ナンダロウアヤシゲな日々

◎この日記は、ライター・編集者の南陀楼綾繁が書いています。
◎新刊『町を歩いて本のなかへ』(原書房)発売中です。
◎著書『一箱古本市の歩きかた』(光文社新書)、『谷根千ちいさなお店散歩』(WAVE出版)、『小説検定』(新潮文庫)、『ほんほん本の旅あるき』(産業編集センター)、『路上派遊書日記』(右文書院)、『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『老舗の流儀 戦後六十年あの本の新聞広告』(とうこう・あい監修、幻冬舎メディアコンサルティング)、編著『チェコのマッチラベル』(ピエ・ブックス)、共著『ミニコミ魂』(晶文社)。
◎ご感想・ご連絡は南陀楼綾繁 まで。
◎「不忍ブックストリートの一箱古本市」は毎年春に開催します。
詳細は不忍ブックストリート公式ホームページもしくは、しのばずくん便りをご覧ください。
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2017-08-24 ヴィスコンティと埴原一亟

ホテルで8時起き。テレビニュースを見ながら出かけようとしていたら、雑誌編集部から電話で急ぎの確認無線LAN使えるうちだとPDFやり取りしやすいので、その場でチェックする。元町商店街の〈サントス〉でモーニングミニサンドウィッチコーヒー。1階は常連らしき一人客でほぼ満席。『埴原一亟 古本小説集』の続きを読む

そこから西に向かって歩き、元町通4丁目の〈元町映画館〉へ。地方コミュティシネマはビルの中とか、繁華街からちょっと外れたところにあるのが多いが、ここはアーケードの路面にある。上映開始30分前だったが、もう受付が開いていたので中に入る。観るのは、ルキーノ・ヴィスコンティ監督家族の肖像』(1974)。数年前、日田の〈リベルテ〉でヴィスコンティの『ベニスに死す』を観たときは客は私一人だった。今日も午前中の上映だし、ヴィスコンティだし、客は少ないだろうと思っていたが、あとからあとから客が入ってくる。上映開始時には30人近くになっていたのに、驚く。

家族の肖像』は、バート・ランカスター演じる老教授孤独と静寂を楽しむ余生を送っている家に、人間的にも性的にも奔放な人々が住み着くというもの最初ホラーコメディ、途中から恋情、最後悲劇で終わる。『ベニスに死す』もそうだったが、ヴィスコンティ自分世界を持っているインテリが、異質な世界美少年翻弄される話が好きなのだろう。デジタル修復版ということで、きれいな画面だった。途中、ちょっとだけ眠って話が見えなくなったが、面白かった。

外に出ると、次に上映する別の作品のために、客が並んでいてまたビックリ。いいプログラムを組んでいても、集客に悩む映画館が多いのだが、ここはよほど告知に力を入れているのか、地元映画好きに愛されているのだろう。また、観に来たい。

そこから北側の坂を上がり、花隈公園の正面あたりにある〈古書ノーボ〉へ。今年3月オープンしたという。店内は広く、まだ棚を置ける余裕がある。しかし、今並んでいる本だけでも、文学から思想漫画まで私好み。店主が同世代なのか、エッセイだと荒俣宏漫画だと吾妻ひでおが何冊も見つかる。読書漫画バーナード嬢曰く。』の作者・施川ユウキ単行本コーナーがあったりする。加藤政洋神戸花街盛り場考 モダン都市のにぎわい』(のじぎく文庫)など4冊買う。http://koshonovo.hatenablog.com

下に降りて、元町高架通の〈サンコウ書店〉の100円均一で2冊買う。並びの〈来々亭〉へ。夫婦でやっている店で、まだ座ってないのに「なんにします?」と聞かれる。まずビール餃子。小ぶりでうまい。そのあと、ラーメン焼き飯定食。おばさんが餃子のたれを「これ、ラーメン焼き飯ちょっとかけるとおいしいから」と教えてくれる。ちょっと混ぜてみると、たしかに味が深くなる。「お客さんはなんにでもこれかけるよ」とくったくなく笑う。味にも店にも大満足して、会計してもらうと、おじさんが「1450万円」とお約束を云うので、こちらも「じゃあ1500万円」と差し出すと、おばさんが「おつり50円ね」と返す。そこは50万円じゃないんだ。さらに出ようとすると、おじさんが「じゃあ、また明日」と送り出してくれる。いいなあ、この明るさ。

大通りを渡って、正面のビルの2階にある〈レトロ倶楽部〉へ。以前より古本が減って、CDが増えていた。1冊買う。もう一軒、アーケードの中に新しくできた〈読尊〉へ。ビルの3階で急な階段をのぼる。じつは昨日も覗いたが、休みだった。漫画文庫中心の古本屋。このあと、レンタサイクル博物館に行こうと思っていたが、照り付ける暑さにそういう気は起きず、〈1003〉に行ってアイスコーヒーを飲みつつ、涼ませてもらう。

ここで『埴原一亟 古本小説集』を最後まで読み終える。7篇入っていたが、どれも素晴らしい。戦前作品も入っているが、難しい言葉遣いはせず、日常言葉で書かれているが、そこには生活の実感がある。生活の中で鍛えた言葉というか。いまの小説雑誌インタビュー記事などに感じる、いいことを云っているようでどこかツルツルと上滑りしている文章とはまったく違う。埴原一亟のような文章を書きたいと思う。

ひとつひとつ作品に触れると長くなりそうなので、いちばん身につまされた文章を引く。

「赤三はほんとうに自分生活を考えていた。よりよい生活をするためには、もっと積極的生活にぶっつかってゆかなければならないと考えた。だが考えられることは考えられても、それをどんな風に具体的にやるかと言う問題になると、夢のような理想ばかりが先走って現実には一歩も進歩していないのだった」(『生活の出発』)

なんかもう、私自身の生活に引き比べて、思い当たるところがありすぎる。島赤三は私だ。勢いで、「これは全古本屋フリーランスで生きている人全員に必読の小説です。まじに。」とツイートすると、その日のうちに100件以上の反応があった。これは、いま読まれるにふさわしい小説なのだ夏葉社にとっては第二の『昔日の客』(関口良雄)的な存在になるかもしれない。なってほしい。

2日間世話になった〈1003〉を辞し、同じ通りにある編集プロダクションのくとうてんへ。雑誌『ほんまに』も発行している。Iさんと初めて会うSさんと話す。こういうのをやったら面白いのではということを話すが、さて、実現するだろうか。ホテルに戻り、預けていた荷物を受け取る。本が増えたので重い。

近くの店で豚まんを買い、JR元町駅から三宮地下鉄に乗り換え、新神戸へ。まだ時間があったので、無線LANのつながるベンチに座り、RYUTistライブ動画を見る。なんか、ずっと見ていられるなあ。新幹線の中では無線LANがつながらないので、動画は見られないのだ。

のぞみ号は高校運動部かなんかが集団で乗っていて、満席ビールすき焼き弁当。本をちょっと読んであとは眠る東京駅から山手線田端。家に着いたのは9時半だった。疲れたけど眠くはないので、DVDで『THE KILLING/キリング』続き。けっきょく4話観てしまい、寝たのは2時。

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