行政府不信が極まっているのだとすれば,公務員の採用・任用にも手を付けるべきだろう


 中央政府自治体政府への不信が一定規模以上になったまま,いわば,天井に張り付いたままの状態になって久しいわけだが,これまで家庭や地域で担ってきたサービスを公的に供給すること無しに社会の維持が困難な状態に陥っている現状を回復させるには,中央政府自治体政府の信用回復しか道はない。そうすること無しに,溺れた犬を棒で叩くような不条理な人間否定の数々の事件と対峙できない。
 では,どうするとよいのか。行政府が信頼を取りもどすしか無いのだが,とりわけ行政職員が不当な高待遇であると喧伝されることに対し,実態への完全な透明性を確保するしか無い。

その行動基準を定める首長と決裁する議員に直接の責任があるが、本来的には住民に関わる問題だ。そこで、公務員の労働条件などは、首長や議会と職員の間だけで話し合って済ますのではなく、住民に広く情報公開されていなければならない。自治的な協働の基本は情報公開にあるし、そこで不信感が生じないことこそ、公務員と住民の新たな関係を築く基礎だと思う。


市民活動総合情報誌『ウォロ(Volo)』 2007年7・8月号(通巻427号):V時評


とあるように,公務員の労働条件を情報公開することからやり直さなければ,自治も分権も根っこからの信用を得られることは無いだろう。


 ここで疑問がある。こうした公務員への不信は他の先進諸国では,どのようなものなのか。同様に不信や猜疑心で見られる存在なのだろうか。おそらく違うのだろうと想像がつく。欧米では公務員である個人の顔が見える仕事をしていると思われるからだが,


海外主要国における地方公務員採用制度について(第1部)
海外主要国における地方公務員採用制度について(第2部)


早稲田大学大学院公共経営研究科の大谷 基道氏が言うように,「終身雇用・年功序列を前提に「自治体」に就職し、当該自治体内で継続的に内部昇進していく「クローズド・キャリア・システム(閉鎖的任用制)」」のほかに,「官官あるいは官民間の頻繁な労働力移動を前提に、「職(ポスト)」に就職し、上位職への継続的昇進を想定しない「オープン・キャリア・システム(開放的任用制)」」によって,場合によっては「官民の枠組みを越えた労働力移動がスムーズに違和感なく」行われることで,公務員への見方が決定的に違ってくると言えるからである。

 今後,公領域の仕事は必然的に増える。国民/市民の政府がその主権者によって信用されなくては,たとえ政府の人数そのものを小さくしたとしても,財源の確保やルールの策定,チェックがなく公領域の仕事が行われないことになる(自由「奔放」な競争社会だ)。
 だとするならば,大谷が言うような「オープン・キャリア・システム(開放的任用制)」をどう取り込んでいくか,にも取組むことが次の社会をつくる上でも必要な作業になっていくのだろう。