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見聞読考録

2018-03-08

第 65 回日本生態学会

口頭発表のスライド提出の〆切は,昨晩 23:59 までだった。

あんなに直前までかかるとは,思いもよらなかった。舐めてた。危ない危ない。


それはそうと,今年の生態学会は私の住む札幌で開催される。

いつも良くしてくれている研究者友達がたくさん来るので,今からとても楽しみである。


学会の最終日,3 月 18 日には一般市民向けの公開シンポジウムもあるので,興味のある方は行ってみると良いだろう。

参加費は無料。にもかかわらず,そのへんの有料の講演会なんかよりもずっと楽しい話が聞けるはずだ。

生態学会に集う研究者は,総じてとてもレベルが高い。研究内容も人柄も面白い人達が多い。

そんな面白い人達がタダで話してくれるというのだから,聴きに行かない手はない。そうでしょう?

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ちなみに公開シンポジウムのポスターに使われている写真は,私が撮影したものだ。

スピッツベルゲン島の景色は,やはり絵になる。


そして,どこを切り取ってもかっこいいので,誰でも良い写真が撮れる。


見聞読考録 2018/03/08

2017-12-22

ArCS 通信

お世話になっている ArCS 北極域研究推進プロジェクトの公式ブログに,僕の書いた活動報告が掲載された。

8 月に書いたものなので、いろいろと違和感がある。まぁでも帰国前に掲載されて良かったということにしよう。


スピッツベルゲン島での野外調査 - ArCS 通信,若手研究者海外派遣活動報告

Research in Spitsbergen Island, Norway - ArCS Blog, Young Researchers Overseas Visit, Activity Reports


なんというか,いまひとつな文章だ。精進あるのみ。


見聞読考録 2017/12/22

2017-10-31

(ほぼ)二徹の週末

分子実験のために訪れていたドイツのズュルト島を後にし,本拠地フローニンゲンに戻ってきた。怒涛の一週間だった。


実験の内容は今夏にスピッツベルゲン島で採集したホンケワタガモの糞中の DNA を抽出するというシンプルなものだったが,糞中から DNA を抽出するというのは,僕にとって未知の領域であった。そして続く失敗の日々。


何しろ何が成功なのかよくわからない。DNA が取れていなかったとき,それは実験のやり方がよくなかったのか,それとも元々のうんこが腐っていて DNA が入っていなかったからなのかがわからない。実に難解で,非常に刺激的だった。


やったことのない実験をするというのは,楽しい。解決策を模索する過程を,謎解きのように楽しむことができる。それは良い。それは良いのだが問題は何と言っても,時間がないことであった。100 以上のサンプルがあって,一週間しかないというのに,失敗している暇などあるはずがない。実験に失敗はつきものなのに,失敗している暇がないとはこれいかに。最初から破綻していたわけだ,本来なら最低でも二週間は欲しいところであった。


でも,ドイツの受入研究者の都合もありどうすることもできず。結果として,土曜の朝から月曜の朝まで,研究所で過ごす羽目になってしまった。


閑散とした週末の研究所の,人っ子一人いなくなった暴風吹き荒れる嵐の夜に,Avicii,The Starting Line,Green Day,Sum 41,Ben Folds Five,The Offspring,Marilyn Manson,Maximum the Hormone,Judy and Mary あたりのテンションの高すぎる音楽を爆音で響かせて,妙に冴えた頭を揺らして,血眼の目を見開いて,無理やりに乗り切った。土曜の 22:00 頃に研究室の学生がふらっと現れたときには,心底驚いた。向こうもびっくりしたようで,お互いにおっきな声を出して飛び跳ねてしまった。


二日連続の徹夜である。何なら金曜の夜も似たようなものであった。過労死という言葉が脳裏に浮かんだ。こんな無茶をしたのはいつぶりだろうか,昔はよくやっていた気もするが。とはいえ,研究所のソファで少し仮眠を取ったのでそこまでの無理はしていない。はず。たぶん。


無理をした反動からか,フローニンゲンへと向かう帰り道から今日の朝に至るまでの 30 時間のうち,およそ 15 時間は寝ていた。それこそ泥のように寝ていた。今回みたいなときには仕方ないとはいえ,長期的に見ていかに徹夜が効率の悪いことかかがよく分かる。


無事にノルマを達成できたから良かったものの,こんな無茶はもう二度としたくないものだ。


ふぁ〜あ。まだ眠い。。


見聞読考録 2017/10/31

2017-09-04

書籍紹介,というタイトルの友人自慢

周りの人たちが続々と本を出版している。

いよいよ凄まじい冊数になってきた。


ナニゴトかっ!

であえ!であえーっ!


ちなみに僕はまだ一冊も読んでいない。

遥か遠方のオランダの地より,指を咥えてヨダレを垂らしているだけである。


唯一,鈴木紀之博士はわざわざオランダにまで自身の著作「すごい進化」送り届けてくださった。

ノリさんありがとう!ノリさん最高!


まだ途中だが,はっきり言って素晴らしい。

書評はいずれ,もう少し落ち着いたらここに書こうと思う。


とにかく。

とても嬉しいので,ひとつずつ紹介していきたい。


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まずは恩師,東北大学の千葉聡教授の本を紹介すべきだろう。

みんな大好き,チバちゃんの書いた一般書である。


歌うカタツムリ - 進化とらせんの物語

千葉聡(著)

岩波書店,2017/06/14


すでに読み終えたという妬ましい友人たちの談によると,後世に残すべき「傑作」とのこと。そりゃそうだろう。想像に難くない。


あれは,岩波書店の科学般誌「科学」2011 年 8 月号の記事だっただろうか。特集として小笠原諸島が取り上げられたときに千葉さんが寄稿したらしい文章を,何気なく読んだことがある。


それはまぎれもなく「傑作」の片鱗を見せるものだった。カタツムリのひしめく常夏の楽園とそこで繰り広げられる美しい進化の物語,そしてそれを襲った人為破壊と外来種の悲劇に,読者は皆,心を握りつぶされるような思いをしたことだろう。


文字の羅列に収まらない色鮮やかな世界に,あれほどまでに惹き込む文章の書き手はそう多くないだろう。思わず千葉さんのページだけを破いて,クリアファイルに保存した。


嗚呼,帰国後に本書「歌うカタツムリ」を読めることが今から待ち遠しい!


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あとは(ほぼ)時系列に沿って紹介していこう。

次は森林総研の川上和人博士の書いた「鳥類学者だからって,鳥が好きだと思うなよ」。


タイトルからしてもうね,どこのプロの物書きだとツッコミを入れたい。

川上さんの本業はあくまでプロの鳥類学者である,今のところは。たぶん。だよね?


鳥類学者だからって,鳥が好きだと思うなよ

川上和人(著)

新潮社,2017/04/18


とはいえ,川上さんとはそれほど深い間柄ではない。研究室の先輩と深い繋がりがあり,彼の口から様々なとんでもエピソードを聞かされたり,前作「鳥類学者,無謀にも恐竜を語る」を読んで,是非とも会ってみたいと思うようになった。言わば,ファンである。それ以降は幸運にも,何度か話す機会に恵まれ,先日もふらっと研究室にお邪魔したが,川上さんが僕をどれほど認識しているのかは定かではない。


こないだ話したあの感じ,僕にも思い当たるフシがある。


川:(ああ,このひと知ってるぞ,えっと誰だっけ,誰だっけ。)

川:(ああ,やばい名前が出てこない,誰?てか誰?!)

川:(ああ,こんなに馴れ馴れしく話されてもう今さら名前聞けないどうしようやばい!)

川:(やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!)

川:(...ま,いっか。)


そう。きっとこんな感じだったに違いない。

もう良いっすそれでも。僕はこれからも勝手にファンやってますんで。


鳥類学者,無謀にも恐竜を語る

川上和人(著)

新潮社,2013/3/16


今ちらっと見てみたら,「鳥類学者,無謀にも恐竜を語る」はもはや前作ではなくなっているではないか。


そもそも島に進化あり

川上和人(著)

技術評論社,2016/07/08


全然知らなかった!ファン失格だぁ!

帰ったら買おう,両方とも買おう。


川上和人 × 高柳明音(SKE48)「鳥類学者という蛮族がいた!知られざるその生態,または鳥たちは誰についていくのか」


ついでにヘンなの見つけた。なんだよもう有名人じゃないか。てか,服装がすでにおしゃれすぎるんだよ。芸能人顔負けだよ。いつでもこんなにバシっと決めてるの,僕の界隈じゃ川上さんか五箇さんくらいじゃなかろうか。


あとは佑磨さんはそのポテンシャルがあると思うなぁ,あれはまだ化ける気がする。時間の問題ではなかろうか,今でも十分過ぎるくらいいろいろと凄いのに恐ろしい話だ。。


伝わるデザインの基本 増補改訂版

高橋佑磨,片山なつ(著)

技術評論社,2016/08/05


それに「鳥類学者,無謀にも恐竜を語る」は恐竜部門で,「鳥類学者だからって,鳥が好きだと思うなよ」は鳥類学部門で,Amazon のランキングのベストセラーを獲得してる!あんたバケモンか!


嗚呼,帰国後に本書「鳥類学者だからって,鳥が好きだと思うなよ」を読めることが今から待ち遠しい!


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男前の前野ウルド浩太郎博士とは,数回お酒を飲み交わした程度のつきあいだが,それでも大切な友人だと主張したい。例え,向こうが僕を覚えていなかったとしても,だ。


忘れられていたらどうしよう。


処女作「孤独なバッタが群れるとき」も非常に面白かったが,今作「バッタを倒しにアフリカへ」はそれを上回るとの話も聞く。とはいえ前野さんも川上さん同様,その奇抜なキャラクターで今や一躍有名人となりつつあるようだ。僕がここで紹介をする必要ももはやないのかもしれない。今作「バッタを倒しにアフリカへ」も,Amazon のランキング(昆虫学部門)でベストセラーに選ばれているし。凄いなぁ。


バッタを倒しにアフリカへ

前野ウルド浩太郎(著)

光文社新書,2017/05/17


孤独なバッタが群れるとき - サバクトビバッタの相変異と大発生(フィールドの生物学)

前野ウルド浩太郎(著)

東海大学出版会,2012/11/11


ご本人の綴る,抱腹絶倒のブログもおすすめ。


砂漠のリアルムシキング

http://d.hatena.ne.jp/otokomaeno/


嗚呼,帰国後に本書「バッタを倒しにアフリカへ」を読めることが今から待ち遠しい!


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修士論文執筆の際に苦楽を共にした戦友,小塚拓矢氏の本も凄い。


怪魚大全

小塚拓矢(著)

扶桑社,2017/08/02


いや,まだ中身を見たわけじゃないけど,絶対凄いに決まっている。何しろ処女作にして「怪物狩り」のあのクオリティだ,今作はどれほどカオスなものになっているのだろう。本を開いた瞬間に爆発するかもしれない。楽しみすぎる。


怪物狩り - 世界“旅的”個人釣行ビジュアルガイドブック

小塚拓矢 (著)

地球丸,2010/08/01


それにしても,小塚さんもすっかり有名人だなぁ。

書籍もものすごいペースで出版しているし,凄いことだ。


ちなみに小塚さんは自身の立ち上げた株式会社 Monster Kiss で,オリジナルのロッドや関連商品も販売している。海外に簡単に持って行ける,いかなる怪魚にも耐えうる,コンパクト&タフがコンセプトであると僕は理解している。買ったことはないが,素晴らしいロッドであることはわかる。そういう人生を送ってきた小塚さんにしか作れない,そういうロッドなのだろうと思う。凄いことだ。


Monster Kiss

http://monsternet.base.ec


嗚呼,帰国後に本書「怪魚大全」を読めることが今から待ち遠しい!


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さらに農研機構の林健太郎博士。僕をオランダ王国,果ては北極圏のスピッツベルゲン島へと誘った張本人である。一昨年からの付き合いだが,なんだかもっとずっと昔からの友人のような気がしている。我ながら馴れ馴れしすぎてもはや笑うしかない。が,林さんはそんな小生意気な若造の不遜な態度に,口うるさく小言を言うような方ではない。いかなる無礼な行いすらも大らかに包み込んでしまうような,そういう懐の大きなたいへん素敵なジェントルマンなのである。なので,大丈夫である。


そんなビッグなナイスガイこと林さんがこの度,本を出版した。

なんと,ホッキョクギツネを主人公にした絵本である。


薫風のトゥーレ

林健太郎(著)

幻冬舎,2017/08/18


それこそ内容は全くわからない。想像すらできない。

どんなストーリーになっているのか,楽しみで仕方がない。


考えても見てほしい。


ミツユビカモメの鳴き交うコロニーに,ホッキョクギツネが住んでいた。

巣穴から出てきたのは可愛らしい小ギツネと,それを見守る凛々しい母ギツネであった。


...それで?


子育てにはどのくらい時間がかかるのだろうとか。

巣穴はどの程度の規模なのだろうとか。

うっかり落っこちてしまう可哀想なミツユビカモメの雛を,どの程度の頻度で得ることができるのだろうとか。


そういうことではない。

そういうことを考えていても,絵本は書けない。


絵本を書くには,全く新しいストーリーを想像しなければならない。

何か根本的に思考の軸を変えなければならないのではないかと思う。

とても真似できたものではない。凄い。


嗚呼,帰国後に本書「薫風のトゥーレ」を読めることが今から待ち遠しい!


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最後はカリフォルニア大学の鈴木紀之博士。通称,ノリさんである。僕が博士課程を過ごした東北大学の研究室で隣の席に座っていた,ダンゴウオのような愛らしい顔をしたまっちょでおちゃめでかっこいいお兄さんである。


ノリさんと過ごした博士課程の 3 年間は,それはそれは素晴らしいものであった。ノリさんがいなかったら,今の僕はない。今にも増して幼いままだっただろうと思う。僕にとっては大切な友人であると同時に,師匠のような存在でもある。


隣の席でノリさんが頭を抱えている。

そしてゆっくりとこちらを向き,持ち前の重低音を効かせて問いかける。


ノリ:...モリーちゃん,なんでこの世には男と女がおるんやろう。


僕:な,なんででしょう。。


明くる日,またも隣の席でノリさんが頭を抱えている。

そしてゆっくりとこちらを向き,持ち前の重低音を効かせて問いかける。


ノリ:...モリーちゃん,なんでヒトはバンジージャンプをするんやろう。


僕:なな,なんででしょう。。


こんなたわいもない,それでいて深い深い議論を,僕らは毎日のように繰り返していた。


すごい進化 -「一見すると不合理」の謎を解く

鈴木紀之(著)

中公新書,2017/05/19


嗚呼,帰国後に...,違う!


本書はすでに手元に届いている!

ノリさんありがとう!ノリさん最高!


Amazon にもいずれ書評を載せよう。絶対,載せよう。

贔屓目抜きで「星 5 つ」確定だし,ここで宣言しても問題ない。


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他の方々もオランダでひとり寂しくブログを書いている僕に,著作を送ってくださっても良いですよ!アドレスは下記ですよ!


Arctic Centre, University of Groningen, Aweg 30, 9718 CW Groningen, The Netherlands


送ってくれたら Amazon に書評も書きます!むっちゃ書きます!

面白くなかったら書きませんけど!


見聞読考録 2017/09/03

2017-08-22

髪を切った!

スピッツベルゲン島の基地には床屋がなかった。


滞在を 3 週間も残すあたりから目にかかる前髪が気になりはじめ,旅の終わりのころにはナルシストばりに髪をかきあげる日々が続いていた。発狂するかと思った。


そして昨日,ついに髪を切った。

実に 104 日ぶり,3 ヶ月と 10 日ぶりに髪を切った!


はぁぁぁ,すっきりした。

やっと仕事に集中できる。


見聞読考録 2017/08/22

2017-08-18

The last day at Longyearbyan, thus at Spitsbergen

スピッツベルゲン島最大の都市,ロングイェールビーンに滞在してからはや 4 日が経った。

最後をくくるにふさわしい,ゆったりとした,それでいて実りのある滞在だったと思う。


14 日 12:00 にニーオルスン(Ny-Ålesund)をセスナで発ち,1 時間ほどのフライトを経て,ロングイェールビーンに到着した。オランダのチームのうち最後まで残っていた僕を含めた 4 人全員がこの便で発った。


ロングイェールビーンの空港から街までの 5 km ほどの道のりを徒歩で行く。途中で,浜に打ち上げられたタイセイヨウダラの死骸にシロカモメが群がる現場に遭遇した。今年生まれた雛もすっかり大きくなって,大人すら追い払って餌を横取りする様はなかなか見ごたえがあった。


しばらく街をぶらぶらしたあと,Kroa というレストランで,オランダのチームと最後の食事をした。クジラやアザラシを狩って暮らしを立てていた頃の古き良きロングイェールビーンを再現した内装は,これぞスピッツベルゲン島!とすら思わせる。地元限定の黒ビールも最高に美味い。17:00-19:00,楽しいひと時はあっという間に過ぎ,オランダ人らしい熱いハグを全員と交わして,僕を除く皆はまた空港へ。2 ヶ月も島に滞在して,これからまだロングイェールビーンに滞在しようなどという酔狂な人は,僕だけらしい。


最初の宿は Mary-Ann's Polarrigg。安宿の予約がいっぱいだったので,知人に勧められるまま予約した。正面のたくさんのトナカイの角が飾られた木造の門は,シャーマンのいるどこかの部族の村の入口のよう。それをくぐると,1970 年代を思わせる古びたトラックや,小型の古い木造船舶を改造したテラスなど,異様な雰囲気を纏った広場に出る。チェックインを済ませ建物の中に入っても,炭鉱の道具が並べられ,炭鉱が栄えた当時の白黒写真が所狭しと貼られ,その異様さは健在であった。洞窟のような意匠を凝らした狭い通路を抜けると熱帯の植物が植えられた温室のカフェに出たり,終いにはシロクマの上半身が廊下の壁から突き出していたりと,非常に刺激的な,それでいて悪趣味でない,不思議な空間を作り出していた。あれなら 1 週間泊まっても飽きることはないだろう。


翌 15~18 日 までは,街から 1.5 km ほど山合に入った Gjestehuset 102(Guesthouse 102)という宿に連泊した。ロングイェールビーンで最も安い宿である(それでも高いが)。狭い部屋に 2 段ベッドが 2 つ。暑苦しい 4 人部屋であったが,同室の客が皆良い人だったので,とても快適であった。宿のスタッフも非常に親切である,ニーオルスンに向かう 6 月に利用したのも,ここであった。


近くには Coal Miners' Cabins という宿が経営するレストラン Coal Miners’ Bar & Grill がある。落ち着いた雰囲気の,趣味の良い内装が特徴的なレストランである。おそらく炭鉱時代に流行ったのだろう,ボリューム満点のハンバーガーが売りのようで,飛ぶように売れていた。確かに美味かった。他のメニューに,グリルの盛り合わせのようなものがあったので,むっちゃ高かったが頼んでみる。これも非常に美味かった,焼いたマッシュルームの味付けなどここ数ヶ月食べたことがないくらいの美味しさだった。ちょっとお腹がびっくりするくらいの量を出されたのには面食らってしまったが。


そして,宿のチェックアウトを終えた今日も,11:00 くらいから Coal Miners' Bar & Grill にお邪魔している。青い目を眼力鋭くカッと見開いたぶっきらぼうな痩身の男性が切り盛りしており,はっきり言って注文するのもちょっと怖い。


勇気を振り絞ってコーヒーを注文し,財布を取り出すと,


眼力:"Don't worry about it. Don't worry about it"


...ん?


気弱:"O..okay?"


ニコリともせずにぶっきらぼうに言われて面食らってしまったが,要するにサービスしてくれたらしい。

良い人やん,怖い顔してるけど!


さっきハンバーガーを注文したときも,ニヤッとされた。なんでやろ。

ともかく,あとでちゃんとお礼を言わなければ。


と,これだけのために投稿をひとつ。

皆さんも,ロングイェールビーンへお越しの際は,是非 Coal Miners' Bar & Grill へ。


見聞読考録 2017/08/18

2017-08-07

Ring Reading of Barnacle Geese

今日は,テレスコープ(フィールドスコープ)と双眼鏡を手に,動物の観察によく使われる迷彩柄のテントに篭って,鳥を観察するという貴重な体験をさせてもらった。早くも夏の暖かさが陰りを見せ,肌寒くなってきたこのスピッツベルゲン島で,およそ 4 時間にも渡って,孤独にスコープを覗き続けた。


与えられたミッションは,カオジロガンに付けられた足輪の 3 つのアルファベットを読むこと。これまでも度々やってきたが,密度の高い島に渡ってまで本格的にやったのは今日が初めてであった。南北に 1,000 m ほど,東西に 600 m ほどの島に,夏の盛りには 272 ものカオジロガンと,1,000 近いホンケワタガモの巣があったという。とんでもない密度である。今はもうもぬけの殻だったが,それでも 120 羽ほどのカオジロガンの群れが穏やかな水面を悠々と泳いでいた。


読んだ足輪の数はおよそ 50 ほど。足輪の付けられた個体のほぼ全てを読んだと思う。足先だけ岩の裏に隠れてしまっていたり,歩くのが早すぎてよく見えなかったり,思いのほか難しい。正直,あまり向いていないな,と思った。


うっかりテントに迷い込んだ,可哀想なハチとクモを,ちゃっかり採集した。

僕にはやっぱりそういうような,身近で手に触れられるものが向いているかな。


見聞読考録 2017/08/06

2017-07-18

Polar Bear Day


朝,食堂に入ると,何やら奥が騒がしい。

ガラス張りの窓から外を見ると,なんとシロクマがいた。


2 階のテレスコープを使って望遠する。

島から海を泳いで,こちら側の浜に上がったシロクマは,そのままゆったりと山の斜面を登っていく。

途中で何を思ったのか,草の上にごろごろと転がったり,すっと立ち上がったり,とても可愛らしい。

あれで,人を餌を思って襲ってくるんだから,困ったものだ。

大満足の朝であった。


昼から夜にかけて,日本人の研究者の護衛を兼ねて,氷河の末端へ。

ライフル銃を肩に,フレアガンを腰に,双眼鏡と 400 mm の望遠レンズを装備した一眼レフを首に。

重装備である。無線は同行者に持ってもらった。

朝見たシロクマがどこに向かったかわからない。

ライフル銃とフレアガンを唯一扱える僕の責任は重大である。

程良い緊張感のある山旅だった。


そして,夜。

ついさっき,無線に何やら不穏な連絡が。


"By the way, there is a polar bear in the harbor."


By the way って,えええええ。

外を見ると,150 m くらいの距離にいた。

双眼鏡で覗いたら,がっつり目が合った。

でかい。迫力満点。


基地のウォッチマンにフレアガン 2 発で脅されて,すぐに追い払われてしまったので,残念ながら写真はなし。

しかし,良いものを見た。がっつり真正面から見た。最高。


面白すぎんだろ,スピッツベルゲン島


見聞読考録 2017/07/17

2017-07-05

Village Count

スピッツベルゲン島のニーオルスン基地に滞在して三週間,周囲の景色も見違えるほどに変わった。雪も溶け,ツンドラに緑が映え,ホッキョクギツネの冬毛も生え変わりつつある。


そんな中,日に二回,欠かさず続けているのが,カオジロガンの飛来数調査である。ニーオルスン基地の中をでっかい望遠鏡を肩に歩き,どの場所に何羽いたのかを記録する。足輪のついているものについては,個体番号を記録し,パートナーがいるか,ヒナを連れているか,何をしているのか,などを詳細に記録していく。これを僕らは Village Count と呼んでいる。


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観察対象のカオジロガン。池を泳ぐ右下の二羽はコオリガモという別の子。


僕の研究ではないので,手伝いでやっているわけだが,朝夕の二回に渡って半ば強制的に外に出されるこの定期観察は,周囲の環境を観察するに当たって極めて有益である。おかげさまで,過ぎゆく季節の些細な変化にも,極域ならではの動植物の機微にも,十分に触れることができている。光ファイバーを通じて降り注ぐ大量の書類仕事に,ややもすれば引きこもりかねない現状に,ほどよい刺激を与えてくれている。


昨晩も長靴を履いていつもの周遊コースをぷらぷら歩いていると,仲良くなったおじさん(研究者かなぁ?)が建物の中から,コンコンと窓ガラスをノックして合図してくれた。気がついて振り向くと,どこから取り出したのか,A4 用紙いっぱいに印刷した親指を立てた「Good」のサインを満面の笑みで見せてくる。間違って親指が下に向いて「Bad」のサインになっていること気づいて,慌ててひっくり返す様がとても微笑ましい。


なんていいひと。なんていいおじさん。

そのおじさんに限らず,ニーオルスン基地にいる人達は皆,ひとがいい。

これくらいの小さなコミュニティの方が,人は平和に過ごせるのかもしれない。


というわけで今日も,野帳を片手に Village Count へ。


見聞読考録 2017/07/05

2017-06-26

鯨・クジラ・くじら


船でフィヨルドの奥に繰り出す,快晴の土曜。

とんでもない好天に恵まれた,最高の1日。


ほんの数時間だけ海を漂えば,ミンククジラやシロナガスクジラにほいほい出会う。

辺りを見渡せば,フルマカモメやハジロウミバト,ニシツノメドリなどの海鳥がひっきりなしに飛び交う。

プランクトンネットを引けば,クリオネやミジンウキマイマイが網にかかる。


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スピッツベルゲン島とは,そういうところである。

私は今,とても幸せである。


見聞読考録 2017/06/25