構築すること 2004.11.13

洞窟

「構築すること」に対して、岩山にくり抜かれた洞窟を考えてみます。
まず洞窟を建築物だと思ってみましょう。最初に思い浮かぶ特徴は外観がないことです。外観がないということは窓や屋根が存在しないということですね。建築にとって窓や屋根はちょっと特別な意味をもったところですから、そもそも洞窟は「建築ではない」と考えたくなります。それから洞窟には内部空間しかなく、それは無作為な連続空間であることが多いいですね。「構築すること」によってできる大きな特徴は、空間に意図的な区切りが生まれている点です。そして分節された空間が相互に関係性をもって一つの形態=建築を構成します。ここには「時間」も関係してくるでしょう。つまり「構築すること」は時間と空間を分節することを意味していると考えていいかも知れません。そうだとすれば、洞窟の持つ自然発生的で「無作為」な連続空間は「構築すること」の対極にあります。
これはエーゲ海に浮かぶ島シチリアにある洞窟です。洞窟は石切り場だった場所にあり、現在は観光地となっています。ガイドにも載っている有名な洞窟で、かつては牢屋に使用されていたそうです。内部は大きく、縦長の大空間が奥まで続いています。この洞窟で特徴的なのが音響で、中を歩くと人の声が全体に響き渡ってすごいうるささです。洞窟の中でディオニソスが囚人のつぶやきを聴き取って身の危険を察知したという伝説が残っています。