初夢版・風流夢譚

昨夜は西澤保彦スナッチ』(光文社文庫)読了。この著者が得意とするSF的設定のミステリ。あとがきにもあるように、著者は高知在住だが地元色の強い作品は少ない(ブラスバンド小説『黄金色の祈り』は高知が舞台だったはずだが)が、これは高知県が舞台。1977年と2008年の31年間の時の流れを、さまざまな場所を使って示している。地元の人には一発で判るモノが多いんだろう。


昼ごろ、自転車で出かける。道灌山下交差点に年末オープンしたカフェに入ってみる。韓国系のチェーンらしく、店員も韓国人だ。コーヒーとパンのセットが300円。パンは大きくて、中が甘い。テーブルは3つしかなく、持ち帰りに力を入れているようだ。しばらくそこで本を読み、〈古書ほうろう〉へ。名古屋からこっちに帰る夜行列車に、線路に侵入した車がぶつかり3時間立ち往生した話を聴く。先頭車両にいたが、衝突の衝撃はほとんどなかったという。とにかく、脱線しなくてよかった。こことブックオフで小説を何冊か仕入れる。


往来堂書店〉では、恒例の「D坂文庫」フェアをやっている。今回は不忍ブックストリート以外の人も多く参加している(http://yanesen-urouro.bakyung.com/2011/12/post11122900.html#more)。ぼくが推薦したのは、嵐山光三郎『桃仙人 小説深沢七郎』(ランダムハウス講談社文庫)と長嶋有『ぼくは落ち着きがない』(光文社文庫)だが、前者は品切れということで、ちくま文庫の『深沢七郎コレクション』が並んでいる。少しは売れてくれるといいのだが。


もう一軒、カフェに入って本を読もうと、根津神社の辺りまでぐるぐる回ってみるが、どこにも入らず。思いついて、田端方面へ。谷田橋通りのちょっと入ったところにカフェができたことを思い出したからだ。〈La Yume〉という店。営業してるので入ろうとしたら、まさにその瞬間、男性客が入っていく。こういうとき、入らずに帰ってしまうことが多いのだが、今日は入ってみる。元は花屋だった場所で、奥にテーブルが一つ、カウンターが一つ。椅子の数はわずか4つ。先客とぼくで満員だ。店主は若い男性で、あとで聞いたらフレンチとイタリアンのレストランで働いて、昨年12月に開業したという。入り口の台に、その修業した店の本と近藤富枝『田端文士村』が置かれていた。本人も田端から通っているそうだ。エビとトマトソースのパスタとコーヒーを頼む。サービスで今朝焼いたというお菓子(有名なものだが、名前忘れた)を出してくれた。全体に上品な味だし、店の雰囲気もいい。ゆっくり本が読める店が増えるのは歓迎なので、ぜひ頑張ってほしい。


そのあとは本を読んだり、北千住まで出かけたり。夜、変な夢を見る。森の中を歩いていたら、海のようなところに出る。歩いて行けるところをたどっていったら、人の家の中に出る。そこは昭和天皇の家(普通の住宅だった)で、天皇に手を貸してもらい引っ張り上げてもらう。シャワーを使わせてもらい、着替えも借りる。天皇の息子(平成天皇ではない青年)が、いろいろ話しかけてくる。「ブログ読んでますよ。ユーストリームも見ましたよ」。おお、皇太子が不忍ブックストリームを、と思ったところで目が覚める。深沢七郎の『風流夢譚』のような出来事はナニも起こらない、ゆるい初夢(その前にも見てるんだろうけど、忘れてる)だった。そのあとも、谷根千を歩いていたら、路地の奥にでっかい家があって、そこで共同生活している人たちがいた、などの夢を断続的に見た。