QBハウスに行ってみた

安い、少し早い、うまくない

お金を貯めるためには、入るのを増やす一方で出るほうを絞ることも大切だ。
そこで、1,000円で散髪してくれて、しかも時間が10分しかかからないという、QBハウスに行ってきた。

自分の散髪事情を説明すると、僕はもともと2ヶ月おきぐらいにしか髪を切りに行かない生活だったが、その代わり5,000円ぐらいの比較的マトモな美容院で、美容師を指名して切ってもらっていた。僕のような見栄えに恵まれない人間が上手に髪を切ってもらうことは、一見すると無意味な行為であるようだが、あながちそうとも言い切れない。
少なくとも、本人としては、それなりに合理的な理由があった。というのも、マトモなところで切ってもらうと、髪が伸びたときの「持ち」が違うのである。

僕の場合はもともと髪を切る間隔が長いので、たまたま忙しくて髪を切りに行けなかったりすると、切った時点と比べて、髪が極端に伸び過ぎてしまうことがある。そのような場合に、床屋や下手な美容院で切ってもらっていると急激に乱れた感じになってしまっていたのが、美容師を選んで丁寧に切ってもらうようになってからは、髪が伸びすぎても、それなりに秩序を保ったままでいられるような気がするのだ。
それに、ほかの人から見れば、わずかな差かもしれないが、朝家を出るときに髪型がままならないというのは、気分のよいものではないし、セットをやり直したりする時間は無駄だ。


しかし、QBハウスが主張するように、予約なしで行っても正味10分で髪を切れて、しかも1,000円しかかからないのであれば、時間と費用の両面でコストを下げられる可能性がある。理容師の腕が低く、「持ち」が悪いという仮定の下に、こまめに切りに行くことで散髪の周期を5分の1になったとしても、ようやく美容院に並ぶ程度のコストで済む。

問題は、理容師のパフォーマンスであり、インターンシップや就職活動のない今ならば、冒険することができるので、ついに、一念発起して家の近くのQBハウスに行くに至った。


前置きが長くなりすぎたが、結論を言うならば、タイトルにあるとおり、
安い、少し早い、うまくない(下手)
であって、「安い、はやい、うまい」とは、程遠かった。


値段については、コストパフォーマンスを考えなければ、1回あたりの絶対額は5分の1なのだから、安いと言えるが、時間は公称の10分ではなく40分以上かかった。僕の行った店では、開店直後の10:30時点で、列ができていて、待ち時間が30分近くかかった。予約ができない以上は、近所の店舗でその時間帯に髪を切ろうと思えば、それに近い待ち時間を考慮する必要があるということだ。そして、肝心の散髪には15分近くかかった。
そして、何よりも問題だったのは仕上がりだった。
一度にたくさん切って時間を節約しようとするせいか、少しずつバランスをとりながら攻めていく美容院とは対照的に、右側だけとか、前髪だけを集中して切って、一度に仕上がりまで持って行こうとするために、常に極端に非対称な髪型になっていて、切られている間は仕上がりの予想ができない。そして、ふと気がつくと、なんとも形容しがたい髪型にさせられていた。
前髪は、テレビドラマにでてくる「おぼっちゃま」の髪型のように、不自然に長い上、周辺部について言えば、上半分と下半分を分けて切ったために、耳の上辺りの高さで不自然な段差ができていて、頭を一周するラインができてしまっている。これは、「持ち」が悪い、というレベルではない。髪は、ただ短くなればよいというものではないのであって,安かろう悪かろうの典型のように感じられた。

つまるところ、残念ながら、QBハウスは期待はずれだった。

今回行った店舗がたまたま混雑していただけかもしれないし、偶然、下手な理容師に当たってしまったのかもしれないから、これをもってQBハウスのサービスについての一般的な体験としてしまうのは性急かもしれない。
しかし、可能性として、予約ができない以上、混雑に遭遇する可能性はあるし、低価格である以上は、どの理容師の腕も一定以下であるのが自然だ。

改めて散髪にかかるコストを計算しなおすと、美容院で平均して50日に一度、5,000円を支払って散髪するとしても、1日あたりのコストは100円に過ぎない。
髪は、洋服と違って、脱いだり着たりできるものではないし、それによって多少なりとも毎日気持ちよく過ごすことができるのであれば、1日100円程度は許容すべき出費なのかもしれないと、改めて思い直した。
また髪が伸びたら美容院に行こうと思う。

QBハウス店舗の機能性

QBハウスの店舗は、合理化が徹底していて機能性を高める工夫がなされており、感心した。

  • 料金は自動販売機でチケットを買う仕組みになっており、店員がレジに立たなくても済むうえ、会計管理も容易。支払いは千円札のみで、小銭も使えなければ、両替もできない。(千円札のほかに電子マネーEdyも使える。)
  • 順番待ちの公平性に店側が注意を払わなくてもいいように、客用のベンチの足元には順番を示す矢印が描かれているのに加えて、ベンチの前ギリギリの位置にバーが設置してあるため、後から来た人が横入りしにくいようになっている。
  • 足元の壁に吸引口が開いていて、床に落ちた髪を近くに掃き集めてから壁のスイッチを押すと、掃除機のように髪を吸い取って片付けることができる。これによって、塵取りを使って、ゴミ捨て場まで往復する時間が節約できる。
  • カット専業なので、シャンプーについては設備そのものが存在しない。
  • シャンプーがない代わりに、髪を切った後は、専用の掃除機のようなもので、髪を吸い取るので、時間がかからない。また、その装置も、鏡台から直接ホースが伸びているため、充電不足で使えなかったりゴミ袋が満杯になる心配がない。これは、美容院でシャンプーをしてもらうよりも、髪がよく取れているように思えた。(これは、QBハウスの切り方が大胆なので、一定以上細かい髪が発生しないためかもしれない。)
  • 鏡台の鏡が扉になっていて、その裏にハンガーや荷物置き場のスペースがある。美容院では、荷物置き場がカウンターの裏などにあって預かり札をやりとりすることが多いが、その手間がかからない。
  • 少なくとも僕が行った店舗では、天井灯も、客の鏡を照らす明かりも、すべて同じ種類の蛍光灯が使われていて、予備の蛍光灯を何種類もストックしておく必要がないように工夫されていた。