唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

「私はこれ(盗作)でファンをやめました」

 唐沢俊一9月19日の「裏モノ日記」市川準監督の死を悼んでいるが、その文章がどうもヘンなのである。

市川準監督脳卒中で急死、59歳。
CM界の鬼才としてあの“禁煙パイポ”(三段オチの、オチが
商品と関係ない)や“タンスにゴン”(主婦の本音である
“亭主元気で留守がいい”をCMで堂々と主張させた)など話題作を連発、
才気煥発という言葉を具象化したような人であった。
映画監督として作った作品でもそれは如実に表れており、
性格の暗い少女が自分を変えるために目指した職業が芸者、という
『BU・SU』や、坂本龍馬の愛人の、龍馬の死後の生活を描く
という『竜馬の妻とその夫と愛人』(三谷幸喜・作)や、村上春樹の作品を
映画化するのに、わざわざほとんど名前の知られていない短編
トニー滝谷』を映画化したりというあたりにその才気があふれていた。
その輝くばかりの才のために作品群は毎回、いろんな映画祭での賞を
受賞しまくっていたが、一般大衆にアピールしていたかというと
必ずしもそうとは言いがたい。ここらが才気煥発型人間の
弱点だったろう。唯一、真正面から貧しい時代の青春群像を
撮った『トキワ荘の青春』が、賞はひとつも取らなかったが
最もポピュラーに名を知られた作品となったのは皮肉である。
60代になって、この人の才気が塾生し(原文ママ)、じっくりと腰を据えて人生を
描いた作品を観たかった気がする。あまりに早い死を悔やむばかり。

 まず、市川監督の作品の紹介をしているのに、内容について具体的な感想が書かれていないのが不思議。ちゃんと観ているのなら「あそこの演出はよかった」くらいは普通書くと思うのだが。それから、ここで書かれている紹介が全部ウィキペディアに書かれているものとそっくりなのが不思議。

1987年10月に富田靖子主演の『BU・SU』で映画初監督。田舎の少女が上京して芸者になるビルドゥングスロマンである。暗く閉鎖的なために「性格ぶす」を揶揄される少女が他者と出会う様子を描き、好評を獲得する。

2002年に三谷幸喜原作の『竜馬の妻とその夫と愛人』を発表する。戯曲を映画化した珍しいタイプの作品である。坂本竜馬の死後に再婚して愛人も作った未亡人に主眼を置き、本来の主役(竜馬)を全く描かず、その周囲の人物の騒動を追った異色の時代劇となった。

2004年に村上春樹原作の『トニー滝谷』を発表する。村上は大変高い人気を持つ小説家だが、その作品は殆ど映像化されていなかった極めて特殊な存在である。長年に渡り村上作品を愛読してきた市川は有名な長編ではなくマニアックな短編の映画化に挑んだ。市川はイッセー尾形宮沢りえの二人の優れた俳優を用いて村上が照らす現代人の底の無い孤独を落ち着いた美しい色調で映像化した。第57回ロカルノ国際映画祭で審査員特別賞、国際批評家連盟賞、ヤング審査員賞を受賞した。

 ほらね。ウィキペディアをコピペしたとしか思えないのであるウィキペディアのコピペなんかやったら大学生でも怒られるし、当ブログもウィキペディアのみをソースにするような安直な検証作業はしていない。プロのライターが素人にもできることをしていないのはどうかと思う(たとえお金の発生しないネット上の日記でも、ウィキペディアのコピペなんかやってプラスになるとは思えない)。というか、コピペもちゃんとできていないんだけどね。唐沢は『竜馬の妻とその夫と愛人』について「坂本龍馬の愛人の、龍馬の死後の生活を描く」と書いてあるけど、『竜馬の妻とその夫と愛人』のヒロインは竜馬の未亡人おりょうである(ウィキペディアにもちゃんと「未亡人」と書いてあるのに)。それから、『トニー滝谷』の主演は唐沢とも因縁のあるイッセー尾形なのに、このことに触れていないのも不自然(唐沢とイッセー尾形の関係については唐沢俊一まとめwikiを参照)。村上春樹の原作も読んでないんだろうし。
 それから、もうひとつどうかと思うのは『会社物語』に触れていないことである。これはクレージーキャッツが勢揃いした最後の映画で(ジャズを演奏するシーンもある)、東宝の一連のサラリーマン喜劇と関連して観るとなかなか興味深い作品なのである。たとえば、小林信彦も『週刊文春』2008年7月3日号で『会社物語』について書いていて、植木等が「今の日本は俺たちが作ったんだぞ!」と叫ぶシーンが印象的だったと書いている。唐沢俊一クレージーキャッツの映画は観ているし(2007年8月20日の「裏モノ日記」を参照)、かつての邦画ファンなら『会社物語』はおさえておいたほうがいい作品だと思うが。まあ、昔のことでも興味のないことがあるのかもしれないけどね。
 あと、『トキワ荘の青春』が「最もポピュラーに名を知られた作品」というのは異論もあるだろう。

 唐沢俊一の批評の欠点は、作品の内容について具体的に書かないことである。その代わりあらすじや周囲の評価など、作品を実際に見なくても書けるようなことしか書いていないので、「本当に作品を見ている(読んでいる)のか?」と疑惑を招く羽目になっている(まとめwikiを参照)。今回も市川監督の作品を観ていないか、もしくは作品の紹介がものすごくヘタなのか、どちらかとしか思えない。一体どっちがマシなのかはわからないけれど。いずれにしても、市川監督についてよく知らないならわざわざ追悼の文章を書かなくてもいいのにと思う。

竜馬の妻とその夫と愛人 [DVD]

竜馬の妻とその夫と愛人 [DVD]

トキワ荘の青春 [VHS]

トキワ荘の青春 [VHS]

会社物語 [VHS]

会社物語 [VHS]