Marvin Gaye/I Want You


そんな質問を私にする人はまずいないと思いますが、マーヴィン・ゲイの一番好きなアルバムは?と聞かれたなら迷わず I WANT YOU だと答えます(さらに聞かれてもいないのに二番目に好きなアルバムとして Live at the London Palladium を挙げる事でしょう)
マーヴィン・ゲイWhat's Going on で人類愛的なヴィジョンを示し、モータウンのヒット曲量産システムから一歩突き抜けて歌手からアーティストとなったわけですが、その後のアルバムはどれもとてもパーソナルなテーマを歌っているように思えます映画のサウンドトラックですら私にはそう聞こえます)
人類愛とはいささかかけ離れた、アーティストの頭の中のお花畑というか妄想というか性愛のファンタスマゴリアをそのまま曲にしたような I WANT YOU は、どの曲も多重録音で自分の歌声にコーラスやナレーションやらを重ねて(さらに女性の喘ぎ声も)、上にも下にも右にも左にも、もちろん真ん中にもマーヴィン・ゲイが偏在しています。「私が音楽に求めるのは悲しいリフレインだけだ」みたいなことをマーヴィン・ゲイは言ったそうですが、ここで示されているのは妄執というか偏執狂的な世界ではありますが、悲しいリフレインではありません。救いも出口もありませんが、けっして悲しいリフレインではありません。
このアルバムでは数曲のインストゥルメントと間つなぎの小品が収録されていますが、その潔さが素晴らしく本当に素敵なアルバムとなっています(“I wanna be where you are”なんてたった数十秒で終わらせるのがもったいない名曲です)

I WANT YOU

I WANT YOU

Live at the London Palladium

Live at the London Palladium

What's Going on

What's Going on

Trouble Man

Trouble Man