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唐沢俊一検証blog

2009-01-08

とても良く似てるんじゃがー。

21:39

唐沢俊一キッチュワールド案内』(早川書房)P.188〜189より。

 作家のH・G・ウエルズは、深く豹に魅せられた一人だった。ウエルズの小説にはしばしば豹が登場する。『塀についた扉』という短篇で、主人公のライオネル・ウォレスは、子供の頃にふと、壁にいつのまにかついていた扉を見つけてそれをあけ、その向こうの幻想の国へ迷い込んでしまう。

「そこには二匹の豹がいた……そう、まだらの大きな豹だ。しかし少しも怖くなかった。大理石の縁どりをした花壇が両側に続く長い道があって、二匹のビロードのような艶のある豹たちがそこでボールに戯れていた。一匹が顔をあげてぼくのほうへ近づくと、その柔らかな丸い耳を、ぼくの差し出した小さな手にこすりつけ、咽喉を低くならすのだった。それは魔法の園だったのだ」(橋本槙矩訳)

 ここでの豹は、オトナになることで堕落してしまう(幻想の国への扉が見つけられなくなってしまう)人間と違い、永遠に幻想の世界の、すなわち汚れない子供の世界の住人として描かれている。豹は純粋のシンボルでもあるのだ。そして、その一方で、オトナを堕落せしめる悪魔の衣装でもある。

若島正京都大学教授H・G・ウェルズについて論じた文章より。

 さて、オールディスのウェルズ論として最後に紹介したいのは、一九八六年に開催されたウェルズ国際シンポジアムで、ウェルズ協会副会長として彼が行なった「ウェルズと豹女」と題する講演である。

(中略)

彼はウェルズの小説にしばしば現れる豹やチーターやピューマに注目する。とりわけ印象的なのは、傑作短篇「塀についた扉」で、主人公のライオネル・ウォレスが子供の頃にふと壁の向こうの桃源郷に迷い込んでしまう次の場面である。


 そこには二匹の豹がいた……そう、まだらの大きな豹だ。しかし少しも怖くなかった。大理石の縁どりをした花壇が両側に続く長い道があって、二匹のビロードのような艶のある豹たちがそこでボールに戯れていた。一匹が顔をあげてぼくのほうへ近づくと、その柔らかな丸い耳を、ぼくの差し出した小さな手にこすりつけ、咽喉を低くならすのだった。それは魔法の園だったのだ。(橋本槙矩訳)

(中略)

オールディスによれば、進化の結果として退行する可能性をはらんだ人類と比較すると、豹は進化の及ばない動物であり、それゆえユートピア幻想と密接に結びついている。しかも、この豹が官能的なのは、自由なセクシュアリティを謳歌する獣としての姿が、自由恋愛を希求するウェルズの願望を投影しているからだとも言う。もちろんここでわれわれが思い出すのは、『モロー博士の島』に登場するさまざまな獣人たち(その中には「豹男」もいる)であろう。人間と獣というテーマに関して、オールディスは獣人の中にも人間性が認められ、逆に主人公のプレンディックが人間社会に戻ったときに周囲の人間たちの中に獣人性が認められるという逆転関係を指摘し、このように謎めいて奇怪なイメージを創造しえた点にウェルズの最大の独創性を見ている。そして、ウェルズの創作最盛期のみならず晩年に至るまでの、今では誰も読まなくなったような作品も丹念に渉猟して、そこに豹のイメージを追いかけ、生涯にわたって獰猛に生きようと夢見ながら、ついに「塀についた扉」を二度と発見することはできなかったウェルズの姿をはっきりと定着させるのである。

 「オールディス」というのは、ブライアン・オールディスのこと。『地球の長い午後』は面白かったなあ。

 それにしても、唐沢の文章と若島教授の文章は実によく似ている。唐沢の「豹」の解釈は若島教授と比べてだいぶザックリしてるけど。なんてったって引用部分がまったく同じなんだから驚いてしまう。引用されているのはライオネル・ウォレスのセリフなのだが、実はあの後にも続きがあるのに、両者がまったく同じ部分でカットしてあるのが不思議。それに『塀についた扉』の訳者の名前は正確には「橋本槇矩」なんだけど、どっちも同じ表記だしなあ。うーん。

 ちなみに、若島教授の文章の初出はSFマガジン』1996年11月号で、ネット上には1998年10月20日に掲載されている。一方、『キッチュワールド案内』はSFマガジン』に1999年1月から2001年11月まで連載されたものをまとめたものである。…どっちの文章も『SFマガジン』に載っていたというわけだからどうにも奇妙な話である。

キッチュワールド案内(ガイド)

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タイム・マシン 他九篇 (岩波文庫)

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乱視読者の英米短篇講義

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地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224)

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藤岡真藤岡真 2009/01/09 08:50 >その一方で、オトナを堕落せしめる悪魔の衣装でもある。
この後に続くのが、「女ターザンの豹柄ビキニ」のガセでしたね。
http://diary.jp.aol.com/applet/yzuc9ww/msgsearch

KoichiYasuokaKoichiYasuoka 2009/01/09 16:52 「オトナになることで堕落してしまう(幻想の国への扉が見つけられなくなってしまう)人間」って、『塀についた扉』の話と合ってないような…。だって、ウォレスは大人になってからも、何度も緑の扉を見つけてるでしょ? ただ、そこに入れなかっただけで。

kensyouhankensyouhan 2009/01/10 00:25 コメントありがとうございます。

>藤岡さん
そもそも「女ターザン」が好きな男がそんなにいるのかどうか。『恐竜100万年』のラクエル・ウェルチは「女ターザン」なんだろうか。まあ、自分も『ストリートファイター3』のエレナは好きですけど。山本会長はどうですか?

>安岡先生
そうですね。ウォレスは扉を見つけても結局中に入りません。それは『塀についた扉』にとって重要なポイントなのでちゃんと説明しなければいけませんね。
…そうなると、例によって「読んでいない作品のことを書いている」疑惑も出てきます。それとも、単に説明がヘタなのか。

tamakotamako 2009/01/10 07:27 引用箇所が丸々同じというだけでパクリ疑惑を呈するのは弱いなあ、と感じましたので、『塀についた扉』に関する考察のリクエストをコメントしようとして失敗しました。。。再トライです。
パクリがバレないようにオールディスの説と違う『純粋のシンボル』説を出してきたような気がしました。
「読んでいない作品のことを書いている」疑惑の他に、「昔に読んだ作品のことをあやふやな記憶のままで書いている」疑惑もあると思います。

kensyouhankensyouhan 2009/01/10 14:13 コメントありがとうございます。
>引用箇所が丸々同じというだけでパクリ疑惑を呈するのは弱い
自分もそれだけでパクリとか言うつもりはありません。判断は読む人にまかせたいと思ってます。
>パクリがバレないようにオールディスの説と違う『純粋のシンボル』説を出してきたような気がしました
唐沢のコラム全体を読んでみると豹を「純粋のシンボル」と捉えるのはちょっとヘンなんですけどね。オールディスの説をそのままあてはめた方がしっくりくるんですが。
>「昔に読んだ作品のことをあやふやな記憶のままで書いている」疑惑
その可能性もありますね。『エジプト十字架の秘密』の赤チンの話と同じで。

baudrateRAbaudrateRA 2009/01/11 15:52 >「女ターザンの豹柄ビキニ」のガセ
http://diary.jp.aol.com/yzuc9ww/569.html

改めて、山本弘氏のサイト
http://homepage3.nifty.com/hirorin/jgtop.htm
を見たら、このトップページだけ見て、「ターザンの影響下における女性ターザンたちは、ユニフォームの
如く、豹柄のビキニを身につけている」とガセを書いたのではないかという疑惑も。

クリックして http://homepage3.nifty.com/hirorin/jgirlcomics1.htm などに飛んだりしなかったのか
と。こっちは頑張って、あちこち見てみたのに。

kensyouhankensyouhan 2009/01/12 17:20 コメントありがとうございます。
まあ、山本会長のことがどこかで頭にあったんだろうとは思いますけどね。
次は女の子を固める趣味について書くのかと。

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