ピラネージ

piranesi

ピラネージ 
Giovanni Battista Piranesi (1720-1778)

ピラネージはイタリアの建築画家です。豊かなイマジネーションと抜群の絵のうまさによって、ほとんど実作に恵まれなかったにもかかわらず建築界の巨匠でありつづけています。

彼のドローイングは主として銅版画です。ピラネージの想像力は並外れて強く、古代建造物の遺跡から出土した僅かな断片から、本当にそうであったと思わせるような復元図を描く事ができたのです。発掘調査をしても分からなかった部分を自らの想像力で補ったわけですね。そうした意味で、版画の中には彼のオリジナリティーが溢れています。

ピラネージが生きた時代はローマの発掘がまだ発展途上にありました。したがって、みんなが憧れる古代ローマの都市風景は依然として謎に包まれていたのです。そんな中、ピラネージの描き出した壮大な古代ローマの都市情景は万人を感動させたのですね。

しかし一方で、ヴィンケルマンのような優秀な考古学者からは、しばしばその不正確さを非難されたようです。想像による古代建築物の復元図は学問的裏付けが希薄だったからですね。

ところで、ピラネージを建築家と同列に扱うのはなぜでしょうか。それは彼の残した建築は絵のかたちをとって、後世の建築家に多大の影響を与えたからです。実際、ピラネージ自身、豊かな想像力による建築画は、実作よりも意義が大きいと考えていたことが記録に残っています。ピラネージ以降、実作よりも計画案で名を残した建築家は幾人も存在します。

彼は実に多くの作品を残しました。生活の糧にするため、観光客用の絵はがきを描いていたこともあった様です。それらは強いインパクトを持って、他の建築家を刺激しました。グランドツアーでローマを訪れた建築家の卵たちにも彼の絵は建築の偉大さや面白さを教えました。イギリスやフランスからやってくる意欲的で裕福な若い建築家たちは、ピラネージの「古代ローマ」に刺激され、強いインスピレーションを受けたのです。