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あどけない話

2009-07-05

イヴの七人の娘たち

想像してみて欲しい。小さい頃に百科事典で「世界中のすべてのゴールデンハムスターは、たった一匹のメスの子孫である」という話を読んだとする。大人になって、この信じがたい話を証明できたとしたら、一体どんな気分だろう?

本書は、ミトコンドリアDNAが解き明かす、人類の歴史の物語である。

DNA は両親から受け継ぐ。そのため、ある人の DNA に関与した先祖の数は、代をさかのぼることに 2 倍に増えていく。だから、系譜をたどる目的に DNA を利用することは、通常ほぼ不可能だ。

ただし例外がある。ミトコンドリアDNA だ。ミトコンドリアDNA は、母親からしか受け継がない。よって、母の系譜をたどって行くことが可能になる。

著者は、ミトコンドリアDNAを使い、ハムスターに続いて次々と問題を解決していく。

内容は、実に痛快だ。真実の話でありながら、練られた作り話のように、ハラハラドキドキさせられる。科学ファンには、ぜひとも勧めたい書籍である。

イヴの七人の娘たち

イヴの七人の娘たち

アダムの呪い

ミトコンドリアDNA以外にも、片方の親からだけ受け継ぐDNAがある。そう、Y染色体だ。前者は母の系譜を、後者は父の系譜をたどる道具となる。

本書は、「イヴの七人の娘たち」の続編であり、同じ研究者によって書かれた。

しかし、前作のような痛快さを求めて読むと、きっと火傷するだろう。題名が暗示するように、著者は気付いてしまった。我々の体の中で繰り広げられている DNA の壮絶な戦いに。

痛快な余韻にひたっていたいなら、本書は読むべきではない。著者が直面した真実を同じように見つめたいなら、本書も読むといいだろう。

アダムの呪い

アダムの呪い

2008-01-20

マックスウェルの悪魔

なぜ「水飲み鳥」(あるいは「平和鳥」)が話題になったのか思い出せないのですが、いろいろ調べたときに、原理は「マックスウェルの悪魔」という本に書いてあると知りました。

新装版 マックスウェルの悪魔―確率から物理学へ (ブルーバックス)

新装版 マックスウェルの悪魔―確率から物理学へ (ブルーバックス)

とても面白く一気に読んで、水飲み鳥の原理が分りました。もっと嬉しいことに、今までモヤモヤとしていた熱力学の疑問が解消されました。

熱とは何か

熱が原子/分子の振動であることぐらいは理解していましたが、今ひとつ釈然としていませんでした。この本を読んで、僕にはミクロの視点とマクロの視点への理解が足らなかったことが分りました。

ミクロの目で見ると、原子/分子は振動しており、運動エネルギーを持っています。マクロの目で見ると、その物体は(固体なら)止まっています。もちろん、マクロの目で見ても、その物体のエネルギーがなくなるはずがありません。そこで、熱エネルギーを持っていると考える訳です。

高いところにある物体は位置エネルギーを持ちます。支えを取り外すと、位置エネルギー運動エネルギーに変えながら落ちていきます。地面に落ちたときに、高さは 0 になり、停止しますが、エネルギーが消滅する訳ではありません。熱エネルギー、すなわち物体や地面を構成する原子/分子の振動になる訳です。

熱力学の第一法則

たしか「永久機関は作れない」という意味だと習った気がします。しかし、これは単にエネルギーの保存の法則のことだったんですね。つまり、エネルギーの量は、不変であるということです。

ちなみに永久機関には、熱力学の第一法則を破るものと、第二法則を破るものの 2 種類があるそうです。

熱力学の第二法則

エントロピーは増大する」と習いました。これは、単にエネルギーの質に関する法則だったんですね。エネルギーの質は、悪くなる一方だということです。

次の2つのエネルギーについて考えて下さい。

  1. 50度のお湯 2 リットル
  2. 100度のお湯 1 リットルと0度のお湯1リットル

2) から 1) は作れますが、1) から 2) は作れません。混ぜるのは簡単ですが、分離はできません。両方とも熱エネルギーの量は同じですが、質は異なると考えられます。1) よりも 2) の方が質が高いのです。

もし、熱力学の第一法則しかなければ、混ぜるのは簡単だが、分離は難しいことを説明できません。また、地面に落ちた物体が周りの熱を集めて上に飛び上がることはない理由を説明できません。

ですから、熱力学の第二法則があるわけですね。しかし、これは経験則だそうで、破られないと確定している訳ではありません。この法則を破る仮想生物が、マックスウェルの悪魔だそうです。(たぶん、守護神というニュアンスたんだろうと思います。)