平成中村座の『忠臣蔵』Aプロ・Bプロ

kenboutei2008-10-05

久しぶりの浅草での平成中村座。テントの色が、明るくなっていた。
今回は、仁左衛門を招いての、仮名手本忠臣蔵。AからDまで4公演も用意、相変わらず商売上手の中村屋
今日は、AプロとBプロを観る。
Aプロは、大序、三段目、四段目。勘三郎の判官、橋之助の師直、孝太郎の顔世、勘太郎の若狭之助と勘平、七之助のおかる、そして仁左衛門の由良助。
橋之助の師直が、大きくて良かった。最初の人形から戻る動きや、顔の表情などに古怪な雰囲気があり、最近の師直役者としては、とても新鮮で面白かった。台詞廻しにも老獪さを漂わせていたのは、意外の上出来。
勘三郎の判官は、大序はそれほどでもなく、四段目が充実。通さん場は、平成中村座のような小さな小屋では、とりわけ緊張感が高まり、独特の雰囲気があった。
そして、駆け付けてくる由良助で、一気に空気が変わる。さすが仁左衛門。門外での、花道への引っ込みも、独壇場。
孝太郎の顔世は初めて観るが、若妻の色気があった。
三段目で、勘平とおかるの裏門を見せるが、平凡。
結局、Aプロは、勘三郎より橋之助仁左衛門の印象が強かった。
冒頭の口上人形の扱いがお粗末。(口上自体も、役者名の連呼や「えっへん」の回数を省略していた。)
Bプロは、五、六、七と十一段目。勘三郎の勘平、孝太郎のおかる、橋之助の定九郎と平右衛門、仁左衛門の由良助。
勘三郎の勘平、五段目は何故かきっぱりとした型を作らない。決まるところでちょっと流すような感じで、物足りなかった。中村座の小屋を意識してのものだったのだろうか。火縄をくるくる廻す仕種も、少しぎこちなかった。
孝太郎のおかるが意外な健闘。特に七段目が良かった。キャンキャンしているのは相変わらずだが、平右衛門の妹という感じがして、可愛い部分があった。兄者人の橋之助が良かったのもあるだろう。
孝太郎、二階から簪を落とすのに失敗、ツケの後、無理矢理引っこ抜いて落としていた。
仁左衛門の由良助は、ちょっと遊蕩気分に欠けていたが、最後の九太夫への打擲しながらの台詞が立派。
六段目は平凡以下。小三郎のおかや、歌女之丞の一文字屋お才では、全く芝居にならない。歌舞伎座クラスの料金で、この配役はないだろう。(特におかやは酷かった。)
それでも、Aプロよりは面白い、Bプロではあった。
しかし、平成中村座での忠臣蔵は、小屋の雰囲気と相俟って、さぞ良いだろうなと思っていたのだが、あまり小屋の効果はなかったような気がして残念であった。
 
テントの周辺は、浅草奥山も従前以上に充実。AプロとBプロの間の散策には持ってこいだったが、あまりに時間が開き過ぎていたので、結局近くのプロントでコーヒーを飲んでいた。その一方で、芝居の幕間の時間は短く、ゆっくり食事ができない、不便な時間割。