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唐沢俊一検証blog

2010-02-27

燃えよデブ専。

17:02

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・初めての方は「唐沢俊一まとめwiki」「唐沢俊一P&G博覧会」をごらんになることをおすすめします。


 今日21時からフジテレビ系列で『トリビアの泉』2時間スペシャルが放送されます。一応お知らせ。


 今回は『熱写ボーイ』4月号掲載の唐沢俊一『世界ヘンタイ人列伝』第13回「めくるめく“肉欲”の世界」を取り上げる。ちなみに、今回の『世界ヘンタイ人列伝』では、ロミ『でぶ大全』(作品社)と早川智『源頼朝歯周病』(診断と治療社)が初めて参考文献として挙げられている。これはいいことだ。では本文を紹介していく。

 不景気の極みみたいなこのご時世にあっても、ダイエット食品やダイエット法の本は順調な売れ行きを示しているらしい。やはり女性たちにとり、スリムな体型というのは永遠のあこがれなのだろう。ダイエットを希求するあまりの拒食症などもその例にことかかず“痩せたい”症候群は世代や国籍を問わず、いや性別すら問わず多くの人々に蔓延しているようである。

 しかし、この後で唐沢俊一は「かつては豊満な女性が美しいとされていた」ということを書いているのだから、「スリムな体型というのは永遠のあこがれ」というのは少しヘンだ。

 続いて、ルーベンスが太った女性の絵を好んで描いた、という話になり、ルーベンスの代表作「三美神」の話題となる。

この絵はギリシア神話の日本人から見るとエロというよりグロに見えるのではないか、というくらい、女性のセルライト(皮下脂肪)が克明に描かれている。

 ギリシア神話の日本人」ってなんなんだ。『聖闘士星矢』か? そんなこと言われてもペガサス幻想で永遠ブルーですよ。

 ところで、なぜこの時代に豊満な女性が美とされたのか、というと、それは当時の女性の主たる役割が、子供を産むということであったからに他ならない。特に王家や貴族の家では、世継ぎをもうけるということが、嫁いだ女性の最も重要な役割であった。いくら外見がスマートで美しくても、ガリガリの女性では子供を安全に産むことが出来ない。

 個人的な話をしてしまうと、自分の母親は若いときかなりほっそりとしていたのだが、それでも自分を含めて子供を4人無事に産んでいるので、「そうなのかなあ」と思ってしまう。…まあ、昔に比べると医療が発達していることも考慮すべきなのかもしれないが(もちろん現在でも出産に危険が伴うことを忘れてはならない)。それから、今回のコラムの後半では、フランスアンリ4世の話になるのだが、もし本当にかつて豊満な女性が美しいとされていたのなら、アンリ4世が再婚相手であるマリー・ド・メディシスが予想と違って太っていたのでガッカリしてしまった、という話は成り立たなくなるのではないだろうか。

 で、アンリ4世の話である。

 後にルーベンスとは深い関係の出来るフランスアンリ四世は、長いこと正妻であるマルグリッド・ド・ヴァロアと別居して、愛人たちと浮き名を流していたが、数多い愛人たちの中でも際立って寵愛を受けていた女性にガブリエル・デストレがいた。知的で聡明このうえなかった彼女は、アンリの政治や外交などにも助言を与え、その信頼は他の女性とはくらべものにならなかった。肖像画を見ると彼女はスマートなインテリ美女、という感じであるが、彼女は痩せていることで、アンリの父親などに評判がよくなかった。

 「マルグリッド・ド・ヴァロア」は“Marguerite de Valois”なので「マルグリット」と書くべきだろう。それから、アンリ4世の父アントワーヌは1562年に死んでいるので、1571年に生まれたガブリエルのことを知っているはずがない。

 そうこうしているうちに、アンリはマルグリッドと離婚して再婚する、という噂が流れる。自分こそアンリの妻にふさわしい、と思っているガブリエルにはこれが腹が立ってたまらない。アンリの子供を作るのは自分よ、とばかりに、5年の間に4人の子供を立て続けに作ったが、痩せた彼女の体格ではこの連続出産は無理があったとみえ、4人目の子供を死産して、自分も命を失ってしまう。

 アンリはマルグリットと離婚してガブリエルと結婚しようとしていたらしい。それに、アンリがマルグリットと離婚したのは1599年で、ガブリエルが最初の子供を産んでいるのは1594年である。5年の間に4人の子供を生んだというのは、アンリガブリエルの親密さを証明しているのではないだろうか。ちなみに、ガブリエルアンリとの結婚直前に亡くなったことから、彼女は何者かに毒殺されたのではないか?とする説もある。

 ガブリエルの死後、アンリ4世はマリー・ド・メディシスと再婚する。

 しかし、アンリはこのマリーを大変気に入ったようである。いや、マリー自身は浪費癖があったり身内贔屓が過ぎたりして、かなり困った女であったが、痩せっぽちの女ばかり相手にしていたアンリ四世にとり、デブ女とのセックスは、かなりのコペルニクス的転換というか、その味に目覚めてしまったようだった。

 正しくはコペルニクス的転回」。

 続いて、参考文献として挙げられている『でぶ大全』から文章が引用されているのだが、ところどころ不正確なので気になってしまう。ちゃんと引用できないのかな。

 その後、ガブリエル・デストレがアンリ4世の気を引くために太ろうとした説もあると書いた後でアンリ4世の別の愛人であるカトリーヌ・アンリエット・バルザック・ダントラーグの話になる。

 また、カトリーヌ・アンリエットもまた、体重を増やすことで、アンリが夢中になっている王妃マリーに対抗しようとし、やはり妊娠中毒を引き起こして、彼女自身は助かったが、王を脅迫するネタになるべき子供は死産になっている(生れたとたんに雷に打たれたという伝説もあるが、まあ妊娠中毒だろう)。

 カトリーヌ・アンリエットはアンリ4世の子供を2人産んでいるので、唐沢の文章はどうもヘンである。色男として知られ何十人もの愛人がいたというアンリ4世を子供がひとりできたくらいで脅迫できるものなのだろうか? 

 いろいろ調べてみると、実際のところは次のような話だったようだ。アンリとマリーの再婚話が進んでいる間に、アンリはカトリーヌ・アンリエットに惚れ込んでしまい、妊娠した彼女と結婚の約束までしてしまった。しかし、カトリーヌ・アンリエットが子供を死産してしまったため、彼女は王妃となることを諦めた、ということらしい。ただし、その後もアンリとカトリーヌ・アンリエットは関係し続け、2人の子供をもうけたわけである。

 なお、アンリ4世とマリー・ド・メディシスが不仲であったとする説も有力で、ギー・ブルドン『フランスの歴史をつくった女たち』(中央公論社)ではアンリがマリーを嫌っていた理由のひとつとして肥満が挙がっていて、こうなると唐沢の文章とは真逆になってしまう。

 ともあれ、一人生き残ったデブのマリーはアンリ四世暗殺後も生き延びて、かのデブ好きルーベンスに肖像画を描かせている。彼がここぞとばかりに彼女を太めに描いたのは言うまでもない。現在、それらの絵はルーブル美術館に展示され、観る者に暑苦しさを感じさせているのである。

 「一人生き残った」も何もカトリーヌ・アンリエットだって死んでいないアンリ4世は1610年に暗殺されているが、カトリーヌ・アンリエットは1633年まで生きていたのだ(マリーは1642年に亡くなっている)。自分で「彼女自身は助かった」と書いたのを忘れているのか。

 それと、ルーブル美術館にあるルーベンスの絵は『マリー・ド・メディシスの生涯』という合計24枚にも及ぶ大作である(メルシーパリネットを参照)。確かに一部は肖像画なのだが、正確さに欠ける記述である。


 …うーん、他に「デブ専」の偉人がいればそれも取り上げてみればよかったと思うけどなあ。調査の甘さが目に付いた。余談だが、この件を調べるためにフランス王家のスキャンダルについて調べていたら「ルイーズ・ド・ラ・ヴァリエール」とか「モンモランシー」とか出てきて噴いてしまった(アレのモトネタになっているのは有名な話だけど)。

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gurenekogureneko 2010/02/27 22:38 嗜好が変わっただけで「コペルニクス的」とは・・・。
唐沢氏はカントに関する知識を意図的にひたすら避けて生きてきたのでしょうか・・・。

藤岡真藤岡真 2010/02/27 22:44 >コペルニクス的転換

 唐沢は2009年5月20日の裏モノ日記の中の、頼近美津子の追討記事でも、
>「可愛ければアナウンサーがしゃべりが下手でもいいじゃないか」
>というコペルニクス的転換を視聴者にもたらした。
と書いています(simamaさんがコメント欄で指摘して下さいました)。
http://d.hatena.ne.jp/sfx76077/20100212
 ケアミスではなく、「久闊を辞す」「書律」と同じく、そう思い込んでいるようです。

yonocoyonoco 2010/02/27 23:04 同じ文中で論旨が分裂してるのは、自分で書いてるという事なんでしょうかね?

資料に当たってるのもあるし、P&Gがないだけ良いのかなあ…

みやこみやこ 2010/02/27 23:41 はじめまして。みやこと申します。
貴ブロク開設時から、いつも楽しみに拝見しております。

唐沢さん、やっと参考文献を正当に紹介するようになったんですね…。
今後もその文化を続けていって欲しいものです。

浅草キッドがとあるケーブルテレビで映画紹介番組をしているのですが、
自然に
「これはある評論家の方がおっしゃっていたのですが…」
「ここからは映画評論家の○○さんが書いていたのですが…」
と、ちゃんと前置きされるんですよね。
私も人前で話す仕事をしていますから、話しながらでも問題なくできることだとよく分かります。
ましてや執筆したものなら、何度でも手直しができるのに。

唐沢さんが先達者の紹介や引用・参考元に触れないのは、おそらく完全に意識の問題でしょうね。

その浅草キッド水道橋博士と唐沢さんが、かつて対談しているのをご存知でしょうか

http://www.aspect.co.jp/hakase/

水道橋博士著「博士の異常な健康」出版時の企画として、唐沢さんにこの本のトンデモ度を鑑定してもらおう!
…というもので。

電磁波についての唐沢さんのコメントはかなりガセの匂いがいたします。
たぶん他にも、いろいろとやらかしてしまっているかもしれませんね…。

これからも楽しみにしています。

NNTNNT 2010/02/28 10:47 参考文献として挙げられているのはいいことだと素直に思いました。

でも、時代と場所が変われば、太っている事の意味と価値が違うなんて当たり前なのに。
中世においてふくよかである事は権威と財産の象徴であり、痩せているのは貧乏か衛生的な生活が困難で病気をしているって事なんですが。
現代においても、先進国なら痩せている事に価値はあるけど、発展途上国で痩せているのは価値は無いどころか、深刻な問題を反映しているだけに過ぎない。
中世においてはふくよかさが財産を象徴しているわけだから、痩せている女の持参金は少なさそうって事で。
それと王族の婚姻はあくまでも政治的なもので、太っているから痩せているからでどうのこうのと言い切るのも。
そもそも、フランスの歴史とメディチ家の歴史とその関係が理解できていれば、こんな事書けないと思うんですけどねぇ。

tsntsumitsntsumi 2010/02/28 18:51 ええっと「体重を増やすことで...妊娠中毒を引き起こして...死産になっている」って前の方にある「ガリガリの女性では子供を安全に産むことが出来ない」って文と矛盾してるような気がするんですが...。

あと、あまり関係ないけど、黒澤明が脚本を書いた「あすなろ物語」(1955年、東宝作品)観てたら、「太った男が出入りしてるのをみたが、あの太り方は金持ちだぜ」っていうような台詞があって笑ってしまった。

kensyouhankensyouhan 2010/02/28 19:42 コメントありがとうございます。

>gurenekoさん
伊藤剛さんが仰っていたように「抽象的な話が苦手」なら哲学はダメでしょうね。…あ、でも、唯一例外があるのでいずれ紹介してみましょう。

>藤岡さん
「裏モノ日記」を検索したら、見事に「転換」ばかりでした。…と思ったら、タイムリーなことに2月22日の日記で
>確かにカバ見返しにある「探偵小説におけるコペルニクス的転回」という文句はウソではない。
とありました。見返しを見ながら書いたなら間違いようがないわけだけど、いい機会なので正しく覚えてほしい。

>yonocoさん
結論ありきで書いているせいでおかしなことになる、というのは唐沢の場合ありがちです。

>みやこさん
『ラジオライフ』では『世界の三面記事・オモロイド』からの盗用発覚以降、参考文献の表示をちゃんとやっています。『熱写ボーイ』では初めてということですね。
水道橋博士との対談については、「と学会」会員の菊池誠先生のブログのコメント欄で突っ込まれてます。
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1250519440#CID1250989596

>NNTさん
ダイエットがブームになったのはつい最近のことなんですけどね。

>tsntsumi さん
急激に太るのはよくない、ということなのではないかと好意的に解釈。

金平糖金平糖 2010/03/01 01:57 >エロというよりグロに見えるのではないか
美しいとか神々しいとかではなくいきなり「エロ」と言う時点でおかしいわけですが
ルーベンスの裸婦にはふくよかなのが多いわけですが
逆にルーベンスの裸婦が特別に語られる時点で当時はふくよかなことが美しいとされた
と言うことそのものが信憑性が低いとしか思えません。
三美神に関してはラファエロだってそれなりにはふくよかに描いてますし
単に「うそでも均整のとれた美しいものを描く」と言う時代の終わりに
登場したのがルーベンスだったということと後は個人の趣向でしかないと思います。

コペルニクス的転換
せめてコペルニクス的発想の転換なら良かったのですが、転回の意味もわかっているのか疑問ですね。

出産と体型
私は専門化ではないので聞きかじった知識になりますが
出産でよいのは多少ふくよかな程度でおしりの大きな人で
肥満は非常に良くないらしいです。
まあ、脂肪で子宮が圧迫されてたらまずい気がします。

本能的に魅力を感じるのはウェストがくびれている女性と言う一説があります。
簡単に言うとシルエットで妊娠可能と識別できると言うことで
腹が膨れているとすでに妊娠中と判断してしまうと言う話ですね。
太っている人が好まれたとするなら単純に経済的に裕福だからと言うだけだと思います。

ダイエットブーム
確かにダイエットブームと呼ばれる現象は1970年代が最初と思われますが
それ以前から普通に痩せたい、痩せていると見られたいと言う願望は強くありました。
ウェストを細くヒップをふくよかに見せるためのものとしてコルセットというものがあり
原型的なものは16世紀から存在します。
さらにウェストを締めるベルトまでたどれば12世紀ごろまでさかのぼれます。
痩せて見られたいと言う乙女心は昔から変わらないようです。

唐沢氏の文章はどうにも根拠のないきめ付けが多いように感じますね。

みやこみやこ 2010/03/01 05:24 >kensyouhanさん

>『ラジオライフ』では『世界の三面記事・オモロイド』からの盗用発覚以降、参考文献の表示をちゃんとやっています。『熱写ボーイ』では初めてということですね。

そうなんですね!
お教えいただき、ありがとうございます。
しかし…ということは、出版社もしくは担当者に突っ込まれた時のみの参考文献記載の可能性があり、
やはり唐沢さんの意識が変わったわけではなさそうですね…。
今後、彼が書く全てのものに文献紹介をちゃんとするのかどうか、ですね。
…こんなこと当たり前のことだと思う私が、と学会を辞めなかった理由とする彼のコメントを読むと、リアルで血の気がひきます。

菊池先生のサイトご紹介もしていただき、ありがとうございます。
拝見しました。
「言われてます、と言われても」という菊池先生の冷静な突っ込みがツボでした。

ありがとうございました。

kokada_jnetkokada_jnet 2010/03/01 10:03 >みやこさん
水道橋博士との対談については、トンデモナイ一行知識の世界さんも、とりあげられています。
このエントリの内容は、一応、Twitterで水道橋博士氏に存在伝えて、一応、お返事いただいたのですが。どこまで真剣に読んでくださったかは、わかりません。
http://tondemonai2.blog114.fc2.com/blog-date-20090823.html

みやこみやこ 2010/03/03 03:00 >kokada_jnet さん

おおっ!
お教えいただき、ありがとうございます。
拝見いたしました。

うーん…。
水道橋博士さんがせっかく実体験されたんだから、何よりご本人にネタとしておいしく扱っていただきたかったですね…。
なんだか残念です。

kensyouhankensyouhan 2010/03/19 07:42 コメントありがとうございます。

>金平糖さん
ダイエットブームについては個人的に調べてみようかと思ってます。

>みやこさん
参考文献を示すのはいいんですけど、他にもやらなきゃいけないことが多いような気が。