日産生命の破綻

97年4月日産生命が破綻した。破綻の原因は超低金利である。保険料の運用利回りの見込みを予定利率というが、バブル時代の予定利率は5%から6%で契約されている。それを上回る利率で運用できなければ逆ザヤになる。前代未聞の超低金利で逆ザヤが長期間続き、生保の体力は限界に達したのである。保険業法で予定利率の変更は認められておらず、逆ザヤの累積損は低金利が続くかぎり拡大し続ける。

預金金利がゼロ金利と言われるほど低くなったことで、銀行は不良債権の処理を行う業務利益を得ることができた反面、生保の生命を奪うことになった。後年(07年)日銀は家計が失った金利収入が91年から04年までの14年間で331兆円に上ったと報告している。また株式や不動産にも運用していた生保にとって、バブル崩壊による資産デフレの影響も甚大だった。

日産生命の社長は4年前から債務超過であり、その事実はその都度大蔵省に報告していたと明かした。大蔵省は日産生命が高利回りで客を勧誘し、資金集めをしていたことも承知していた。それにもかかわらず何の措置もとらず国民が契約するのを放置していた。

挙句、破綻が現実化すると、すべてを契約者の自己責任に帰し、保険契約、年金契約の最大7割をカットした。銀行預金は全額保証されたのにである。大蔵省は銀行の破綻と同じく生保の破綻でも監督責任は一切とらなかった。金融ビッグバンは大蔵省の責任回避の理由になっただけで、国民には何のプラスにもならなかったのである。

破綻した生保は外資の軍門に降った。国内生保には買収・合併に乗り出さないよう大蔵省から指示があったという。結果、日産生命は、あおば生命(プルデンシャル生命)、東邦生命はAIGエジソン生命、第百生命はマニュアルライフ、大正生命はあざみ生命(大和生命とプルデンシャル・フィナンシャルジャパン生命)、千代田生命はAIGスター生命、協栄生命はジブラルタ生命東京生命はT&Dフィナンシャル生命となった。

03年保険業法が改正され、予定利率の変更が認められるようになった。しかし、余りにも遅すぎた。破綻生保を買い取った外資が、その恩恵を受けるのは間違いないのだが----

米国は、バブル期にはバブル益を背景に米国債を買わせ、バブル崩壊後には低金利政策を仕掛ける。すると不況下で行き場を失ったジャパン・マネーは長期金利が5%も高い米国に流れ続けるというわけである。


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