ナンダロウアヤシゲな日々

◎この日記は、ライター・編集者の南陀楼綾繁が書いています。
◎新刊『町を歩いて本のなかへ』(原書房)発売中です。
◎著書『一箱古本市の歩きかた』(光文社新書)、『谷根千ちいさなお店散歩』(WAVE出版)、『小説検定』(新潮文庫)、『ほんほん本の旅あるき』(産業編集センター)、『路上派遊書日記』(右文書院)、『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『老舗の流儀 戦後六十年あの本の新聞広告』(とうこう・あい監修、幻冬舎メディアコンサルティング)、編著『チェコのマッチラベル』(ピエ・ブックス)、共著『ミニコミ魂』(晶文社)。
◎ご感想・ご連絡は南陀楼綾繁 まで。
◎「不忍ブックストリートの一箱古本市」は毎年春に開催します。
詳細は不忍ブックストリート公式ホームページもしくは、しのばずくん便りをご覧ください。
2004 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2005 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2006 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2007 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2008 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2009 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2010 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2011 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2012 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 |
2015 | 11 |
2017 | 06 | 07 | 08 | 09 | 11 |
2018 | 02 |
2431985

2012-02-29 《四季の愛欲》は日本型スクリューボール・コメディの傑作だ

昨日手に入れたiPhoneだが、案の定、設定の最初から何も判らない。紙のマニュアルをなくすのは構わないが、購入して最初にやる設定ぐらいはしつこいぐらい判りやすくしておいてほしい。Auショップで渡された設定ガイドと実際の画面が違っていたら、誰だってこのまま進めていいか不安になるだろう。


で、今日はやや早起き。昨夜からの雪が積もっている。朝9時にau iPhoneサポートセンター電話。幸い、一発でつながる。まずAPPLE ADというのを取得するのに時間がかかる。やっとできたので、次は前の携帯アドレス帳を移行しようとするが、なんどやってもうまくできない。「ちゃんと保存されていたのか確認しろ」と云われて、auショップ電話するも、予想通り「ウチではやることをやったはず」と木で鼻をくくったような返答。Auのサポートに電話しろと云われてするが、「こちらでも確認できない」などと云われる。そのあと、サイトから確認できることが分かり、やってみると、確かに保存されていた。その上で、もう一度au iPhoneサポートセンターにつないでもらい、アドレス帳ダウンロードを試みるが、なぜか同じ所で止まってしまう。時間をおいてやり直したらうまくいくかもということで、今日のところはあきらめる。ここまででもう昼の1時だ。4時間もナニやってるんだ。もっとも、サポートにリアルタイムで教えてもらえるので、操作のやり方じたいはだいぶ飲み込めた。


急いでラーメンつくって食べ、外に出る。雪はやんで雨になっているが、道が半分凍りかけていてすべりそう。〈花歩〉でH社のSさんと打ち合わせ。雑誌の特集。ずっと前に『sumus』が神保町でやった談話会に来てくれていたという。帰ってちょっと休み、昨日書けなかった原稿に取り組む。気取らずに書いたら、なんとかうまくできたようだ。時間を見ると、今出たら〈神保町シアター〉の最終回に間に合いそう。雪の日なので出かけるのがおっくうだが、『名画座かんぺ』発行人ののむみちさんから強力に勧められた映画なので、行くことに。


中平康監督四季の愛欲》(1958)。原作丹羽文雄の『四季の演技』。冒頭に、丹羽文雄原稿用紙に書いた、私は小説家として云々という文章が出る。そして、売れっ子の若手小説家安井昌二)のもとを、母親山田五十鈴)が訪れるシーンから始まる。いかにも文芸物の映画という雰囲気で、小説家母親、長女(桂木洋子)、小説家の妻(楠侑子)らのそれぞれの「愛欲」がシリアスに描かれていく。恋愛に絡まないのは、さっぱりした性格の次女(中原早苗)だけだ。


しかし、シリアスな表面に、どこか奇妙で笑える要素がちらつく。それが判るのが、夫(宇野重吉)のある桂木洋子が従兄(小高雄二)に連れ込み旅館で身を任せるシーン。それまで、しとやかな話し方だった桂木が、「パトロンの女と別れて」と頼む時には口調がやたらと早口になり、「こんなところじゃイヤだけど」と口走りながら、小高に抱かれるあたりで笑ってしまう。その後も、安井那須旅館のバーに勤める百合子(渡辺美佐子)に「水虫の具合はどうだ」と云い、いきなり渡辺の足に水虫の薬を塗りだすシーンとか、パトロン永井智雄。最近この人が出てくる映画を観ることが多い)に邪険にされて帰る山田モノローグと独り言がごっちゃになるシーンとか、ギャグではないのだが、シリアスなノリをぶち崩す要素がふんだんに盛り込まれている。


丹羽文雄小説はほとんど読んでなくて、日本風土での文豪というイメージをもっていたが、中平のこの映画は、「愛欲」をどろどろしたものではなく、人生の偶然の出会いを生み出すゲームとしてとらえている。熱海那須旅館銀座の街頭などで、知り合いの男女が出食わしたり、目撃したりという、ヒトの出入りをうまく使っているのも、アメリカ映画のいわゆる「スクリューボール・コメディ」(定義はこの際措きます)を、中平流にアレンジしたものだろう。最高なのはラストで、駅のホームでぽかんと口を開けて列車を見送る主要人物たちと、動き出す列車カットが交互に映される。それまでのシリアスさを、一気にぶち壊すパワーがあった。観終わって、凄いものを観たという満足感にひたる。もう一度観る機会があればいい。


丹羽文雄ははたしてこの映画を観ただろうか。「これは自分世界じゃない」と怒ったのか、それとも、「結構面白いやないか」と笑っただろうか。


帰りに小川町の〈とくや〉で、塩たまごラーメン。たまにしか来ないけど、ここのラーメンはときどき食べたくなる。神保町では珍しく券売機が置いてなくて、夫婦だけでやってるのもいい。帰ると、津の雑誌『kalas』の第15号が届いていた。今回の特集は「生えているところ」。いつも抽象的な特集タイトルだが、ページをめくっていくと、そのタイトルに納得させられるのが見事だ。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20120229

2012-02-28 駆け足で備忘録

もう2月も終わりですね。この二週間ほど、東京を空けていることが多く、その間のことを書きたいんですが、どれも長くなってしまいそうなので、手がつけられてません。いずれ書くかもしれないですが、とりあえずは、こんな動きでした。


17日 仙台経由で東松島へ。東松島図書館から仮設住宅の「小さな図書館見学松島旅館まり。一箱本送り隊のブログレポート書きました。

http://honokuri.exblog.jp/17873126/


18日 女川へ。町の中を回り、二人の阿部さんと話す。午後は仙台に帰り、〈火星の庭〉で20世紀アーカイブ仙台佐藤正実さんと会う。夜は〈鉄塔文庫〉で佐藤ジュンちゃん、わめぞ連、魚雷さん、丹治さんたちと。


19日 仙台。午前中は〈カフェモーツァルト〉。13時からずっと「おとのわ」。立ちっぱなしで疲れたけど、とてもいいライブイベントだった。20時過ぎの新幹線東京へ。帰って、「あいおい古本まつり」のチラシ校正


20日 朝、雑用を片付け、11時過ぎの新幹線岡山へ。乗り換えて倉敷。〈蟲文庫〉の田中さん居酒屋〈鳥好〉で飲み、ご自宅に泊めていただく。2階の田中さんの部屋に寝させてもらったと云うと、前に泊まった武藤良子王子にうらやましがられた。


21日 午前中、田中さんさぬきうどんの〈栄楽〉。350円のてんぷらそば、うまい。そのあと時間あったので、喫茶店に行こうとするがどこも開いてない。しかたなく、路地裏の〈ふるいち〉というお好み焼屋で、ビールと豚玉入りお好み焼きを食べる。味はまあまあだが、量がすごい。13時過ぎの伯備線やくも号で出雲へ。実家に着いたのは17時ごろ。珍しく雪が残っている。


22日 午前中、書庫の整理。昼前に両親と出雲大社へ。何年か遅れで厄払いしてもらう。出雲大社の60年ぶりの遷宮に合わせて、修造中の本殿を特別公開している。めったにない機会なので、しばらく待ってから入る。大屋根の檜皮などを目の当たりにできた。参道入り口にある〈大梶〉で割り子そばと釜揚げそば。


23日 出雲。一日中、資料読み。医大前のジャズ喫茶〈味巣亭〉に久しぶりに行った。新聞に、日本古書通信社八木福次郎さんが亡くなっていたとあり、驚く。とてもお世話になった方。


24日 松江。この日はブログに書きました。http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20120225 帰ると、『てくり』最新号、酒とつまみ編集部編『酔客万来』(ちくま文庫)が届いている。ありがとうございます


25日 東京。〈なかよし文庫〉旧蔵のコミックを一箱本送り隊に寄贈いただく件で、朝から運搬。そのまま集積所で作業。14時過ぎに出て、〈やぶさいそうすけ〉でミロコマチコさんの展覧会。鳥のモビールがいい。帰って会議の資料をまとめ、18時から不忍会議。そのあと、数人でよみせ通りのインド料理屋へ。


26日 昼過ぎに池袋。〈新文芸坐〉の鈴木英夫特集。《悪の階段》(1965)と《その場所に女ありて》(1962)。どちらも再見。前者はどうも冗長。後者司葉子のきりっとした感じがよく出ている傑作。アートディレクター役の浜村純が光る。池野成のバロック風音楽が素晴らしい。たまたまツイッターで知った、〈古書往来座〉での『名画座かんぺ』創刊飲み会に参加。15人ぐらいいたか。ビレッジプレス五十嵐さんと先に出て、ジュンク堂近くの飲み屋終電近くまで、打ち合わせがてら、あれこれと。


27日 朝起きると、頭痛い。風邪かと心配するが、二日酔いだったようだ。まず吐き気が来る方なので、頭痛は珍しい。午後、〈花歩〉でHさんと『yom yom』リニューアル号の打ち合わせ。「小説検定」の連載、続くことになった。


28日 引きずっている原稿あるが、構成がうまく行かず。阿佐ヶ谷へ。Auショップで、携帯iPhone機種変更手続き終わるまで、ブックオフへ。〈ラピュタ阿佐ヶ谷〉で、鈴木清順監督密航0ライン》(1960)、そして山崎徳次郎監督《事件記者 時限爆弾》《事件記者 狙われた十代》(1960)。「事件記者シリーズは、前者は湾岸後者外苑前と、東京の街の使い方がやはりうまい。久しぶりに〈富士ランチ〉で晩飯。

台信史雄だいのぶふみお台信史雄だいのぶふみお 2012/03/28 09:20 昨日、戸畑区役所で南陀物楼綾繁さんの話を聞きました。早速、検索でこのページを見つけました。二日酔いの日誌がありました。二日酔いにはウコンを前もってのんどけば明くる日は爽快です。飲んだ後でもかまいません。どうぞ伝えて下さい。量販薬局で1000円くらいで売ってます。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20120228

2012-02-25 松江で観る花森安治展

朝7時半に起きるからと親に云っておいたのに、その1時間前に起こされる。もう荷物の準備は終わっているので、とくにすることなく過ごす。出雲市駅にも5分前に着けば十分なのに、20分前に送られてしまう。歳を取ってますますせっかちになっているようだ。電車松江へ。途中の駅から乗ってくる客に、バスのような整理券を取らせているのに驚く。JRなのに。いつからこんなシステムになったんだろう?


松江からタクシーに乗る。島根県立美術館までと告げると、運転手が「今日から展覧会なんですね。私も本が好きで、よく古本屋に行っていますが、最近松江も減りました」と話し始める。こちらが古本好きなことを知ってるかのような話し方だった。ちょっとびっくりするような裏道を通って、美術館に到着。13年前に開館したとのことだが、ぼくは初めて来る。宍道湖に面し、宍道湖大橋にも近い、いいロケーションだ。


「くらしとデザイン 『暮しの手帖花森安治世界」という看板が出ている。中に入り、受付で招待状を渡す。暮しの手帖社のHさんに、花森安治の娘さんである土井藍生さんと手帖社の社長さんをご紹介いただく。藍生さんは想像していた通り、きりっとした女性だった。会場の入り口開会式があり、あいさつとテープカットのあと、中に入る。まずはざっと展示の流れを説明され、ギャラリートークへ。開会式に招待されていた30人ほどの客を相手に、元手帖スタッフ河津一哉さんが話をされる。売り物だった「商品テスト」にこめられた花森の理念といったお話。そのあと、家一軒を燃やすテスト8ミリフィルムを見せられる。入念な準備をして家が燃えおちるまでを記録するという、常識外れのテストには、前衛アートを見るような面白さがあった。ギャラリートークの構成としては、まずこの映像を見せたうえで河津さんが話す方が良かったのでは。一般のお客さんには、話の方向がやや分かりにくかったような気がする。


そのあと、入口に戻って、最初から展示を見て回る。花森の生涯をまとめたコーナーでは、旧制松江高校の校友会誌や出征中の手帖を展示。『スタイルブック』は全ページの版下を見せる。『暮しの手帖ブロックでは、主要な号の表紙原画と実際の雑誌を並べている。原画印刷物よりも色がくっきりしているのは当たり前だが、表面にスクラッチ(ひっかき)などの細工がほどこされているのが分かる。この表紙画を描くことが本当に好きだったんだなあ。その表紙を描いたデスクのところで、編集部の様子と題された映像が流されていた。時代がはっきりしないので、河津さんにお聞きしたら、花森没後、狸穴に移ってから映像だと教えてくださる。本文に使ったカット新聞広告などの原稿や版下も多く展示されていた。


最後ブロックが装釘で、暮しの手帖社の発行物が壁面に、それ以外の版元の本が丸テーブルの上に並べられていた。手帖社の数冊については、装丁版下も展示されている。出口付近には、花森と松江として、松江関連の本と一畑百貨店の包装紙があった。緑と赤の二種類。『文藝別冊 花森安治』の拙稿では、年代不明と書いたが、このキャプション1958年から71年まで使われていたことが分かった。妻ももよの姉とみえの夫が一畑経営者だったという縁で、依頼されたとのこと。


観終わってから、本展を担当されたUさんと立ち話。途中で担当が変わり、短い期間での準備に苦心されたようだ。展示期間が1ヶ月半しかないのは、展示物に水彩や書籍が多く、長期間展示すると痛む可能性があるためだという。場内の照明も落とし気味にしてある。


2006年世田谷文学館で開催された展覧会と、ある程度展示物は重なっているけれど、セタブンの三倍近いスペースにゆったりと展示されているのを見ると、また印象も変わる。わざわざ松江まで足を運ぶに足る展覧会になっていると思う。予算の都合で図録が刊行できなかったのは惜しい(暮しの手帖社刊『花森安治のデザイン』は図録的観点編集されていないので)。簡単なパンフレットはあるが、展示物一覧リストは初日に間に合わなかったとのこと。あと、松江での展覧会にしては、松江と花森に着いてもっと突っ込むべきだったと思う。これは今後の課題だろう。


気が付けば、もう12時回っていた。急いで二階の常設展を回る。ある展示室で写真のコーナーがあり、植田正治らの作品を多く展示している。とくに福原信三が『松江風景』という写真集(知らなかった)に収めた写真がすごくいい。もっと見ていたかったが時間がない。ギャラリーショップで、松江市文化協会発行の『湖都松江』第22号を買う。松江古本屋ダルマ書店〉のご主人の記事が読みたくて。


入口で待っていると、Iさんが車で迎えに来てくれる。奥出雲町で「ブックカフェ出雲」というイベントを開催し、その中で一箱古本市を何度かやっておられる女性。まず、〈アルトス・ブックストア〉(http://www1.megaegg.ne.jp/~artos/)へ。感じのいい本ばかり並ぶセレクトブックショップ。数年前に一度来ているが、店主ご夫妻にあいさつするのは初めて。松江一箱古本市を実現できないかという相談。時期や場所についてアイデアをいただく。そのうち実現しそうな気がする。


次に〈曽田文庫〉(http://sotalibrary.will3in.jp/)へ。正式名称は「曽田篤一郎文庫ギャラリー」。雑賀町の住宅地にある木造一軒家を私設図書館として開放している。設立者が病気になったが、応援団の手で維持されているという。受付のほかに二室あり、一室は子どもの本があってお母さんと子ども二人が絵本を読んでいる。もう一室のテーブルでは中学生が二人読書中。蔵書5000冊ほどあるが、小説を中心に、ノンフィクションや郷土の本などと幅広い。きちんと選ばれた本棚という気がする。応援団が選ぶ本のコーナーには、関口良雄『昔日の客』(夏葉社)や毛利眞人ニッポンスウィングタイム』(講談社)などぼくの好きな本もある。コレは応援したくなる図書館だな。運営資金は古本バザーでの売り上げや寄付によるという。花森安治展のために来松される方は、ぜひ、曽田文庫アルトスにも足を延ばしてほしいものです。レンタサイクルで回るのがいいかも。


駅に隣接したシャミネのイタリアレストランで、Iさんとランチ。奥出雲図書館をつくる運動などについて話を聞く。そのうち不忍ブックストリームスカイプ出演してもらうことに。16時のやくも岡山へ。途中やたらと揺れて、気分が悪い。本も読めない。岡山で乗り換えるが、10しか時間がなく、駅弁が全部売り切れで一つだけ残っているまずそうな幕の内を買う。のぞみの車内はほぼ満席。その中で、まずそうな弁当を食べ始める。周りの人に「これは自分趣味で選んだんじゃないんですよ」と説明したい気分。しかし、食べてみると意外に味が旨く、食べでもある。今度は「見かけよりはずっといいですよ、この弁当」と周りの人にこの弁当を擁護したくなった。東京に着いたのは22時すぎ。

artosartos 2012/02/25 14:31 昨日はお忙しい中お立ち寄り頂きありがとうございました。こちらでもご紹介頂きありがとうございました。もっと色々なお話がゆっくりお聞きしたかったので、またぜひ次の機会にでも!一箱古本市、ぜひ実現できますように。

kawasusukawasusu 2012/02/28 11:35 先日は突然お邪魔してすみませんでした。お話できてよかったです。曽田文庫の応援団の方も一箱古本市をやりたいとのことですので、松江での実行委員会ができるんじゃないでしょうか。よろしくお願いします。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20120225

2012-02-16 阿佐ヶ谷で「手脚気」を調べる

本日22:00〜 の不忍ブックストリームは、「千駄木に〈不思議〉(はてな)があった」。今月末閉店の古本古道具の店、不思議はてな)さん特集。店主の披岸さんをお招きし、開店からの5年間を振り返ります。見てください。ユースト、1月2月は1回ずつしかできませんでしたが、3月からは月2回ペースに戻そうと思っています。スタジオ、スカイプともゲスト募集中です。自薦他薦かかわらず、何か話してみたいことのある人は連絡してください。

http://www.ustream.tv/channel/shinobazubookstream


昨日は昼前に阿佐ヶ谷へ。週末から東北に行き、戻ってからすぐに帰省するのだが、実家がいまだに電話回線ネットができないので、このさい、iPhoneに換えようと、その場で契約するつもりでauショップに行ったのだが、2日後からキャンペーンで毎月の使用料が下がると聞かされて、それじゃしょうがないと引き下がる。もっとも、その場で手に入れていても電話帳やメールの設定など、いろいろめんどくさそうだ。東京に戻ってきてからゆっくりやるか(と考えてるといつまでもやらないのだが)。


ラピュタ阿佐ヶ谷〉へ。招待券で番号印押してもらうが、開場を待っている間にハッと気づく。いまから観る奴って、《事件記者シリーズのもう観たのじゃないか! 受付に云うと招待券を返してくれた。3時の打ち合わせまで時間が余ったので、名曲喫茶ヴィオロン〉に行こうとしたが、記憶のある通りに見つからない。去年の夏も一度、同じ道をたどって見つからずに帰ったのだった。あとで調べると、だいたい同じ位置にあった。なぜ見つからなかったのか。


中杉通りをぶらぶら北上喫茶店が見事に一軒もなく、途方に暮れていると、阿佐ヶ谷図書館があったので入る。DVDで《寺内貫太郎》鑑賞が続いているので、『向田邦子全集』などで、このドラマに関するエッセイや対談(演出の鴨下信一と)を読む。ドラマを観ていて、きん(悠木千帆)が、不器用な嫁の里子加藤治子)に、「あんた、手脚気ねえ」と云うシーンが何度もある。いちどは「目脚気」とも云っている。罵倒というよりはちょっとした揶揄というニュアンスなのだが、テレビで聴くとなかなか強烈な印象だ。ぼくはこの「手脚気」という言葉は初めて聞いた。資料によれば、向田はこの言葉が気に入っていたようで、他のドラマでも使っていたそうだ。この館には阿佐ヶ谷文士村関連のコーナーがあり、『上林暁全集』で上林が、没後の織田作之助を批判している文章などを拾い読む。


中杉通り古本屋を覗き、〈銀星舎〉で文庫を一冊買う。田中小実昌の割と珍しい本が7、8冊、安く出ていたが、残念ながら全部持ってるものだった。そのあと、Aさんと会って打ち合わせ。中央線で帰り、新お茶の水の〈丸善〉で、田中啓文『聴いたら危険! ジャズ入門』(アスキー新書)を買い、車中で早速読み始める。内外のフリージャズミュージシャンを紹介するもので、テクニックがどうこうよりも、そのミュージシャンのどこか凄いか、面白いかを伝えようとしている。この本、じつは4人の共著者がいて、そのことが表紙やまえがきに書かれてないので、最初は戸惑う。ただ、田中さん文体は独特なので、他の人と間違えることはない。


夜は〈ブーザンゴ〉で、不忍ブックストリートの茶話会。トンブリンさんが1950〜70年代世界都市の観光地図を何十枚も持ってきて話す。茂木さん、板谷さんもそれぞれ披露し、盛り上がる。次回は3月14日(水)。矢部登さんに小冊子『田端抄』について話してもらうことになっている。


今日は『進学レーダー』の書評原稿を書き、メールのやり取り多数。あいおい古本まつり不忍ブックストリートイベントが、同時並行的に形が見えてきた。遅くなって申し訳ないですが、あいおいは来週中には発表されるでしょう。3月24日、25日、予定を開けておいてください。


根津〈やぶさいそうすけ〉で、今日から27日(月)まで、ミロコマチコ展「どこに飛んでいたんだろう」が開催中。


明日から一箱本送り隊のミーティングのため、東松島女川に行ってきます。日曜は仙台で、火星の庭・前野さん渾身の音楽イベント「おとのわ」を見ます。もっと新幹線時間があるので、最後まではいられないかも。東京に戻って、翌日から帰省します。途中、倉敷蟲文庫さんに行きます。24日には松江花森安治展の初日を見て、その足で東京に戻ってくるつもり。実家ではネットができないので、しばらくブログ更新できないかもしれません。メールの返事もちょっと遅くなるかもしれないですが、急ぎの場合携帯にお願いします。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20120216

2012-02-13 松江で花森安治展

松江市島根県立美術館で、花森安治の生誕百年を記念した展覧会が開催されます


くらしとデザイン

暮しの手帖花森安治世界


現在も広く愛され続ける雑誌暮しの手帖』は1948 年(昭和23)に『美しい暮しの手帖』としてスタートしました。創刊以来30 年間編集長をつとめた花森安治は、編集のほか、取材・撮影執筆・表紙画・挿絵レタリングレイアウトなど雑誌づくりの全てを手がけ、また広告のデザインやコピー作成まで行う徹底した仕事ぶりで知られています入稿原稿として制作された作品の数々は、どれもいまなおたいへん瑞々しく、花森が雑誌づくりに込めた熱い思いが伝わります。生誕100 年を記念し、その魅力の全貌をご紹介いたします。


島根県立美術館 http://www1.pref.shimane.lg.jp/contents/sam/index.html

2月24日(金)〜4月9日(月)

休 館 日 毎週火曜日 ※ただし、3 月20 日(火・祝)は開館し、翌21 日(水)休館


関連事業

NKT 文化講演会日本海テレビ主催事業)

日 時/2 月20 日(月)午後5 時30 分〜(午後5 時開場、約1時間予定)

会 場/島根県民会館ホール松江市殿町158)

演 題/「『暮しの手帖』と花森安治世界〜これからライフスタイル〜(仮)」

講 師/天野祐吉 [コラムニスト]

その他/聴講方法等詳細は日本海テレビ島根総局 TEL:0852-26-3151)まで問い合わせ


映画上映会 アラバマ物語DVD モノクロ上映) 【鑑賞無料

上映作品/「アラバマ物語」(製作年 1962 年 製作アメリカ 監督 ロバートマリガン 出演 グレゴリー・ペック

日 時/2 月26 日(日)

[1 回目(字幕)] 午前10 時30 分〜

[2 回目(吹替)] 午後 2 時30 分〜 (開場は各回30 分前、上映時間129 分)

会 場/美術館ホール(190 名 当日先着順)

アラバマ物語ハーパー・リー (著), 菊池 重三郎 (訳) 発行:暮しの手帖

原作(原題:To Kill a Mockingbird)は1960 年に発表され、61 年度ピュリッツア賞を受賞したベストセラー小説。62 から63 年にかけて『暮しの手帖』に翻訳掲載、64 年に花森安治の装釘により単行本化され、以来絶えることなく読みつがれている。(会場に展示予定)


■ ミュージアムフェスティバル(各種イベント開催)

日 時/3 月18 日(日) 午前10 時〜終日


■ 記念講演会 【聴講無料

日 時/3 月25 日(日)午後2 時〜(午後1 時30 分開場、約2 時間

会 場/美術館ホール(190 名 当日先着順)

演題?/「編集者花森安治 (仮)」

講 師/高橋一清 氏 [(社)松江観光協会観光文化プロデューサー、元・「別册文藝春秋編集長、元・「文藝春秋臨時増刊」編集長]

演題?/「『暮しの手帖』表紙画から見た花森安治

講 師/矢野 進 氏 [世田谷美術館主任学芸員、「花森安治と『暮しの手帖』展」(2006 年、世田谷文学館)企画者]


ギャラリートーク (学芸員による作品解説) 【要企画展観覧料】

日 時/3 月4 日(日)、3 月24 日(土)、4 月1 日(日) 各日午後2 時〜

会 場/美術館企画展示室

2006年世田谷文学館で「花森安治と『暮しの手帖』展」が開催されましたが、今回はそれを上回る規模になるようです。また、本展は島根以外への巡回が決まってないそうなので、わざわざ見に行く価値はあるでしょう。ぼくとしては、松江と花森の関係を示す資料がひとつでも多く展示されると嬉しいです。なお、世田谷美術館の際に続いて、花森の装釘本をちょっとだけ提供しました。3月25日のトークに合わせて帰省するつもりでしたが、よく考えたら、その日は第3回「あいおい古本まつり」の当日でした。なので、初日(2月24日)に合わせて帰省します。


先週は金、土と、春の不忍ブックストリートについての打ち合わせが1日数件あって、自転車で行ったり来たり。今年も面白いイベントが実現できそう。


木曜は〈神保町シアター〉で、村野鐡太郎監督《夜の縄張り》(1967)。田宮二郎がお得意の悪徳実業家を演じ、脚本白坂依志夫とくれば期待してしまうが、いまいち盛り上がらず。松岡きっこが『平凡パンチ』のグラビアに載ったり、壁に同誌表紙の大橋歩の絵が飾られていたりと、『平凡パンチ』がよく出てきた。


日曜は〈ラピュタ阿佐ヶ谷〉へ。特集「記者物語 ペンに懸ける」。井田探監督《君は狙われている》(1960)は劇画の読みすぎみたいな国際謀略もの。53分しかないのに、3分の1眠ってしまう。山崎徳次郎監督《事件記者 仮面脅迫》《事件記者 姿なき狙撃者》(1959)はどちらも快調。前者は向島あたりから大森不忍池上野公園と移動する東京風景が楽しめる。上野公園殺人現場は、図書館美術館っぽいけど、もしかして上野図書館? 《事件記者》のDVDが出ることがあれば、付録ロケ地一覧を付けてほしい。


献本いただいたもの札幌中尾荒木)幸葉さんから『TABLA』第2号。加賀谷誠さん編集の冊子で、アダノンキさん、書肆吉成さんほかが寄稿中尾幸葉「本はレールに乗って」はこの人らしい実感のあるいい文章。


式貴士『窓鴉 式貴士抒情小説コレクション』(光文社文庫、本体667円)は、同文庫怪奇小説コレクション『カンタン刑』につづくもの編集式貴士研究家の五所光太郎さん。念願の二冊目が出てよかった。瀬名秀明の解説もいい。


片岡義男小西康陽『僕らのヒットパレード』(国書刊行会、本体1800円)。リレーで書いている部分(初出は『芸術新潮』)と、片岡小西それぞれが書く章という構成が面白い前後に対談も挟まる。カバー写真片岡さんで、装丁平野甲賀さん。


あす発売の『サンデー毎日』に、坪内祐三『探訪記者 松崎天民』(筑摩書房)の書評を書いています。寄り道の面白さのある同書を、どこまで魅力的に紹介できたかな。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20120213

2012-02-08 賢太もいいが健もいい

昨日も織田作之助を読み進む。講談社全集(全8巻)でいうと、半分ぐらいまで来たかな。青山光二の回想録も再読。あと、久世ドラマの影響で、小林竜雄『久世光彦vs.向田邦子』(朝日新書)を読んだ。《時間ですよ》は、初回から4回まで橋田壽賀子脚本担当しているが、女の裸が出たり、「トリオ・ザ・銭湯」などのアドリブの強い久世の演出が気に入らなかったからだという。モノクロ放映時代の30回までがDVD化されてないのは、そのせいなのだろう。


今日は午前中、〈カフェ・ド・パルク〉で盛岡から来たFさんと会って話す。そのあと神保町へ。書評で取り上げる新書をまとめ買い。〈神保町シアター〉で、吉村公三郎監督《婚期》(1961)。小姑の姉妹若尾文子野添ひとみ)がいる家に嫁に入った京マチ子らの確執を描く。別に暮らしている長女役の高峰三枝子も含め、女優がみな達者。北林谷栄のばあやがぼそりとつぶやく一言面白い宮田重雄タイトル画、池野成の音楽もよし。気持ちよく観られる映画だった。靖国通りとんかつ屋でランチを食べる。650円だがボリュームがある。たまに来ると、次また来なくちゃと思わせる店。


ウチに帰り、赤旗書評原稿。今回は西村健『地の底のヤマ』(講談社)。2段組で860ページもあるので、読むのにまる2日かかった。炭鉱の町・大牟田市での約35年にわたる長大なドラマ山本作兵衛炭鉱画がユネスコ世界記憶遺産に登録され、炭鉱歴史が見直されているいま、いいタイミングで刊行されたが、おそらく大牟田出身の西村が長年温めていたテーマではないだろうか。いま作家で「西村」と云えば、大方の人は「賢太」を思い浮かべるだろうが、ぼくは「健」も好きで、デビュー作の『ビンゴ』などの「オダケンシリーズは読んでいる。ただ、アクションものの人だと決めつけていたので、本作のように、史実を背景に人間ドラマを描ききる筆力があったとは驚きだった。


西村健といえば、オダケンシリーズでは、段落が変わるとき句点「。」も読点「、」も使わずに改行している部分があり、最初誤植かと思った。しかし、全部がそうなのではなくて、どうも意図的にやってるようなのだ。文章の流れを止めたくないためにそうしたのか、よく判らないけど、かえって気になった。しかし、本作では普通に句読点が使われているし、近作の『任侠スタッフサービス』(集英社文庫)も普通だった。ということは、あのシリーズだけのルールだったのか? ご本人にお会いする機会があれば、ちょっと確かめておきたいことではある。

NEGINEGI 2012/02/09 08:38 山田太一脚本、久世光彦演出の「さくらの唄」で、山田が久世演出のアドリブや台詞の改変に我慢がならず、アドリブと台詞の改変をやめるよう申し入れたという話が『さくらの唄』(大和書房)のあとがきに書いてあったと思います。その申し入れにより、アドリブと台詞の改変がなくなったと。

kawasusukawasusu 2012/02/09 14:34 久世へのインタビューが元になっている『「時間ですよ」を作った男』では、『さくらの唄』は山田太一の抗議で久世流の〈寄り道ドラマ〉を封印されたことで、視聴率が振るわなかったとあります。未見なので判断できませんが。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20120208

2012-02-06 《寺内貫太郎一家》と「リリー・マルレーン」

このところ、DVD1970年代TBSドラマ時間ですよ》と《寺内貫太郎一家》を並行して観ている。どちらも、名前だけでまったく観たことがなかったので、いろいろ判って面白い。《寺内〜》は向田邦子原案・脚本の、谷中墓石屋一家を描いたドラマだが、ほとんどのストーリーがセット内で進行する。ときどき出てくる外ロケは、100パーセント上野公園で、谷中霊園や街並みは一切出てこない(まだ1シーズン目の途中だが)。これは演出・プロデュース久世光彦が、セット収録にこだわったかららしいが、少しでも谷根千の街のシーンを残しておいてくれると、よかったんだけど。


以下は、リアルタイム番組を見ていた人や、久世光彦向田邦子好きな人にはよく知られている話かもしれないが、テレビドラマにうといぼくには、はじめて知ったことなので、書きとめておく。


第18話(DVD第4巻)では、冒頭からリリー・マルレーン」のメロディーが流れる。そして、貫太郎(小林亜星)が「昨日読んでた『文藝春秋』知らないか、あのコウモリの表紙の」と云うのだ。その1974年5月号の『文藝春秋』には、鈴木明の「リリー・マルレーンを聴いたことがありますか」という記事が載っている。第二次世界大戦下のアフリカ戦線で、ドイツ軍連合軍ラジオを通じて同じように聴き、口ずさんでいたのが「リリー・マルレーン」という、恋人と別れて戦場にいる兵士の歌だった。《寺内〜》では、この記事の内容を説明しながら、しつこいまでにこの曲を流す。この曲に秘められたストーリーと、長女の静江(梶芽衣子)が子連れの男(藤竜也)と一緒に暮らそうと決意するという重要なシーンが見事に重ね合わされている。梶と藤が二人で歌うシーンがあり、西条秀樹と浅田美代子もいつもの歌を止めてこの曲を日本語で歌う。静江が家族のもとに戻るシーンには涙が出た。ひとつの文章をここまで見事にドラマに取り込んだのは稀有な例だろう。


鈴木明リリー・マルレーンを聴いたことがありますか』(文藝春秋)は文春文庫にもなっており、古本屋でもよく見かける本だが、読んだことはなかった。新刊では在庫がなく、図書館に行くと1988年新装版(装丁平野甲賀)があった。まず、著者のプロフィールを見ると、あの『「南京大虐殺」のまぼろし』を書いた人だった。職業に「TBS勤務」とあり、なんだお仲間かと、ややしらけたが。


著者は、1970年大阪万博でのマレーネ・ディートリッヒのショーで、はじめて「リリー・マルレーン」を聴く。気になって調べはじめると、この曲が戦時中ベオグラードドイツ放送局から流されて、多くの兵士を虜にしたこと(そういえば、クストリッツァの《アンダーグラウンド》でも、この曲が何度となく流れていた)。ドイツで生まれたディートリッヒはアメリカ帰化してから連合軍のための慰問活動を積極的に行ない、そこでこの曲を歌っていたこと。ラジオで知られてから、各国でいろんな歌詞でこの曲が歌われてきたこと。などが判ってくる。そして、取材のため著者はヨーロッパ渡り、この曲が生まれてからヒットするまでの数奇な運命を明らかにする。中古車を買って、ドイツフランスイギリスユーゴスラヴィアと移動し、この曲の作曲者やユーゴ人の「ドウシャン・マカベエフ」(当時パリで活動中)など、さまざまな人と出会う旅が描かれる。ディートリッヒへの興味からはじまった取材が、ララ・アンデルセンという日本では全く知られていない歌手比重が移っていくところが面白い。非常に読みごたえのあるノンフィクションだった。


ついでに、ということで、加藤義彦『「時間ですよ」を作った男 久世光彦ドラマ世界』(双葉社)を読んでみると、この回について触れられていた。それによると、鈴木明の文章を見つけたのは久世光彦で、それを向田邦子に読ませたら、その文章をヒントに1本書いたのだという。『リリー・マルレーンを聴いたことがありますか』のあとがきには、脚本を書くにあたって向田が鈴木を訪問したとある


リリー・マルレーン」は、素人の僕が考えても「寺内貫太郎一家」の雰囲気とはいささかそぐわないのではないかという危惧があったが、向田さんは「こういう日常的なドラマの中に、異色な今日的なテーマを注入することによって、従来からあるパターンに、刺激を与えたい」と、僕に語った。


放送後、この曲は広く知られるようになり、レパートリーに入れる歌手も出てきた。淡谷のり子倍賞千恵子久世光彦歌詞で歌ったそうだ。いつか聴いてみたい。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20120206

2012-02-05 《女の防波堤》と《事件記者》

昨日は〈フィルムセンター〉へ。「よみがえる日本映画 新東宝篇」も今秋で終わり。見損ねた作品が何本か。入口で高崎俊夫さんと会う。小森白監督《女の防波堤》(1958)は、敗戦後、連合軍兵士向けに設立されたRAA(特殊慰安施設協会)で働く女たちが主人公。運命に翻弄された女たちを描くという名目の下、煽情的なエロと下世話な興味をたっぷりと盛り込んだ新東宝らしい作品。さんざん主人公(小畑絹子)をもてあそんでおいて、最後にとってつけたようなハッピーエンドで終わる。監督の小森白は、関東大震災後の社会主義者弾圧をこれでもかと云わんばかりにグロテスクに描いた怪作《大虐殺》の監督でもある。実話をもとに話を膨らませるのが得意だったのだろうか。


終わってから東京駅丸の内北口まで歩くと、15分ぐらいかかる。〈オアゾ〉前野バス停で、ちょうどやってきた「江北行」の都バス(東43)に乗り込む。昔、本郷から大手町までこのルートに乗ったことを思い出し、これで帰ることにしたのだ。大手町神田錦町駿河台下→御茶ノ水駅前→本郷三丁目本駒込→動坂下というルート東京の古くからの中心部をぐるっと回る感じ。駿河台下の古本屋街もバスから見下ろすと違った印象で面白い。動坂下で降りて、本駒込図書館で調べ物と読書。そのあと、〈ときわ食堂〉に行くとほぼ満員。チューハイ定食


帰りに〈古書ほうろう〉で、往来座・のむみちさん発行の『名画座かんぺ』2月号を受け取る。日にちごとに、名座座6館のスケジュールがヨコ並びに書かれていて、今日は何を見ようかなという時にすぐチェックできる。観たものをマーカーで塗っておくと、鑑賞記録代わりにもなるので、いつも手帳に挟みこんでいる。


それと、先日ここにも書いた、矢部登『田端抄』をほうろうで販売開始しています。500円(税込)。田端を歩いたことがある人なら、必読。近いうち、田端の〈石英書房〉にも置かれる予定です(石英さん、メールしましたよ)。


今日は昼飯に大鍋にカレーライスをつくる。それから阿佐ヶ谷へ。〈ラピュタ阿佐ヶ谷〉で昨日からスタートした特集「記者物語 ペンに掛ける」は、知らない作品が多く、なるべく観に通いたい。山崎徳次郎監督《事件記者》《事件記者 真昼の恐怖》(1959)は、同名のNHKドラマ映画化。50分前後ひとつの事件をスピーディーに見せる。記者クラブキャップ永井智雄、新米記者が沢本忠雄。ライバル社の新米山田吾一で、コミカルな役柄で笑わせる。


もう一本は、鈴木英夫監督危険英雄》(1957)。石原裕次郎主演かと思えば、なんと石原慎太郎主演。自分原作でもないのに出演してるのは、これ1本じゃないだろうか。役柄は、目的のためなら手段を選ばない若手記者誘拐事件の取材で警察が隠していることをスクープにし、そのために子どもが殺されても反省しない、という鉄面皮キャラ。何が起ころうと「おれは正しいことをやっている」と押し通すところは、後年のご本人そのもの。演技はそう悪くないけれど、あまりにも華がない。裕次郎だったらプライドの高い記者の寂しさも表現できただろうし、ライバル記者仲代達矢を主演にすればクール悪漢になっただろうが、慎太郎には無理。結局、最後地方に飛ばされるが、全然反省してないので、後味が悪い。どう考えても損な役柄だと思うのだが、ナニを考えて受けたんだろう? 脚本は須川栄三だが、どうもさえないのは、長谷川公之の潤色改悪されたのか。芥川也寸志音楽も緊迫したシーンに暢気なメロディーが流れるなど、ミスマッチだった。


「悪い奴ほどよくWる」さんより、西荻盛林堂書房〉内の「古本ナイアガラ」のメンバーがつくるフリーペーパー創刊号古本ナイアガラ 旅のしおり』を送っていただく。どっかでみた書き文字だなあと思ったら、『晶文社スクラップ通信』を編集していたTさんの手になるものだった。特集「私のベスト5」など、ちょっとした読み物が楽しい。こういうモノを見ると、つい「オレも混ぜろ」と云いたくなるのが悪いくせ。


倉敷蟲文庫田中美穂さんからは、丁寧な手紙とともに、新刊『私の小さな古本屋』(洋泉社、本体1400円)をお送りいただく。メルマガ早稲田古本村通信」などに書いた文章をもとにした、18年の古本屋暮らしを綴った本。少しずつ読みたい。


あと、『雲遊天下』の最新号も出ました。特集は二つ。「ブレないふたり 鎌田慧小野民樹」「2011年 私の読書」。後者には平井正也マーガレットズロース)、島田潤一郎(夏葉社)、山下賢二(ガケ書房)、野中モモ近藤ようこ倉地久美夫、ミロコマチコ栗原裕一郎近代ナリコ渡部幻ら注目の書き手が参加。こういうコラム特集はこの雑誌カラーに合ってると思うので、今後もやってほしい。ぼくの連載は「酔狂の向こうに」。往来座瀬戸さんのブログの文章を借りたりしながらの、近況報告みたいな文章になりました。ちょっと暗めの。でも、書き終えてからすぐに、もう楽天的性格に戻っています(それがいけないのでしょうが)。落ち込んだりすることもあるけれど、私は元気です。

2012-02-03 イモヅル式読書と映画

今週は書評原稿が2本と著者インタビューが1件あり、取り上げる本に関連する本を読んでいた。『コンフォルト』には、畑中章宏『柳田国男今和次郎 災害に向き合う民俗学』(平凡社新書)の書評を書いたが、サブタイトル通り、民俗学考現学の創始者が、東北飢饉関東大震災という災害を前に、自分学問をどう鍛えていったかが判る本だった。大学生とき民俗学サークルにいたときに、読んだり考えたりしたことを久しぶりに思い出す機会になった。現在、〈パナソニック汐留ミュージアム〉で開催中の「今和次郎 採集講義」展の図録が、同題で青幻舎から刊行されているが、この図録の編集畑中氏が手掛けている。新書と図録、セットで読むといいだろう。


ついでに、以前小沢信男さんから頂戴していた『今和次郎集』第9巻(ドメス出版)を引っ張り出し、パラパラ読む。第4巻「住居論」の「バラックについて」「震災バラックの思い出」および戦後に書かれた「戦災者の仮住まい」は、東日本大震災の後の仮設住宅のことと思い合わせずには読めない。また、エッセイ集『ジャンパーを着て四十年』(文化出版局)も面白い。冒頭で、今は柳田から考現学とはけしからん」と破門されたと書いている。この破門の件はほかの文章でも見えるが、畑中氏の新書によると、柳田自身は「破門した覚えはない」と云っているそうで、そうなると、今自身がそういう云いかたで柳田民俗学から距離を置いたのではとも思えてくる。


また、今は大学の授業や会議、あるいは冠婚葬祭に至るまで、ジャンパー姿で通した。今は子どものころから学校が嫌いで、中学入学試験には落第した。だから戦後早大工芸美術研究所設立にかかわったときは、入試を行なわずに選考だけにし、しかも「いろんな大学試験をうけて、落第した回数の多い者からとることにしよう」と決めた。教育者としての今和次郎は、型破りながら非常に面倒見がよく、生徒や先輩の先生から愛されたようだ。ぼくもこんな先生に、考現学建築学の授業を受けたかったものだ。


さらに、代表的な著作である日本の民家』(岩波文庫)にも手を伸ばす。以前読みかけたが、中断していたもので、今回は最後まで読みとおしたいもの。また、展覧会を見ていて、今和次郎花森安治立ち位置が似ていると思っていたら、二人が対談していた雑誌記事があった、「建築と服飾」というもので、『花森安治戯文集』1(LLPブックエンド)に収録されている。まあ、そんなこんなで、イモヅル式に読んでおきたい本に並行して目を通しているわけです。


今週観た映画映画の日に、〈上野東急〉でクリント・イーストウッド監督J・エドガー》(2011・米)を。ジョン・エドガー・フーヴァーの伝記映画レオナルド・ディカプリオのなりきりぶりは凄いし、アメリカ民衆管理体制が出来上がっていく様子がリアルに描かれているが、淡々としすぎているので途中やや眠くなる。これがイーストウッド最後監督作品になるのはさびしい。最後スカッと痛快な映画で終わってくれないかな。


なお、冒頭にフーヴァー秘書を連れて、ワシントンの〈Library of Congress〉に行くシーンがあり、この字幕が「国会図書館」になっているが、これは「議会図書館」と訳すのが普通だ。さまざまなコレクションをデジタルした「アメリカンメモリー」をやってるところですね。フーヴァーはこの図書館カードシステム発明したと、秘書に自慢するのだが、これは本当だろうか? 調べてみたい。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20120203