高校生のための読書ガイド

という名の、おれの読書感想にっき。小並感/ネタバレ有で

クズがみるみるそれなりになる「カマタリさん式」モテ入門

うーんものすごく素敵だった。外にいるのにおかしくて笑ってしまうので、人の目を気にしてときどき本を畳んで休憩しながら読んだ。なんか今回ギャグがツボにはまりまくった。しかしうまいよなあ。『ネルリ』もそういうところあると思うけれど、「クズ」なんて言ってるのは照れ隠しみたいなもんで、主人公は立派な男子であり、冷静に見れば「冴えないボク」なんかではない。何かの巡り合わせでラノベ的状況におかれた主人公が、その中で男を見せるような、そんな話なので、読んでいると女の子を可愛いと思うよりも、その主人公の方に惚れてしまうのは、前作と一緒だ。ひどく大雑把に見れば、主人公が偶然の僥倖で可愛い女の子と知り合うという話なのはもちろんそうなのだけど、そこにはたらいている力をよく観察してみると、ラノベという世界の力はほんの一押しであり、その中にあって行動しているタイチの正しさこそ主たるものなのだということが分かる。だからおれたちはこの話を読むとき、主人公に自分を重ね合わせることで一時の安息を得るような読み方をしない。主人公のタイチはおれたちのクズさとはもはや相容れない人物であり、彼が心の中のシド・ヴィシャスに相談したように、「タイチならどうする?」と問いかけることで正しく生きる指針になるような、そういう格好いい人物である。そして、なにより、恋愛小説として素敵です。