新たな下層階級−民間企業ノンキャリア−の登場
11/27のエントリー「低付加価値、低賃金労働を誰が担うのか」で戦後の日本は女性にこれを押し付けてきたが、男女雇用機会均等法でそれが代わってきたと述べた。これが2極化とどう関係するかについてもう少し解説する。
戦後の民間企業のモデル | 公務員のモデル |
庶務や現業が膨大にあり、それを管理、監督する人間と組織自体を経営するのは少数でいいというのは民間も官庁も同じである。民間企業は大卒であっても若い頃は庶務や現業を経験させるのが通例*1である。しかし庶務や現業部門で必要な人間を勘定して男性社員を採用してしまうと、将来彼らにあてがう管理職ポストが不足し、昇進を遅らせるか、選抜を厳しくする必要が出てくる。そうなると社員のモチベーションが低下するので、庶務や現業を担う人材として女性を採用した。女性は結婚退社してくれるので、将来の管理職ポストの心配をしなくて済む。女性を調整弁にすることによって男性社員が等しく課長ぐらいまでは昇進できるモデルが完成したのである。このシステムは終身雇用、年功序列賃金のサブシステムとして戦後の民間企業に多く見られた。
一方公務員は採用時点で性差関係なく試験で幹部候補生と庶務や現業を担当する下級官吏に分けられ、幹部候補生は庶務や現業を経験することなく超スピードで昇進し、30代になれば50代の下級官吏を従えるポディションに就く制度となっている。
90年代、民間企業は従前のモデルを見直さざるを得なくなった。男女雇用機会均等法の施行、その後のバブル崩壊。企業は従来女性が担ってきた庶務や現業部門を見直さざるを得なくなってきた。アウトソーシングや非正規雇用への置き換えも進んだが、どうしても正社員でなければならない職種も多く、そのような職種においては人件費の安い正社員が採用された。いわゆる民間企業ノンキャリアである。
民間企業も公務員制度に近い形態を取らざるを得なくなった*2のでる。彼らは能力の発揮より安い賃金でマニュアル通りの労働を期待されているいわばロボットである。
しかし雇用の形態は大きく変化しても、男性が女性より稼がないといかない社会構造は変化していない。一生賃金が上昇しない正社員の登場と、この層の急激な拡大は社会の2極化を加速させた。彼らが40台に突入する数年後、この格差はより深刻なものになるであろう。