いつまでもデビューと思うなよ。
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唐沢俊一と唐沢なをき『唐沢商会のマニア蔵』(スタジオDNA)P.124〜125、唐沢商会のマンガ『デビューパターンの研究と分析』より。
このマンガでは、マンガ家としてデビューするパターンとして「苦労するパターン」と「苦労しないパターン」の2つに大きく分けられるとしているが、その過程で「苦労しすぎる」「苦労しなさすぎる」と始末が悪いと説明している。
まずは「苦労しすぎた人」の解説。
普段モノワカリのいいことを言っても
「…人間10年はドブの中を這いずらなければ一人前とはいえないのだ」
とか
「おまえのようなヒヨッコは人生の怖さを知らないのだ」
なんてセリフがひょっと出たり
これで酒とかはいろうものなら
「…俺は地獄をみてきているからね」
などと自慢気に言い出します
なをき「いるいる こーいう奴いるっ」
俊一「自分だって苦労したくてしたわけじゃないのに まるで選んで苦難の道を歩んできたとか大ウソをついたりすることもある」
ひどいのになると
「あいつにもいっぺん地獄をみせてやらないと本人のためにならない・・・・」
…おそろしいことを言って人の足をひっぱったりします
俊一「これはその、苦労にとらわれるあまり結局、苦労をするために苦労してきた、という人生の目的を取り違えたタイプといえるでしょう」
「苦労は過程であって結果ではないのであります(後略)」
…えーと、これってなんだかニフティの会議室で唐沢俊一が伊藤剛さんに対してとった態度とか、『エヴァ』ファンを「俺も昔イタかったからわかるんだ」と批判していたのとカブるんだけど。唐沢俊一は「苦労しすぎた人」なのだろうか。
では、もう一方の「苦労しなさすぎた人」の解説(説明しやすいように一部省略している)。
こういう人はこういう人なりの障害がたくさんあるハズなのだが
「俺ってセンスと才能のヒラメキで勝負するタイプだからね」
などと、なぜかワレカラに軽薄をよそおい浮草的な生き方を誇る人が多いのである
「俺みたいなタイプって身の軽さが身上じゃん」
「努力なんかしたらかえってファンをうらぎっちゃうのよねぇ」
…努力しないからすぐツブれる
なんとなくはいっちゃった業界だから執着も別になくて
さっさともっと実入りのいい業界に転職したりする
俊一「というわけで「ああ、やはり苦労しないデビューすると(原文ママ)長続きしないものだ」などと教訓的な教えを業界に残すことになるのだ」
「本人は知ったこっちゃないだろうが」
・・・あれ? こっちもあてはまるような気が。「裏モノ日記」でよくある「1時間で原稿書き上げたよ」アピールとかそんな感じだ。唐沢俊一はデビューするにあたって苦労しすぎたのか苦労しなさすぎたのか、一体どっちなのか。そう思っていたら、本人が説明してくれていた。
俊一「え? 私?」
「まあ 人並の苦労をしたといえばしているし してないといえばしてないし 編集部の床に3年ばかりねてたら誰かが目をつけてくれたという「放置PLAY型」ですが」
なるほど。だから、「苦労しすぎた」「苦労しなさすぎた」両方のパターンにあてはまるのか。というか、本当は「苦労しなさすぎた人」なんだけど「苦労しすぎた人」ぶりたい人ということなのかな。…それにしても、この「放置PLAY型」というのは謙遜じゃなくてマジなんだろうなあ。ガセとパクリだらけの惨状を見ているとそのように思わざるを得ない。唐沢本人も「ライターとして修業していない」という趣旨の発言をしていたし、それに『博覧強記の仕事術』で唐沢が自らの過去の経験を意外なほど語っていないあたり、実はさほど苦労していないのでは?と思ってしまう。もしくは、技術論としてまとめられるだけの努力をしていないのかも知れない。コネを得るための努力などは『博覧強記の仕事術』では語れないだろうから。
あと、唐沢はプロとしてデビューせずに同人誌やインディーズやパソコン通信で活動している人間(「ウーパールーパー型」と呼んでいる)を批判している。
俊一「いろいろ問題はあるにせよ デビューするための努力というのは 他者(世間)と自分(作者)との接点を見つけ出す作業です」
「これは社会的動物である人間の行動としてきわめて理にかなっている」
これを拒絶して自分の回りに作った壁の中だけで自分の信者だけを相手に生きようとする人間が増えているというのはなんかキモチ悪いぞ、ただいるだけで
そもそも「ウーパールーパー型」というのが古いのだが(ブームになったのは1985年)、「自分の信者だけを相手に生きようとする人間」ってまさに唐沢俊一のことなのでは。漫棚通信さんに謝罪できなかったのは「他者と自分との接点を見つけ出す作業」を拒絶しちゃったせいなのだろうし。それに同人誌やインディーズで活動している人間だってそれなりに苦労していると思うのだが。「なんかキモチ悪いぞ、ただいるだけで」とまで言う必要はないだろう。
個人的には、唐沢俊一がライターとしてデビューしたこと、そして20年もの間仕事を続けてきたこと自体は大変に立派なことだと思っている。しかし、仕事を続けられさえすればいいというものでもないよなあ、とも強く感じている。少なくともプロとしての最低限のレベル(原稿の中に常識レベルの間違いがないこと、他人の文章をパクらないこと)は確実にクリアーしてもらいたいところだ。
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