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2018-05-06

5月の青空

僕らの間に何か起こるのは、きまって5月だった。あなたが旅立ったのは5月。長い初めての冬を越え、大きな海を越えて、あなたに会いに行ったのも5月。その後の逢瀬はいつも5月。ある年の5月には、あなたに深く失望した。けれども全てを忘れようとした。雑多な感情を共有する僕らには常に新しい5月が訪れ、すべての諍いですら、次の5月には温かな思い出に変わるのだと、心から信じて疑わなかったからだ。

あなたにとって僕は何であったのか、すべてが終わった今となっては知る由もない。けれど、あなたとの関係はまるで、一本の細い蝋燭にゆらめく小さな焔のように儚いものであったように僕は思う。炎は何度も消えかけたけれど、か細い糸のような灯火であっても、その光がすっかり消え去ってしまわないよう、僕は懸命に蝋燭を護ってきた。あなたが将来を悲観し、別の道を択ぶことを決心してからも、僕は与えられた役目を忘れ去ることはなかった。

僕が護り続けてきたちいさな灯火はもはや爪の先ほどの輝きしか残していなかったが、今年の5月、僕は初夏の心地よい風に任せ、その最期の炎を一筋の煙にして空に掻き消した。すがすがしい青空の下、枝分かれした道で、僕らは既に異なる目的地にむかって歩んでいるし、この二つの道が再び重なることだって、もはやないであろう。何かのきっかけでふと、記憶の断片が呼び起こされることもあるかもしれない。少なくとも炎の立ち消えたあとの、彼の煙が残した微かな薫りだけは、僕の鼻腔の奥に焼きついている。


ありがとう。さようなら。今日はいい天気だよ。

 

 

2018-03-08

2018.3.08

ジミヘンを聴きながら暗い部屋で古い友人の連絡を待つ。音楽に没頭してしまい携帯を見るのを忘れていると、ガラス窓越しに、バイクに跨りこちらに合図を送る友人の姿が見える。荷物を急いでまとめ、部屋を後にする。友人がいつの間にか別の友人(こちらもとても古い友人)に代わり、二人で所在無く通りをぶらぶらする。ふと、ショーケースの中に几帳面に飾られた数々の腕時計が目に入る。既知のブランドの憧れの腕時計であるが、おいそれと購入できる値段でないのでウインドウショッピングの如く眺めている。ふと、店主が扉を半分開けて「良かったら見ていってよ。見るだけで良いからさ」と声をかけてくる。その顔に刻まれた皺とやや浅黒い肌、快活さを帯びながらも落ち着いたトーンの声で、店主の男性は40代後半~50代前半くらいに見えた。店主はふと僕の時計に目をやると「お、いい時計をしているね。よかったら掃除してあげるよ」と、僕らを店内へと促す。腕時計が所狭しと並べられた、小さな店内。どこにでもありそうな個人経営の時計店。カウンターで腕時計を外し、店主に託すと、店内に飾られた腕時計に目ぼしいものを探す。一通り見終わったところでカウンターに戻り、店主の様子を見やると、店主、なぜか血液検査の準備を始めている。「腕を出してごらん」と言われて何の疑いもなく腕まくりをして手を差し出すと、店主は僕の腕をおもむろにゴム管で縛りあげ、なれた手つきでアルコールの染みた脱脂綿を滑らせる。手にしっかりと力を入れて握りこぶしを作ること、また呼吸は口呼吸でなく鼻呼吸でなければならないことなどを僕に言い伝え、僕が頷くとすぐに、針が皮膚に通るちいさな痛みを感じる。気づくと採血は終わり、店主は僕に少しここで待つようにと、店の奥に姿を消す。時計の掃除になぜ採血が必要なのかとこの時点でやや疑問が芽生え始める。奥のほうでもぞもぞと動く店主の後ろ姿は、何か細かい作業に取り組んでいるように見えるが、具体的に何をしているのかは見当がつかない。ふと、おもむろに店員のような女性が現れる。やや大柄で体格のよい女性、看護婦のようだ。採血に使った針を取り出し、形状、太さに特長があることを説明してくる。どのように反応してよいか分からず、生返事で相槌を打っていると、店主が「次はこの針で血液を逆流させる」と言う。小さなカップの中に浅黒い液体の入った小さなプラスチック管が浸されているが、血液にしてはやや黒ずんだ液体に不安を覚え、本当に逆流させるのかと聞き返す。次なる「検査」の身支度をするふりをして鞄に手を伸ばし、何かのついでのように携帯を開いて、採血した血液を再注入させることなどあるのかどうか調べる。検索結果のハイライトを読み飛ばしても、そのような事例はそもそも見当たらない。すると、やや後のほうの検索結果にあったのはある秘密結社の噂で、似たような習慣の記載がある。店主は僕が何かに気づいたことを悟り、「誰かに話してみるか?」と薄ら笑いを浮かべ、僕が急いで店をあとにするのをカウンター越しに見ている。

2017-09-23

2017.9.23

自己顕示欲の異常に強い大柄な男。30代半ば、柔和な顔つきをしているが、裏の顔は猟奇的な嗜好をもつ殺人鬼。遺体をわざと目立つ場所に放置し、発見されてニュースになるのを楽しむ。人ばかりではなく、動物にまで残虐な仕打ちを与え、悦に入る。

ある朝、大学の構内のような場所にある並木道を歩いていると、5~6匹の猫が木の幹の外周に沿って五寸釘で打ち付けられているのを目撃する。徐々に集まってくる野次馬たち、誰がこんなことをしたのかと薄気味悪がる。

(うろ覚え。男に手を掛けられた被害者たちの姿。関節ごとに四肢を切り取られ、バスタブに整然と詰め込まれる死体のシーン。僕も男に目をつけられ、自宅にいたところで突然、命を狙われる。急いで鍵のかかる部屋に逃げ込み、閉じこもってやり過ごそうとする。窓の外からこっそりと様子を伺う。男、ダースベイダーのようなマスクを着け、わざとこちらを威嚇するように、刃物を振りながら大股で外を歩いている)

男の自宅。4畳半の狭いアパート。垂れ流しにしているテレビから、自分の起こした殺人事件動物虐待のニュースが聞こえてくると、常に家にいる彼女らしき少女に、自分がどのように命を奪ったのかを嬉々として話す。少女、興味深そうに、また楽しそうに男の話に耳を傾けている。

ここで初めて、僕は空を飛べることを思い出し、男のいる家のほうへと飛行。男が家から出てきたところを狙い、自動車で轢殺してしまうことを企てる。路上に駐車されていた乗用車を男の歩く方向に自走させ、上空からその様子を静かに見守る。スピードをつけた車は男の背中を捉え、鉄の塊が骨を砕く鈍い音を聞く。男はアスファルトの地面に倒れこみ、何が起きたのか分からぬまま、もがくように地面を這って起き上がろうとする。男の眼が上空にいる僕の姿を捉えると、男は虫の息になりながらもはっきりとした意識でこちらを睨みつけ、あらん限りの呪詛の言葉を放つ。息も絶え絶えになった男の様子を僕は上空から眺めながら、どのようにとどめを刺そうか考えている。しかし、ふと目を離した隙に、男は消えていた。(未了)

2017-08-14

ためらい

昔から、全体が見えないままその末端にある何かをさせられることが苦痛で仕方なかった。何をするにも「なぜやるのか」、この問いに納得のいく答えが得られない限り、僕の心身は頑として動かない。この歳になって、その性質は極端になってきているようだ。

僕には盲目的に定めていた計画があって、計画遂行のため盲目的に行動を起こそうとしていた。行動を起こしたところで気づいた。全く身が入らない。人生の一大イベントに据えていた計画であって、自分自身でも納得していたものだと思い込んでいたが、心の奥底では、なぜ自分がこの方向に進んでいくのか、納得しきれていないのかもしれない。

中二病をこじらせたかのように、進むべきか否か逡巡し、半年以上の時間を無駄にしてきた。決断を先延ばしにする自分がいる一方で、もう片方の自分は時間を無為に過ごした「自分」を心から恨む。そんな両者の間でおろおろし、彼らに決断を迫る第三の自分が芽生えつつある。がんばれ、自分。しっかり考え直そう。でも、僕に残された時間は本当にわずかだ。

そして一度決めたらそう、毎朝8時45分には家を出て、図書館に行ってください。後生だから。図書館に行こう。図書館に行こう。図書館に行こう(大事なことなので3回繰り返した)。

2017-06-22

2017.6.22-02

夢の中でいつものように空を飛んでいる。眼下に広がる大海。数mはあろうかというサメが悠々と泳いでおり、やにわに身体を起こし、大きな口を広げて僕を捕食しようとする。身をよじらせ何とか襲撃をかわすが、気がつくと海の水位が上がっており、僕と水面との距離が大幅に縮まっている。飛ぶ高度がうまく上がらない。そうこうしているうちにまたサメが近づいてくる。よく見ると、サメは一匹だけではなく、同じくらい大きなサメが何匹も泳いでいる。水面に目を向けるたびに、水位は上がっている。あるいは、僕の高度が落ちているのか。

2017.6.22

浜松からの帰り。新幹線の時間が迫っていて、タクシーを急いで捕まえるが、運転手のおじいさんは悠々と運転しており、焦る。時間がないことを必死で訴え、何とか新幹線には間に合う。宿泊先に到着し(なぜか北京)、チェックインをしているところで頭の悪そうな警備員が荷物を調べるという。釈然としないまま調べさせていると、荷物にシャンパンが入っているからチェックインをさせないと言われる。そんなおかしなことがあるか、世界のどこにシャンパンを持っているから宿泊拒否をするホテルがあるんだと反論、危険なものなんか何も持っていないから荷物の中を見ろと促すも、ダメなものはダメだとニヤニヤしながら一蹴、取り付く島もなく、結局チェックインができない。ひとまずその場を離れ、対応策を考える。近くにあった籠や空いたカップラーメンの容器などを手で弄びながら、AKに電話をかけるが、要領を得ない答えしか返ってこない。やり場のない怒りに打ち震えながら結局は代わりの宿泊先を探すことにし、舞台は台北に移る。たまたま入った公衆トイレにひじきのようなゴミが散乱しており、掃除をする。掃除の途中で警察官が通りかかり、お前は何をしているんだと訝られるが、掃除しているんだと答えると警察官は満面の笑みを返す(ここで台湾に対する好感度がぐっと上がる)。しばらく掃除に取り組み、床のひじき山椒の粒のようなものをトイレの外に飛ばしていると、床より低くなっている場所に立っていたホスト崩れのような男3人組に当たる。急いで謝るが、男たち、当たってもへらへらしている。掃除を一通り終え、駅でレンタカーを借り宿泊先に向かう途中で道路中の信号が全て壊れ、表示がされなくなる。一部で混乱が起きるが、基本的には滞りなく車が流れている。宿泊先にたどり着くとそこは2階建ての家で、とても新しく綺麗。携帯のアプリ北京のホテルをキャンセルしようと試みる。(未了)