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ニューロサイエンスとマーケティングの間 - Being between Neuroscience and Marketing このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

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2008-07-29

デジカメ vs 銀塩カメラ、、、画質の違いについての考察


会社でPhoto lovers club(いわゆる写真部)なるものを主催していると、カメラや写真について相談を受けることが多い。その際に、毎度、どうやったら僕が最近、日頃撮っているような写真(最近のものだと下の椿とか浜辺の写真)を撮れるのか、という話になるのですが、そうすると必ず陥るのが、デジカメの画質の話。


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Leica M3, 50mm Summilux F1.4, RDPIII @東京銀座


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Leica M7, 50mm Summilux F1.4, RDPIII @Bali


毎度聞かれるのが、フィルムじゃないとああいう写真にならないのでしょうか、という質問。 僕の答えは決まっていて、もしここで見ている質感であるとか、色の深み、目で見る感じを超えた色や表現、ということであれば、恐らくそうかな、と。 一度フイルムで撮ったものをデジタル化するのであれば、それほど問題はないけれど、いきなりデジタルで撮る限り、その課題は当面続くだろうとも。

そう答えると、必ずと言っていいほど、どうしてなんですか?ということになる。

この辺り、あまり世の中でまとまっているようでまとまっておらず、なかなか関心を持つ人が多いので、ここいらでちょっと僕の理解(考え)をまとめておきたいと思う。カメラエンスー(camera enthusiast:カメラ大好き人間)が集まるようなサイトではないですが、まあ「知覚」やポンティに関心を持つ人にも知覚を記録する写真が好きな人が多いと考えたい。(結局書きたいものを書くだけ。笑)もちろん私の理解が間違っていることもありうるので、そのときは遠慮なくご指摘いただけたらと思う。


<アウトプットの違い>

まず結果として得られる画質ですが、これは残念ながら、相変わらずフィルムの方がアドバンテージが大きいことは事実。

まず色の出が、特に通常の太陽光の場合(デイライトという)、フィルムの方がずっと自然。赤と緑、青、いずれも深さと透明感がデジタルでは歴然と落ちる。特にリバーサルを使うとその差は顕著だ(例えば次の写真はレタッチも何もせずスキャンしただけだが、これをデジタルで撮れる気がしない)。デジカメで撮った写真が単に色が気色悪い、なんかヘンなだけでなく、なぜか霞がかっているように見えることに気付かれた人は多いと思う。


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Leica M7, 50mm Summilux F1.4, RDPIII @西表島


デジカメの色合いの人工的な感じは、上質な銀塩の写真を見慣れた人にはかなり色濃く感じられる。深い緑や赤だけではなく、人肌はボディだけで実勢80万円もする1Ds MarkIII(キヤノンのフラッグシップ)でもかなり厳しい。ニコンD3はかなりの出来だが、それでも作例などを見ているとフィルムのF5、F6で撮られた写真にはまだ残念ながら届いていない。EOS Kiss Digitalの最新カタログが「犬」ばかりで人がいないのはそれも一つの理由だと思う。

微妙な陰影の表現もデジタルはかなり不得意だ。そのために写真の立体的な表現は苦手でもある。結果、質感、テキスチャーの固まりとも言える、赤い花やきれいな緑、人の肌の表現はたとえモノクロでもおおむね深みにかけるし、深い空の青やかすかな雲を含めた遠近感のある風景も撮ることは困難だ。多くの場合、ボケによる空気感にもかなりの差がある。今でもD700など最新のデジカメの特集があるたびに、この辺りで画質を議論することが多い。

で、結果プロは仕事はデジタルでやるけれど自分の作品撮りはフィルムで、という人が非常に多い、ということになる。


<これらの差を生む主要因>

これらの差の要因は大きく言って、次の3つではないかと僕は考えている。カメラ屋の方々はあまり語りたがらないが、撮像素子のサイズ以外は当面手の打ちようがあまりない問題のようにも見える。

  • 撮像素子の大きさ
  • 素子そのもののダイナミックレンジ
  • 色の補間

それぞれについて簡単に説明したい。


1. 撮像素子のサイズ

これは以前D700の項で書いた通り、大半のデジカメの大きな課題。現存するデジカメのうち、35ミリフィルムカメラと同じサイズの面積で光を受けるカメラは4つしかない。上述のキヤノンのフラッグシップ1Ds MarkIII、5D、ニコンのD3とD700だ。

デジ一眼は殆どその半分かその三分の一ぐらいのサイズ。コンパクトに至っては、二十分の一から三十分の一という極めて小さな面積で光を受けている(参照)。これの直接的な害は、ボケの小ささに現れる。撮像素子が小さいということは、光の広がる面積が小さい、すなわちボケがそのまま小さいことを意味する。多くの写真の距離感や空気感は、ある程度ボケから来ているため、これによる写真の差はかなり強烈だ。

例えば、フィルム時代、一大カテゴリーとして存在した高級コンパクト。コンタックスT2に始まり、ニコン35TiリコーGR1vなどに続く。これらの素晴らしかったのは、小ささに関係なく、一眼レフと同様のボケ味が存在していたことだった。(次のT2での作例を参照)


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Contax T2, 38mm Sonnar F2.8


しかし、皆さんの体験されている通り、現在のコンパクトデジカメはリコーのGRデジタルも含め、極めてボケの小さな、パンフォーカス的にすべてがピントの合った写真しか撮れない(被写界深度が深いという)。無理矢理ボケ感を出そうとするとマクロ的な近いものの撮影をするしかない。これはレンズの明るさが同じである限り、全て撮像素子の小ささのためなのです。(なおカメラ好き以外の為に補足しておくと、絞りやレンズの暗さは光を削るので、結局素子が小さくなるのと同じ効果を持つ。)

また、もう一つ厄介なのが素子辺りの面積の問題。光は量子的な存在なので、素子そのものと関係のないノイズが大きく存在する。ショットノイズと言われるものだが、光の強さのルート(平方根)に比例するため、光本来のS/N比は、一つ一つのピクセルが受ける光の強さ、受ける光量のルートに比例する。ピクセル数が同じで、素子サイズが仮に四分の一になると、ピクセルあたりの面積は四分の一、光も四分の一、従ってS/N比は半分に落ち、ノイズ感は倍増する。これが素子が小さなカメラでは、どんなに画素数が多くても画質が上がらないかなり根本的な原因だ。


2. 素子そのもののダイナミックレンジ

我々の目(網膜)は1フォトン(光子)から昼間の光まで受け止められる、巨大なダイナミックレンジを持っている。カメラはどうなのだろうか?

まず出力側から見てみる。デジカメは通常jpegで写真を残す。jpegは24ビット、すなわちRGB各色8ビット(二の八乗)、256色しかない。よく見る1677万色というのは単に256の三乗にすぎない。では入力段階は、とみるとピクセルごとのデータを取るRAWで、12ビット(二の十二乗)ないし14ビット(二の十四乗)だ。なかなかの情報量のように見える。

次に銀塩フィルムのビット数について考えてみる。フィルム上に一色あたり10ミクロン(0.01mm)程度は感光体の層があるとし、塗られた個々の感光分子が仮に小タンパクレベル(直径100オングストローム)のかなりの巨大なものだとすると(実際にはそれよりかなり小さいはず)、1000層は分子が存在。理論的には層別に反応が起こりうるので、色毎に1000ビット!のデータが存在することになる。たとえこれらがある程度粒になっていて粒ごとに一斉に反応するとし、フィルムと光ダイオードの量子効率の違いを考慮したとしても、50ビットは行くだろう。

比較してもしょうがないレベルの情報の差であり、これが銀塩とデジタルを大きく分ける陰影の微妙な表現、質感そのものに効いてくる。

カメラ語で言うと、ラティチュードと言われる許容できる光の強さの幅の問題とも言える。銀塩カメラマンはポジ(リバーサル)はラティチュードがネガよりシビアなので修練が必要と良く言うが、実はラティチュードが本当に狭いのがデジカメ!これはカメラ屋、フィルム屋はもっとはっきり伝えてほしい。


3. 色の補間

シグマの二機種のみで使われているフォビオンというチップを除くと、他の全てのデジカメは一つのピクセル辺り一色の情報しかない(注:画素 = picture element = pix element = pixel)。三個に一個しかない赤情報をベースに他の三分の二の赤情報を論理的に埋めているのだ。現在の主たる方法の場合、赤が25、緑が50、青が25なので、緑については半分、ということになるが平均で見るとやはりそういうことになる。

デジカメで撮った写真の色の三分の二がアルゴリズムによって生み出されたもの、写真で撮られたものではないことを知ると大半の人は仰天するが、事実である。これは三色の感光層が常に存在するフィルムとは全く異なる。色そのものの平坦さの一つの理由はここにあり、単にダイナミックレンジの問題ではない。

ちなみにフィルムの情報をデジタルに落とすフィルムスキャナーの場合、全てのピクセルで三色の情報を読み込むので、上記の問題は起きない。一方、ニコン、キヤノンの業界のリーダー二社を含め、現在のデジカメ素子が三層化に向かう兆候はシグマを除き現在のところ全く見られない。

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以上見てきた通り、なかなか厄介なことが盛りだくさんなのです。コレ以外にも各色に対する周波数特性であるとか、入力に対するアウトプットカーブの問題もある。ということで、結局せめてフルサイズを買ってはどうでしょう?ということになるとやたら高く(一番値ごろなキヤノンの5Dでもボディ20万はする)、しかも1−2年で価格がかなり落ちることを考えると、ずっと値がこなれていてしかもこれ以上安くなるとは思いがたい、フィルムの良いやつを買ってはどうでしょう?あるいは高級コンパクトでも(T2なんてかつて10万したのに3万で買える!)、ということになってしまうのです。

この辺り、皆さんどう思われますか?


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以下、本文中に出てきたカメラです。簡単にコメントしました。詳しく見てみたい人はどうぞ!(いずれもものすごいユーザ評価ですね!)

chiyohorchiyohor 2008/07/30 23:55 そうですねえ。私の周りでもよくこの話題になりますが、
やっぱりデジにはまだまだやらなければならないことがある。
雑誌の世界だってまだかたくなに銀塩オンリーの媒体ありますもん。
やっぱそうですよねぇ。M3がほしいなぁ。

kaz_atakakaz_ataka 2008/07/31 09:34 M3とりあえず買ってみてはどうでしょう?この間なやまれていたのは、随分値がこなれていたと思いますが、、、。(笑)

僕はあさってからの米国横断旅行で胸がいっぱいです。とりあえず昨日フィルムを60本近く買ってきました。:)

とりあえずM3、M7に標準、35ミリ、90ミリと持っていこうかなと思っているところです。コレにあわせようとせっせとブラジル旅行記を載せてきましたが、なんとか終了まで来てうれしいです。(殆ど反響がないのがちょっと、、、ですが、)

吉報?を待っています。

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