TREE と聞けば,大多数の人はそのまま「木」を思い浮かべるだろう。
僕は「系統樹」を思い浮かべる。例えば,生物の系譜を示した樹形図である。
あるいは,総説ばかりを掲載した雑誌「TREE: Trends of Ecology and Evolution」か。
そういう意味で,TREE という単語そのものに,僕はとても愛着を持っている。
今日紹介する TREE はそのどれでもない。
世界的なフラワーアーティストの柿崎順一さんによる芸術作品「TREE」である。
先日,琴似のコンカリーニョで開催された札幌国際舞踏フェスティバル 2017 で,フィンランドのダンサー SU-EN さんと柿崎順一さんとの共演作品で公開された。
札幌国際舞踏フェスティバル 2017 - 2017/02/11-02/12
http://sapporo-butoh.com/#firstPage
残念ながら僕は観に行くことはできなかったが,作品自体は舞踏を引き立てる芸術という位置づけだったのだろうか。
あるいは,芸術と舞踏のコラボレーションとして,見どころの一つだったかもしれない。
いずれにしてもたった 25 分間のお披露目だったらしい。
製作者である世界的なフラワーアティストであるところの柿崎順一さんがそう言っていた。
そう,僕と柿崎さんとは友人と呼べる間柄なのだ。
誇らしいのでもう一度言おう。
僕と柿崎さんとは友人同士である。
ただ,柿崎さんが僕のことをどう思っているかはわからない。
これ以上言うと柿崎さんの気分を害するかもしれないので三度は言わない。
さて,「TREE」である。
ヤマグワの木に赤いチューリップを吊るしたシンプルな作品なのだが,これが札幌の冬によく映え,美しい。
この時期に大量のチューリップを入荷するのもたいへんだったらしい。
赤い服を着たダンサーとの共演もさぞかし見事だったことだろう。
しかし,公演時間はたった 25 分間だけ。それではもったいない,ということでその後どこかに展示できないかと相談をいただいた。僕にできることならと,いくつか心当たりを当たったものの,ことごとく上手くいかなかったどころか,ある施設のエラいヒトにはこっぴどく叱られてしまった。悲しいかな,結局何の役にも立たなかった。
それでも講演の翌日,北大近くのゲストハウス UNTAPPED HOSTEL にて,柿崎さんの「TREE」の展示を手伝う機会に恵まれた。こんなに楽しそうな話はなかなかない。一も二もなくやらせていただくことに。
そして完成したのがこちらの作品。
冬に赤いチューリップというだけで目を引く。
裏の病院の人たちも,宿泊の観光客も,物珍しそうに写真を撮っていた。
柿崎さんとしてはこれを雪解けまで展示して,枯れゆく様を観てほしいのだそうだ。
柿崎さんが長年に渡って取り組んでいる「生と死」をテーマにした作品の一環なのだそうだ。
やはり面白い。非常に面白い。僕がいつも相手にしている生態系とも通ずるところがある。
それなのに時々,何を言っているのかわからない。そこがいい。
柿崎さんが発行された作品集「NEW LIFE」もいただいた。
色鮮やかで衝撃的。異様で美しい作品が並ぶ。ひと目で惹きつけられる。
「プラハの死体」
「肉欲」
「泣くために生まれた白痴」
「黒蝶と踊る人」
作品名も異様である。
そんな柿崎さんと連れ立って歩いたすすきのの夜は,なにもかもが新しかった。
20 代の最後を飾るにふさわしい,新しい夜だった。
今作「TREE」は,今も UNTAPPED HOSTEL にて見ることができる。
http://untappedhostel.com/jpn/about.php
興味のある方は,是非。
見聞読考録 2017/02/17