蛾次郎は歌うよ

朝から2時ごろまで、談話のまとめ。話が前後していて手こずる。そのあと、短い原稿を書く。夕方、〈往来堂書店〉へ。『ミニコミコレクション』(春日出版)という本が面出しになっており、あえて「ミニコミ」を使うのは近頃かえって珍しい(リトルプレス、リトルマガジンが多い)と思って手に取る。……なんじゃ、こりゃー! 一つのミニコミの表紙を左ページに載せ、右ページにその本文からの2見開きの図版を載せる。表紙の下にはそのミニコミの概要。上にはデータ。たったコレだけ。それが53誌載っている。ほかには「はじめに」という文章だけ。わずか126ページで、情報量は極端に少ない。ミニコミのセレクトが優れていればまだイイのだが、定番のものがほとんどだし、分類も「文化」「旅行」「映画・演劇」「生活」「文芸」「漫画」「地域」と大ざっぱ。ナニより、なぜコレを取り上げるのかという視点がまるっきり見えない。後ろにミニコミ取扱店として載っている〈模索舎〉〈タコシェ〉〈フィクショネス〉に行って適当に見つけてきたモノを集めただけにしか見えない。図版のキャプションの芸のなさにも腹が立つ。なんだよ、「いかにもこのミニコミらしい」って。奥付は2007年11月となっているが、往来堂には最近入ったようだ(版元のサイトには1月発売とある)。オールカラーとはいえ、これで1800円だというのだ。この10倍は情報量のある『ミニコミ魂』が1900円だったコトを思うと、情けなくなってくる。こんなひどい本、ゼッタイ売れないぞ、と云いたいところだが、これぐらいの緩さを求める読者はいるんだろうなあ。なんか、いろいろ馬鹿馬鹿しくなって、イヤになる。


気を取り直し、千代田線で湯島へ。大阪からオンライン古書店〈BOOK ONN〉(http://www.bookonn.com/)の中嶋さんが来ているので、飲むことになっている。中嶋さん、荻原魚雷さん、そして「アセテート」の中谷礼仁さんと、中谷さんの行きつけ(ぼくも何度か来たことがある)〈大将〉へ。誰もいない二階の座敷に落ち着く。昨日、坂崎重盛『東京読書』を読んでいたら、内田百ケンのところで突然中谷さんが出てきた。『東京日記』のイメージイラストを彼が描いているというのだ(「不能なる「私」、「東京日記」論」http://www.nakatani-seminar.org/nakatanipersonaldata/tokyo_diary/tokyodiaryIndex.html)。それで久しぶりに会いたくなって、お誘いした次第。中嶋さんから、彼がデザインした、〈ちょうちょぼっこ〉の「にのにのいちのに」で出された『にのいち新聞』をもらう。欲しかったんだ、これ。表紙は宮武外骨の『滑稽新聞』風に。


いろいろ話し、9時半に解散して地下鉄のホームに降りると、西日暮里で人身事故とかで電車が来ない。20分ぐらい待ったか。ウチに帰り、DVDで澤田幸弘監督《反逆のメロディー》(1970)を観る。主演の原田芳雄よりも、脇役の佐藤蛾次郎地井武男が生き生きしている。とくに佐藤蛾次郎は歌までうたって、大活躍。こんなに蛾次郎が出まくっている映画、はじめて観た。