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2011-08-04

放射能汚染わらはどのようにして生じたか

先週末、宮城県沿岸部の放射線量調査に行った帰りに、たまたま宮城県北部のウシ農家の方とコンタクトがついたので、放射性セシウム汚染わらの実態のヒヤリング調査に行ってきました。
こちらの宮城県の調査のように、県内各地でかなり広範囲に汚染わらが生じた原因を探るためです。
http://www.pref.miyagi.jp/tikusanka/0400-souchishiryou/110722pr3.pdf

岩手県南部の比較的汚染度が高いホットスポットのような箇所が部分的にできたのでは?、など、色々な憶測がされていましたが、結論から言えば、田んぼに広げて乾かしていた稲わらに低濃度の汚染があり、それが大量に集まって濃縮された、という単純なメカニズムで説明できそうです。
詳しい説明は、一緒に同行した堀田さんのtwitterの発言のまとめにありますが、ちょっとバックグランドの評価など不確かな部分がありますので、ちょっと別の角度から考察しなおします。

まず、この汚染稲わらが生じた地区の水田は、道路での空間線量が0.10μSv/hと、仙台市首都圏でもごく普通に見られる低濃度の汚染地域で、普段の生活を行う上では放射線対策など全く何も必要のない地域でした。
同じ地区の水田の中で、まだ表面に放射性物質が流れず残っているサンプルとして、震災以来耕起していない休耕田を探して測ってみましたが、そこでも0.13μSv/hと、仙台の我が家の庭と比較してもほとんど変わりのない線量でした。

そこで、実際の稲わらロールがどうやってつくられるか、ヒアリングをしてみました。
だいたい250平米の田んぼの稲わらからロール一つ分が取れ、1ロールで100kg前後、さらに乾燥させると1割ほど重量が減るそうです。
実際の田んぼに敷いて乾燥した稲わらをロールに巻く様子はどんなものか、twitterで黒木さん(@genkuroki)が探してくれました。
http://www.youtube.com/watch?v=kuBQft_EwDM
しかし昨年の秋は天候が不順で、秋のうちに稲わらが乾燥しきらず、そのまま田んぼに広げたまま一冬越してしまった農家がいくつかあったそうです。
そして、原発事故後、春先に乾燥させてロールに巻いた稲わらが、12,400〜26,300Bq/kgというとんでもない濃度に汚染されてしまいました。

さてどの程度の放射性物質の降下量だとこれほどの汚染になるか、見積もってみましょう。
震災直後はライフラインの混乱の酷い状況で、仙台市放射性セシウムの降下量のきちんとしたデータはありません。ましてや、今回の汚染稲わらが発生した地域の降下量のデータもありません。
そこで仮に東京都を例としましょう。東京都での放射性セシウムの降下量は1平米あたり7,000Bq前後だそうです。
東京都にある田んぼ250平米に稲わらが一面に敷き詰められていて、降ってきた雨を全部稲わらが吸収してしまったとしましょう。1ロールあたりに含まれる放射性物質の量は、250×7,000 = 1,750,000Bq、これが1ロール100kgとして重量あたりになおしますと、この稲わらに含まれる放射性セシウム濃度は17,500Bq/kg、となります。
なんと、宮城県北部でみつかった汚染わらの濃度とほぼ同じとなる計算です。
日常生活上は全く気にならない程度の低濃度の汚染でも、広い面積でかき集めれば高濃度の濃縮が起きてしまう、という単純な算数の話でした。
つまり、たまたま今回は宮城県北部でこの汚染わらが生じてしまいましたが、東京都レベルの汚染状況でも同じメカニズムによる汚染の濃縮は起こりえる、ということです。
となると、おそらく東日本どこでも、同じ事故は原理的に起こりえると用心してかからなければならなそうです。

さて、何か、これを事前に防ぐ手だてがなかったでしょうか。
農水省の汚染稲わらに関する情報はこちらです:
http://www.maff.go.jp/j/syouan/0720.html
この中で、飼料に関する通達はこちらにありました:
http://www.maff.go.jp/j/syouan/pdf/3-4.pdf

確かに、原発事故発生前に刈り取られされ屋内で保管されていた飼料のみを与えなさい、とは書かれているのですが、「大気中の放射線量が通常よりも高いレベルで検出された地域」において限った話です。
これを読めば、対象となるのは福島県浜通りなどに限った話で、こんなに原発から遠くしかも日常生活上は全く何の影響もない地域には関係のない話だ、と思うがほとんどなんじゃないでしょうか。
ただ、広げて乾燥させていたところに放射性物質が付着し、それを集めたら高濃度の濃縮が起きることは、言われてみれば確かに単純な算数の話として予測はできます。
それに気付かなかったことは、本当に運が悪かった、としか言いようがないと思います。

ちなみに、これだけ汚染された稲わらロールですが、1ロールあたり数MBqの放射性物質が含まれます。この稲わらロールの出す放射線はどの程度なのでしょうか?、ちょっとあまり計算したくありません。
おそらくこのまま、東電に引き取ってもらって処分する以外にないと思います。。。

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