまくり、ついにあと一冊を残すばかりになった(もともと刊行点数自体が少ないのだが)。旬公は夜中に、桜玉吉『幽玄漫玉日記』の途中の巻を読んだらしく、「このヒトの絵はめちゃめちゃウマイよねー」と感極まっている。うれしくなって、しばらく布団の中で桜玉吉談義。ナニやってる。


打ち合わせの資料をプリントする。1時に出て、根津の〈日増屋〉でラーメン。そのあと、〈オヨヨ書林〉へ。ほうろうのトークショーで、オヨちゃんのプロジェクターを借りる件。「今日借りてってもいい?」と訊くと、「いまウチにテレビがないんで、このプロジェクターでDVDの映画観るのが唯一の娯楽なんですよ〜」とわびしいコトをおっしゃる。なので、当日取りに行くことに。


小川町に出て、〈ドトール〉で時間つぶししてから、G社で打ち合わせ。そのあと神保町に行くと、〈文省堂〉と〈明文堂〉と角のハンコ屋(だったけ)が完全に消えて、サラ地になっている。〈書肆アクセス〉に寄って、畠中さんと話す。けっこう客が多いのに、畠中さんの声がかなりデカいので気になる(ぼくが気にすることじゃないが)。〈書泉グランデ〉で、吾妻ひでお『逃亡日記』(日本文芸社)と芦原すなお『わが身世にふる、じじわかし』(創元推理文庫)を買う。後者は「ミミズクとオリーブ」シリーズの第3弾だ。のほほんとして好きなんだ、このシリーズは。


ウチに帰ろうかと〈三省堂〉方向に歩いていると、向こうから旬公がやってくる。「〈すずらん堂〉で山岸涼子テレプシコーラ』(メディアファクトリー)の最新刊を買って、喫茶店で読もうと思ったら、ひとつ前の巻だったの」と悔しげに云う。〈すずらん堂〉に戻ったら、最新の第10巻がちゃんと並んでいるじゃないか。ドコに目をつけてるんだか。無事買って、アクセスの前を通りがかると、畠中さんと〈ぶらじる〉の竹内さんが店の前におり、そのヨコをすり抜けて、デザイナーの多田進さんが店に入っていく。まるで集会所みたいな店だ。ウチに帰り、『テレプシコーラ』を読む。衝撃の展開、そして第一部完結、と聞かされており、それなりに覚悟をして読んだが、やっぱり衝撃を受ける。緻密な構成力と異様な絵の力。


そのあと、『逃亡日記』を読む。タイトルは『失踪日記』に便乗したもので、中身は日記ではなくインタビュー集。前後にマンガが入る。便乗本だし、版元がアレだから、期待しなかったが、インタビューのまとめ方や注の入れ方などきちんとしているし、話じたいもオモシロイ。いま公開している「路上派少年遊書日記――1981年・出雲」が、まさに吾妻ひでおに没入しはじめた時期に重なるので、いろいろと思い出す。『不条理日記』がSFやマンガのパロディだったことについて、「元ネタはみんな知っていると思って描いていた」と云うが、中学1年生には10分の1も元ネタが判らなかった。それでもじゅうぶん笑った。あとになって元ネタを知って、再度『不条理日記』を読み直したものだ。『ふたりと5人』時代に、ファンがしょっちゅう遊びに来ていたことについて、「――当時ってファンはいきなり来るんですか?」「いきなり来るね。とくに春先に来る(笑)」というやりとりが、やたらにオカシイ。


では、最後に「路上派少年遊書日記――1981年・出雲」を。

1981年4月13日(月)
★『陽あたり良好!』最高。
なぜあだちマンガはバツグンにおもしろいのか。
今日また買ってしまった。『陽あたり良好!』第3巻である。