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ニューロサイエンスとマーケティングの間 - Being between Neuroscience and Marketing このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

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2011-03-23

そろそろ全体を見た話が聞きたい

本当に長い10日間だった。


11日以来、次々と起こる、話の展開、さらに広がる原発の話、悪化する一方の被災地の苦悩に目が釘付けになり、十日経ってしまった。ひと月のようにも、更に長いようにも感じる。


悲惨な映像、あるいは原発の進捗、被災者の声など、テレビはあまりにも同じような話ばかりなので、当初は久しぶりに随分見ていたが、もうほとんど朝出がけぐらいしか見なくなってしまった。もう心に反応するエネルギーが残っていない。


ニュースもTwitter以外にRSSで、毎日二千ほどやってくるが(欧米メディアが三分の二、日系メディアが三分の一ぐらい)、これも、我が和朝に対しては、ある種似たような話ばかりで疲れてしまう。欧米のニュースは、確かに日本ほど画一的ではないし、対岸の火事のためか、ひいた目で語っているものが多いので、それはそれで良いのだが、問題の現状と日本では語られないホラーストーリー的な話が主なので、情報の質としてはそれほど違うわけではない。


そう、今もトラウマに残る、911の時と実に良く似ている。僕が日本に戻ることを決意したきっかけとなった事件だ。何も手につかず、何時になってもニュースを見たり、記事を読み続け、そして何も前に進むことなく、疲れて眠るということを繰り返した。結果、日に日に疲れだけがたまった。


そのことにハッと気付き、これではいけないと、三連休の週末、東京から強引に離れ、人気のないスキー場で身体を動かした。結果、ようやく、ある程度、精神のバランスを取り戻すことが出来た。


f:id:kaz_ataka:20101114084118j:image

Leica M7, 50mm C-Sonnar F1.5, RDPIII @ Lake district, England


で、落ち着いたところで、もう一度、ひいた目で見てみると、世の中で現在、この震災周りで語られていることの多くが、二つの軸で著しく偏り、そして混ざり合っていることに気付く。一つは、課題領域の軸だ。相関はあるものの、異なる課題が一緒くたに議論されていて、本来解決すべき課題の固まりが明瞭に見えない。第二は、解決に向けた時間軸だ。マスメディアであれ、現在脚光を浴びているソーシャルメディアであれ、驚くほど目先の話がほとんどだ。


結果、世の中の議論の多くが、ただひたすらに、問題の現状とその進展を見守る、そしてそのかすかな意味合いを議論する話が大半のように見える。


当然、今起こっている現象を前に、最終的に我々が答えを出すべきことは、「我々は何を目指し、いかにして復旧を果たすべきか」ということに帰結するはずだが、なぜか語られることがないように思う。


今日の昼、そんな話を知り合いとしながら、ご飯を食べて、そこで色々つらつらと話したのだが、その相手も「こういう話をまとまってしているのをこの十日間、見たことがない。たとえ、たたき台としても共有することは意味があるのではないか」という。自分の頭の整理もかねて、あまりこんなデカイ話はしたくないな、と思いながらも、大海の隅に、ちょっと一石を投げるつもりで残しておけたらと思う。


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四つの課題領域:


まずメディアに区分けしてもらいたいのは、「津波地震問題」の話と、明らかに二次的に起きた「原発問題」、それにまつわる三次的な課題である首都圏「電力供給問題」の三つだ。なのに、この三つは、明確に切り分けられることもなく、なし崩し的に、そのときそのときの激しい話題を取り上げるように混ぜこぜに扱われているように見える。


また、我が国が、これだけの歴史的な重傷を背負ってしまった以上、これら三つに加え、身体(国)の他の部分の健康をいかに保ち、上の三つの課題を解決していくかという「全体マネジメント」課題は、四つ目の課題領域として分けて考える必要があるように思う。実際には上の三つと密接に関係するものの、経済規模の維持、財源の確保、巨大プロジェクトの全体管理といった課題は明らかに異なる種類の取り組みが必要だからだ。


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三つのステップ:


このような緊急事態になった場合、まず当然考えるべきは、現在の非常な状態の沈静化、すなわち「止血」であることは言うまでもない。原発であれば、暴走を止めることであり、津波で襲われた人たちに対してであれば、食と寝場所を提供することだ。ただ、これは復興の視点から見ると、三つのステップの一つに過ぎない。「止血」でしのいだあとは、当然、この起こった問題を「治療」しなければいけないし、その上で「リハビリ(再生)」を果たさないといけない。ここまで来たところで、完治を祝う「祝典」があるというのが、全体のステップだろう。


少なくともこの社会のリーダー層には「止血」「治療」「リハビリ(再生)」の三ステップを全てにらんだ上で、課題の全体像を語ってもらわないと、話の全体像が見えないだけでなく、国民に力が湧かないと思うのは僕だけだろうか?


これは世の中の会社が、大きな不景気に襲われリストラ策を実行しようとする時、それがどのような全体としての目的があるのか、その痛みによって、何が得られるのか、その痛みはどこまで続く見込みなのか、が分からないと、株主も、社員も誰も納得しないし、起きるはずの変化が起きないのと同じだ。そして、この三つのステップは、一つ目の軸であげた四つの課題領域それぞれで存在する。


だが、現実に多くのメディアで語られているのは、残念ながら「止血」の中でも本当に目先の第一歩のような話がほとんどだ。専門家の話を色々お聞きした結果、原発に水を撒くのも、電気を通すのも、間違いなく、今すぐ不可欠だと僕も思う。これらの緊急活動に当たる消防局、自衛隊の担当の方々のご苦労には本当に言葉もない。


. . . が、それはそれとして、そのあとどうなるのか、これはいつまで続くのか、どこまでやれば原発の「出血が止まる」のかすら全く語られないのは大きな問題だ。これでは決死の覚悟で当っている人たちに対してあんまりだ。原発問題一つをとっても「止血」のステップですら全体像が見えていない。


また「止血」は本来の意味での解決ではない。人間もそうだが、止血しても、傷が治らないと結局やられてしまう。症状は解決して「治療」すること、それにともなって同様の問題が生まれないように予防措置をすることも治療の一環として大切だ。その上で、体力を元に戻し、完全復帰に向けて「リハビリ(再生)」を果たしてこそ本当の解決と言える。日本の戦後を念頭において考えてみても、実際には、応急処置的な「止血」に3−4ヶ月、「治療」に3〜5年*1、「リハビリ(再生)」に3〜5年ぐらいはかかるだろう。


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という二軸を掛け合わせた、4x3=12のマトリックスのそれぞれに解決すべき課題が存在する。以下は、あくまで僕の素朴な考えではあるが、自分の頭の整理もかねて、理屈上、明らかに「止血」「治療」の2ステップで必要と思われる課題の固まりを、叩き台的に列挙してみたものだ。



「津波・地震問題」であれば、「止血」としては当然、

  • 被災者の保護およびミニマム保証(1)、、、被災した人たちの救助、食・寝場所の確保、病院の再開、臨時通信アンテナ敷設、ガソリン・移動方法の確保など

になると思うが、「治療」のためには、どうしても、

  • 復興グランドプラン、ルール作り(2)、、、地域の再生後の目指す絵づくり、被災地の勝手な開発禁止など、その実現のためのガイドライン
  • 町の具体的再生(3)、、、目指す絵に基づく道開発、電気、水道などのインフラ敷設、その上での町作り

の二つの取り組み(イニシアチブ)は加えて必要だ。「リハビリ(再生)」、その結果の復旧の完了に向けては、シンボリックな「祝典」(例:東北万博、東北オリンピック)なども絡め合わせた更なる取り組みが必要になるだろう。



「原発問題」であれば、「止血」としては、

  • 緊急原発処理(4)、、、散水冷却、電力供給、近隣住民の退避という現在行われている本当の応急措置
  • 炉の物理的封じ込み(5)、、、緊急原発処理の上での鉄、鉛、コンクリートなどで覆いかぶせる隔離処理*2

の二つの取り組みが不可避であるだろうし、「治療」のためには、

  • 原子炉保護強化(6)、、、東海道を中心に相当数存在する他の原発での電源多重化、耐水化
  • 核燃料保管場所の分散(7)、、、今回の問題の一つである余剰核燃料の隔離、保管

といった処理も恐らく必要だと思われる。なお、(6)の一部である耐水化については、今回の学びとして、「津波」は海水面の急上昇でありいわゆる通常の「波」ではなかった、入り口があれば入り込んでくる暴君だったというのは衝撃だ。単なる壁がほとんど役に立たないことを前提に根本的に対応を考える必要があるだろう。



「電力供給問題」に関しては、「止血」的に

  • 短期的電力抑制(8)、、、目先で速やかに一日の中でのピーク電力を下げること、電気利用総量を削ること

は言われている通り、不可欠であるのだろうが(打ち手は現在の取組みにとらわれず、相当クリエイティブに考えるべき)、わずか3-4ヶ月後に電力消費の年間ピークである夏が来ることを考えると、「治療」として、

  • 東西連結(9)、、、東西の電力の部分的ではない相互供給体制を急ぎ完備する
  • 抜本ピーク削減(10)、、、早期のサマータイム導入*3、80W供給をデフォルトにしてしまう*4、超過利用ペナルティ、などの利用の平準化もにらんだ複数のラディカルなソルーション

の二つは検討だけでなく、すぐに取り組みが必要だろう。首都が恒常的な電力不足に陥ることは、復旧に不可欠な国力の維持の視点からも、避けるべきであることは明らかであり、原発一つ開発すると数千億レベルのお金がかかるということを考えても*5、多少の金を惜しむべきではない。同時に「東北の人のために停電」などというデマが発生しないように啓蒙活動も深めるべき*6

更に、本格的な「リハビリ(再生)」に向けた足の長い取り組みとして、「治療」段階から、

  • 新エネルギー供給体制に向けた方向性の明確化・着手(11)、、、原発の増設に頼れない中での新しいエネルギー源を国家的に導入できないか検討、着手をはじめる

必要もあるのではないかと思う。



「全体マネジメント問題」についても、

  • 短期内需維持・拡大策(12)、、、粛正ムードに流されず「止血」的に内需を下げない工夫

「治療」としては、

  • 被災対応ファイナンス(13)、、、円の暴落、経済の過度の減速などが起きない形での財源確保、カラクリの導入

ぐらいは不可欠だろう。これらに加えて、

の二つのイニシアチブも「止血」から「リハビリ(再生)」の全ての工程において要るだろう。


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ここはこの辺にしておこうと思う。


以上は、あくまで素人考えの簡単な頭の整理ではあるが、こういう感じで、しかるべき社会のリーダーが、解決の必要な課題の全体を見せてくれて、このすべてがこのぐらいの時間軸で解決すれば、この問題は基本的にケリがつく的な全体観を見せてくれれば、国民的にももう少し元気が出ると思うのだが、いかがだろうか?


通常は決してこんな大きな話をブログで書いたりすることはないのですが、なんとも陰鬱な話ばかりで、気がめいるので、書いてみました。


How do you think?




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ps. twitterでのアカウント、2年以上ほとんど止まっていましたが、徐々に使い始めました。ハテナと同じハンドル名です(@kaz_ataka)。よろしければご笑覧ください。


ps2. (3/23追記)昨夜もうろうとして書いたので読みにくかったと思われるイニシアチブ(取り組み)をドットで箇条書き的に表現し直してみました。


*1ブラジルにおける、かつての大自然のど真ん中での首都ブラジリア建設の例を考えてもこれぐらいが現実的な限界と思われる

*2cf. AKIRA

*3アメリカではdaylight saving time

*4:今も夏は100Wを割ることなどいくらでもある

*5東電などはそのために、大会社としては、例外的に非常に流動性の低い経営を行っていることは知る人ぞ知る事実

*6:東北の人が、首都圏のために原発などを受け入れてくれていた、が正しい理解。なのであくまで自分たちのための停電。これは関西の電力を北陸の巨大水力発電が補充しているのと類似の構造

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