QED河童伝説(高田崇史)
- 作者: 高田崇史
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/02/07
- メディア: 新書
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前巻までの流れで、相馬野馬追祭に出発。
そこで、巻き込まれる、と言うよりも話に聞いた殺人事件。川に浮かぶ死体。腕は切り落とされている。河童の伝説/腕を切る。いったいなぜ? ダイイングメッセージ? 痕跡を隠すため? 動機は? 怪しすぎる人物。第三の被害者。製薬業界の暗部。知らないはずの事象。将門公の伝説。鎧武者。首のない。刀。
というわけで、冒頭の描写にどきっとしながら、最後まで読んで、ああ、こういうことだったのか、と。
トリックというか、腕切断のなぞは、小粒ながら良かったと思います。
それよりも、問題は、もうほとんど事件のほうって、いらないんじゃね? と言うところじゃないかと。
いや、事件に奈々たんとかタタルがほとんど絡んでないですよ。
もう、お前らは河童の謎を解いてれば良いんじゃないか、と。
あ、そうそう、河童と言えば、大学のとき、友人と遠野に旅行したとき、河童が出るという淵を見てきました。
──何もなかったがな!
ああいうところは、友人同士でわいわい言いながら行くんじゃなくて、ひとりでいろいろと妄想しながら行くところだと思いました。
あと、市営かどうか知らんけど、河童のあやしいテーマパーク? みたいなの行ってきた。
──客いなかったがな!
え、ええと、遠野いいところだよ?
友人の親戚が旅館の人で、安くしてもらったりお酒サービスしてもらったりしたし。
というわけで、民話のふるさと、遠野へぜひ。
まぁ、そんなことは良いんですよ。
問題は、奈々たんですよ!
もう、この娘は、ほんとにボクを萌やしてくれる!
たぶん、こんなことを言いながらこのシリーズを読んでる人は、ボクひとりなんじゃなかろうかと思うんですが、それでも良い、萌えるものは萌えるんだ!
ああぁー、もう、この無自覚天然っぷりをどうしてくれようか!
沙織(奈々たんの妹)じゃないけど、やきもきしますよ!
タタル×奈々たん(もしくは、奈々たん×タタル)に進展がなくても、いや、ないからこそ萌える!
──この二人、どっちが攻めか受けかわからないというか、両方受けっぽいんですが、というより、BLじゃなくてもそういう言い方するのか? というよりも、自然にそういうこと考えてるボク終わった。
で、このシリーズはめがっさドラマ向きだと思うんだけど、この奈々たんを誰がやるか? と言うのがきっと問題なわけですよ。タタル? そこら辺の二枚目でも連れてきときゃ良いじゃん。そんな誰だってやれるようなのはどうでも良くて、問題は奈々たんなんですよ。もう、明らかにほえほえ天然なんだけど、頭は良いんですよ。ちゃんとした薬剤師さんだし、タタルの話にもついて行けるし。
つまりは、天然でありながらちゃんと知識──理性があるところを見せなきゃ行けないんですよ。
個人的な思いこみかもしれませんが、ドラマなどで天然系といえば、完全にただのバカのようにしか描かれないのが相場。それじゃあ、奈々たんの魅力の半分も描ききれないのですよ!
そんなわけで、女優さんに詳しい人、奈々たんにはどういう女優さんが良いか、ご教授下さい。
To Heart HMX-13 SERIOさん誕生日記念SS
というわけで、本日2月12日は、セリオさんの誕生日です。
──君が祝わなくても、ボクは祝う。
ボクなりのお祝いの形は、SSなのです。
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#To Heart HMX-13 SERIO 2007-02-12 Birthday ShortStory
#Title:歌を聴かせて
マスターがお仕事に行っている間、お部屋の掃除をするのが私の日課です。その部屋の状況を正確に分析し、最適な方法と道具で、ばっちりお掃除です。
「だからって、これはひどいんじゃないでしょうか?」
確か、昨日ちゃんとお掃除したはずなのに、マスターの部屋はまるで自堕落なひとり暮らしの学生のように乱れています。たった一晩で、どうしてこんなに散らかせてしまうのかが、ロボットの私にはまったくわかりません。
ああ、申し遅れましたが、私、HM−13セリオと申します。
来栖川重工から発売されている、いわゆるメイドロボットというものです。
販売開始より、HM−12と共に世界中の皆様に愛されていますが、さすがに発表から数年がたち、カタログスペックでは最新機種に遅れをとってはいますが、その分、蓄積されたデータとノウハウは、決して他機種に負けないと自負しております。
何より、まだ私たちを愛して下さるマスターたちがいらっしゃると言うことが、そのことの証明にはなりませんか?
と、それよりも、この部屋の惨状です。
昨日、しっかりきれいに整頓したはずなのに、CDは床にばらまかれ──ご丁寧に、ケースに収められていないCDも転がっています──棚から引きずり出された本は、ところかまわず積まれています。
もう、いくら私たちが高い情報処理能力を持っているとはいえ、バラバラになったCDをもとの場所におさめたり、本を書棚に整理するのは、一苦労なのですよ? マスターは、そのあたりのことをわかっていらっしゃるのでしょうか?
まずは、整理しやすい本を手に取ります。
ええと、クイーンの国名シリーズの順番は──どうして、わざわざアメリカ銃を読み直しているのでしょうか? 国名シリーズであれば、ギリシャ棺あたりが有名だと思うんですが? それに、こちらはカーの緑カプセルの謎? それに、皇帝の嗅ぎ煙草入れも。あら、森博嗣の夢で逢いましょうも。こちらには、映像関係の実用書だとか、Webカメラの解説書などが散乱しています。もちろん、これら全てを一晩で読破できるわけもないので、多分、パラパラと拾い読みしたものだとは思いますが。それにしても、うちのマスターの辞書には、節操という言葉はないのでしょうか? 同じ本を読むにしても、もう少し整理しながら読めば良いと思うのですが……。
クイーンやカーは、海外作家の棚に。森博嗣は、日本作家の棚に。実用書は、それらとは別の、ジャンルごとの棚に。この、本の分類方法は、私がマスターにお世話になるようになってから、一番はじめに覚えたことです。本の整理方法と言えば、十進分類法などが有名ですし、書店では出版社ごとに本が並べられていますが、マスターにはマスターなりのこだわりがあるようで、それらの分類方法ではなく、自分なりの整理方法を、これから部屋を整理する私に教えられたのです。
──そのくせ、日用品などをしまう場所には無頓着なんですよ、うちのマスターは。
普通は、そう言ったもののしまい場所のほうが気になるものなのですが。
と、そうしている間に、部屋中に溢れていた活字のカオスは、書棚の中で整理されたアーカイブとなりました──もちろん、マスター好みの配列で。
さぁ、次はバラバラに置かれたCDの整理です。
先ほどの書物の例を見てもそうですが、うちのマスターには、一度出したものをしまうという習慣がありません。本の場合は、まだ入れ物と中身がバラバラになることはありませんが、CDの場合は、ことごとくケースと中身がバラバラになっています。たまに、ケースの中にCDがおさめられているかと思えば、ケースと中身がまったく別のものだったりします。CDをそのまま放置するのは、傷が付いたりしてあまり宜しくないと思うのですが、マスターの性格では、そのあたりをきちんとしろ、と言っても無駄でしょう。
でも、文句ばかりが出てきてはいますが、CDとケースをあわせるというのは、ちょっとしたパズルみたいで面白いんですよ?
おかげで、私はすっかり音楽について詳しくなりました。とは言っても、マスターが持っているCDだけですが。
けれど、実は私はこれらの音楽を聴いたことがありません。
それは、私には必要がないからです。
マスターが望めば、コンクールで優勝するようなヴァイオリンでも、誰もが涙する哀愁のギターだって奏でましょう。私と、ネットワークに繋がれたデータベースには、そういったデータもおさめられているのですから。
実際、私たちにそのようなことをさせているマスターもいらっしゃると聞いたことがあります。
でも、うちのマスターは私にそれを望みません。
うちに、楽器がないというわけではありません。
隣の防音室には、マスター自慢のフェンダージャガーと、ジャズコーラスが並べられています。
それでも、マスターは、私に楽器を弾かせません。
「俺より上手く弾けるのを見たら、ちょっとへこみそうだから」
とおっしゃりますが、きっと、本当の理由はそこにはないと思います。
いくら、私がロボットだからって、それくらいはわかるのです。
きっと、マスターにとって音楽というのは特別なのではないでしょうか。
今は、小説などで生計を立てているマスターですが、昔は音楽をしたかった、と言っていたことがあります。
「でも、俺は音楽の神様には会えなかったから」と。
マスターが、そこまで強く思った音楽とは、いったい何なのでしょうか?
無意識に、ネットワークを検索します。
ひっかかるページを、次から次へと高速で閲覧、情報処理。
以前、マスターから聞いたことのある逸話と照合。
他の芸術分野──例えば、小説、絵画、演劇との比較。
音楽には、本当に、いろいろな逸話があるようです。
望む声を出すために、舌の先を切り取ったミュージシャン。
麻薬の注射で腕が腫れ上がっても、片手で美しい旋律を奏で続けたピアニスト。
四辻の真ん中で悪魔に魂を売り渡した男。
それほどまでに、マスターを──人々を惹きつける音楽とは?
私は、ゆっくりとマスター愛用のヘッドフォンに手を伸ばしました。
少し大きめの、密閉型ヘッドフォンです。
隣近所の迷惑になるから、と、マスターはスピーカではなく、これで音楽を聴くのです。
頭にヘッドフォンを被り、耳にはめようとして、かちりと違和感があることに気がつきました。
──どうやら、耳カバーが邪魔になっているようです。
ヘッドフォンは、人が着けるものだから、当然耳カバーを着けたままだと上手く着けられません。私は、当然のことに少し恥ずかしくなりながら、片方ずつ、ゆっくりと耳カバーを外しました。
ことり、と、耳カバーを床に置く音がなります。
あまり知られていないかもしれませんが、耳カバー伸したには、私たちセリオにも人と同じ形の耳があります。ただ、耳カバーは、全方位アンテナと無線LANの受信機を兼ねているため、外してしまうとそれらの機能が使えなくなってしまうのです。
ただ、人と区別が付けられるため、という理由だけで着けられているのではないのですよ?
もちろん、一部で噂されている、耳カバーを外すと恥ずかしいから、というのはまったくの嘘です。
──いえ、恥ずかしくない、と言えば嘘になりますが、噂にあるほど恥ずかしくはないですから。
と、気を取り直して、耳カバーの代わりにヘッドフォンをはめます。
耳をすっぽりと覆う、ヘッドフォンの柔らかいクッション。
私は、オーディオのスイッチを入れ、中に入っているCDを再生させます。
ピックアップが、CDの記録面を読み取ります。
そして、私の耳には、ギターの音が聞こえてきました──
流れてきたのは、ビートルズでした。
散乱していたCDを見る限り、グランジだとかパンクだとか、メタルだとかを聴いていたはずなのに、最後にたどり着いたのはビートルズだったようです。
ビートルズについての詳細を検索しようとして、耳カバーを外して、スタンドアローンになっていることを思いだしました。代わりに、内部ストレージに蓄えた──マスターに以前聞いたビートルズのデータを引き出します。
たった数人の若者が、世界を変えた──そう言って、過言のない彼らの活躍。
「愛してよ!」
という、直接的な、そして、素敵な宣言。
一週間に八日分のスピードで走り抜けた、激しい夜の連続。
「助けて!」
という叫びさえ、笑い飛ばしてしまう勢い。
けれど、それは長くて曲がりくねった道の連続だった。
終局は、静かに「あるがままであれ」。
気がつくと、私は次々とCDをプレイヤーに入れていました。
周りには、片づける前と同じくCDの山。
そして──
「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンドもホワイトアルバムも良いけど、やっぱりアビーロードが良いよ。次はこれを聴いてみな」
──いつの間にか帰宅したマスターが、私の隣に座っていたのです。
「あ、ええと、申し訳ありません、マスター。今すぐ片づけますので……」
すぐにヘッドフォンを外そうとしますが、
「いいよ、それよりアビーロードを聴いてみなって。Come Togetherからはじまって、Here Comes the Sunへと繋がっていく、この一連の流れが良いんだから」
そう言って、マスターは私の耳にヘッドフォンをはめ直します。
四人が横断歩道を渡っているジャケットのケースからCDを取り出して、プレイヤーにセット。
シュ、という声と、特徴的なベースライン。
ドラムがそれに絡んでいきます。
──I know you,You know me.
私は、マスターを知っていて、マスターは私を知っている。
今日、こうして音楽に触れて、私はほんの少しだけ、そう思えた。
データには表れない、音楽の持つ力。
「素晴らしいです」
最後のHer Majestyの歌詞は、少しどうかと思いましたが、ビートルズのメロディと、感じた私の心、そして、それを勧めてくれたマスターの気持ちは、しっかりとメモリーに刻みました。
「うん、そう言ってくれると、嬉しいよ。
──これ、買ってきて正解だったな」
そう言いながらマスターが出したのは、きれいにラッピングされた箱。
「これは?」
何かのお祝いでしょうか?
「今日さ、セリオの誕生日だろ? だから、ね」
あの、ということは──
「もしかして、私にですか?」
「もしかしなくて、そうなの。ほら、いっつもセリオには迷惑かけてるからね」
と、片づけられた書棚に目をやるマスター。
「開けても良いですか?」
おずおずと、箱に手を伸ばす。
「もちろん」
嬉しそうに見守るマスター。
包装紙を丁寧にはがします。──こういうものは、あとで再利用できるので極力きれいに。
中から現れたのは、ヘッドフォンでした。
「その大きいのよりも、こういうちょっと可愛い方がセリオに似合うかな、と思って」
私が今しているのよりも、少し小さな、かわいらしいヘッドフォン。
「ありがとうございます。マスター」
マスターと、マスターの好きな音楽と、そして私を繋ぐもの。
「うん、早速着けて聴いてみてよ」
マスターは、いそいそとヘッドフォンのコードを繋ぎ変えています。
「はい……」
そっと、マスターのヘッドフォンを外します。
それを床に置いたとき、私はマスターの視線に気がつきました。
「あの……何か?」
何か、まずいことをしてしまったのだろうか?
「いや、あのさ……」
言いにくそうに、鼻の頭をかくマスター。
「なんでしょうか?」
そう言う態度をされると、気になります。
「ええとさ、セリオの耳、きれいだなって思って」
もう、そういうことを言われると、私まで恥ずかしくなります。
「──え、ええと、マスター、早くマスターが買ってきて下さったヘッドフォンを試してみたいです」
ごまかすように。
「あ、ああ。そうだな。それじゃあ、今度はこれが良いかな──」
そう言ってマスターがかけたのは、Please Please Me。
──I saw her standing there.
私と、マスターの出会い。
それは、偶然? それとも、必然?
マスターのヘッドフォンよりも、どこか暖かい、そんな音がしてました。
"Headphone android" is over.
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とりあえず、微妙に勝手な設定入ってるね。うん。
耳カバーのあたりとか、特に。
ちなみに、文字数は5,213文字。
原稿用紙に書いたら、10枚を余裕で越えるね。ええと、大体13枚ちょっとくらいかな。
改行とか考えたら15枚か。
おかしいなぁ、もっとさくっと終わる予定だったんだけど。
しかし、まだまだセリオさんについては語り尽くせぬものはあるんですが、それはまた来年に。
あ、感想、コメントなどお待ちしてますので。
宜しければお願いします。
[Today's tune]I Saw Her Standing There/The Beatles