2012-01-31 インプラントについて
インプラント・バッシングと言うか、2週間前くらいか、NHKでインプラントに関するマイナスイメージの報道が続きました。
で、今日はそのことについて触れたいと思います。
私がなぜインプラントを手がけるようになったかといいますと
当初79歳であっても元気で肉食系の母には義歯では全く用が足りず、インプラントを結局7本入れ、現在92歳でまだよく食べ頭の方もしっかりしています。
夫はかみ合わせが強すぎて自分で自分の歯を壊していくタイプで、これも既存の方法ではとても無理で、結局現在までにやはり7本インプラントを入れました。
次男も父親譲りか、2本抜かざるを得ず、2本インプラントを埋入しました。
身内同様のチーフも小さい頃に両側第一大臼歯を抜いた所がアダをなしてかみ合わせが大変で、2本埋入しました。
患者さんにとってはとても助かる治療法なのだということです。患者が身内の場合は治療者にとっても、身近にいる人の入れ歯の不具合とか辛さとかを見ないで済むのでありがたいです。
もし自分が歯の調子が悪ければ迷うことなく抜歯の時はインプラントを選んで実体験して、レポートでも書きたいいのですが、残念なことに、歯医者のくせに虫歯の1本も経験しておらず削られる不快も知らないので、これは良いことかどうかとよく思います。
閑話休題。
第一にあげることは、インプラントは 失ってしまった歯とかみ合わせをとりもどすための優れた方法だと考えるということです。
更には、上手に使うことで、その後に予想される咬合崩壊や全身的な疾患すらも予防する、今流行りの言葉でいうとアンチエイジングの手段になると考えることです。
第二の点としての 高額であるということについて
歯科医院にとっても、インプラントを治療の技術のひとつとして取り入れるためには高額の投資(?)が何かと必要になります。また材料等のコストも高額となります。
価値有るものとは、それを提供するものも受けるものも、見合った対価を要求されるものなのではないでしょうか。
インプラント治療ヲする事が いかにも濡れ手で粟 のような表現が報道の中に感じられ不愉快でしたが、そのような態度でのぞめばコストを下げようとして信頼性の薄い製品を使うなど手抜き工事のような結果になるのは当然だと思います。一生涯のお付き合いと思っている患者さんへ そのようなことで向き合うわけには行きますまい。
また それは日々の保険診療でも同じ事だと思いますが、医療者としての誇りを忘れず、患者さんへの良かれという思いでのみ治療に当たりたい、その中での優れたオプションとしてインプラントはあるのです。
ゆっくり話しあって納得されて経済が許せば、されたらいい そのように思います。
間違いのない治療を行うための知識と技術の習得には先行投資(?)がいります。特に私達の世代では大学ではもちろん習ったこともない治療方法ですから。
私の場合のインプラント導入に要した過去13年のことについてざっくり述べてみます。
船越歯周病研究所で全てのコースを2年間受講、九州インプラント研究会100時間コースを1年間受講、その他の研究会やメーカー主催のこれはという指導者の有料講習会、また船越先生に同行させていただいたアメリカのサンディエゴ、サンフランシスコ、ボストンなど海外での研修会、身につけたいことがたくさんあって本当にこれでもかというほどに費用(受講料も高額ですし航空を使っての交通費や宿泊費等)と時間と体力を使いました。
オペ見学も船越先生、宮本先生のご好意で本当に間近でみせていただいて生きた勉強ができ それが今の力になっていますが、そのような師弟関係以外は 通常は有料でしかもよく見えないこともあり、等々、技術習得はそんなに簡単なことではありませんでした。
インプラントメーカーも年々増加していますが 各システムはシステムごとに個別ですから 器具のセットも個別に必要になります。一つのメーカーで全ての症例がカバーできるかといえば インプラント本体の性状や形体のラインアップの差で必然的に何種類かのシステムを導入することになりました。
安全サイドを考えると世界的にも定評のあるメーカーを選びますし、先日技工の都合上交換が必要になり、パーツの 本当に1cmにも満たない小さなネジ1本注文したところ 何の変哲もなさそうなネジが1本4千円弱 でえっ(!?)、ことほどさように信じられない費用がかかります。
インプラントをするために骨の幅や高さが十分あるのか、骨密度はどうなのか、神経の走行はどうかなど詳しく正確に知るためにはCTが必須です。
歯科用のCTも出まわっていますが、便利で欲しいとは思うものの超高額でもあり、医科用のCTのほうがやはり精度は上なので画像診断専門の施設や九大の機械を利用させて頂き患者さんに撮りに行っていただきます。
ただし生データでは使い物にならないので、データを解析してもらいPC上であらゆる方向から画像として術前の検討ができるシステムの導入が必要になります。
その導入の費用もけっして安くありません。
でも それがなくてはめくら撃ちで、とても怖くてインプラントの埋入計画はできません。
そして診断ということについては
そもそもなぜ抜歯に至るような事になったのか、その点をよく診て口腔全体の問題として考えていかなくてはインプラントの脱落という自体も招くかもしれません。
山があるから登るではないけれど、歯がないからそこにインプラントを植える
というような単純な発想はしてはならないと思っています。
抜歯に至ったについては原因があるわけで、その原因が取り除かれなくては
ご自分の歯でも壊れたわけですから 人工物においておやと用心深くありたいと思います。
その意味ではそのような視点を得ることができたスラブチェック博士のシークエンシャル咬合論とそのシステム、そしてそれを紹介され精力的に活動を続けておられる神奈川歯科大の佐藤教授に感謝申しております。また実践を通じて更に深く学ばねばと思っております。
以上思いつくことを述べてみました。バッシングの対象になるような事例もあったのでしょうが、色々な勉強会でお知り合いになった先生方は皆さんとても真剣で有能な方ばかりでした。ほんのひとにぎりの不心得な方のためにせっかくの良い治療方法や真剣に取り組んでいる歯科医が胡散臭く見られるのはたまらないなーと思い、いつになく真面目なことを書いてしまいました。
では、





