フィルムセンターで知り合いに会う

8時起き。洗濯をしたり、朝飯を食べてから、神保町へ。古書会館で古書展を覗く。20分ほど流すがナニも買わず出る。駿河台下の交差点の方に歩くと、向こうから会館でいつもバイトしている女性(しょっちゅう会っているのに、いまだに名前を知らず)がやってきて、「早いですね〜」と云われる。女性からこう云われると面目ないカンジ。書店でも古書展でも、端からじっくり眺めていくという根気は持ってないのです。


三省堂書店〉で書評の本を、〈すずらん堂〉で、榎本俊二『カリスマ育児』(秋田書店)、ダーティ・松本『エロ魂! 私説エロマンガ・エロ劇画激闘史』第1巻(オークラ出版)を買う。『エロ魂!』は塩山・永山の「アマゾン合わせ買いコンビ」のヨコに並べてあった。あとで見たら、新刊じゃなくて2003年に出た本だった。


銀座に出て、〈松坂屋〉で開催中の「古書籍・書画幅大即売会」を覗く。「銀座ブックバザール」と名乗っていた頃に比べると、倍近いスペース。出店者は関西の古書店が多く、会場では関西弁が飛び交っていた。ナニも買わず。〈三州屋〉でブリ照り焼き定食を食べる。最近は土曜日に銀座に来ると、ココに入りたくなる。


12時半にフィルムセンターへ。明日まで「日本映画史横断2 歌謡・ミュージカル映画名作選」なのだが、いちども行けなかった。アクセスの畠中さんにもらった券をムダにしたくないので、瀬川昌治監督《乾杯!ごきげん野郎》(1961)を観るコトにした。ホールの入り口で濱田研吾さんにバッタリ。瀬川の自伝(『乾杯!ごきげん映画人生』清流出版)を読んで観たくなったとか。入り口のソファに座って、雑談。映画は途中ダルい部分があり、ぐっすり眠ってしまった。起きたらエノケンが出ていて、ソファに座っているので、もう車椅子になった時期なのかと思っていたら、途中から立ち上がったので、ビックリする。あとで調べたら、エノケンが脱疽で右足を切断するのは、この翌年、1962年のことだ。この映画は、エノケンが元気に歩いていた最後の時期のものだったのだ。歩いたことだけでなく、この映画でのエノケンはけっこうオモシロかった。終って外に出ると、こんどは〈古本すなめり〉さんに声をかけられた。こんなB級歌謡映画の上映に、知り合いが二人も来ているとは。東京駅から西日暮里に帰る。


この数日間読んでいた、都築響一夜露死苦現代詩』(新潮社)を読了。点取り占い、死刑囚の俳句、ヒップポップの歌詞、見世物小屋の口上など、文学作品として発表される詩ではないものに「言葉の力」を見つけ出すという連載。友原康博という統合失調症の人の、分かち書きされた詩が圧倒的に良い。この人は具体美術協会のメンバーでもある教師(嶋本昭三)に世話されていたのだが、一時期、嶋本の美術仲間の浮田要三(『きりん』の人ですね)が経営する製袋工場で働いていたコトがあったそうだ。


暴走族の刺繍入り特攻服を扱った回では、掲載誌(『新潮』)の担当者にイヤな顔をされる。それに対しての都築氏の述懐は、なかなか真理を突いていると思った。

しかし結局のところ、好きなものじゃなくて、いちばん嫌いなものの中にこそ、リアリティは隠れてるってことなのかもしれない。なにかを好きになるのは簡単だけど、嫌いになるには、自分の中のなにかがそれに反応しなくてはならないのだから。


夕方、〈オヨヨ書林〉でプロジェクターを借り、〈古書ほうろう〉に運ぶ。明日はいよいよ、「全国〈古本女子〉サミット」です。すでに多くの予約が入っていますが、当日でもなんとかなるので、ぜひおいでください。6時開場、6時半スタートです。「古本女子の一箱古本市」もお忘れなく。


では、最後に「路上派少年遊書日記――1981年・出雲」を。

1981年4月20日(月)
★坂本(もげ)より『陽あたり良好!』は最高とのこと。やはり、わかる人にはわかるんだなあ。あだち充のよさは。


★『少年ビッグコミック』に載った僕の原稿料を送って来た。自分でかせいだ初めての金である。書留で送って来ていたので、【仏壇に】そなえておく。


★この間から再開した「ラジオSFコーナー」
今は荒巻義雄の「ニコルスキーの空間」をやっている。もしかしてすごい作品ではないだろうかと期待しているが、またすばらしい展開になりそうだ。*1

*1:などと判ったフリをしているが、荒巻義雄のSFは難解でシュルレアリズムっぽくて、当時のぼくにはついていけなかった。同じヒトがいまや架空戦記ものを書いているとは、時代は変わる……。