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2016年05月04日 GENIN 2016

[]GENIN 2016

下人は、太刀を鞘におさめて、その太刀の柄を左の手でおさえながら、冷然として、この話を聞いていた。勿論、右の手では、赤く膿を持ったトラックポイントを気にしながら、聞いているのである。

しかし、これを聞いている中に、下人の心には、ある勇気が生まれて来た。それは、さっきゲートの中で、この男には欠けていた勇気である。そうして、またさっきこの門の上へ上って、この老婆を捕えた時の勇気とは、全然、反対な方向に動こうとする勇気である。下人は、メールを読み逃すか餓死するかに、迷わなかったばかりではない。その時のこの男の心もちから云えば、メールを読み逃すなどと云う事は、ほとんど、考える事さえ出来ないほど、意識の外に追い出されていた。

「きっと、そうか。」

老婆の話がおわると、下人は嘲るような声で念を押した。そうして、一足前へ出ると、不意に右の手をトラックポイントから離して、老婆の襟上えりがみをつかみながら、噛みつくようにこう云った。

「では、己が未読メールをそのまま削除しようと恨むまいな。己もそうしなければ、疲れてしまう体なのだ。」

下人は、すばやく、Ctrl-A + DELを押下した。それから、執拗にメールを配信してくるメーリングリストを、手早くいくつもunsubscribeした。残りのリストは、僅に五つを数えるばかりである。下人は、すっかり空になった受信トレイを満足げに眺めると、またたく間に狭いゲートを夜の底へかけ出した。

しばらく、死んだように倒れていた老婆が、死骸の中から、その裸の体を起したのは、それから間もなくの事である。老婆はつぶやくような、うめくような声を立てながら、まだ燃えている火の光をたよりに、ゲートの外まで、這って行った。そうして、そこから、短い白髪を倒さかさまにして、門の下を覗きこんだ。外には、ただ、黒洞々たる夜があるばかりである。

下人の行方は、誰も知らない。

2014年12月13日 Amazon年末セール

Amazon Kindleストアにて年末セールが開催されている。既にコンピューター関係のまとめとか色々あるので、既に紙で持っている本も含めて個人的に興味を覚えた技術書<以外>の本を並べてみる。

旅行者の朝食 (文春文庫)

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現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

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フリー ―<無料>からお金を生みだす新戦略

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般若心経 ─まんがで読破─

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会話はインド人に学べ!

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当たり前だけど勤め先は関係ない。。

2013年11月24日 よれよれ

[][]よれよれ

村上春樹いじり

村上春樹いじり

2chもいいが、Amazonレビューも楽しい。

「そんなこと求められたって、今、女だって救われたい訳である。・・・性の対象としてのみ扱われながら相手の男を救済するなんて、マグダラのマリア様じゃないんだからできない。できない筈なのに、それができる女が登場するのが、多分私にとっての春樹文学に対する、ものすごい不愉快感の理由なんだ、とはたと気づかされた。」と、おそらく女性によるレビュー。

村上春樹を巡っては、10年以上前にも同世代の複数の女性から同じようなことを立て続けに言われたことがあって、その時は全く理解できなかったのだけど、その後、「精神的な自立」とでも言ってしまえるとカッコいいが、平たく言うと女性を含む他者から救済を得ることを諦めるという方向で自分の考え方も変化する中で徐々に理解が深まって来ているような気がする。(もし並行して「自分が大好き」という核心を失っていたら、逆に理解は遠ざかったかもしれない。未だに自分は大好きである。)それと並行して、Twitterに「音楽の鳴っている間はとにかく踊り続けるんだ」とか「やれやれ」などと書き込んで快楽を得る気力はいよいよ失われて来ており、もはや「よれよれ」と書き込むのが精一杯の境地に至った。

とはいえ、だからといって村上春樹を読まなくなったということはなく、「国境の南、太陽の西」に至っては自分は10回以上読んでいて、移動先で買い足したりした結果、手元に何冊も同じ本があったりする事実は変わらない。ただ、それは、いわゆる<リア充>への憧憬の念の苦しみ(傍点を打ってやりたいぐらいだ)を忘れないための「薪」であり「胆」としての読書であって、ユダヤ教徒が過越祭に種なしパンを食べるのと同じ行為である。<リア充>小説であることが確定していない新作については読む動機は生じ得ない。よれよれ。

ちなみに、種なしパンのことを発音によっては「マッツォ」と呼ぶらしい。


国境の南、太陽の西 (講談社文庫)

国境の南、太陽の西 (講談社文庫)