唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

『ぷっすま』はどうなるのだろう。

 「裏モノ日記」4月23日付より。

ところで別に酔っ払いを大目に見ろという気は無いが、
今回の件を公然猥褻罪とするのはどうかと疑問に思わざるを得ない
(逮捕はまあ当然のこととして)。
伝えられるニュースで見る限り、裸体を無理矢理他人に見せつけよう
という意志をもってした強制行為があったとは思えない。
深夜の公園という、人通りも多くない場所でもあり、
一般社会人に等しく性的嫌悪感を与えるレベルではないと思う。
酒に酔って正体を無くした上での全裸(泥酔者は身体の火照りから
脱衣欲求を感じることがまま、ある)というのは、まあ、
酔って人前で脱糞したのと同じくらいの罪の程度、
せいぜいが酔っ払い防止法軽犯罪法の違反というところではないか。
警官の、服を着ろという指示に従わなかったことが逮捕の最も大きい
原因だろうが、だったらば猥褻罪というよりは公務執行妨害
適当するだろう(こっちの方が重い、という意見もあるだろうが
タレントにとっては猥褻という用語がまず、致命的である)。

 条文を読んでから文章を書いて欲しい。公然わいせつは刑法174条で規定されている。

(公然わいせつ)第174条 公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

この条文から「裸体を無理矢理他人に見せつけようという意志をもってした強制行為」「一般社会人に等しく性的嫌悪感を与える」などという要件をどうやって思いついたんだろう。それに酔っ払い防止法軽犯罪法に該当するというのなら条文を示して欲しいところだ。
 で、次は条文に出てくる単語について過去の判例から見てみる。まず「公然」は「不特定または多数の人が認識することのできる状態」と定義されている(最高裁昭和32年5月22日判決)。次に「わいせつ」は「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」と定義されている(最高裁昭和26年5月10日判決)。
 こうしてみると、今回の草磲くん(自分はふだんそのように呼んでいる)の行為は「公然わいせつ罪」の要件を満たしていることがわかる。「わいせつ」については異論はないと思うが、「公然」についてはたとえ誰かに見られていなくても「認識することのできる状態」にあれば足りるのである。それに今回の事件では複数の目撃者もいるようだし。深夜の公園が「公然」と言える状況なのか、という疑問を持つのはもっともなことだが、疑問を持ったのならそのままにしないでちゃんと調べて欲しい。条文や判例を見るのは基本中の基本だもの。自分で調べようという姿勢がないのは「雑学王」としてどうなんだろう。
 それから、公務執行妨害についても間違ったことを書いている。

公務執行妨害及び職務強要)第95条 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

というわけで「警官の、服を着ろという指示に従わなかったことが逮捕の最も大きい原因」にはならない。草磲くんは「暴行」も「脅迫」もしていないということなのだろう。取り押さえようとする警官に酒に酔った状態で抵抗することは「暴行」にはあたらないし、「裸で何が悪い」と叫ぶのは「脅迫」にあたらないということだ(なお、判例では公務執行妨害罪の「暴行」は「公務員の身体に対する不法な攻撃」とされている)。
 

ところで公然猥褻罪は親告罪でないので、被害者がいなくても
警官の判断で成立するのだが、これは非常に怖いことではないか?
泥酔状態で歩いているところを、いきなり
「お前はさっき性器を露出していたろう」
と言われて逮捕されることがありうるのだ(目撃者がいる、と
されれば、逮捕時に露出していなくても逮捕される前例がある)。
状況証拠で人を罪に落とせるのか、とカレー事件で騒がれていたが
ならばこちらの事件でも騒がないと片手落ちだろう。

 ああ、法律に疎い割りに「親告罪」という言葉は知ってるんだ。著作権法上の罪は親告罪だから他人事ではない、ということなのだろうか。著作権法上の罪を非親告罪化しようとする動きがあることは唐沢俊一にとって「非常に怖いこと」であるのは間違いないのだろうけど。ただ、「被害者がいなくても警官の判断で成立する」とか書いているところを見ると詳しいところは知らないようだが。正しくは「被害者等からの訴えが無ければ公訴を提起できない犯罪」のことを親告罪という。
 それにしても、ズボンのチャックを全開にして街を歩いていたら捕まるかのような言い草である。まあ、そういうことが起こる可能性も有るのかも知れないが…。しかし、「公然わいせつ」をでっち上げる意味がわからない。わざわざ「6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」にするために、でっち上げというリスクの高い行為をすることってあるのだろうか。ろくな証拠も無いのにどうやって裁判をするつもりなのか。身に覚えの無い罪で捕まる可能性があることを本気で「怖い」と思っているのなら、痴漢の冤罪や代用監獄についても真剣に考えて欲しいところだが。発生する可能性が低い事柄について「非常に怖い」などとむやみに煽られても困る
 あと、和歌山カレー事件と草磲くんの事件って証拠のあり方が全然違うんじゃないか?草磲くんは現行犯で逮捕されていて、それに本人も罪を認めている、つまり「直接証拠」があるというのに、どうして「状況証拠」が問題になるんだろう。唐沢俊一はしばしば「○○について騒ぐのなら××について騒がないとおかしい」という論法で相手のダブルスタンダードを責めるのだが、今回のケースについてはほとんど言いがかりである

…この調子でコメンテーターをやった日には、ネットの餌食になるのは目に見えているので気をつけて欲しい。猟奇事件についていろいろ書いている割りにどうして法律に疎いのかよくわからないけれど。