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2012-03-06

[]想像してごらん

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 想像してごらん

 毎日が日曜日だったなら

 ぼくは10時くらいに起きて、いいとも増刊号を見るんだ。もう何年も、うちにはテレビはないけど、毎日が日曜日だったなら、新しいテレビをリサイクルショップで買ってくるよ。そいつで、いいとも増刊号を見るんだ。そこではさ、あるはずのない月曜から金曜までの、いいともがダイジェストで見られるんだ。だって、毎日が日曜日だからね。月曜から金曜はありゃしないぜ。タモさんは死なないから、永遠の日常がぼくの替わりにダイジェストで流れているはずなんだ。毎日毎日、全く違うダイジェストが、見たこともないダイジェストが、そこには流れてるはずさ。でもさ、そこにはまるで同じタモさんがいるはずで、ぼくはそれを見て安心するはずなんだ。ぼくは永遠の日常に涙するはずなんだ。毎日毎日、違うダイジェストが同じように、同じテンションで流れるはずなんだけど、でも、多分、あるはずのない金曜のテレフォンショッキングのゲストには、毎回必ず、ぼくの好きな女の子が出てくると思うよ。

 でさ、その女の子は初登場だから(でも、毎日毎日、初登場なんだけど)タモさんとのトークをテンパリながらもそれとなくやっちゃっうんだ。んまー、そこはやっぱり、ぼくが好きになるような女の子だからね。間違いなく素敵な笑いを起こすと思うんだよね。でさ、そのテレフォンショッキング見るんだけど、そこはどうしたってダイジェストだから、ちょっぴり短くてね。もっと見たいぼくは毎日毎日、「あぁ、金曜の放送を見逃したのは失敗だったなー」とか「全部見たいなー」とか思うはずでさ。そんなこと考えてるうちに、タモさんはいつも通り「お友達を〜」なんつってね、そしたら、アルタの観客は、やっぱ言うのよ。えぇ!!!!ってやつ。あの、お約束の、えぇ!!!!!っていうやつ。ぼくなんか、今まで、いいとも見てて、えぇ!!!!!なんて思ったこと一度もないけど、そこはやっぱり、心の中で、初めて、えぇ!!!!って言っちゃうのね。心のボリュームMAXで!(いや、毎度観てても、初めてなんだけどね。毎日が日曜日だからさ)。

 そんで、その女の子は友達を紹介するんだけどさ、なぜかそれは、ぼくでね、その瞬間、ぼくは「あ!金曜にアルタから電話が来たんだった!」と、あるはずのない金曜の電話を思い出すはずでさ。テレビを見ると、タモさんが「来てくれるかな?」って言ってて、ブラウン管の…いや、違うか、薄っぺらい液晶の中からは、ぼくの声で「いいとも!」って聞こえてくると思うよ。それでさ、それから、うわのそらで増刊号を見続けるんだ。けど、やっぱ、来るはずのない明日のテレフォンショッキングのこととか考えちゃったりしてさ。「髪切って行った方がいいかな?」とか「あ、でも、ぼくとタモさんは初対面だから髪切って行っても意味ないや」とか思うんだよね。で、そのまま月曜のシュミレートをするんだけど、どうしたって、そんなのは、あさってに行っちゃって、やっぱり気になるのは、その女の子のことでさ。あの子、今、どうしてるんだろう?とかね、考えちゃうと思うよ。

 そうしてる間に、増刊号は終わってさ。よく晴れた日曜日の午後がやってくるんだ。それは、とても良い天気でね。そのうららかな午後に、ぼくは、「やっぱり髪を切りに行こう」って出かけると思うよ。そんで「さっぱりしたら彼女に会いに行こうかな」なんて考えると思うんだよね。

 そう。他愛もない話をしに彼女の住む部屋へと急ぐと思うよ。いいとも!の感想とかさ。きっと、そんな話をしにね。

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 はてなダイアリーには下書き機能というものがあって、書いた日記を下書きとして、保存しておける。登録日を見ると、上の文章は今からだいたい3年くらい前に書いたもので、一度も公開すること無く、誰にも読ませることも無く、ずっと下書きとして残っていたものだ。なんで公開しなかったのか忘れたが、ここで書いてある女の子にはあっさりフラれた。たぶん、そういうことなんだろうと思う。

 先日、※大盛できます(無料)の山田さんID:thiswholeworldと飲んだ時に、山田さんが「日本の戦後史は、タモリ以前、タモリ期、そしてこれから訪れるであろうタモリ以後に別れて語られると思うんですよ」という、よくわからないサブカルトークを繰り広げていたので、この文章のことを思い出した。

 山田さんにも言ったけど、ぼくはわりとタモリの普遍性/不変性というようなものを信じている。もう何年もいいとも!を見ていないし、アンテナに繋がったテレビ自体10年は所有していないので、タモリを見る機会はほとんどないのだけれど、今日も、この日本に「いいとも!」が流れていることに安心している。得体のしれないサングラスのおっさんが、今日も昨日と同じテンションでマイクを握っていることに安心している。見てはいないが間違いなくそうだと確信している。そして、うまく言い表せているとは思えないが、安心とはそういう類のものだと思っている。

 ぼくは永遠の日常を生きていたい。

 楽しいことも、つらいことも、そこそこ色々あるけれど、すこしずつ変わっていく永遠の日常の中で暮らしていきたい。

 そんな風に思っている。

2011-12-31

[]一年経った

 2011年9月3日、夜の12時近く、ぼくは恵比寿リキッドルームの入り口の階段にいた。

 その日の夜、台風で中止になってしまったメタモルフォーゼの出演者たちは、都内の数カ所でハコを押さえてライブを行ったのだが、その内の一つがリキッドルームだったからだ。ぼくは友人と二人で、急遽、そのイベントに出かけてきたのだ。

 開場を待つ列の中で、友人がぼくに言った。

「もう一年経つんだね。早いよね」

 ああ、そうか。もう一年経ったのか。一年前、例年通りちゃんと静岡で行われたメタモルフォーゼには、ぼくもその友人も出かけたのだった。あれから、もう一年。素直に驚いた。時が流れるのは早い。


 一年前のメタモルフォーゼの前日、ぼくは付き合っていた人にフラれた。あれから、もう一年も経ったのだ。


失恋を甘くみちゃいけないわ あれは何度やっても慣れないのよ

朝倉世界一 『デボネアドライブ』2巻 第14話より モモヤマさんの言葉)


 あの日、ぼくは彼女と会えなかった。どうにかして、ぼくは彼女と会おうとしたけど、彼女は頑なにぼくと会うことを拒んだ。彼女の家に行こうかとも思ったけど、それは何か許されないような気がした。今思えばどうかしていたのだろう。仕事が終わってから彼女の住む街に行って、彼女からの連絡を待った。居ても立ってもいられなかった。近くにいるから連絡をくれとメールして返事を待った。繁華街の夜中のマックで、コーヒーを飲みながら独りぼんやりと彼女からの電話を待った。全く気持ち悪い話だ。笑われるくらい気持ち悪い話だ。何をやっているのだ?笑ってしまいたい。けど、笑えなかった。阿呆みたいに真剣だったから。恋にうなされていたのだ。ぼくには彼女の言葉の意味が分からなかったし、何がいけなかったのか考えていた。でも、彼女の中では完全に終わっていたのだろう。そういう温度差なのだから、もうどうしようもないとは思っていた。けれど、一切を拒否するそのやり方が信じられなかった。だから、会って話をしたかった。でもどうしたって、それはもう彼女にはキツすぎることだったのだろう。案の定、彼女からの連絡はなかった。

 コーヒーを飲みながら連絡は来ないと考えていた。でも、もしかしたら…って一縷の望みをかけていたのも事実だった。その日の夜、ぼくは友人の車で、友人の静岡の実家へ行き、メタモに前日入りする予定だったけど、とてもいける気分じゃなかった。もしも、彼女から連絡があった時に、静岡は遠すぎる。ぼくは今すぐ会って話をしたかったのだ。だから、友人たちには適当な嘘をついて先に行ってもらった。

 明け方、ぼくは漫画喫茶にいた。彼女の住む街で、初めて彼女とは違う場所で一晩明かした気がする。全くちっぽけでカッコ悪い話だけれど、歩いて10分の距離がぼくの最後のプライドだったのかもしれない。彼女の部屋に行くことはなかった。

 当日のぼくのツイッターが寒々しい。精一杯の強がりが見て取れる。


 朝一の新幹線はどうだったろう。行くのを辞めるか迷ったが、ぼくは新幹線に乗って静岡に向かった。全てが阿呆らしかった。朝までこんなところにいた自分が阿呆らしかった。メタモルフォーゼはどうだったろう。もうあまり覚えていない。


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 2011年3月13日、ぼくは彼女の住む街にいた。

 前々日に起こった震災でぼくの安否を心配した彼女から電話がかかってきたのだった。もう二度と聞くことはないと思っていた彼女の声は、付き合っていた頃と変わらない様子だった。ぼくらは会って話をした。ぼくらは穏やかに話をして穏やかに別れた。そしてもう会えないだろうと思った。


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 2011年9月23日ぼくは代官山UNITの二列目くらいでステージを見ていた。

 アンコールの最後の曲で奇妙礼太郎はこの曲を歌った。

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(曲中のMCより)

これは、あの… ワンダフルボーイズっていう、あの…友達のバンドの曲です。

サイコーやろ?

その人の…

サンデーカミデっていう人ですけど…

その人の曲の歌詞の中に、あの…「フラれた方にだけ起こるぜ恋のマジックは」っていう言葉があります


(唄いだす)

フラれた方にだけ起こるぜ恋のマジックは〜


覚えた?


(お客さんと一緒に唄いだす)

フラれた方にだけ起こるぜ恋のマジックは〜

フラれた方にだけ起こるぜ恋のマジックは〜

でも…

*1

 でも…

 ぼくは…

 って考えて、その先で何だか涙が出そうになった。

 これから、ぼくにはぼくの日々がある。それは間違いなくて、ぼくは死なないから、死ぬまで生きるから、死ぬまでどうにかして生きるから、これからもいろんな日々があるはずで、それはとてつもなく間違いない。

 ぼくは、これからも、ぼくなりにぼくの日々を生きて行く。彼女だってそうだろう。もう終わったことさ。でも、この曲を聴いた時に、涙が出そうになったのも間違いない。

 なんとなく、そんなこと思い出したりしてる。

 そして、フラれた方にだけ起こる恋のマジックを信じたりしてる。

*1:2011年9月23日代官山UNIT 奇妙礼太郎トラベルスイング楽団公演「きみが誰かの彼女になりくさっても」より