ポレポレ東中野にて「小三治」を見る
昼食と午後のおやつの間に食べる軽い間食、それは小三時、というやつではなく。柳家小三治師匠を追ったドキュメンタリーである。
落語好きとしては気になる映画だったのだが、サービス価格で上映して、しかも最終回の後にお弟子さん達のトークイベントがある、というので出かけて行く。東中野なんて降りたことなかったんだけども、分かり易い場所でよございました。
で映画。監督はテレビの方ということで、手法としてはほぼ、ナレーションの少ない「情熱大陸」と思えばよろしい。これはこれでよし。
でも多分、ここまで内幕は見たくなかった、という落語ファンも居られるだろな。私は楽しかったですが。中盤の締めになるのは、弟子の三三師匠の真打昇進のお披露目なんだけども、三三という方は小三治師匠から噺の稽古をつけてもらったことはないんだそうで。しかし真打昇進のご挨拶の言葉によると、師匠はまず「とにかく大きい声でやれ」、もうちょっと慣れて来てからは「落語らしくやれ」とだけ言ったそうな。――随分、無茶な指導もあったもんですが、現在を見るとそれが成功したらしいからすごい;(や、三三師匠の個人の努力ってことかもしれませんが)
さて、当初は日中の会を見る予定だったんだけども、結局見たのが最終会だったもので、トークイベントも聞いていく。トークまでの休憩時間にはロビーで越乃寒梅なんか振る舞われたりする。いただいていい心持ちで飲んでるうちに、ふと映画の終盤で小三治師匠のやった「鰍沢」(冬の怪談、というかサスペンス。三枚のお札か「シャイニング」か、という噺)が頭によぎり、「はっ、もしやこの酒に痺れ薬が!」とか言ってしまう。「卵酒じゃないから大丈夫ですよ」と言われましたが。すみませんすみません。
でトークイベント。3日から10日まで、小三治師匠のお弟子さんが二人ずつ日替わりで登場するとのことで、この日ははん治、一琴(三番弟子と七番弟子)のお二人。ここでのお話によれば、小三治師匠は楽屋でもほんとに難しい顔をしてぴりぴりした空気を漂わせている方なのだそうなのだが、作中にも登場した入船亭扇橋師匠(同じ小さん門下で仲が良いらしい。かつては故桂文朝師匠とで定期的に三人会を開催されてたそうな)が全く逆の、居るだけで周りの雰囲気が明るく柔らかくなるというお人柄だそうで。この映画を見ていても、随分扇橋師匠の登場に救われた、とか。やがて客席にいた監督も二人の呼びかけで登壇し、「次は『扇橋』を撮って下さい」とか言われていたのだった。あああ、「小三治」一本撮るのに三年半も取材されたというのに……; 当初は小三治師匠のやる噺の「まくら」だけを撮って映画にするはずが、やがて小三治師匠本人についてのドキュメンタリーになったんだとか。
それはそうと、実を言えば私、映画を見終わる頃までなんとなく、小三治師匠は既に故人なんじゃないかと思っていたのでした。いや、そんなお年だと思った訳でもないんだけど。どこかで「三三は師匠に稽古を付けてもらったことがない」と聞いたことがあったのを「生涯稽古をつけてもらう機会に恵まれないままだった」というように脳内変換していたかも。
しかしまだお元気で活躍されてるとのことで、勘違いの反動で大変ほっとしたことでありました。すみませんすみません。これぞ「生きてゐる小三治」というやつでござんすね! お後がよろしいようで……
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