裸眼3Dディスプレイの仕組み4

前回、裸眼3Dディスプレイの本質について簡単に説明してみた。
まとめるとポイントは2つ。ひとつは、裸眼3Dディスプレイは、水平垂直どの方向へ向かう光なのかを区別した上で、空間中を伝播する光を再現する装置だ、という点。もうひとつは、裸眼3Dディスプレイが表示を行うプロセスは、カメラが空間中を伝播している光を、どの方向から飛んできた光なのかを区別して、データとして取り込むプロセスの逆になっている、という点。

空間中を伝播する光を再現する装置

ひとつめのポイントについてもう少し考えてみる。
そもそも人はどうして「見る」ことができるのか。これは空間中を飛んできた光(というか光線)を目で受け止めて、それを画像として認識しているから。つまり、空間中を飛んで伝播している光には、見えている風景の画像としての情報が全て乗っている、ということ。
ということは、この空間中を伝播してきた光の情報を全て記録して、それを別の場所で再生してやると、もとの風景とまったく同じものが再現できることになる。この壮大な仕組みの「再生」部分を担当するのが、裸眼3Dディスプレイだ。

ここでインテグラル方式を例にすると、「画素(複数画素+レンズの1セット)がいくつあるか」が再生する画像の解像度に相当し、「視点数がいくつあるか」が再生できる光の方向の数に相当する。よりリアルな、現実に近い光を再現するには、視点数をより多くして、解像度もより大きくしてやればいい。この結果実現されるのが、以前記事にした、網膜上の視差まで再現する裸眼3Dディスプレイだ。

ところが、実際ディスプレイを作ろうと思ったら、デバイスの性能上、解像度も視点数も無限に大きくすることはできない。なので、空間中を伝播する光を適当に間引いて再生することになる。画素を減らすと解像度が間引かれ、視点数を減らすと方向が間引かれる。間引かれたぶんだけ、再生される光のクオリティは低くなっていき、画像がボケたりぶれたり、立体に見える位置が減ったりする。解像度を1280x720、視点数を水平9視点に間引いているのが、この間の東芝の裸眼3Dテレビだ。
さらに視点数をもっと間引いて1つだけにしてしまったものが通常の2Dディスプレイ、と言える。視点数がひとつなので、どの方向から見ても同じ光が再生されている=同じ画像が見える。このことから、裸眼3Dディスプレイで2D表示を行いたくなったら、全ての方向に同じ画像を表示してやれば良いことが分かる。

まとめ

裸眼3Dディスプレイの本質が、空間中を伝播する光の再生であることを説明した。裸眼3Dディスプレイがやろうとしていることが何なのかと、実現されているディスプレイとの関係を説明できたと思う。
次回は2つめのポイントについて説明してみる。