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ニューロサイエンスとマーケティングの間 - Being between Neuroscience and Marketing このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2017-03-07

シゴトの未来

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Leica M7, 1.4/50 Summilux, RDPIII @Shelburne museum, VT, USA


さすがに人生の半分ぐらいまできたと思われるkaz_atakaです。


表題のテーマでもうこの3年ぐらい食傷するぐらいの数のインタビューや取材を受けてきました。正直、僕の周りでは完全にdone issue(ケリが付いた話)なのですが、今キャズムを超えたと思われる一般メディアから急に色んな話が来るようになっています。


以下は、これでこの話題についてはもう打ち止めにしようと思って受けたリクルートワークス研究所のインタビュー記事です。これほどシゴトというものに正面から向かい合った議論をした記憶があまりないのと、限定版的な冊子で送られてきたこと、ウェブに上がっていないことを踏まえ、ここに手持ち原稿から転記して上げておこうと思います。ウェブ掲載が始まったら下ろす可能性があります。FYI(太字は筆者)


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Q1. 人工知能の進化などにより、仕事がなくなるといわれています。どうご覧になっていますか。


A1. 仕事はなくならないですよ。


データやAIの力を活用して、いろいろな業務自動化されることは幅広く大量に起きますが、それと仕事がまるごと消えることとが混同されています。「あらゆる仕事でデータやAIの持つ力を使わない人と解き放つ人に二極化する」、これが本当のところ起きることです。むしろ自動走行車の利活用やメンテナンスのように、更に新しい仕事が数多く生まれる可能性が高い。AIが仕事を奪うと思っている人はAIとは単にイデアにすぎないこと、どのように作られるのか、その結果起きること、そして我々の仕事の本質をちゃんと理解したほうが良いです。


この変化の第一フェーズ段階にある現在では、データやAIの力を解き放つための能力を持つ人が大きく不足しています。また、目指す人はどこから手を付けたらいいのかわからないのが日本の現状です。ここに一石を投じようと、データサイエンス協会を何人かで立ち上げ、これまで必要なスキルを整理し、発表してきました。


この変化は、多くの方の想定よりも早く進展し、指数関数的に起こります。1900年ニューヨークで撮られた写真には多くの馬車が写っていますが、1913年にはほぼすべて自動車に置き換わっています。1908年にT型フォードが発明されてからわずか5年の間に実際に一気に変わったのです。よく馬車に乗っていた人はどうなったんだという話がありますが、簡単です。クルマに乗ったんです。(笑)そして、人間はそれに対応できてしまうのです。社会は人間が対応できるように変わるので心配はいりません。*1


全体観をいえば、仕事がなくなるのではなく、データやAIの力を使う人と使わない人に二極分化する、それは予想以上のスピードで進むが、人間はそれに対応できる、そういうことです。


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Q2. 想定以上の速さで変化する世界において、我々はどのように仕事をすればよいのでしょうか。


A2. 仕事というのは楽しいものです。世の中を変えること、役に立つことそのものですから。しかもお金をもらえる。人間が生み出した最大の「虚構」は仕事です。普通に生きていれば、少しは仕事したい、つまり世の中で意味のある存在でありたい、と思うでしょうし、仕事の喜びは残り続けると思います。それを追求する中で、データやAIを使い倒すべきです。


仕事の価値を労働時間で測る習慣は是正されるでしょう。肉体労働まで含めても投下時間と生み出す変化量、バリューが合致しない仕事がすでに大半だからです。ここで言っている仕事のバリューとはむかし物理で習った「力×距離」そのものです。力は「質量×加速度」。つまりどれだけ重いものをどれだけ勢い良く変化させたかです。どれだけ頑張ったかではありません。もちろんその場にいること自体が価値がある仕事は時間ベースの仕事として残りますが、経済原理でみて意味をなさないものは淘汰される、それだけです。


AI×データのように技術的な革新による変化は自然とそうなるし、そこでビジネスをするならば、それに合わせざるを得ないのです。変化するかどうかはイシューではないのです。変化は必然なのですから。本当のイシューは、その変化をどうやったら早く起こせるのか、だと思いますね。


Work Model 2030を、2030年の完成形ととらえ、現在起こっていることから推定しようとするのはほとんど無意味です。変化を楽しむ中で、この世の中がどういうフェーズで変わっていくのか、それをどれくらいのスピードで起こせるのかを考えるべきです。


大きな果実をつかもうと思うなら、その変化に先駆けて動き、イノベーションを起こさないといけません。しかし、現行の日本の仕組みは、基本的にホワイトリスト方式です。出てくるものをリスト化して、それぞれに法律で対応する。これでは新しいものは生まれません。前例がないからイノベーションなのですから。(笑)新しいものはルールのないところから生まれてくる。たとえば、検索です。つい最近まで法律的にはかなりグレーな存在でした。


グレーゾーンを突破する力は、ユーザーにあります。ユーザーが価値を見出せば、社会は勝手に変わるのです。社会は適応するように作られた虚構の塊です。現実の前にはルールは変わるのです。例えば、いまそこにゴジラが現れたら我々は対応するじゃないですか。必要に応じてどんどん変わっていくのです。検索の価値は誰にも止められないくらい強くなった。著作権等の問題は山のようにありますが、すべての人が検索に依存するようになったとき、この問題を議論することの価値がなくなったのです。そうやって世の中は変わります。


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Q3. その変化を起こすにはどうすればよいでしょうか。誰が変化を牽引するのでしょうか。


A3. 新しい変革は、明治維新終戦後のときもそうですが、10代と20代、30代前半までの人が起こします。世界の歴史上革命的な変化を40以上の人が引き起こしたり、やり遂げたことはほとんどありません。


年配者のできることは、規制なども含め彼らのじゃまをせず、何か面白いことをしている若者に、信用を与えて、お金を出し、良い人を紹介する、この3つに尽きます。勝海舟みたいな仕事をしてほしいのです。維新後の開国のときや、終戦直後にはそういう人が山のようにいました。新しい変化は年配者が起こせる代物ではないのです。時代の空気を吸った人がやるしかないのです。


この社会がどうやったら生き延びられるかを考えなくてはいけません。どうやって経済を伸ばすか、社会を良くできるか。現在の日本の社会は(略)推進するエンジンを失いつつあるのです。漫然と2030年を迎えるのでは遠すぎるのです。


あらゆることを提言して、仕掛け、考えた人が実行する。こういう取り組みを激増させる必要があります。この中で自然に生き延びた人がまた未来を拓いていきます。どんどんやって、当たったものが巨大進化をするだけなのです。どれが当たるかなんて誰にもわかりません。だからいろんなトライをしたほうがいいのです。


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Q4. テクロノジーの大きな変化に向けて、何をすべきでしょうか。また、変化を起こすときに指針となるものはありますか。


A4. 社会全体としてみれば、データの持つ力を解き放つ、これがまず第一です。そのためにはデータサイエンティスト協会でまとめているとおり、情報科学(データサイエンス)、それを実装し運用する力(データエンジニアリング)、実課題につなげて解決する力(ビジネス力)の3つが必要です。


さらに二つ、一つは、エンジニアリング層のスキルの根本的なリニューアル、具体的には、SIerエンジニアからビッグデータソリューション系エンジニアへの転換、もう一つは、ミドル層・マネジメント層のスキル刷新です。


指針、、、世の中全体の大きな課題をAIやデータの力を使いつつ自分ならではの方法で解決する、あるいは役立てるようなことを考えるのが王道だと思います。幸い現在の社会は問題には事欠きません。温暖化エネルギー不足、少子化、巨額の年金医療費、過疎、時代に即していない教育、グローバル社会の分断などなど。


仕事の選び方としては、みんな、生命の原点に戻ればいいと思います。危ないところから逃げて、自分らしく自分がユニークに生きていけるニッチ生活空間、に行く、この繰り返し。失敗したら滅びる、それが生命の原点ですよね。経済原理ももとを辿れば、自然淘汰の世界です。


人間は生命がかかれば頑張る生き物です。そういう風にできているのです。変化に臆するのではなく、生命の力を信じるのです。人間はいざという時にはできるのです。我々は生命ですから、大丈夫です。


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以上です。


悲観論はどうでもいいので、ぜひ未来を揺り動かしていきましょう!

Let's rock the world together!!


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ps. ご参考までに比較的最近のものを中心に代表的な関連掲載記事(自分が受けたもの)へのリンクを載せておきますね。


“シン・ニホン” AI×データ時代における日本の再⽣と人材育成 (2017/2)

http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/shin_sangyoukouzou/pdf/013_06_00.pdf


AIで仕事はなくならない ―― なぜか過剰被害妄想の日本の本当の危機 (2017/2)

https://www.businessinsider.jp/post-827


経験値だけで飯を食べている人は 人工知能によって出番がなくなる(2017/1)

http://www.dhbr.net/articles/-/4630


ヤフーCSO安宅氏が解説する「AIの正しい理解」(2017/1)

https://industry-co-creation.com/special/8175


「人工知能はビジネスをどう変えるか」(2015/11) > 以下のDHBRの一章


AI×データはビジネスをどう変えるか (2015/10)

http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/shin_sangyoukouzou/pdf/002_06_00.pdf

*1:言うまでもありませんが、同じことをただ続けたい人、文明の恩恵を受けたくない人、たとえば電卓やコンピュータが生まれても使いたくなかったような人の仕事がなくなるのは当然です。

2015-10-11

AIはproblem solvingマシンではない


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Leica M7, 50mm/F1.4 Summilux, RDPIII @UC Berkeley


この夏の研究のように書いていたDiamondハーバードビジネスレビュー(DHBR)2015年 11 月号への寄稿論文がようやく昨日発売になった。「人工知能はビジネスをどう変えるか」というタイトルだ。


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NewsPicksのコメント欄*1にも書いたが、この論文のきっかけは7月末のバケーション前日に編集長の岩佐氏が突然相談があると言っていらしたことから始まっている。「いまディープラーニングなどAI周りで起こっている本当のこと、そしてそのビジネスとマネジメントについての意味合いについてまとめてもらえないか」という話だった。


実はその1-2カ月前に、私の前職の恩師の一人であり、東大EMP(executive management program)の責任者でもある横山禎徳さんにもAIという言葉がなんというかhypeになっているが、本当のところAIは何ができて何ができないのか、ということについて数時間、うまいワイン数本とともにガン詰めされたこともあった。


その後に、陸上の為末大さんと対談することがあり*2、そこでもAIには何ができて、何ができないのかという話が大きな話題の一つになった。仕事がAIによってなくなるとかなくならないという話が随分と話題に上がっているせいもあったと思う。


そういう前置きがあったこともあり、お話が来た時は、とんでもないテーマだと思う一方、これは自分が書かなければ、誰も書かないない内容なんだろうなとも思った。(実際、発売前日の金曜日に編集長にお聞きしたのは、僕が受けなければ、この内容は代替の人が全く見当たらず落とすつもりであったということだった。)


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とんでもないと思ったのは、このテーマはそもそも(1)編集長も含めた、ほとんどの世の中の人が誤解していること、ディープラーニング(深層学習/DL)への幻想を紐解くところから始まる必要がある。なおかつ(2)今起こっている変化のすさまじさとAIがおこなっている取り組みの本当の広がりを整理しなければいけない。それでありながら、(3)AIと我々の知覚そして知性との対比を行うという荒業が必要。その上で、(4)ビジネス全体、マネジメント全体に対して意味合いを考える、という深淵かつ広大なものであったからだ。


(1)自体が誤解に満ちて整理されておらず(業界の人はわからない人は流石にいないと思ってか、あるいは確信犯的に説明しない)、(2)もガサツでほとんどまともに整理されていない(業界の人は自分の取り組みには詳しいが、俯瞰して一般人に分かる言葉で話してくれない)。


(3)に至っては、世にあるのは、機械学習(Machine learning: ML)およびその一種のDL、人工知能(AI)側からの知見のみが広がっていて、ほとんどの人には全く手がかりがない。本来、脳神経科学認知科学も分かる人が知覚と知性の広がりとの対比をしなければいけないが、そちら側の人はML/AIがよくわからないのでコメントしない。また、「知覚と知性についての広がり」についてそもそも体系的に整理した人などそもそもいない。


いわんや(4)については、そもそもビジネスやマネジメントを俯瞰するような能力を持った人が、AI・脳神経科学を合わせた意味合いを議論することなど普通不可能で(そもそも議論できるほどよくわかっていない)、部分的に仕事がなくなるんだろう的な論説があるだけ、というのがこれまでだったからだ。


正直、編集長自身もこのテーマの本当の奥深さを僕に相談された時は理解されていなかったと思う。あいにく、自分はこれらのすべての領域にそれなり以上に深く関わってきたために、瞬時に上の広がりを認識し、やりますともやりませんとも言わず、持ち帰りそのままバケーションに入った。


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僕はもともと知覚(perception)に興味があり、脳神経科学全般の体系的な訓練を受け、研究し、かたやビジネスではある種 perception technologyというべき消費者マーケティングに出会い、人のものの感じ方とニーズの生まれ方について長年取り組んできた。現職に来てからは、もともとの市場インサイト、インテリジェンス的な活動に加えて、直接的にもマネジメントとしてもビッグデータやデータを利活用したR&D的な取り組みに深く関わってきた。(実は社内で基礎研究を行う研究所長を担っていた時期もある。)


なんというか、そういう経験の集大成的な論考になるんだなと直感した。


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このテーマはそもそもAIと騒がれている現在のブームの本質が単に機械学習だとか深層学習(ディープラーニング)といった情報科学(データサイエンス)の話ではないことから始まる。これらのキカイに学習させるための手法は、たしかに大切だが、データが大量にないとそもそも始まらない。(上の1の話だ)


僕の周りでも笑い話が一つある。ディープラーニングについての話を耳にした人が、あるこういうデータサイエンス系の人のところに来て、「鳥の鳴き声をディープラーニングを使ってどの鳥なのかわかるようにしたいんですが」といって来たという。


「了解です。ではまずは各鳥の鳴き声をとりあえず五万回ずつ録音したものを用意してください。オスメスだとか、状況などの属性データも一緒に。そうすれば手伝いますよ」


こう答えたら、その相談にやってきた人はディープラーニングが魔法の箱か何かだと思っていたらしく、うなだれて帰っていったらしい。


より深くはDHBRの論考を見てもらえればと思うが、軽く数万のパラメータを扱う深層学習は当然の事ながら数百、数千のデータでは教育できない。膨大なデータ(ビッグデータ)があることによって初めてファンクションする。そしてそのためには、極めて高速な計算環境が必要だ。この3つを分けて考えているあたりに現在の世の中の危なっかしさがある。*3


しかもこのことから分かる通り、どんな用途に対しても動くAIなるものは普通存在しえない。十分に速い計算環境に対し、特定の用途に合わせて、必要な情報科学*4を実装し、大量のデータで教育をすることで特定用途のために使えるAIになるからだ。このことぐらいはもう高校生以上の人たちには教える時代になったのではないかと思う。(p.46 図表1)


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(2)もちゃんとやる必要があった。人工知能は万能みたいに思われている人たちに対して、いま、最先端の世界で何が起きていて、どういう広がりで急速に用途が広がっていっているのか、その整理をする必要があるとかねがね考えていたからだ。(p.47 図表2)


僕の周りには幸い詳しい人、専門家が多いが、彼らは頭が良すぎて普通の人に自分たちが思っていることをうまく伝えられない。その橋渡しも含めて、自分が俯瞰して感じている広がりと、その意味合いをなんとか伝えようと努力した。これまでにないすっきりとした整理を行ったので、一定の成功をしたように思うが、判断は読者の皆様に任せたいと思う。


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(3)は真のチャレンジの一つだった。そもそもAIについて僕ら(この領域の内側にいる人)からすると当たり前、空気のように思っているが、一般の人(外の人)がわかっていないことを整理する必要がある。これを課題解決プロセスの全体に置くとどのような意味合いがあるか、それをさらに俯瞰すると、どういうことが浮かび上がるかをそこでは議論している。(p.50 図表3)


これを見ると明らかにわかるのは、AIはproblem solving machineではないということだ。AIが広がると仕事がなくなるとか、仕事が劇的に楽になると思って期待している人がこの世に多くいるが、残念ながらそんな都合のいい話はない。なにしろ、AIは課題解決において最も大切な能力であるイシューを見極める力、構造化する力がないのだ。課題をフレームする力も、人に伝える力もない。実際にはAIは人間を代替するのではなく、人間を幅広くアシストする存在になる。


ここではさらに、知覚と知性の広がりをフレームワーク化する、その中でAIの現状を人間と対比するという大きなチャレンジに取り組んだ(p.52 図表4)。もしかすると世界初かもしれない。


脳神経科学をおこなっている人であれば自明で、それ以外の人にとってはほぼ全く認識されていないことだが、我々の脳神経系のほとんどは実は思考とか高度な知性というより、知覚そのものと体を動かすことに使われている。そもそも1000億と言われる脳の神経細胞ニューロン)の8割は小脳に存在する。大脳皮質もほとんどが感覚処理と運動に使われている。その下の視床(thalamus)は知覚のゲートウェイだ。


そういうことも踏まえ、知覚についても脳神経科学的にもほぼ正しく、それでいて、人間の知的活動の本質的なポイントも外さないようなフレームワーク化と、その上での評価を試みた。実はこの図表づくりに最も時間をかけたが、一定の成功を収めたことを祈る。


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(4)はチャレンジ以上のチャレンジというか、(3)までの議論自体がないないづくしで大変だったが、もう二踏ん張りした。編集長からはビジネス自体がどう変わるか、あと、ハーバード・ビジネス・レビューなのでマネジメントへの意味合いを是非書いて欲しいと言われたからだ。


ビジネスの方の意味合い自体がかなり興味深いものであるとは思っていたが、世の中的には上の感情的、妄想的な仕事の喪失論(本質的には間違っている)以上の議論が殆ど行われていない。そこに何らかの知的な楔を打ち込めればと思って努力した。なんとなく感覚で思われていることの中で本当に起きると思われることをかなりストレッチして書いた。


マネジメントについて書くのは、更に無謀感があったが、長年トップマネジメントコンサルタントとして働き、自分自身がそれなりの規模の会社の経営に関わっている以上、逃げられないと思って踏ん張って書いた。かなり大胆だと思うことも書いたが、今の主要なmarket cap上位の会社がどのような位置づけにあってどのような方向性を目指していこうとしているのか、我々の社会がどのような方向に進もうとしているのかについても一定の方向性を打ち出せたのではないかと思う。


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以上、長くなったが、このDHBRでの論考発表にあたってのあとがきとして書いてみた。


本当に文字通り、仕事の合間を縫って、渾身で書きおろしました。ご興味を持っていただいた方は、ぜひ手にとって読んでいただければ幸いです。そしてブログでもFacebookでもTwitterでも良いので、ご感想などお聞かせいただければ本当にうれしいです。


これほどの充実感のある仕事を依頼していただいた岩佐編集長に感謝をささげつつ。


良い夏でした。



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★本エントリに関連する書物

ご紹介した論文はここに掲載されています。


こちらには昨年ビッグデータとマーケットリサーチとの使い分けについてまとめた論文を寄稿しました。

*1https://newspicks.com/news/1197124/

*2:NewsPicks上の関連記事は、https://newspicks.com/news/1137152/body/

*3ブクマコメントを見て誤解がないように補足。Pre-trainしているのであればその事前訓練に必要なデータ量も含めて考える必要がある。

*4:機械学習や深層学習以外にもコンピュータに言語を扱わせるための自然言語処理、あるいは画像処理するためのコンピュータビジョンなど

2015-01-05

少子化が日本のアセットになる時代が来る(?)

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Leica M7, 1.4/50 Summilux, RDPIII, @Route66, Amboy, CA


少子化が我が国の大問題だという話がまことしやかに語られるようになって久しい。


なぜそれが問題なのか、と聞けば、

  1. ただでさえ老人が増える時に、働く若い人が少ないんじゃ支えられない
  2. 警察、消防、国防とかは誰がやるの?お店も中高年ばかりが売り子じゃつらい
  3. 国が元気じゃなくなる、、実際、若者たちが都市に行くので、多くの田舎は活力がない

という辺りが普通に聞く大半の答えだ。なんだか凄そうな論説も、結局のところ上のどれかということが大半だ。


これ本当にそうなのだろうか?


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少子化自体は、3年以上前にちきりん女史の本をご紹介した時に触れたとおり、よく言われてきたような、社会が子供に寛容じゃないからとか、働く女性にとって優しくないからとかというそういう理由ではなく、基本的に「晩婚化」(とそれに伴う生物学的理由)、加えて、「少子化自体の負のサイクル」(=親世代の人口が減り続けること)でほとんど説明しうるのでは、とかねがね僕は思っている*1が、それはさておき少子化がそれほどひどい話なのか、というのがここでのポイントだ。


自分のアタマで考えよう

自分のアタマで考えよう


以前も少し触れたことがあるが、秋にOECDのglobal forum on knowledge economyというイベントのあるセッション*2にパネリストの一人として出ることがあった。そこで欧州の出席者から、まことしやかに、そして深刻な顔で議論が投げ込まれていたのは、労働人口の多くが要らなくなる未来において、働くところがなくなる多くの人たちに対して社会はどうするべきなのか、という話だった。その理由はデータ社会になれば、人間しかできないと考えられてきた労働のかなりの部分が機械に置き換わってしまうから、少なくとも5-6割の人の仕事がなくなる、というものだった。


実際、ドイツのあたりではunconditional income*3の是非について議論がすでに始まっているそうだ。つまり我が国では、既存のしくみを前提に議論をし、彼の国ではこれからのしくみを前提に議論をしている、ということだ。


下に見る通り、ヨーロッパ系のOECD諸国*4の大半は、日本に比べれば失業率は高い。(Wikipediaによる。計測タイミングが微妙に違うのであくまで参考。)ちなみに緑が北欧EU、赤がその他の旧西側EU国、灰色はそれ以外のEU、青はEU以外のOECD国だ*5


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とは言うものの、半数以上の人の労働が要らなくなる社会を想定するというのはなんとも強烈だ。ただ、車の運転から、ウェブやロゴデザイン、法律相談、医療における画像診断、手術に至るまで自動化に向かう中においては、そのぐらいのことを想定するのは確かにありなのかもしれない。つまり、今の半分以下の人で同じだけの付加価値を社会が生み出せるようになるということだ。高度な付加価値を生む人と、比較的ヒマな人に分かれていくということでもある。


ちなみに、1次、2次の産業革命を通じて農業、漁業生産が増える一方、それまで労働人口の大半を占めた農業、漁業従事者は、かつて劇的に減った(言い換えれば、従事者一人当たりの生産性が激増)。平行して、多くの人達が、新しく生まれた蒸気機関や電気を利活用したモノづくり、サービス業に次々に従事するようになり経済は桁違いに発展した。


このように、そう短絡的に考えるのはどうかと思うし、そうその場でも反論(?笑)したのだが、仮にそうなった場合には、労働人口が軽い社会の方が実は、社会が食わせる人たちの負荷が減る分、軽い社会ということになる。つまり少子化がある程度、進む社会の方が実はよい可能性がなくはないのだ。


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仮にそうなった場合、冒頭のコンサーンの最初の二つに対しては、以下の通りになる。

  1. 働く人一人一人の生産性が(シンガポールのように)激増し、老人を支える働く人口は劇的に少しで良くなる。一方、大量に生まれる働く仕事のない若い人も支えなければならない社会になるので、失業率の視点から見ても、若い人は(質の高い人の数を保てるなら)余らない程度の数が実はよい
  2. 警察、消防、国防とかはそもそも現在も人口の一部しか従事しておらず、自動化されない部分は、残った若い人たちの一部がやればいい。小売店も同様

三つ目に対しても、そもそも今の60代、70代は30年前の同世代、現在、田舎で本当に老人に見えている80代、90代以上とは全く別の存在。同じイメージで語ることは危険。また、アメリカでは人の採用の時、人種や性別、年齢を聞いてはいけないように、日本の今の採用の仕組みは若干、時代錯誤的。いずれ消えると思うのが筋。さらに言えば、シニア層の人口は当面、確かに増え続けるだろうが、一時的なものに過ぎない。シニア層の相対的な人口割合は、国の人口動態シミュレーションを見ても、max値で4割にしかならない。


どうだろう?


捨てる神あれば拾う神あり。禍福はあざなえる縄の如し。


負の課題にしか見えないこの少子化も、このように見方によっては、日本の大きなアセットと言える。僕らにむしろ今求められるのは、このように少しの労働で回る社会を、世界に先駆けて作り上げることであると思うのだがいかがだろうか?



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ps. 産業構造がどういう風に劇的に変わるかについては、ぼくもぼくなりに妄想するものがあるので、近々余力があるときに書いてみたいと思う。



(関連エントリ)

*1:たぶん割と簡単な計算で示せると思う。晩婚化はようやく最近、真因の一つとして取り上げられるようになってきたようだ。

*2:promoting skills for the data-driven economy

*3:どの人に対しても無条件に配る所得、、、人頭税の逆

*4経産省によると現在34カ国

*5:いずれも私のうろ覚えによるものなので、もし間違っていたらお知らせ頂けると幸いです