林由美香、幻のビデオ作品……?

最初に耳よりな情報……林由美香の遺作となった『ミスピーチ 巨乳は桃の甘み』が、上野オークラ劇場で12月9日(金)より15日(木)まで上映されるそうだ。林由美香特集として『人妻不倫痴態 −女医・弁護士・教師−』と『濃厚不倫 とられた女』も上映されるとのこと。なお、上の写真は、上野オークラ劇場のブログより。

さて。

9月に入ってすぐ、深夜のTOHOシネマズ 六本木ヒルズで『監督失格』を見た。
あの映画館は真夜中に行くと、駐車料金がタダになるサービスがあるので、クルマ族としては非常に助かる。

あの作品の公開に先立って、ポレポレ東中野平野勝之監督『北海道自転車3部作』のオールナイトイベントがあったりして、なかなか盛り上がっていたのを思い出す。
私としてはしっかりと“予習”してから『監督失格』を観たかったので、ポレポレに行ったことは言うまでもない。とはいえ『白 THE WHITE』以外の2作品は何回か見たことがあったのだけれども。

監督失格』については、「素晴らしい作品である」という以外、特に言うことが見つからない。
林由美香、平野監督ともども、肉体的にも精神的にも丸ハダカになっている作品なので、見る者の内面へストレートにぐぐっと入り込み、色々なことを訴えかけて来る。
一方、由美香ママの素の顔もさらけ出されており、とにかく嘘や偽り、飾り気のない、いわゆる「人間が描かれている」作品という印象。

ところで、林由美香で思い出したのが、仕事で知り合った某お方の言葉である。
仮にA氏としておこう。
氏のたまわく「オレは林由美香の幻のビデオを見たことがある」

ぬ〜。

マユにツバを付けながら聞いてみると、実のところさほどマユツバでもなさそうな気配が……した。

以下、氏の話である。

A氏は現在50代後半で、1980年代には某大手食品会社の営業マンとして、都内を車で回っていた。

ある日の昼どき、六本木エリアの某所、タクシーや営業関係の車がところどころに停まって休憩したりサボったりする場所で、コンビニおにぎりをパクついていた。

そこは、営業マンがタクシードライバーに首都高の高速券を売ったり、営業マン同士でお中元やお歳暮のビール券を売買し合ったり、なかなかエグい場所だったらしい。

A氏がラジオを聴きながらむしゃむしゃやっていたら、車のウィンドウをトントンと叩く奴がいる。
窓の外では、柳沢慎吾みたいな細オモテの青年が微笑んでいた。

「あの、裏ビデオとか興味ないっすか?」
柳沢青年はニコニコしながらそう言うと、真っ白なケースに収められたVHSテープをA氏に見せた。
氏は興味ないと言って即座に断った。

それから数日後。
同じ場所で仕事をサボっていると、またその青年に遭遇した。

「これ、すごいビデオっすよ!」
「……」
「信じてくださいよ」
「信じるも信じないも、興味ないの、俺は」
A氏がそう言って断っても、青年は引き下がらなかった。

「本当に本物の裏ビデなんです。何なら、ほら、あそこに停まってるワンボックスの中で見てもらってもイイですから」
青年はそう言うと、A氏の営業車から少し離れた所に停まっている車を指差した。
うっとおしいと思いつつも、どこか愛嬌があり、必死に売り込みをかける青年に対して、同じ営業マンとして(?)憎からざる感情を抱いたA氏だったらしい。

「でも、俺、カネないし」
「1本千円でイイっす」
「千円もない」
「銀行ありますよ、すぐ近くに」
「何なのキミ……(笑)」
「ホントにホンモノなんです。絶対ソンはさせませんから」
「う〜ん、何かウソくせえんだよな〜」
「だから試しに見てくださいよ、あの車ん中で」

結局、A氏はワンボックスカーに行き、青年に騙されたつもりで、実際にビデオを見てみることにした。
車内には14インチのテレビとビデオデッキが備え付けられており、何と車外に置いてあった小さいエンジン式の電源器から電源が引き込まれていた。テレビの前には、お客様用なのだろう、ちゃんと座布団が敷いてあった。
ノートPCで手軽にDVDを見ることができる今とは、だいぶ事情が異なるようだ。

「じゃ、まずこのビデオから……」といって青年が見せてくれたビデオ。
それは、まさに裏ビデ、修正やボカシのない、正真正銘ホンモノの裏ビデオだった。
当時は、まだ今のように裏ものが気軽にネットで試聴できるような環境はなかった。っていうか、インターネット自体がまったく世の中に普及していなかったわけで。

A氏は目の前で展開されるエロな映像にエキサイト、最終的には柳沢青年に5千円を手渡した(笑)。

その日、A氏は会社に戻らずそのまま直帰、家で一気に5本の裏ビデを鑑賞した。
素人が撮ったような作品ばかりだったが、逆に粗い作りの手作り感が表ものとは違うヤバさを醸し出していて、異様にコーフンしたそう。

で、その中の1本に美人局(つつもたせ)ものがあった。
物語はJR大森駅周辺を歩くシーンから始まり、その後ホテルに移動する。
当時の大森にはソープランドやラブホテルが結構あったそう。今でも少しは残ってるらしいが。

主役は10代後半から20代前半ぐらいの、可愛い顔をしたきゃしゃな女の子。
対する男は小太りでさほど背も高くはなく、とにかく冴えない中年野郎で、ビデオの中での役の設定は“40才、証券会社課長”だった。

中年男は女の子に向かって「なめさせてください」と頼み込む。
それに対し、女の子は困ったような怒ったような顔を浮かべる。口をとがらせ上目遣いで相手を睨むような仕草をする。それが何とも可愛い。
中年男は、女の子がスッポンポンになると、股間と顔とを見比べながら「ムスメ(股間)は君とそっくりだねえ」というセリフを口にする。

そこへ女の子の彼氏とおぼしき、20代前半ぐらいの男が乱入。
彼氏は「立場ねえんだよな〜」という奇妙なセリフを口にしながら中年男を威嚇し、また脅し……。

という作品が、くだんの青年から買った5本のビデオの中にあったそう。
とにかく女の子が可愛くて、それにしてはエゲツないことをやるので(笑)、強烈に印象に残っていたとはA氏の弁。5本中、その作品だけは何回も何回も鑑賞したらしい。

それから数年が経ち、A氏はスポーツ新聞で人気AV女優だという女の子の写真を目にする。
「あっ、この子……!」
A氏は林由美香の写真を見て、すぐにピンと来た。
「あの裏ビデに出てた子、可愛かったから、やっぱりメジャーになったのか」と感慨にふけることしきり。

A氏は特にAVやピンク映画を見ることはなかったが、林由美香がメディアに登場するたび『裏ビデに出ていたあの可愛い子』と思い出していたという。

それから年月は下り、21世紀となり……。
2005年の6月には例の悲報がメディアを騒がせることとなる。

A氏ももちろん林由美香の逝去を知ることになるのだが、色々な報道を目にしているうち、ある疑問にぶち当たる。

それは例の裏ビデを入手した時期と、メディアで取りざたされている林由美香のデビュー時期とが微妙に異なるということ。

A氏が裏ビデを買ったのは、1987年の秋から冬にかけて。
正確な月日は覚えていないのだけれども、おおよその時期としてはその頃だった。
88年春から海外駐在になったため、それ以降ということはない。
また、海外駐在直前まで住んでいたアパートで、寒い中そのビデオを見た記憶が鮮明に残っている。

しかしだ。

メディアの言う林由美香デビューは、1989年となっていて、ビデオを入手した時期よりも微妙にずれていた。
ちなみに、現在のウィキペディアによれば、林由美香のデビューは1989年5月となっている。

とすると、あの裏ビデは林由美香の正式(?)デビュー前に撮られた作品なのか……?
あのビデオの内容やクオリティからすると、たとえモザイクをかけたとしても、表ビデオとして正規のルートで販売するにはキビしいはず。
よって、あれは恐らく林由美香のデビュー前、密かに撮影された幻のビデオだ……というのがA氏の見解である。

う〜む……。

もちろん一番手っ取り早いのは、そのビデオの現物を検証することなのだろうけれども、A氏によれば「捨ててはいないんだけど、もう大昔のビデオだし、どこにあるかわからない」とのこと。

いずれにせよ、A氏がビデオを手に入れた時期と、林由美香のデビュー時期との間には明らかな空白があるわけで、果たしてくだんの裏ビデがデビュー前に撮られた幻のビデオなのか、それとも表ものビデオとしてもフツーに売られていた作品なのか……謎ではある。

ま、ここはひとつ「あれは幻のビデオだった」と勝手に思っておいた方が、夢はあるのだけれども(笑)。

いや、でもやっぱり気になる……。

とまれ『ミスピーチ』見に行こっと。

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