自分の居場所 2004.10.26

Mongol life

モンゴルには住居をどんどん変えて暮らしている人々がいます。移動式住居のゲル(中国語でパオ)で生活している人々です。ちなみにゲルにはモンゴル型とトルコ型の2種類あります。
ゲルは解体したら、台車に載せて馬や人力で運ぶことができます。部材は軽い材料で作られているのです。ゲルの屋根はフェルトでできています。布の天幕ですね。天頂には採光と換気用の穴が設けられています。このゲルのおかげでモンゴルの人々は定住せず、居場所を変えながら生活できるのですね。
さて、生活の場を移動させて暮らしている彼らの意識に「家」という概念は存在しないのでしょうか?本来、家は動かないものです。そして土地の伝統や風土と結びつき精神的な拠り所になり得るものですね。
ちょっと仮定してみましょう。「ゲルは家ではなく、一つの部屋だ」と思ったらどうでしょうか。そして、モンゴルの人々の「家」とは、草原や高原、台地です。ゲルで移動する範囲全体が一つの家。その家の中に、移動可能な部屋=ゲルが点在している。
この発想が意外に本当に思える事実が一つあります。それはモンゴル人は古来から地面を掘ったり耕したりすることに嫌悪感を持っていることです。掘ったり耕したりするのは、神聖な土地を傷つけると信じているのですね。遊牧のための草原を大切にし、大地を「家」のように思っているのだと思います。