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唐沢俊一検証blog

2009-03-20

濃い人のピンチヒッター。

16:15

「週刊昭和」の記事も誰かの代役だったのだろうか。


フィギュア王」90掲載『唐沢俊一トンデモクロペディア』第4回『ユリ・ゲラーとニッポン』より。

 思えばスプーン曲げとは、高度経済成長が行き詰まり、万国博覧会に象徴される科学と技術の21世紀の夢が壊れた、一九七四年という時代の象徴だったのかもしれない。

 スプーンは言うまでもなく、ヨーロッパにおいては富と愛情、恵まれた生活の象徴だ(“銀のスプーンを口にして生まれてきた”という慣用句がある)。思えば高度経済成長期の日本は、銀のスプーンを求めて闇雲に駆けずり回っている状態だったのだ。そのスプーンを、ゲラーは手を触れずにヒョイ、と曲げてしまった。物質主義一辺倒であった戦後の日本人たちの唯物史観を嘲笑うかのように。

 唐沢俊一The Who の“substitute”を聴いたことがないのかなあ。「僕はプラスティックのスプーンをくわえて生まれてきた」(I was born with a plastic spoon in my mouth)という歌詞があるのだ。『アルティメット・コレクション』の歌詞カードでは「ど貧乏の生まれだし」ってものすごい翻訳をされてるけど。つまり、「銀のスプーンを口にして生まれてきた」という言葉で「富と愛情、恵まれた生活」を意味しているのは「スプーン」じゃなくて「銀」の方なのだ。ウィキペディアも参照。

イギリスでは、洗礼式にスプーンを贈られる習慣があり、身分や貧富の差によって材質が異なっていた。このことから、裕福な家で生まれたことを表す「銀の匙をくわえて生まれてきた」という言い回しができた。

…しかし、上の文章でもっとすごいのは「物質主義」と「唯物史観」をゴッチャにしていることである。全然別物だって。goo辞書を引いてみよう。

ぶっしつ-しゅぎ 【物質主義】

物質・金銭の充足を第一として、精神面を軽視する考え方。

してき-ゆいぶつろん 【史的唯物論】

〔(ドイツ) historischer Materialismus〕マルクス主義歴史観。発展する歴史の原動力は人間の意識・観念にはなく、社会の物質的な生産にあり、生産過程における人間相互の諸関係は、生産力との関係で弁証法的に発展すると考える立場。この物質的な生産の諸条件が全社会経済構成を規定すると同時に、宗教哲学・芸術などの精神構造をも究極的に決定するとされる。唯物史観。歴史的唯物論

一体どうしてスプーンを曲げたらマルクス主義歴史観を嘲笑うことになるのかと。そもそもスプーン曲げと物質主義も関係ないと思うけど。この論法で行けば、ユリ・ゲラーが止まっていた時計を動かしたのは、「時間に追われてあくせくしている戦後の日本人を嘲笑うかのよう」なものだったんだろうね。こういう無茶なこじつけはオカルトを助長するだけだと思うんだが。…どうしてこの人が「と学会」の運営委員をやっているのかよくわからないなあ。

 なお、この『ユリ・ゲラーとニッポン』では、小林秀雄の講演と安斎育郎教授の著書から引用がされているが、いつもと同じように出典が示されていない。引用されている部分をあわせると唐沢本人の文章とそんなに変わらない分量になるくらい長めの引用なのだから、出典を示さないのはライターとして誠実さに欠けるものと言わざるを得ない。そのような杜撰な態度をしていたのでは読者も「もう二度とだまされないぞ!」と思うのではないだろうか。

※追記 「銀のスプーンをくわえて生まれてくる」という言葉は「生まれながらに裕福であること」「よい家柄であること」を意味しているので、唐沢俊一が「銀のスプーンを求めて闇雲に駆けずり回っている」と書いているのは不適切。

※追記2 ユリ・ゲラーが手を触れずにスプーンを曲げているというのは誤り。下の動画を参照して欲しいが、めちゃくちゃこすっているw D

アルティメイト・コレクション

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フーズ・ネクスト+7

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科学と非科学の間 (ちくま文庫)

科学と非科学の間 (ちくま文庫)

774774 2009/03/20 20:59 イギリスでは赤ちゃんに銀貨を木のスプーンでくわえさせるらしいですね。
古谷三敏の漫画で読みました。

tochicatochica 2009/03/20 20:59 銀のスプーンというのは「恵まれた生活」の象徴というより「恵まれた家柄」の象徴ですから
「銀のスプーンを求めて闇雲に駆けずり回っている」という表現自体がおかしいですね。
銀のスプーンそのものよりも「銀のスプーンを口にして生まれたこと」が重要。後から求めて
得られるものではない。

この言葉が使われる文脈というのはむしろ「闇雲にかけずり回って」富を勝ち得た人間のことを
「ビル・ゲイツも銀のスプーンを咥えて生まれてきたわけではない」などと言うケースが多い
わけですから、その意味からもまったく見当違いの用法だと思います。

個人投資家個人投資家 2009/03/20 22:37 >スプーンは言うまでもなく、ヨーロッパにおいては富と愛情、恵まれた生活の象徴だ(“銀のスプーンを口にして生まれてきた”という慣用句がある)。

 これは「ショーン・コネリーがIRAを支援していた」に匹敵するガセですね。

 スプーンと「富と愛情、恵まれた生活」の象徴ではありません。
 「銀のスプーン」だ。
 しかも、「富と愛情」ではなく、生まれついての身分とそれに伴う資産を示す。
 だから、生まれながらにして地位と資産が保障されていること、言い換えれば「労働しなくても暮らしていける地位」を示すのであって、

>の銀のスプーンを求めて闇雲に駆けずり回っている

 なんてことはあり得ない全くの見当はずれ。
 粉骨砕身して努力して得られるものではないのです。

 ミュージカル「CATS」にも、貴族猫バストファージョーンズが出てくるが、
小道具として大きな銀色のスプーンを携えている。
 「銀のスプーン」は貴族階級を示すシンボルなんですね。

 なぜ銀かというと、ヨーロッパでは、ローマ時代の昔から銀が貴金属として尊重され、銀貨による貨幣が鋳造されてきたから。
 スペインが南米の金鉱山から金を掘りだしてヨーロッパに大量に流入させるまでは銀こそが富の象徴で、イギリスもずっと銀本位制をとっていた。

>スプーンを、ゲラーは手を触れずにヒョイ、と曲げてしまった。 
 
 これも間違い。ユリ・ゲラーはスプーンを擦りながら曲げた。
 安斉先生の本をちゃんと読んでいるのかなあ.
 安斉先生のスプーン曲げでもちゃんとスプーンを手に持って曲げている。私は安斉先生から直接伝授して貰ったから、曲げ方を知ってるよ。

うさぎ林檎うさぎ林檎 2009/03/20 23:18 >そのスプーンを、ゲラーは手を触れずにヒョイ、と曲げてしまった。

YouTubeなんかにユリ・ゲラーが手で、ぐにっとスプーン曲げてる決定的な動画があるんだけどな・・・。
ASIOSのHPでも紹介されてるのに、ネタバレなしに書いたらビリーバーみたいに見えるんですけど、と学会の癖にいいのかな。

ロブロブ 2009/03/21 03:16  味をしめて、また書き込んでしまいます。というのも、今回の「唯物論」も、せめて大学卒ならば
 分かっていてほしい常識なわけで。
 なんというか、唐沢という人は、一般的な教養がごそっと抜け落ちてるんですよね。雑学というのは、
 幹となる教養があってこそ生きると思うんですが、唐沢の場合には、幹がないのに断片的な知識を、
 適当にはり合わせて「雑学」を気取ろうとするから、こうやって毎日のように検証されてしまう。
 うーん、ほんと、面白い人です。

yonoyono 2009/03/21 04:29 >そのスプーンを、ゲラーは手を触れずにヒョイ、と曲げてしまった。

それができたらトリック云々言われなかったのに>ユリ・ゲラー

今回と前回(週間昭和)を鑑みるに唐沢さんは本人や周りが思っているほど、懐古的な文章が書けないのでは?と思ってしまいます

EBCDICEBCDIC 2009/03/21 07:05 >>そのスプーンを、ゲラーは手を触れずにヒョイ、と曲げてしまった。
>それができたらトリック云々言われなかったのに>ユリ・ゲラー

70年代に来日した時にのTV番組では、延々と指でスプーンを挟んでこすってましたからね。小学生(当時の私も含めて)の間では、番組放映の翌日から、給食のスプーンを「曲がれ〜曲がれ〜」と演じながら指でこするのが流行りましたし。

唐沢氏は件の番組を見てなかったのかね?
また例によって山本氏や志水氏が読んだら文句の一つも言って当然のネタですけど。

kensyouhankensyouhan 2009/03/21 16:39 コメントありがとうございます。
みなさんからのご指摘に基づいて記事に追記をしておきました。考えてみれば、自分はユリ・ゲラーが来日したときはまだ生まれていなかったから当時のことをよく知らないんですよね。助かりました。

>774さん
「生まれが貧しいこと」を意味する「木のスプーンをくわえて生まれてくる」という表現もあるようです。

>tochica さん
「スプーン」に何らかの意味を持たせようとして失敗したんでしょうね。しかし、仮に「スプーン」が裕福さの象徴だったとしてもスプーン曲げに何の意味があるのかと。

>個人投資家さん
丁寧な解説ありがとうございます。

>うさぎ林檎さん
よく考えてみると「手を触れずに」曲げるってどういう状況なのかわかりませんね。テーブルに置いたままなのか。

>ロブさん
「物質主義」と「唯物史観」を混同している人は多いですけどね。「物質主義」を高尚に言い換えたら「唯物史観」になると思ってるかのような。

>yonoさん
大和書房から出るという新刊も不安ですね。

>EBCDICさん
「と学会」の人間としてどうなのか?という間違いですし、リアルタイムで知っている人間とは思えない間違いですし、もう何が何やら。

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