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泥舟航海誌

2016-10-12

『男たちの旅路』

吉岡(鶴田浩二)「忘れなきゃ嘘だっていうのか。おまえら、その調子で何にでも高をくくってるだけだ。恋愛も友情も長続きすれば嘘だと思い、人のために尽くす人間は偽善者か馬鹿だと思う。金のために動いたと言えば、本当らしいと思い、正義のために動いたと思えば、裏に何かあると思うんだ。おまえら、そうやって人間の足を引っ張って、大人ぶってるだけだ。しかしな、人間はそんな簡単なもんじゃないぞ。俺がこうやって一人でいることは、おまえたちに言わせれば、『相手がなかった』とか、『面倒くさくなった』とかで片付けようとするだろう。しかし、そうじゃない。幸せな家庭なんか作りたくなかったんだ。死んだ奴に一人ぐらい義理立てて、独身でいる奴がいてもいいっていう気持ちだったんだ」


杉本(水谷豊)「戦後、30年経ってるんだからね」


吉岡「甘っちょろいって言うのは簡単だ。しかしなあ。甘いきれいごとでも、一生かけて押し通せば甘くなくなる。俺はそう思ってる。シラケて、訳知りぶるのは勝手だが、人間には、きれいごとを押し通す力があるっていうことを忘れるな」


山田太一・作、NHK土曜ドラマ男たちの旅路〜第1部第3話・猟銃』1976年)