住居表示とパブリックの意識 2004.11.30

London AtoZ

ロンドン中心部の地図です。現地で一番普及している AtoZ です。面白いことに地図には道と広場しか書いてありません。しかし、実際これを使えばロンドンのほとんどの場所を訪ねることができます。実用的で大変便利な地図なんですね。
道と広場しか書いてない地図で間違いなく行きたい場所へ行けるのには理由があります。それはロンドンの住居表示が原因ですね。ロンドンもそうですが、欧米では道や広場に必ず名前がついています。そして現地に行くと見やすいポイントに道と広場のネームプレートがたいてい取り付けられています。まちを歩いている時、道や広場の名前を書いたネームプレートを一度も見ないことはまずあり得ませんね。
特にイギリスは公共スペースのサイン計画がかなりしっかりしているようです。道の種類にはいろいろあって大きい順に、ストリート、ロード、テラス、ガーデンズ、ミューズなどがあり、また広場には、スクエア、サーカス、クレセントなどがありますね。こうした名称は、その道や広場がどういう所に位置しているか、また丸や四角などの形状に応じて付けられています。例えば表通りの四角い広場はスクエア、裏通りの丸い広場はクレセントなどですね。ロンドンではこうした道と広場の名前が必ず表示されているので、地図さえ持っていれば現在位置を確認することは非常に簡単です。
ところで、リ−ジェント・ストリートやラッセル・スクエアなどの名前には由来があります。通常は所有者である貴族や地主の姓名が道や広場の名前になっています。または彼らの故郷の地名などですね。それから稀に所有者ではなく、その地域の開発に尽力した人物の名前が付けられているところもあるようです。
いずれにしても、ロンドンは個人の姓名が道と広場の名前になっているのです。これは何を意味するのでしょうか。それは、ロンドンという都市が土地の所有者によって開発整備されたことを意味しているのです。ロンドンには古くから大地主がいて、その人の意志によりそれぞれ独自のやりかたで道や広場がつくられていった歴史があります。有名な例では、リ−ジェント・ストリートが挙げられますね。この大通りの名称はここの大地主であったリ−ジェント皇太子の名からとられたものです。ちなみに、皇太子の御用建築家としてこの地域の都市計画を実行し、多くの建築物をデザインしたのがジョン・ナッシュです。