『娘と私』

kenboutei2009-11-04

神保町シアターで、『娘と私』を観る。堀川弘通監督、昭和37年。
今回の神保町シアターのテーマは、「日本文芸散歩」。文学が原作の映画特集。特に作家が前面に出ている、私小説の映画化が中心のようだが、自分の経験からすると、この手の映画は、往々にして凡作が多いような気がする。
今日の『娘と私』も同様で、これは獅子文六の、フランス人女性との間に生まれた一人娘の成長を描いた自伝なのだが、単に時系列的にエピソードが綴られるだけで、映画的興奮からはほど遠かった。
それでもわざわざ観に行ったのは、原節子と星由里子の共演に惹かれたからである。
特に原節子は、引退直前の映画(ラスト出演『忠臣蔵』の前の作品)というだけでも、興味深いものがあった。山村聡の後妻役で、常に控えめであるのだが、山村聡と星由里子の実の親子に対して、後妻としての疎外感を持っており、その屈折ぶりが良く出ていた。ある場面で「あたしみたいなバカな女」という台詞があり、それを暗く吐き捨てるように言うのが、原節子のそれまでのイメージとは異なる、リアルな暗さがあって、ここに彼女の引退の一つの理由が隠されているような気がした。
一方、星由里子の方は、極めて普通の女の子で、見方によっては、不細工にも見えてしまったのは、何故だろう。
星由里子のフィアンセで登場する山崎努は、役柄としての誠実なエリート外交官にはとても見えず、山村聡とのキャッチボールのシーンでは、何かを企んでいるのではないかと、ハラハラしてしまった。
原節子が病死し、山村聡が海辺に突っ伏して嗚咽する場面が、印象的であった。
山村聡の最初のフランス人妻に、フランソワーズ・モレシャン。女優もやっていたとは知らなかった。